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ラティのお願い 聖女の憂鬱

今回はお話が二つ

 俺達は王女との面会を終え、城の廊下を歩き正門に向かった。


 また兵士や騎士から嫉妬に狂ったような視線を貰う。

 いや違った、完全に俺を射殺す視線だった。

 もうすでに隠す気も無いようだった。



 葉月でもこれは流石に気が付くのでは?と言うレベルのガン飛ばしである。


 なので、何気なくオブラードに包んで葉月に聞いてみる。

 

「なぁ葉月。妬みと悪意の感情って何かな?」

「う~ん、」


 葉月は人差し指を口元に当て、首を可愛らしく傾げながら考え。

 体ごとをこちらに振り向きながら、上目遣いに答えてくる。


「悪い嫉妬かな?うん、悪い嫉妬だよ!」

「いあ、そんな可愛らしく言われてもな、じゃあ良い嫉妬って?」


「良い嫉妬?う~ん、好意と独占欲で出来た感情かなぁ?」

「なるほどな、確かにそれなら受けてみたいな」


「でしょ!私もそんな嫉妬なら歓迎なんだ」

「ん?葉月さん・・なら、そう言う嫉妬もらったことあるんじゃねぇの?」


「無いよぉ、それにその嫉妬は好きな人にして貰わないと意味無いし」

「はぁ?それこそ聖女様なら好きな人なんてどうにかなんじゃねぇの?」


「うん、だから可愛くなろうと、努力したりしてるんだけどね」

「可愛くの努力って、そんなのお前に必要なのか、」


「女の子はみんな誰もが努力してるものよ、綺麗とか可愛いとかに」

「‥‥葉月も?」


「‥‥うん」



 そんな砕けた会話を俺は葉月と交わしていた。

 だた、それはコレから真面目な会話をする前フリで‥‥


「なぁ、葉月。さっきの王女様の話って勇者達に教えるのか?」

「――ッ!え?ああ、どうしよっか、」



 葉月はこちらに体を向けて後ろ歩きしていたのを止めて、体を正面方向に戻してから返事をしてきた。


 再び横に並んで、顔を合わさずに話し合う。


「俺は話す相手を選んだほうが良いと思っている」

「相手を選ぶの?」


「ああ、特に赤城とかはマズい、アイツが知ったらまた政治家病が発病すっから」

「あ~~、うん 確かにそうだね、話す相手は選んだ方がいいね」


「まぁ、話す相手は各自の判断でいいかな」

「うん、わかった、確かに風夏ちゃんにも話難い内容かなぁ、、」


 こうして俺達は城を後にした。


 

 因みに、城に入る時に預けていた武器の返却時に、槍に付けていた付加魔法品アクセサリーの赤布が外されていた。


 赤布はどこいったと問い詰めたら、最初はそんなの無かったですよ?と白を切られたが、葉月が再び問い詰めると『あ!下に落ちてました』っといけしゃあしゃあと出してきやがった。



 どんだけ嫌われてんだよ俺――







            ◇   ◇   ◇   ◇   ◇








「お帰りなさいませ、ご主人様」

「あ、ジンナイ様お帰りです~」



 葉月の家に戻ると、某喫茶店のような挨拶で迎えられた。


 城下町での用事は済んだので、さっさと【ルリガミンの町】帰ろうかと思っていたのだが。


「陣内君。4人で買い物に行こっか、あっちじゃあまり売ってないだろうし」

「うう、」






 こうして俺は、城下町に買い物に行く事になった。

 特に買う物は無かったはずだったのだが、特に現在は金欠気味なので、無用な出費は抑えたいところだったが‥‥


 『陣内君。あのね、ラティちゃんの下着を買ってあげた方がイイと思うんだ』と、城からの帰り道で葉月が提案して来たのだ。


 俺がその理由を聞く前に‥‥


『昨日3人でお風呂に入った時に気が付いたんだけどね、』と話を続け、どうやら上の方のサイズが合わなくなって来ていると教えてくれた。


 とても貴重で重要な情報だったが、なんとも取り扱いに困る案件だった。



 よく考えてみればラティは当初、栄養不足だった。俺の奴隷になってから半年以上も経つし、食事も改善している。


 成長してないわけがなかったのだ。

 

( 今は髪の艶とか凄いしな、)



 こうして俺は、葉月の助言により、久々の衣服店に行く事になった。

 いや、俺は入らずに外に待機してたが。


( 勘弁して下さい )



 購入した衣類ブラは約銀貨50枚分。

 更に一歩金欠が進んだのだった‥‥



 ――ラティの装備代金20枚金貨払ったら、残り金貨3.5枚

 王女様から付加魔法品アクセサリー貰ったから、俺用の付加魔法品アクセサリーはららんさんには申し訳ないが、キャンセルさせてもらうか。


 そんな事を考えながら俺は久々の買い物を終えたのだった。







          ◇   ◇   ◇   ◇   ◇







 

 その後。

 葉月とは城下町で別れ、俺達は馬車でルリガミンの町に向かった。


 そして現在は馬車の中。

 行きと同じで、馬車の中ではラティの尻尾を撫でさせて貰っている。

  

 因みにサリオはまた睡眠中だ。

 ラティが手をかざしていたが、きっと気のせいだろう。



 それと尻尾撫で撫でなのだが。

 ラティは行きと違って、帰りは機嫌を良さげにしているのだ。

 行きの時は尻尾撫でていると、恥ずかしそうに俯いていたのだが、今はとても機嫌良く尻尾を撫でさせてくれている。



 どういった心境の変化なのか、それはそれで嬉しいのだが寂しくもある。


( 面倒くせぇな 俺! )


 もしかしたら、新しい衣類を購入した事が嬉しいのかも知れない。

 俺はその辺りに、全く気が使えていなかったのだ。


 因みに、サリオもついでに欲しがり銀貨20枚追加分購入した。


( あれ?必要か? )


 ――ラティは結構、着飾るのが好きだからな、

 機能重視で見た目には拘らないタイプかと思っていたけど、実はかなり見た目を気にするタイプなんだよな、


 葉月からの、新しいバトルスカートをプレゼントもあったし、

 それで機嫌が良くなったのかな?あと今回は葉月には世話になりっぱなしだったな、今度会ったら何かで返さないと、


 

 そんな風に葉月のことを思い出していると、急にラティが動き出した。

 こちらを下からのぞき込む様に、体を前に倒し首を窄め髪が揺れる。


 とても何か言いたげ表情をしていて、俺から話し掛けられるのを待っている様な。普段無表情気味のラティには見られない表情だった。


 当然そんな表情をされれば。


「ラティどうしたんだ?」

 

 悩むことも躊躇うことも無く、即座に話し掛ける。

 するとラティは、一度小さく嬉しそうに微笑み、次に表情を引き締める。


「あの、ご主人様 ハヅキ様に言われたのですが」

「うん?」


( 葉月に? )


「わたしはもっとご主人様に伝えたい事を、しっかりと伝えた方が宜しいと助言を頂きました。そうしないとご主人様は、気付いて頂けないと言われまして」

「お、おぅ、」


 ――え?何?何?どういうこと?


「今回の買い物の件も、遠慮せずにわたしから伝えて置くべき事だと、お叱りを受けました。遠慮のし過ぎだと」

「なるほど、」


 ――俺だけじゃなく、ラティにも言ってたのか、


「あと、もっと我儘を言った方が喜ばれるとも薦められました」

「おっふぉ!」


 ――間違えてない、間違えてないけど、

 嗜好がバレたみたいで恥ずかしい!!


「それで、ひとつお願いがあります」

「おう!何でも言ってくれ」


「新しい剣を買って頂きたいです、実はきつくなってきまして‥‥」

「――っ!!」


 頭をぶん殴られた気分だった。

 ラティがそう言って俺に見せてきた二本の剣はボロボロだったのだ。


 ノコギリですか?と聞かれておかしくない位に刃こぼれをしており、とても斬る事が出来るようには見えなかったのだ。


「昨日の戦いでも、瓦礫を叩き落すのでも無理をさせてしまい‥‥」


  

 ラティは話を続けていたが、俺の頭には入ってこなかった。

 俺は衣類だけでもなく、命に係わる武器すらも気を使えていなかったのだ。


 もし葉月が居なかったら、俺はこの武器のままでラティを戦わせていたのかも知れないのだ。付加魔法品アクセサリーなどで、ラティに気を使っていたつもりだが、全く足りてなかった。



 俺はどんだけ、こんな酷い武器で戦わせていたのだろうか。



 ――ぐはぁぁ、これはホントに反省だ、

 今から引き返して、葉月に感謝のお礼を言いに行きたくなってきた、、


 

 今回の城下町への出かけは、色々と学ぶことが多かった。

 王族と貴族のことや、それに連なる今後起きるであろう出来事


 そして葉月からの助言。



 それから暫くの間、俺は反省の思考で固まってしまっていたようで。

 反省の渦から戻ってきた時には、ラティが心底困った顔で俺を見つめていた。



 どうやら――

 また俺は失敗をしていたようだった。

 




 


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――― 

 

 葉月由香はため息をついていた。


「はぁ‥」


 ――なんか最近個人的な依頼が増えて来たなぁ、

 ちょっと前は、村を助けるとか困っている人たちを救うとかだったのに、


 あとレフト伯爵様にも困ったなぁ、

 依頼だけじゃなくて、結婚も視野に入れてくださいって言われても、


 私はまだ17なの、そんなの考えられないよぉ、、

 学校でも告白は沢山あったけど、さすがにプロポーズは、



 彼女は、たび重なる貴族からの個人的な依頼や婚姻の申し込みで気が滅入っていた。

 魔王討伐後の、貴族達の権力争いや領地争いを有利に進める為に、貴族達は勇者の囲い込みが激しくなってきたのだ。


 最初の勇者支援の時は、まだ本当の実力や人柄が判断しきれない為に、様子見でいた貴族達や、有望な勇者を横取りしようとする貴族達が出てきたのだ。


 当然、聖女と呼ばれる彼女の人気は高く、すでに葉月の所属している教会を遠慮無しに動いている貴族達が多くなって来たのだ。


 その中でも特に激しいのが、ゼピュロス領のレフト伯爵だったのだ。

 そして葉月確保の手段として、自分の妻に迎えると言う方法を取ってきたのだ。


 しかも彼は、伯爵貴族である自分の妻として迎えると言うのは、とても光栄なことだと思っているのだ。


 まず断られる事は無い!、そう彼は思っているのだ。

 しかし、そんな横柄な態度は、葉月にとっては不快感を高めるだけだったのだ。


 

 そんな事も気付かずに、今日も葉月に依頼と婚姻を囁いていた。





「最近風夏ちゃんにも会えてないな~、会ってお話したいなぁ、」


 葉月は現在の息詰まるような状況のため、気楽に愚痴を言えたり、他愛もない話の雑談相手などに飢えていたのだ。


 周りが貴族だったり、自分を何かの神のように見てくる兵士ばかりでうんざりしていたのだ。


 他の勇者達は、皆が四方の領地に散ってしまっており。

 近くの【ルリガミンの町】に行けば勇者達もいるが、最近は貴族達がそれをよしとしない流れになって来ていたのだった。

 

 そしてそれが、葉月の不満と鬱屈を加速させていた。



 それでも彼女は、幽霊となってこの地に縛られている霊を解放してあげないといけないと思い、城を出ることにしたのだ。



 一応危険もあるので、パーティに声をかけないといけないと思ってはいるが。


「はぁ、みんなに声かけるのも、なんだかな~だなぁ、」



 やっかいなことに、パーティのメンツとは、教会が葉月の婿候補として選んだ、教会の若手実力者達だったのだ。

 当然そのパーティからも、それとなく婚姻を匂わせる空気がヒシヒシと来ていた。  



 そんな憂鬱な気分で城の正門を潜ると、そこには‥‥


「「――どっ――、――ぎゃぼ――!――」」


 正門前には、少し似つかわしくない騒ぎ声。

 独特な段差のシルエット、同級生の陣内のパーティがいたのだ。



 まさに今の彼女にとって、ある意味で一番会いたい人物だったのだ。


 ホントは飛び上がりたい程の嬉しさを隠し、今気が付きましたよ?的に装って彼に声を掛ける。

 

「あれぇ?陣内君?」


 ――し、自然に出来たよね?、不自然じゃなかったよね、

 折角だから彼とお話が出来れば、贅沢を言えば立ち話なんかじゃなく‥



「葉月。ちょっと時間あるかな?相談したい事があるんだけど、、」

「え?ええ!うんあるよ、あるある」

 

 ――キター!キタキタ!

 どうやって会話を切り出そうと思っていたら陣内君の方から!



 それから喫茶店に向かう葉月達。

 その店内でのゴタゴタも今の彼女にはとても貴重な息抜き。



 しかも相手のお願いは、彼女に取っては何でもないことだが。


「だけど、その前にちょっとお手伝いお願い出来ないかな?」


 そして、

 憂鬱だった幽霊退治が、楽しそうなイベントに変わったのだった。



 その後、予想よりも苦戦はしたが無事に成仏させられ、次は


「ねえねえ陣内君、城下町に泊まるなら私の家に来ない?」


 ――折角なんだから逃がすもんですか!



「葉月ありがとう、それなら二人をお願い出来るかな」

「え?二人?――っまって二人っきり?えええ!それは、えっと」


 ――あ、あれぇ?聞き間違えたかな?

 予想と違った返答だったからテンパっちゃったよぉー



「悩むまでもないですよ!泊まるの一択ですよです!」  


 ――ああ、なんて心強い!

 この子はきっと私にフォローを入れてくれた出来る子に違いない、



 葉月は無事に家に招待出来たが、、

 家に招待し、食事を済まし、女性3人で仲良く入浴しようと提案


 そして、


 ――あ、あれぇぇぇ!

 前より明らかにおっきくなってない!?

 しかも重力を無視してるの?形整い過ぎてない?密かに形は自慢だったんだけど、やっぱ前衛の方が動くからイイのかなぁ、後衛だとあまり動かないし、、


 彼女は敵かも知れない――


 あ、でもなんか下着がキツそう、、




 そして次の日の王女様との面会後


 ――凄い話を聞いちゃった、

 最近増えた婚姻話しは、そう言う理由かぁ、

 なんだかな~だよねぇ~、結婚を道具みたいに、、



 それにしても、兵士さん達すっごく陣内君睨んでるなぁ~、コレって、


「なぁ葉月。妬みと悪意の感情って何かな?」


 ――え?そんなの、


「悪い嫉妬かな?うん、悪い嫉妬だよ!」


 ――学校でもたまに、同性から受けてたなぁ、


「いあ、そんな可愛らしく言われてもな、じゃあ良い嫉妬って?」


 ――よし!可愛く見てもらえた!上目遣い、

 それと良い嫉妬、、って簡単じゃん


「良い嫉妬?う~ん、好意と独占欲で出来た感情かなぁ?」

「なるほどな、確かにそれなら受けてみたいな」


 ――そんなの向けられてみたい、、けど、、


「でしょ!私もそんな嫉妬なら歓迎なんだ」

「ん?葉月さん・・なら、そう言う嫉妬もらったことあるんじゃねぇの?」


 ――違う種類の好意ならね、不純な、、


「無いよぉ、それにその嫉妬は好きな人にして貰わないと意味無いし」

「はぁ?それこそ聖女様なら好きな人なんてどうにかなんじゃねぇの?」


 ――この人どうしてくれよう、、よし!


「うん、だから可愛くなろうと、努力したりしてるんだけどね」

「可愛くの努力って、そんなのお前に必要なのか、」


 ――あうううう、


「女の子はみんな誰もが努力してるものよ、綺麗とか可愛いとかに」

「‥‥葉月も?」


「‥‥うん」



 ――ホントにどうしてくれようか、あ!そうだ

 ちょっと困らせっちゃおう、お城を出たら、、




「陣内君。あのね、ラティちゃんの‥‥」

読んで頂きありがとうございますー


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