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すこしシリアス回

 きっと男には冒険しないと、いけない時がある。

 

 何処かの誰かが言っていた、男は誰も彼もが冒険者だと。

  

 もし違いがあるとしたら、それは冒険をする機会チャンスがあるかないか。


 そしてその時に冒険をするという気概があるかどうかだ。



 ――ならば俺は行こう男の冒険かいだんのしたへ!



 


       


           ◇   ◇   ◇   ◇   ◇







 俺たちは急造パーティを組み、戦いの場に向かった。

 他のメンツラティとパーティを組んだままだと位置がバレる恐れがあるからと、熟練冒険者のガレオスさんからのアドバイスだった。


 流石は歴戦の戦士というべき助言、俺はそう感心した。



 戦場までの道程も、油断せずに目的地を周りに悟られないように、慎重にルートを選び進んだ。そのルートの情報はドライゼンから提供されたモノだった。


 流石は情報を重視する彼らしい道選びだった。露骨に戦場に向かうのではなく、麻雀の捨て牌のように迷彩を利かせたルートだった。


 一見すると、人気の酒場に向かうように見えて、人目の付かない死角の所で横道に入り目的の戦場に向かうのだった。


 ――っこれは!一流の狩人が尾行しても、きっと巻かれるだろう。



 しかも戦場まで進む間、ガレオスは【固有能力】の【索敵】と【直感】をフル稼働させて、油断することなくルートじょうほうだけに胡坐をかくようなこともしなかった。


 


 道を進む時に男三人が無言のままだと、それは怪しまれるのでは?と俺が提案をして、二人もそれに同意し、3人で戦場での陣形をどうするか相談しあった。


 ただ戦場かいだんしたの経験者がガレオスさんだけなので、戦術や陣形といったモノはガレオスさんの情報頼りになってしまった。



 前衛はガレオスさんで俺が中衛に、ドライゼンは後衛で後方警戒となった。中衛の仕事は臨機応変という難しいポジションだが、やりきってやろうと思った。


 それとガレオスさんに注意されたことは、目標を見極めることだと。タイミングや運の要素も大きいらしいが、何よりも見極めが重要だと教えてくれた。


 見極めて、そしてもっと高みへと駆け上がることも可能だと、その際には多少のお金がかかるが、銀貨50枚もあれば十分だとも教えてくれた。


 もし金貨を使う時があるとしたら、それは西領地の戦場にしておけと言われた。



 

 それから陣形や戦術の話を煮詰め、俺たちは戦場の前にやってきた。


 ここから俺たちの冒険が始まるのだ。

 だが、俺はここで警戒を最大限に引き上げた、この瞬間が一番危険だと理解しているからだ、二度と同じ轍を踏まない様に。



 その瞬間にガレオスさんも俺の警戒に気が付いたのか、周りを睨みつけるように見渡した。まだまだ素人のドライゼンは、何事か?とキョロキョロしている。

 まだ経験が足りてないドライゼンなのだから、仕方ないことだろう。



 そして周りを見渡していたガレオスが、ハンドサインで安全を伝えてくる。



 俺たちは警戒をし続けたまま、まばらに人が歩いている道の中、店が閉まっている建物の横にある、地下に続いている階段へ近づいた。


 まるで新宿辺りにあるような小さな雑居ビルを思いだす。


 

 そんな元居た日本の建物のことを思い出しながら、階段に足を踏み込む瞬間!



 隣に亜麻色の狼がいた。



 

 階段を下りていたガレオスさんも遅れながら振り向き、驚愕に目を見開き、俺の後ろにいたドライゼンは、情けなくも尻餅を付いていた。



 確かに驚くのは仕方ないことだろう、あれだけ警戒をしていたのだ。

 それがあっさりと間合いに入られ、完全に虚をつかれたのだから。



 俺はガレオスさんとドライゼンに何も言わず、だた目で「あとは任せた」と伝え、その場を離れることにした。



 端的に言えば、俺は冒険が出来なかったのである。



 俺は忘れていたのである。

 冒険には危険が伴うと言うことを、そんな誰でも知っていることを失念していたのであった。そして危険と言うものは、いつの世も冒険者に牙を剥くモノだった。








        しっぱいしたしっぱいしたしっぱいしたしっぱいした









 俺はラティに無言半目のジト目で”帰りましょう、ご主人様”と伝えられ、縦に並んで宿屋まで帰った。


 宿に戻ると入り口付近の食堂兼酒場にいた冒険者達が、生暖かい目で俺を迎えた。どうやら色々と察したらしい。


 それから二階の部屋に戻ると、サリオはベットの上で既に寝ており、どうやらこれからラティからの説教が始まる雰囲気だった。



 そして静かな動きでラティが床を指差す。

 これはきっと床で正座と言うことだろうと思い、正座をしようとすると。




「土下座をお願いします、ご主人様」

「へ?なんで!!」



 正座を飛び越えいきなりの土下座要求だった。

 あまりの突飛でもない要求に驚き、思わず訳を聞いてしまうと――


「歴代の勇者様達は、反省や謝罪などの時に真っ先にドゲザをしたとか」


 ――っおぃぃぃい!歴代勇者共は何やってんだー!

 反省や謝罪の初手に土下座って、どんだけ追い詰められてんだよ!?

 一体なにをやらかしてたんだよ!全く想像もつか、、な‥‥‥


( こんな時だったんだろうな、 )




 ――仕方ない!ここは素直に罰を受けよう!

 口には出せないけど、こうやって階段の件をラティに咎められるのは、


 なんだか嬉しいしな‥‥




 素直にお叱りを受ける覚悟を決めて。

 潔い土下座を行ったのだ。



 昔何かで聞いたこと”お喋りは男の価値を下げる”

 だから、ここは一切言い訳をせずに、すべてを甘んじて受けようと思っていると。          

 


「・・・・・・・」

「?」


 ラティからお叱りの言葉が来なかったのだ。



 土下座をしていた頭を上げて、ラティの顔を覗き見てみると、非常に困った顔をしていたのであった。まるで何を言ったら良いのか、わからないといった表情だった。



 その顔を見て真っ先に浮んだのは、ラティは俺に何をどう叱ったらよいのだろうか?、それを迷っているように見えた。


 実際に俺は何を叱られるのだろうかと言う疑問も‥‥

 



 そんな感じに、お互いに無言のまま小一時間ほど経過した辺りで、寝ていたサリオが目を覚まし。


「お二人とも何をしてるんですです?」



 サリオのツッコミでラティの説教タイムは終了した。


 






             閑話休題あしがしびれた 








 次の日は、朝一の馬車で城下町に向かう。


 行きの馬車の中で、それとなく昨日何故俺の位置が分かったのかラティに訊ねたところ。

 返ってきた返答は、「勘ですかねぇ」の一言だった。




 北の遠征に比べれば楽なもので、数時間もすると城下町に到着した。

 ただ、以前よりも魔物を見かける回数が増えていた気がした。



 到着してからは、そのまま直接城に向かった。

 

 今回は貯まっている、勇者支援政策の定期的に支給される金貨を受け取るだけなので、受け取ったらすぐに【ルリガミンの町】に戻る予定だった。


 

 今現在昼の12時前のためか、人通りが少し多いようだった。

 人が多いと言うことは‥‥



 ラティとサリオに不躾な視線が多く突き刺さるのだ。



 この城下町では一部を除き、やはり狼人とハーフエルフに対しての差別的な認識は、まだ強く残っているようだった。二人の為にも早く【ルリガミンの町】に帰りたいものだと思っていると。


「おい、あの強姦魔まだ生きてるのかよ!」

「おれは野タレ死んだって聞いたぞ?」


 ――早く帰りたい、、

 まだ俺の噂話残ってんのかよ!?誰か意図的に残してないか?コレ‥‥‥




 城下町は以前よりも風当たりが強くなっているような気がした。

 それとも城に続く大通りだから、余計に人目に付くのだろうか、絡みつくような軽蔑する視線に晒されながら城を目指した。



 

 それから城の正門前に到着すると、俺は戸惑ってしまった。

 城の正門は勇者通りと呼ばれる、横幅20メートル近い大通りを受け止めるように構えていた。そして大人数の兵士達が警備に就いている。



 以前に一度だけ、王女にお礼が言いたいと来たことはあったが、あの時はラティを助けられた感謝の気持ちがいっぱいで、勢いで来れたが‥‥。


「王女に会わせてください、って言っても会わせてくれる気がしない、」

「ぎゃぼう、ジンナイ様ヘタレです」



 サリオの言うとおり、若干尻込みしてしまった。

 大人数の大人がいる場所に、呼ばれてもいないのに行くと言うのは、気後れするものなのだ、これが防衛戦などだったら、参加者と言う大義名分があるのだが。 



 ――しかし、ここで怯む訳にいかない!

 俺は金貨30枚を毟り取りに来たのだ、そうしないと次の宿代も、、





 結果、、。


 意を決して、門の警備をしていた兵士に、勇者支援の件を話し王女の面会を求めたが、『宰相のギームル様から、そのようなお話は聞いてません』とか『ゆうしゃ、ジンナイ?』などと、俺はいないモノとされていたのだ。


 しかも話している最中に、そいつ等はラティとサリオに不快な視線をぶつけて来ていた。王族や貴族に近いほど、差別的な認識は強まるのだった。



 どうしたら良いかと、一度正門前から離れて悩んでいると、、。


「あれぇ?陣内君?」

「へ?」



 ここ城下町に来てから、敵意すら混じっているような声ばかり聞いていた中で、好意すら感じるような友好的な声音が聴こえて来たのだ。


「珍しいね陣内君がお城に来るなんて」

「葉月、、」



 正門の中から、勇者葉月はづきが姿を現したのだった。

 前に見かけた時より、装備品のグレードが上がっているようにも見えた。前のよりも刺繍が豪勢になっている法衣と、付加魔法品アクセサリーと両手杖。



 前よりも勇者支援政策で、装備品が充実してるのかも知れなかった。



 そんな葉月を見ていると、ある頼みごとが頭に閃いた。

 彼女を通してなら、王女に面会が出来るのではないかと。一介の冒険者である俺と違って、聖女と名高いらしい葉月なら、王女との面会も‥‥。



 ――勇者連中に何かを頼むのは癪に障るが、

 葉月なら問題無いな、



 

 彼女には色々と世話になったこともあり、他の勇者共には抱く、怒りの感情が全く湧かなくなったのだ。だから少し素直に葉月に、、

 


「葉月。ちょっと時間あるかな?相談したい事があるんだけど、」

「え?ええ!うんあるよ、あるある」



 俺は相手に不快感を与えないように、俺史上全力で愛想良く話し掛けてみた。

 その甲斐があったのか、葉月は快く了承してくれたのだった。さすがに正門前で立ち話もなんなので、近場にある、座って話の出来そうな店に入ることにした。



 ただ、気になったのが

 機嫌良くついてくる葉月とは逆に、ラティが少し機嫌悪そうにしていた。


 

 どうしたんだろう?と考えながら、俺達4人は近くのお洒落な店に向かった。 

         

読んで頂きありがとうございますー


宜しければ感想などお待ちしております

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[一言] ラティは自分が奴隷であり、それもかなり優遇してもらってるってこと忘れてるのでは?って思うくらいの態度ですね。 土下座を要求って……。 嫉妬してるっていうのは分かるけど、それにしてもやり過ぎな…
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