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ご宿泊

すいません、危うくエタるところでした

お話は、幽霊戦!

 目の前に広がるのは、目測で畳み二十畳以上の部屋。

 その部屋の中央で半透明の女性を中心に、床に散乱していた瓦礫が浮かび上がり、まるで衛星のように周りを高速で飛び回っていた。



 飛び回る瓦礫を避けるために、俺達4人は部屋の壁際まで下がることになった。

 

「ぎゃぼう、ジンナイ様何かこれはアレな感じですよです!」

「ああ、これはアレだな‥‥」



 俺はサリオと頭の悪そうな会話のキャッチボールを始める。

 だが‥‥


「ご主人様!どうしますか?倒しても宜しいのでしょうか?以前に崖下で出会った幽霊の方とは違うようですが」

「ラティさん、崖下のは知りませんが、この幽霊の討伐が今回の目的です!」



 葉月はづきとラティは俺達をスルーして真面目な会話をしていた。

 そして、葉月が先程も唱えた対霊体用魔法を唱える。



「安らかに眠ってください聖系浄化魔法”ショテン”!」 


 女性幽霊の閉じ込めるように光の粒子の輪が出現するが。


「――ヒャァァアアアア!!――」


 

 女性幽霊が甲高い声を上げ光の粒子の輪が弾かれる。

 

「え!?」


「魔法無効でも持ってるのか!?」

「ご主人様!来ます」

「滝汗ものです」



 衛星のように幽霊の周りを回っていた瓦礫が、高速でこちらに飛んで来たのだ。

 しかも、やっかいなことに、まとめて一斉に飛んで来るのではなく、まるで守るように大半の瓦礫はそのまま周囲を回ったままなのだ。


「ちくしょ!まとめて飛んで来たならサリオバリアーで防いで楽だったのに」

「ぎゃぼーー!ジンナイ様、私を盾扱いしようとしてますねです!」


「その結界ローブなら楽勝で防げるだろ」

「乙女的に、盾にされるのがイヤなのですよです!」


「お!乙女盾ってなんかカッコイイな」

「あう、あたしもちょっと響きがいいなっておもったです」


「――ッ来ます!」


 

 再び瓦礫がこちらに高速で飛んできた。

 サリオは結界で、ラティは短剣の柄を使って器用に叩き落とし、葉月は魔法で障壁を展開させて防いでいた。


「なんかジンナイ様が一番泥臭い避け方しますね」

「やかましい!」


「来ますよ!」


 飛んでくる瓦礫に何とか反応は出来るが、とても綺麗に捌き切れないので。


「とう!」



 俺は少し大げさ気味に横っ飛びで回避していたのだ。


「ジンナイ様だけダサいですねです」

「アホか!予備動作とか無しで飛んでくるのなんて見切れるか!」



 人が攻撃をする様な予備動作があるのなら、ある程度は予測が出来て綺麗に避けられるかも知れなかったが、ほぼノーモーションで飛んでくる瓦礫は、避けるだけで精一杯だったのだ。


 周囲を回っている瓦礫が、カクンと向きを変えて此方に飛んで来るのだから、完全に目で確認して避けるしかないのだ。


 俺は再び横っ飛びでサリオは乙女バリアーで葉月は魔法を使って壁を作り防いるのに。ラティだけは余裕でもあるかのように、短剣の柄で瓦礫を叩き落とし続ける。


 ――技術高すぎるでしょ、この子、、



 そんな感想を浮かべていたが、状況はよろしくはなく。


「ジンナイ様!どうしましょうこれ?!」

「きついな、全く近寄れない。ラティ!避けて行けるか?」


「流石にあの瓦礫の渦の中までは無理ですねぇ」



 魔法も弾く可能性もあるし、近づくことも困難。

 次に打てる手は少なく。


「仕方ない、ここは乙女盾の陰に隠れて突っ込むか!」

「ぎゃぼー!その使用法は想定外ですよです!MPもキツイです」


「あの、ご主人様さすがにそれは」



 俺の会心の作戦を提案したが、どうやら二人には不評のようだった。


「陣内君!30秒稼げる?」


 

 葉月が真面目な顔で、短く俺に聞いてきた。


「サリオ正面で、ラティは左で防げ!」

「はい、ご主人様」

「ほへ?ほへえ?」



 俺達はすぐに、葉月を守るように囲った。

 普段は優しい声音の彼女から、張りのある強い意志を感じる声だった。


 何か、有効な策があるのだろうと。


「葉月に瓦礫を近寄らせるな!サリオあと30秒は持たせろよ」

「ががががんばるですよです」


 どんな策かイチイチ聞いて、確認している暇なんて無いので、即座に俺は判断し従う事にした。


 ラティはより身を低く構え、両手の剣の柄を使って瓦礫を防ぐ。

 サリオは息を止めてるのか、口をきつく閉じ頬を膨らませながら結界を展開。

  

 俺は瓦礫を避ける訳にはいかなくなり、顔だけ槍で防ぎ、体を張って瓦礫を防ぐ事になった。


「っぐ!がぁ!んぐぅ!いって!」


 ラティとサリオはほぼノーダメージのなか、俺だけ瓦礫を喰らい続け。葉月は俺達を信頼しているのか、目を閉じて意識を集中している。



 恐ろしく長く感じる30秒。

 瓦礫を柄で叩き落とし続けているラティに瓦礫を喰らい続ける俺。

 

 そんな時にサリオが。


「ぷはぁ~!限界です」

「あ、馬鹿!」


 MP切れなのか息が続かなかったのか、サリオが結界を解除したのだ。

 そして当然、一番攻撃が激しい正面がガラ空きになり。


「ちぃいい!」


 俺は【加速】を発動させ、体と槍をフルで動かし葉月に飛んで来る瓦礫を防ぐ。


「ぎゃぼお!ジンナイ様」


 皮の鎧の所はまだ良かったが、防ぎ切れず額が割れ流血しだす。

 そしてその流血が目に入り視界が塞がる。


「ぎゃぼう!危ないです」



 その瞬間

 俺の顔のすぐ近くで何かが弾ける音がした。



 血で塞がれてない方の目で咄嗟に見ると、ラティが剣の刃も使って瓦礫を叩き落としていた。俺を守る為に、無理に動いたようだった。


 そしてそれと同時に。


「行きます!広域浄化魔法”ホーリーフィールド”!」


 音も無く、二十畳以上ある部屋に光る睡蓮のような花が咲き誇った。

 一瞬にして部屋の中が眩しいくらいに明るくなる。


「――ぎゃあああああぁぁ!」


 衛星のように飛んでいた瓦礫が一斉に床に落ち、その中央にいた女性の幽霊が、頭の中に響くような悲鳴をあげながら体を捩っている。



 だが、



「まだ消えてません!」


 俺はラティのその声に、弾けるように動き出した。


「ッシィ!」



 倒し切れていないようだった。まだこの世に未練があるのか、女性の幽霊は消えていなかった、だが 隙は出来たのだ、身を守るような瓦礫が無いのなら。


 俺は短い掛け声と共に、幽霊に木刀を突き刺した。

 実際に手ごたえがある訳ではないが、何かを貫いた感覚は感じた。


 そして、その感覚が正しかったかのように、幽霊が消えた。




 まるで木刀に吸い込まれる様にして‥‥


 ――!?

 いつもと違う?



 そこまで多い訳は無いが、いつもとは違う感じで幽霊を倒したことに疑問をもっていたが。


「ご主人様!薬品ポーションを!」

「ぎゃぼー!ホラーが終わったら次はスプラッターですよです」


 すぐにラティとサリオが駆け寄ってきた。


 左の指にしている回復の指輪が、熱を持ったように熱くなっている。

 どうやら、回復の指輪がフル稼働するほど怪我を負っていたようだった。

 アドレナリンでも分泌されているのか、痛みが薄かったのだ。


「陣内君!今すぐに回復魔法かけるね」


 葉月が薬品ポーションを取り出そうとしているラティを押しのけるようにして、俺に近寄って来ていた。そして俺に手をかざして回復魔法を掛けてくる。


「聖系回復魔法”ハイキュア”!」


 

 光が俺を包み、一気に痛みが引いていった。そして

 

「もう一度魔法掛けるね陣内君、ってあれ?もう治りきった?」



 ハーティにも聞いていたが、どうやら魔法が俺には効き過ぎるようで、もう一度回復魔法を唱えようとしていた葉月が、不思議がるように俺を覗きこんで来た。



 さすがに同級生の女の子に、何時までも顔を近くで覗き込まれるのは、何となく照れるので、誤魔化すために距離を取り使った魔法を尋ねる。


「なぁ葉月、さっきの光る花みたいなのが生えた魔法って?」

「さっきの魔法ね、あれは広い範囲を浄化する魔法だよ。一度弾かれたとしてもある程度咲き続けるから、効果あるかなって思ってね」


 「でもちょっと時間が掛かっちゃうんだ」と話しながら、葉月は申し訳無さそうに苦笑いをしていた。

 

 ――なるほど、相手の特性に合わせて魔法をチョイスいたのか、

 ただ単に強い魔法を使うとかじゃなく、考えて魔法をつかったのか。葉月は意外としっかりした勇者してんだな、



 俺は強WSウエポンスキルとかに頼りきりな、他のボンクラ勇者共とは違う葉月に感心していた。彼女はおっとり系だと決め付けていたが、どうやら違うようだった。


 彼女は、やるべき仕事はこなせる勇者になっていた。




 そしてその後は。 

 ラティに【索敵】をしてもらい、他に何か潜んで居ないかを調べてもらった。


 その結果、他に何も居ない事を確認後に廃屋を後にした。


  少し後味の悪い戦いだった。







          ◇   ◇   ◇   ◇   ◇








 その後

 時間がすでに午後の4時近くと言うこともあり、王女との面会は控えた。


 本来は王族や貴族と面会をするには、『先触れ』?とか言うのをして置かないといけないらしい。その辺りの知識は全く俺には無かったのだ。


 テレビのドラマとかで「アポは取ってありますか?」とか、よく見かけるソレの仲間なんだろうと理解しておいた。

 何かエッチな隠語かと勘違いしたのは秘密である。



 肝心な王女様との面会は、葉月が明日の10時前後辺りに、面会出来るように聞いてみるよ言うので、俺はそれでお願いし、今日泊まる宿を探すことにしたが。


「ねえねえ陣内君、城下町に泊まるなら私の家に来ない?」

「へ?」



 自分でも分るくらいに、間抜けな声で返事をしてしまった。

 きっと、いや多分かなり間抜な顔もしているだろう、それくらい動揺してしまった。まさか女の子に家来ないと言われるとは、微塵にも思って居なかったからだ。


 だが。



 ――油断するな俺!

 これは違う、きっとラティとサリオを泊めたらどうだって事だ、

 以前も遠征でラティとサリオは橘の持ち運び豪邸に泊めて貰ったことが、

 

 きっと今回もそれに違い無い!

 ほら、【狼人】と【ハーフエルフ】だから、宿で大変だろう?って事だ、

 

 うん、よし落ち着いた、

 二人の宿代も浮くし悪い案じゃないな、久々に俺も1人でいれるし、

 うむ、悪くないな!久々のソロプレイも



「葉月ありがとう、それなら二人をお願い出来るかな」

「え?二人?――っまって二人っきり?えええ!それは、えっと」


「あの、何か話が微妙に噛み合って無いようですが」

「ほへ?聖女様どうしたんです」



 何やら顔を真っ赤にしながら葉月が歯切れ悪く話を続けた。


「ええっと、ね、私は陣内君たち3人を誘ったんだけど、ね?」

「ああ、」



 どうやら俺は勘違いをしていたようだった。

 葉月は俺達3人を家に誘ったようなのだ、それなら尚のこと断る理由も‥‥



 ――いや、

 今はそこまで恨んではいないが、異世界に来た当初は思うところがあった。

 別に彼女だけが悪いって訳じゃないから言っても詮無いことなんだが、


 その葉月の家に泊まる?


 仮にも彼女は同級生、しかも容姿性格ともに良い、

 たぶん学校でミスコンとかあったら3年連続とかで一位取れそうな感じだ、


 そんな彼女の家に誘われるとは、謎の優越感があるが、

 う~ん、悩んだ時は味方に相談だな!


「ラティ、サリオ 葉月がこう言ってるけど、どうする?」


「悩むまでもないですよ!泊まるの一択ですよです!」

「あの、泊まっても宜しいかと、断るのも失礼ですし」


 パーティからの同意も得られ、ここはご厄介になことにする。


( なんか、泊まる大義名分を貰った気分だ、、)


 心の中で強い俺うちべんけいが「自分で決めれないとは、ヘタレめ」と罵るなか。


「葉月。今日一日お願い出来るかな」

「うん、大歓迎だよ陣内君」



 こうして意気揚々とした葉月に連れられ、彼女の家に向かった。

 因みに案内された葉月の家の隣には、塀と庭があるのに建物が無い敷地があった。何となく葉月に尋ねたところ、「風夏ちゃんの家があったんだよ」と教えてくれた。


 どうやらここに建っていた豪邸は、強化された【宝箱】に収納されたようだった。芝生には、前に豪邸が建っていた痕跡だけが残っている。



 葉月の与えられた家は、一言で言えば豪邸。

 余裕で二十人以上が住めそうな二階建ての建物だった。


 

 そんな豪邸の前で、葉月が振り向き俺達に話し掛けてくる。


「さ、入って陣内君」

「お、おぅ」



 少し気まずくもあり、照れる感じもありながら葉月の家に俺は上がっていった。 



読んで頂きありがとうございます


宜しければ感想などお待ちしております

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