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新装備高い

 魔石を取りに宿に戻った。


 その魔石は以前ららんさんの依頼で、素材用の鉱石を取りに行った時に出会った、幽霊のイリスさんが宿っていた魔石である。


 長期で借りている部屋なので、邪魔になる物は部屋にそのまま保管していたのだ。        

( 勇者みたいに【宝箱】があれば楽なんだが、)


 何となく売らずに一応取って置いた魔石だったのだ。


「あの、ご主人様これって、あの時のですねぇ」 

「一応取って置いたんだよね、イリスさんの形見っぽくて‥‥」


( それを使っちゃうんだけどね、)



 

 イリスの魔石を持ってラティとららんさんの店に再び向う。  

 形見のような物を使うことは少し気が引けたが、隣のラティを護る為の付加魔法品アクセサリーを作れるのなら、迷うことはなかった。


 イリスは9代目勇者の後衛役だったが、最後まで勇者を助ける為に尽力し、そして最後に力尽きてしまったのだった。

 

 だから‥‥


 ――イリスさん使わせて頂きます、

 大切な人を護る為なら許してくれますよね、、




 俺は心の中でイリスに願った。







            ◇   ◇   ◇   ◇   ◇






 

 それから、ららんさんの店に辿り着いた。

 その店内では、サリオがローブの障壁を展開させて何かをしているようだっだ。


 一応驚かせないように、注意深くサリオ達に声を掛ける。


「え~と、今戻りました、でサリオは何してるんです?」

「あ、じんないさん。丁度今さりおちゃんが障壁の検証をしてるんよ、MPを100使ってどれくらいの時間を障壁張っていられるかってね」


 サリオは何気にしっかりとした検証をしていた。

 MP消費量をしっかりと把握しておくのは、魔法使いとっては大事なことだから、これはとても良い検証だろうと思い、他にも検証しておいた方が良いモノがないか考えた。


 例えば、結界発動させたままで魔法も使えるかとか。



 そんな事を考えていると、サリオが障壁を解除した。

 障壁は見た目がシャボン玉っぽいので、弾けるように消えるのかと思っていたら、すっと完全に透明になって消えていった。


「ジンナイ様お帰りです、MP確認しながらだったので返事できなかったです」

「なるほど、それでどんな感じだったMP消費量って」


「ぎゃぼう、それが結構MP使うのです、MP100使って心の中で数を数えて34回でした」



 正確な時間は計れていなかったが、どうやら1分は持たない感じだろう。魔物の群れに襲われて結界内に篭城といった策は使えなそうであった。


 障壁の大きさはサリオのサイズに合わせているのか、直径120㌢ほどで、サリオに近くに居れば球状の障壁の中にいることも出来た。

 

  

 そして検証中にひとつ事故が起きた。




 障壁の強度を調べる為に、木刀で叩いてみると、なんと一発で障壁を消し飛ばしたのだ。槍でも突き刺してもみたが、全くビクともしなかったのに、木刀は容易く障壁を消し飛ばしたのである。


 ららんさんの見立てだと、この木刀は魔法を打ち消す効果もあるかも知れないと。まさかの魔法殺しマジックキラーの木刀だったのである。


 ――もしかすると、

 サリオを庇って巨大な堀に落ちた時、この木刀のお陰で脇腹だけで済んだのかもな、8人の魔法の斉射をあの程度で済んだんだから、


( 一度死にかかったけどな、)



 それから、しばらくして検証を終えた。


 俺はららんさんに、ローブと隠蔽察知の付加魔法品アクセサリーの代金の金貨26枚を支払い、ローブと碧色の石が付いた指輪を受け取った。

 


 次に、イリスさんの魔石をららんさんに手渡すと‥‥


「――っ!じんないさん、これマジですか?」

「へ?」


 始めて見るららんさんの真剣な表情だった。

 普段の愛らしい目を鋭く細め、人の良さそうな弧を描く眉を眉間に寄せて、吐き出すように言葉を紡いだ。


「じんないさん、この魔石の価値は安く見積もっても金貨三千枚。そしてこれで付加魔法品アクセサリーを作れば、きっと、いや!必ず世界最高クラスの護符が出来るよ!」


 本当にコレで作っていいのかい?と、ららんさんが目で俺に聞いてくる。


「勿論です!」


 ――悩む必要もない!

 これで心配事が解消されるのだから、ラティを護れる、


「即答ですかい、いあ参ったなぁ、でも じんないさんらしいですのぉ」



 ららんさんは先程の真剣な表情をいつもの『にしし』な表情に戻し、「任せておくれ」と了承してくれた。

( 案外これで付加魔法品アクセサリーを作りたかったのかもな )



 だが後ろでは‥‥


「ぎゃっっぼぉー!小さい領地なら買えそうなお値段ですよです!」

「あの、あの、ご主人様?」


 

 サリオはいま自分が着ているローブを見ながら「高級ローブが霞んで見えるです」とつぶやき、ラティは珍しく手と表情をわたわたさせていた。


 まず二人を落ち着かせてから、護符製作の代金金貨20枚を支払った。



 しかし、その時にららんさんが新たな爆弾を落とす。


「あ!そうそう、じんないさんの魔防付加魔法品アクセサリーだけど、代金は金貨30枚ね」

「へ?」



 防衛戦の報酬がすべて消える処か、足りない事態になった。

 このままだと金貨が5枚ほど足りないのだ。思わずサリオのローブをチラ見する程の、緊急事態になっていた。


( おい!何でローブの結界発動させてんだよ! )


 サリオは危機を感じたのか、ローブで障壁を張っていた。

 そんなサリオを横目で見ながら、ららんさんが俺に話し掛けてくる


「じんないさん、これでも安くしてるんよ~本来は40枚やし」


 ――っう!確かに杖買ったらついでに安くしてくれる言ってたな、

 それでもこの値段か、、たっかいな~



 金貨三千枚から金貨5枚の激しい落差だった。


 今すぐにお金が無くなると言う訳ではないが、再び金策が急務になった。

 だが、前みたいに都合良く防衛戦がまた行われる訳がないので。



「よし、中央の城下町に明日行こう」

「ほへ?」

「‥‥‥」


 ――今まで避けていたけど仕方ない、

 王女に会って勇者支援政策で貰える、月5枚の金貨を受け取りにいくか、

 もしかしたら、今までの分を纏めて貰えるかも知れないしなぁ、



 半年分の金貨30枚を受け取るために城下町に行く事を決断した。

 街に行くのは珍しい事ではないが、城に行くのは滅多にないことだ。


 ――出来れば二度と行きたくない場所だな、

 俺にとってあの場所は、完全にトラウマの場となっているからな、



 俺の心情を察してなのか、ラティが俯き気味に心配そうに視線を俺に向けていた。          

 そしてなんとサリオまでも、不安そうに顔をして‥‥


 ――いや、コレ違う!

 コイツは自分が城下町で嫌な事が合った時のことを思い出してるだけだ、


( 騙されるところだった、、)



 サリオは【ルリガミンの町】が居心地良いのか、前よりも城下町に行きたがらなくなっていた。そんな二人を眺めていると、ららんさんが「おや?」と何かに気が付き、ラティの方を見ながら話し掛けてた。



「ラチちゃんの鎧、なんか歪んでない?止め具がおかしいんかな?」

「ああ‥‥」


 ラティの皮の鎧は一度、ジャアの野郎に止め具辺りを切り裂かれたのだ、騒動後に回収して応急処置で直したが、やはり無理があったのか歪んでいるようだった。


 ――ラティは金銭的なモノはあまり言わないからな、

 本人はまだ使えますってことなんだろうけど、やっぱ鎧も新調するか、、



 そんな風に考えに耽っていると、ららんさんが話を続ける。


「どうせなら、新しい鎧買って付加魔法品アクセサリー化でもする?」 

「――っ!それってサリオのローブみたいに障壁を張れるように?」


「いあ、あのローブはさりおちゃんのMP量と魔力調節があるから成り立つのよ。だから作ろうと思ってるのは、MPを吸って防御力を高める鎧やね」


 

 それから、ららんさんの説明聞いた

 内容は、鎧を付加魔法品アクセサリー化して、装備した装着者のMPを少しづつ吸い続けて、皮の鎧だろうと鋼鉄の鎧よりも強固な強度を得られると。


 この異世界では、貴族などが人前に出る時に、その手の装備を暗殺防止ように着ていると、そんな話もついでに教えてくれた。

 もしかすると、王女の着ていたドレスもそうだったのかも知れない。



 そして、当然ららんさんに聞かなくてはいけない事があって。


「でも、お高いんでしょう?」

「ズバリ金貨20枚で作ってあげるよ」



 この瞬間に

 俺は中央の城に行って半年分の金貨を毟り取ることを決意した。


 


 それから、ららんさんにはラティの鎧も注文して、店を後にした。

 店を出る頃には、すでに5時近くになっており、城下町行きの馬車はもう無かった。夜の暗い道を走るというのは、この世界では自殺行為に近いらしい。


 なので、その日は自由時間として過ごす事にした。

 サリオは食堂で早めの夕食を取り、馬車旅の疲れからか、すぐに寝ると言って部屋に戻って行った。


 ラティはまだお腹が減っていないか、夕食は後で頂きたいですと伝えて来たので、夕食代を渡し好きな時間に食べるように伝えると、お金を受け取り部屋に戻って壊れた鎧の補強のし直しをすると言って、部屋に戻った。



 そして食堂に1人残された俺は暇を持て余していた。

 この異世界には娯楽が少なすぎるのだ、休日は体を休ませると言う発想しかない世界のようだった、もしかしたら貴族とかは違うのかも知れないが。


( たく、歴代勇者共は何をやってたんだよ、)



 そんな時に、二人の人物が話し掛けてきた。


「よう、必殺の英雄さん暇してそうじゃねえかよ」

「噂聞いてるぜ、防衛戦でもやらかしたみたいだなジンナイ」



 現れたのは、熟練冒険者のガレオスと情報好きの冒険者ドライゼンだった。

 二人共いつのまにそんな仲になったのか、二人で俺の前に現れたのだ。





 それから暇だった俺は、話相手に二人と雑談で小一時間程盛り上がった。

 そして、ふと会話が途切れた時に、ガレオスが俺に切り込んできた。



 切り込むと言っても物理ではなく、誘惑を



「英雄のダンナ、ちょっと冒険に出ないかい?」

「冒険って今から?もう夜だし‥‥」


「ああ、夜の冒険さ、、階段を下りに行かないか?」

「ジンナイ!俺もそれを誘いに来たのさ、1人じゃ心細くてな、」



「頼られちゃ仕方ないか、行こう冒険に!」


 俺に迷いは無かった!

 何故なら友に誘われて友に頼られたのだ、男ならイクしかないのだ。



 こうして俺は、夜の緊急クエストを受けることになった。

 


銀貨1枚は日本円で約1000円くらいなイメージで


何か質問やご指摘がありました、感想コメントをくださいな~


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