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戦闘(

ラティと部屋を共にした朝(床上で別々に)

 薄暗い部屋に硬い床、横にそびえるは柔らかく寝やすそうなベッド。

 

(そういや昨日は床で寝たんだな) 


 まだ早朝のために部屋の中は薄暗かった。

 昨夜はラティが魔法で明かりを作ってくれたが、今はもうその効果が切れていた。

 

 硬い床で二度寝をする気が起きず、俺はこのまま起床することにした。


 起きてベッドの反対側を見ると、ラティはまだ眠ったままであり、俺は床で寝てるラティをそっと抱きかかえ、柔らかいベッドに彼女を寝かす。


 膝を軽く抱え丸まって寝ているラティをそのまま部屋に残し、俺は外の空気を吸いに宿の外へと出ることにした。


――寝姿可愛かったな……

 過去に襲った奴らの気持ちがわからんでも無いか、

 いや! 十一才に手を出すのはアウトだろ!



 俺は頭の中で肯定と否定を繰り返し、宿の外に出て早朝独特の空気を肺に取り込む。

 少しひんやりとした空気を吸い込み、ハッキリと覚めてきた頭で俺は今後の予定を考えた。

 

 このまま腐っていても仕方ない。

 何とか自立する方法を見つけなくてはならない。


 だが、ひとり放り出されたこの異世界では、クソガキ程度の自分に何が出来るかのまったく分からない。

 希望があるとするならば、もしかすると勇者のように戦えるかもしれないという可能性。


 チラッと説明で聞いた恩恵の効果、あれが自身にも発揮するのであれば、俺は冒険者として生きていけるだろう。


――あとは現状の把握だろうな、

 いきなり何かあるかも知れない世界だし、

 油断せずに注意しないと。あとは……。

 


 『アイツらを見返してやりたい』という気持ち。

 小さい考えだとは思う。だがやはり、理不尽に張り付けられた劣等感が俺を苛んでいる。

 見返してやりたいと思う。 


 暫くしてから部屋に戻ると、ラティが革の鎧を装備しようとしていたのが目に入る。

 肌が見えてる訳ではないが、何となく気まずかったので扉を閉めて部屋を出た。


 (次からノックをしよう……今しよう)


 暫くしてから扉を叩き、俺は部屋の中に声を掛ける。


「そろそろ入っても平気でしょうか?」

「あの、はい、装備終わりましたので、どうぞお入り下さいご主人様」


「んじゃ、俺も準備するから、ラティは下で待ってて」

「はい、分かりましたご主人様」


 宿出てから、まずラティの装備を購入しに武器屋に行く事にした。

 行き先の武器屋は、昔からラティが行くことのあった武器屋で、その店ではラティの扱えるショートソードと、やや肉厚のダガーの二本を購入。

 何回も来ている為か、品を選ぶのが慣れている印象だった。


 残りのお金は銀貨六枚と銅貨がちょっと、今日稼ぎが無ければ詰みであり、野宿も視野に入れる状況だったが、道の途中でホットドック屋を発見。

 無駄使いは駄目だと理解はしているが、しかし朝食は大事。

 俺は銅貨四十枚で二個購入、やはり食文化は歴代勇者達の影響を大きく受けていると実感しつつ、購入した物をラティに一つ渡す。


「ラティ一個どうぞ。これを食べたら城下町の外に行こう」

「あの、わたしが頂いてもよろしいのでしょうか?」


「うん、だって朝ごはんまだだったよね。苦手じゃなければ食べて、余らせても勿体無いし」

「あの、ありがとうございますご主人様。奴隷は基本的に朝食が無いものですので、とても嬉しいです」 


 凛とした立ち姿で綺麗なお辞儀をするラティ、そして素直に嬉しそうな顔を見せる。


 ――あ、初めて笑顔を見たかも、

 やっぱラティは可愛いな、これは銅貨二十枚以上の価値はある、

 これは決して無駄使いじゃないなっ、



 また明日も買ってあげようと心に誓い、俺はラティと城下町の外へと向かった。

 大したチェックも受けず、俺とラティは正門から外へと出れた。


「ラティ、戦闘前にちょっと聞きたいんだけど、一応得意武器を教えてくれるかな?」

「はい、扱えるのは剣、短剣、槍、弓、双剣、魔剣の六種類ですねぇ」


「ん? 魔剣ってのが気になるな。魔剣てどんなの? 呪われてるとか禍々しいとかのそういう剣?」

「あの、一振りだけなら見た事はあるのですが、それ以外は見たことがなくて……」


「なるほど、それじゃ、その見たことがある魔剣ってどんなのだったのかな?」 

 俺は本当に何気なく質問したつもりだった。

 だが、俺が尋ねたことに対してラティは、困惑と寂しさを混ぜたような、そんな不安そうな顔を見せたのだ。


 それが何なのかは解らないが、この質問はラティにとって尋ねられたくない質問なのだと察し、俺はすぐにそれを取り下げた。


「ああ、いいよラティ。うん、そんな知りたいってことじゃないしね」

「あの……すいません、ご主人様……」


(あ、しゅんと縮こまるラティも可愛い)


 少々不謹慎な感想を浮かべつつ、俺は次の話に移った。


「えっと、んじゃぁ次はラティの【固有能力】の効果を教えてよ。詳しい説明とか受けてなくて」

「あの、【固有能力】ですね? ご主人様」


 ラティは俺に、自身の【固有能力】のことを教えてくれる。

【鑑定】は、人や物を詳しく調べる事が出来る能力。(発動には両手の指で輪を作る必要がある)

【体術】は、体をスムーズに動かせるセンス。(格闘が強くなるとかではない、純粋な体の動きのみ)

【駆技】は、地に足が着いている状態なら、どんな激しい動きも可能。(滑って転ぶなどの転倒をしなくなる)

【索敵】は、敵意や害意などの察知、それと魔物の位置を把握出来る。(技術や魔法などを使って気配を消されると感知できない)

【天翔】は、空中を足場にして翔ける事が出来る。(二、三歩くらいしか翔けれない。発動時は、SPを消費する)

【蒼狼】は効果不明。(他に所持者がいない為に、効果検証不足により効果不明)


「――と、いう感じですねぇ」


 俺はラティにざっくりと説明を受けた。

 そしてラティ自身も、【蒼狼】には不思議がっていた。その次に、ラティがある逸話を俺に教えてくれる。


「そういえば過去に、【天翔】を極めた人がいたらしく、まるで階段を登るように空中を駆け上がったそうです」

「それちょっと見てみたいな! ラティも出来るようになったら、それをやって見せてよ」


(これは是非見てみたい!)


「あの、わたしには無理ですねぇ。一、二歩くらいが今は限界です、お見せ出来ず申し訳御座いません」

「ああっ、気にしないで、ちょっと聞いてみただけだから。よし!そろそろ一狩りに行こうか」


「はい、ご主人様。では、魔物の気配がする方にご案内します」


  

 ラティを先頭に移動を開始した。

 【体術】と【駆技】の恩恵なのか、彼女の歩き方がとても綺麗だった。

 重心がブレずに腰もリズム良く左右に動き、それにつられて薄暗い亜麻色の尻尾がふりふりと揺れる。


 (尻尾がふりふり、尻尾ふりふり……ちょっと掴んで……)


「…………」

「あ……」


 ラティが俺のことを無言半目(ジト目)で睨んでいた。

 どうやら【索敵】の効果はバッチリな様子。

 




         閑話休題(残念)

 




 それから二、三分も歩くとラティが魔物を発見した。

 そこに居たのは一度戦った事のある一匹の緑色のブタ。


「あの、ご主人様、魔物がいましたミドリブタです。強さも【鑑定】で調べましたが楽な相手のようです」


 ラティは俺に言われるまでもなく【鑑定】でしっかりと強さを調べ、それを俺に教えてくれた。


 (なんか慣れているな……)


「ラティ、魔物のレベルってのも判る? あ、魔物にもレベルってあるよね?」

「はい、この魔物のレベルは3ですねぇ」


――やっぱり魔物にもレベルあるんだな、

 俺にはレベルが無いのに……


 

 そして行われた戦闘は楽なモノだった。

 ラティが魔物の注意を引き付け、その彼女に釣られる形で魔物は無防備な横っ腹を俺に晒したのだ。

 ドッスっと重い手応えと共に、俺の握る槍が深く突き刺さり、貫かれた魔物の動きが止まる。

 すると――


「え!? 魔物が消えた? いや霧に?」

「あの、魔物は倒されると、今みたいに黒い霧になって散っていきます。そしてその後は大地に還るのです」


 俺に貫かれたブタのような魔物は、ブワッと黒い霧になり、そして霧散して消えていった。


 「はぁ~、黒い霧になるのか……あ、いま言った大地に還るってのは?」


 ラティの言い回しが気になり、俺はそれを彼女に尋ねてみると、少し不思議そうな表情でそれを説明をしてくれた。


 魔物とは、大地から滲み出た力が集まって実体化したモノらしい。

 そしてその魔物を倒すということは、大地から滲み出たモノを大地に還すことになるのだと。


 もう少し詳しく言うと、魔物を倒すことによって大地に力が戻り、魔物を倒した周辺ではその恩恵によって作物などがよく育つと、ラティが俺にそう教えてくれた。

 

 俺はそれを聞いて思案する。

 

――魔物討伐が田畑を助ける事になるのか?

 逆に言うと、魔物が多いと田畑が枯れたりするのかな?



 魔物についてラティに話を聞いていたが、魔物が消えた場所に3センチ位の半透明で茶色い角がどがったグミみたいな物が落ちている事に気が付いた。


「ラティ、この茶色いのってなんだろう?」


 俺はそれを拾ってラティに見せてみる。


 (あ、これ糞とかじゃないよね、無警戒で拾っちゃったよ)


「あの、それは【大地の欠片】ですねぇ、魔物を倒すと稀に落とすみたいです。確か大地の力の結晶だとか。それらはポーション等の薬品に使われる材料です。ギルドに持っていけば良いお値段で買取りをしてくれますねぇ」


 ラティは俺に大地の欠片の説明をしてくれた。こういった知識の無い自分には、彼女の知識はとても有難い。


 (ラティが居てくれてマジで良かった……)

 

 俺はラティを感謝の意味を込めて見つめていると、彼女が動きを見せた。


「ご主人様! あちらにまたミドリブタが。レベルは2です」

「あ、おし! この調子でガンガン狩って行こう! そして大地の欠片をがっぽがっぽと」


「あの、ご主人様。【大地の欠片】はそんなに出ませんので……」


 軽く水を差されてしまった。

 その後、約3時間ほど魔物を狩り続けた。


 ミドリブタを中心に、クマみたいな魔物の【オオケダマ】や、中型犬ぐらいの大きさをしたトカゲのような魔物の、【地這い】を倒して回った。

 さすがに3時間も動き回れば疲れてきたので、俺は一度休憩を取る事を提案し、休憩をする為にどこか丁度良い場所はないか辺りを見渡す。


「ラティ、ちょっと休憩をしようか。どこか落ち着ける場所は……」

「ご主人様、少し先に綺麗な川がありますので、そちらで休憩致しましょう。水も飲めますので」


――ラティさんが察し良くて優秀過ぎる! 

 つか、飲み物の事を忘れてたよ……アホか俺は。



 その後、案内された川原で休憩を取りながら、俺はステータスの確認を行う。


 名前 陣内 陽一 

 職業 ゆうしゃ


【力のつよさ】7 

【すばやさ】9 

【身の固さ】7

【固有能力】加速(未開放)

【パーティ】ラティ8


 

 名前 ラティ

【職業】奴隷(赤)(陣内陽一) 

【レベル】8

【SP】67/105 

【MP】72/120

【STR】17 

【DEX】22 

【VIT】16 

【AGI】32

【INT】12 

【MND】19 

【CHR】28

【固有能力】【鑑定】【体術】【駆技】【索敵】【天翔】【蒼狼】

【魔法】雷系 風系 火系

【パーティ】陣内陽一



 自分の味気ないステータスを眺めつつ、諦めと落胆のため息をついていると、隣でラティが非常に挙動不審になっていた。


 出会ってからまだ一日だけだが、それでも彼女らしくないと、そう思える程に肩が震えている。


「えっと、ラティ? どうかしたのか?」

「あ、あの、レベルが2も上がっているのです。先程の倒した魔物の数にしてはレベルが上がるのが早過ぎでして……これは一体全体どうしたのかと。しかもステータスの伸びまで凄い事に……」


 (あ、ヤバイ。オロオロしてるラティが可愛すぎる!)


 唇の形が獣人としての特徴なのか、それとも彼女自身の癖なのかほんの少しだけ隙間が開いていて、そこから『フシュー!』と空気を漏らしながら慌てていた。


 ――おおぅ、

 普段は冷静そうなのに、一度慌てると凄いなこの子、

 なんかオロオロしまくりだぞ、



 内心ではニヤニヤしつつ、出来るだけ真面目さを装い、恩恵のタネ明かしをする。


「多分それは、【ゆうしゃ】の恩恵(ギフト)の効果だと思うよ」

「ゆうしゃの……ですか?」


「ハズレ勇者だけど、一応は召喚されて来たから」

「あの、恩恵とは?」


 ラティはオロオロしていた状態を脱し、今は真摯な表情で俺にそれを尋ねてきた。


「勇者の仲間、パーティ? には普段の数倍の経験値と、通常よりも大きくステータスが伸びるみたいなんだ」

「そういえば確かに今朝方、ご主人様からパーティの申請が来ておりましたねぇ」


 (ん? いつの間にパーティ申請なんて出来たんだ俺? )

 

 ラティにそう言われ、俺はステータスプレートを再確認してみると、確かにパーティとしてラティの名が刻まれていた。


「にわかに信じがたいお話ですが、実際にレベルとステータスが上がっておりますねぇ」


 俺の話をなんとか受け入れ、落ち着きを取り戻したラティ。だけどまだ口元は、『ふしゅーふしゅー』と小さく息が漏れていた。


 (あ、可愛い、ちょっと唇を摘みたくなっ―― )


「…………」

「うっ」


 気が付くとラティさんが、俺を無言半目(疑いの目)で見つめていた。

 それはまるで、『じ~~』っという擬音でも聞こえて来そうな程。


 勘がとても鋭い子なのか、まるで俺の行動を先読みしているかのようだった。

 俺はなんとなく気まずくなり、なんとか上手く誤魔化そうと逡巡していると、突然彼女が別の方向を睨み、意識を集中し始めた。


「ん? ラティ……?」

「川を下った先で、誰かが魔物に襲われてます!」


 ラティが突然そう告げ、俺は彼女が示す方へと視線を向けると、遠くの方で馬車が何かに襲われていた。


 助けに行くべきか一瞬迷う。

 今から行って間に合うかどうか、襲っているのは魔物なのか、それを自分が対処出来るのだろうか? ――と”走りながら”考えていた。


――体を動かしながら考えろ! 

 まずは敵の強さを調べるの先か? だけど……



「ラティ! 【鑑定】いけるか?」

「はい、いま調べます!」


 咄嗟に駆け出したにもかかわらずラティは俺について来ていた。


「襲ってる相手は魔物です。レベル11の【岩トカゲ】! イケます」

「ラティ! 先に行ってくれ、お前の方が足が速い」


 ラティは頷き一つで返事をし、先行して魔物の注意を引き付けに走った。

 馬車を襲っていたのは茶色の太ったトカゲ、体長二メートル程、二本足で歩く頭でっかちなT・レックスの様な姿。


 走り勢いを乗せた一撃を、ラティが魔物の横っ腹に突き刺す。

 横っ腹を刺された魔物が、反射的に尻尾を振り回し反撃に出たが、ラティは即座に【駆技】を駆使して倒れこむ様な低い体勢で避ける。


「ご主人様! わたしが隙を作ります」


 ラティは回転をしながら勢いを付けて飛び上がり、岩トカゲの顔面をザックリと斬りつける。

 しかしそれは、相手の目の前に飛び上がった形。空中で身動きの取れないラティに対し、岩トカゲが噛みつきにいく。


 先行したラティを追う形になっていた為、俺は走りながらそれを見ていた。

 いま俺がいる位置では彼女を助けることは出来ない。距離がまだある。


「――ッラティ‼」

 

 俺は思わず叫んでいた。

 だがラティは、空中を蹴るようにして【天翔】(あまかけ)を駆使し、軽々と顎を避け――俺に合図を送ってくる。


「今ですっ、首元を!」


 岩トカゲはラティを噛みつこうとした為、首を伸ばして首筋を無防備に晒していた。

 

 俺はその首筋に勢いをつけて槍を突き立てる。


 ズズッと槍が深く刺さる。

 突き刺された魔物は、ビクッと大きく痙攣を起こした後、黒い霧となって霧散した。

 そしてその場には、少し大きめの【大地の欠片】が一つ落下した。


「ふぅ、今のはかなりヒヤヒヤしたよラティ、あれは心臓に悪すぎる」

 

 冗談ではなく実際に心臓に悪かった。

 今日ラティは常に前に出て戦っていた。魔物の攻撃を自身に向けて誘発させ、首や横腹などを攻撃し易いように誘導して戦ってくれていた。

 まだ戦い慣れていない俺にとってはそれは、とても戦い易いモノであった。


 一狩り系のゲームで言うならば、それは接待プレイのような戦闘。

 少し自分が情けなく感じてしまう。


「あの、ご主人様がチャンスを逃さずに一突きで倒してくれたお蔭で、危険な追撃も無く助かりました。ありがとうございますご主人様」

「いや、ラティのお陰だから……」


――しかもここで(おれ)を立ててくれるか、

 本当に凄いなこの子……


 

 トカゲ型の魔物を倒し、一段落したところで襲われていた馬車の方へ目を向ける。

 馬車は特に損傷などは無く、乗っていた人も無事な様子だった。襲われた時に咄嗟に荷台に逃げ込んだ様子で、今は荷台から顔を出している。


「あ、ありがとうございます、危ない所を助かりました」


 俺と同じぐらいの身長で、青い髪の爽やかそうな青年が馬車の荷台から降りて感謝の御礼を言ってきた。

 命が助かった為か、必要以上に目を輝かせている。


 その青年は僅かに頬も染めながら、ラティの方へとやってくる

 俺は出来るだけ然りげなく、自然体な感じでラティの前に立ち、近寄ってくる男を無視する形でラティに声をかける。


「あ~~ラティ、今日はもう城下町に帰ろうか?」

「あの……はい、わかりました……?」


 ラティは少し不思議そうな表情をしつつも、素直に返事をして頷き俺と一緒に歩き出す。

 そしてこのまま、ごく自然に歩き去ろうとしたが……


「ま、ま待ってください。城下町に戻るのでしたら、ご一緒に馬車に乗りませんか? 私は城下町で宿屋をやっているルードと申します。もし宜しければ助けて頂いた御礼に、宿の部屋一晩ご用意いしますっ」


 何となく、何となく理由は特に無いが断ってやろうかと思った。

 だが現状の懐具合を考えて、今はお誘いに乗る事にした。


「助かります、では一晩だけ(・・・・)お世話になります」 


 俺はラティを背に庇う形で相手に返事をした。

 ルードは笑顔と困惑を混ぜた、そんな器用な笑顔を浮かべ俺達を見つめ。


「で、では、馬車にお乗り下さい」 


 ルードは若干頬を引きつらせながら、俺達に馬車の荷台に乗るように勧めてきた。

 それに従い俺はラティと二人で荷台に乗り、そのまま揺られながら城下町の帰路に着くこととなった。


 因みに馬車の荷台には、米の入った壺が積み込まれていた。

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[一言] 主人公がキモ~イ。追い出されたばっかのにずっと発情してるよ。
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