もどって来た
新章の開始!
馬車に揺られながら三日。
【ルリガミンの町】に帰って来た。
三日の間は、今後の予定の説明をした後、手持ち無沙汰になったので手にお仕事を与えるべく、ラティを撫でることにした。
馬車は他にも6名乗っているので、さすがに人目があるので膝に頭を乗せて撫でることはしなかったが、代わりに目立たないように尻尾を撫でさせてくれた。
( 完全完璧頭撫では他人に見せるのは勿体無い )
久々の尻尾の毛触りを堪能していると、横の座っているラティが俯いた。
顔の表情は見えないが、毛に覆われていて近くでないと見えない、耳の地肌がしっかりと朱に染まっていた。もしかすると尻尾を撫でる行為は結構恥ずかしいことなのかも知れなかったが、止めるつもりは毛ほどもないので続行して撫でるのを続けた。
因みに、サリオはラティの隣でよく寝ていた。
( 寝る直前にラティが手をかざしていた気もしたが、)
閑話休題
【ルリガミンの町】に辿り着いてからは、まず宿の部屋に戻りそれから風呂に直行した。遠征の十日近く
の間、体を濡れた布で拭く程度しかしていなかったので、どこか不快感があったのでまず入浴を優先させたのだ。
その後は、午後1時頃だったので昼食を取りながらステータスをチェックする。
ステータス
名前 陣内 陽一
職業 ゆうしゃ
【力のつよさ】68
【すばやさ】 67
【身の固さ】 70
【EX】『武器強化(弱)赤布』 『回復(弱)リング』
【固有能力】【加速】
【パーティ】ラティ77 サリオ79
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ステータス
名前 ラティ
【職業】奴隷(赤)(陣内陽一)
【レベル】77
【SP】425/425
【MP】314/314
【STR】 287
【DEX】 314
【VIT】 270
【AGI】 408+5
【INT】 254
【MND】 280
【CHR】 334
【固有能力】【鑑定】【体術】【駆技】【索敵】【天翔】【蒼狼】
【魔法】雷系 風系 火系
【EX】『見えそうで見えない(強)』『回復(弱)リング』
【パーティ】陣内陽一 サリオ79
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ステータス
名前 サリオ
【職業】奴隷(赤)(陣内陽一)
【レベル】79
【SP】260/260
【MP】572/572
【STR】216
【DEX】238
【VIT】209
【AGI】241+5
【INT】364
【MND】341
【CHR】272
【固有能力】【鑑定】【天魔】【魔泉】【弱気】【火魔】【幼女】【理解】
【魔法】雷系 風系 火系 土系 闇系
【EX】『見えそうで見えない(強)』
【パーティ】陣内陽一 ラティ77
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防衛戦での巨人を相手にした為か、ラティとサリオはレベルが上がっていた。
距離が離れていた為か、俺には経験値は入っていないようだったが。
――それにしても、サリオはレベルが上がり過ぎだろう、
それだけ巨人の魔物からは経験値が多いということか?、確かにコレだけ経験値が多いなら、経験値が欲しい冒険者が殺到するのも分かるな、
それとステータスの伸び方に前よりバラつきが出てきたな、
ひょっとしたら、高レベルからは上がるモノは上がるが、上がらないモノは前よりも上がらなくなるかも知れないな、もしかしたら成長の限界に違いが‥‥‥
ステータスについて考え事をしていると、いつの間にか、サリオに俺のおかずの肉じゃがを半分喰われていた。
その後はサリオに折檻をして、用事がある、ららんさんの店に向かった。
この町を離れていたのは十日程だった。別にそれ程大した事でもないのだが、”帰ってきた”と言う何とも言えない心情が心に湧いてきていた。
ららんの店までの道程を、当たり前のように歩きながら感じること。
――いつの間にか俺は、、
この町にこんな気持ちを持つようになっていたんだなぁ、
確かに一番お世話になってる町だしな、ここは俺のホームだな、
そんな事を考えながら、いつもの見慣れた店に入っていった。
「お?じんないさん遠征から帰ってきたんやね」
「今日帰って来ました、それでお願いした物出来てますか?」
店に入ると、何かの作業をしていたららんさんは『ニカっと』した笑みを浮かべて俺達を迎えてくれた。そして俺が依頼した物を訊ねると、気まずそうに目線を逸す。
表情の上げてから横に逸らすららんさんに問い詰める。
「ららんさん。お願いした物はどうなりましたか?」
「じんないさん。まずコレを見てくれんかのぅ」
そう言ってカウンターの陰から、ローブを取り出しカウンターに置いた。
そのローブは白色で、袖とかフードの所が赤い三角模様になっており、所々に黄色い直線の模様。
率直な感想を言うなら、回復魔法師が着るべきデザインだった。
それを、、。
「これなぁ、ちょっと思いついちゃって作ってみたんだけど、想像より良い出来なんや、それでさりおちゃんにどうかな~と」
「すいません、ららんさん。ちょっと言ってる意味が分からないけど、分かるというか何と言うか」
「うむ!混乱するのもよく分かる、今なら安く売ったるで!」
俺はこの時、混乱しているのはららんさんじゃないかと思った。
それから、ららんさんに詳しく理由を再度訊ねると、ゲロってくれた。
ららんさん曰く、サリオに特注で作った魔石の杖の出来から、さりおの魔法操作力なら防御力を上げる装備も使いこなせるのでは?と思い、気が付くとそのローブ作りに没頭していたと。当然俺の依頼した魔法防御の付加魔法品はまだ完成していないと白状してくれた。
しかし、そんな絶対的に不利な状況化でも、ららんさんはセールストークを諦めなかった。
( いや諦めろよ! )
「じんないさん、このローブは魔力を使って結界の小手みたいに、魔法で障壁を作るんよ。そしてその障壁は球状で死角無しで、しかも結界の小手以上の強度を発揮出来るかも知れないんよ」
――結界の小手以上の強度で球状の結界か、
これって、サリオを魔物中に捻じ込んで結界を発動させれば強いんじゃ?、
新必殺技だな、問題は捻じ込み方だけど、サリオは小さいからぐいぐい行けば、
「あの、ご主人様 今何か恐ろしいこと考えてませんか?しかも関係ない事を」
「あわわわ、あたしも何か貞操の危機感じましたよです」
――むぅ、やはりラティは勘が鋭いな、
そしてサリオの勘は残念だな、勘が鋭いけど鈍いって感じだな。
「何だか話が逸れちゃってるけど、どう?じんないさん買わへん?」
ららんさんは『にしし』って聞こえて来そうな笑みを浮かべながら、限定品やで~っと付け足し俺にローブを薦めてくる。
当然そんな高そうな物を買う余裕は俺には無い訳だが‥‥。
――前回のジャアの策にハマった時に、
もし、サリオに護る手段があれば結果は違っていたよな‥‥
サリオは【弱気】があるのでピンチには滅法弱い、だけどそれを改善か防ぐモノがあれば、彼女はかなり優秀になるかも知れない。
仲間の中でも一番守りが薄いし、ある意味一番補わないといけない事。
「ららんさん。そのローブはいくらですか?」
「マジで?」
「売ろうとしている人の『マジで』にマジで?ですよ、売れないかもって思ってましたね」
「ニシシ、毎度!金貨‥‥24枚でええよ、安くうっちゃる」
一応確認の為に、サリオに着せて発動するか確認をしてみる。
展開される障壁はシャボン玉のような透明な障壁で、球体の表面には、水溜りにオイルを垂らした時に見える模様のような、そんな歪んだ魔法陣が薄く光っていた。
安くない物だが、だがこれから必要な装備である。
個人でもある程度自身の身を守れるようになるのは大事なことだ、そういう意味ではサリオは著しく劣っている。現在パーティが危機的状況に陥る切欠となる可能性が一番高いのは、たぶんサリオだろう。
避けれないサリオを庇ってなどで‥‥。
「買います、だからついでに俺の頼んだ付加魔法品を安くしてくださいね」
ららんさんは『ええよ』と返事をくれてニヤリを笑う。きっとこう言う値引きのやり取りが好きなのだろう、だた単に安くしろではなく、何かを対価に値引きをするのが。
値引きをして次に繋げるのではなくて、次に繋がったからこその値引き。
きっとこれが、ららんさんのビジネススタイルなのであろう。
そして俺はそれに付き合う。
「ららんさん。ちょっとお聞きしたいのですが」
「うん?じんないさんの付加魔法品のこと?」
「いえ、追加で――」
俺はららんさんに他の付加魔法品のことを訊ねた。
その内容は、弱体系魔法を防ぐ付加魔法品がないか?と、隠蔽魔法を感知とか出来るような付加魔法品がないかである。
もしこの二つがあると、ラティの守りと警戒の幅が増えると思ったからだ。
どちらか片方でもあれば、と 思い訊ねてみると。
「あるよ、しかも両方ともオレの得意な分野だの」
「最優先でそれをお願いします!」
「あの、ご主人様!それは、」
ラティは多分、その装備が何の為の付加魔法品なのか分かったのだろう。
俺を守る為の装備ではなく、パーティを護る為の付加魔法品だと。
ラティは眉を下げて八の字にして、申し訳無さそうな表情で俺を見上げてくる。それを俺は、目でラティに心配無いと伝え、値段交渉に入る。
「その付加魔法品って値段どれくらいですか?」
「ん~~、感知の方は安いよ金貨2枚で高性能な奴が在庫であるよ」
ららんさんの説明では、半径20㍍以内に隠蔽魔法限定だが、ほぼ察知出来ると。それがあれば待ち伏せはほぼ防げる。
在庫がある理由は、この装備品は結構需要があると、貴族などが密談をする時には必須の付加魔法品らしい。
次に弱体系防御付加魔法品は‥‥。
「それとな じんないさん、弱体系魔法防御付加魔法品は強度によって値段が変わるんよ」
「100%防ぐのはどれ位の値段ですか?」
ららんさんは値段の前に、弱体系を防ぐ構造を簡単に説明してくれた。
魔法を水に例えると、弱体魔法とは雨みたいなもので、攻撃魔法は滝みたいなモノで。
そして魔防付加魔法品は傘のようなモノだと。
攻撃魔法は滝なので傘で防ぐには限界があるが、弱体魔法ならある程度防ぎ切れると、強度が傘の材質と大きさを指している。
魔石の量が傘の大きさで、魔石の質は傘の材質。
雨と言っても硫酸のような傘を溶かしてしまうような雨、要は呪いに近い強力な弱体魔法も存在すると。そこまで防ぐ100%の魔防付加魔法品を作るには‥‥。
「魔石の量だけじゃなくて、特別な魔石も必要なんよ」
「ららんさんそれはどんな魔石ですか?高いとかですか」
「高いと言えば高いけど、ほぼ手に入らない感じかな、市場には出回らない」
「それがあれば安くなると?」
「もしあればね、それなら金貨20枚で作れるよ、何かの精神が宿ったことのある魔石なんて滅多に無いからね、その魔石だけで金貨千枚以上の価値はあるよ」
「あの、もし魔石が無いで頼んだ場合は金貨千枚以上ですか、」
「格安でもそうやね~、滅多に無いからねそういう魔石って」
値段が値段なだけにラティが心底申し訳無さそうに、俺を再び上目遣いで見つめてくる。俺が借金をしてでも買おうとするのではと、心配しているのかも知れない。
実際に、一度没収されたラティを、金貨八千枚で買い戻そうとした事があるから、心配をされても仕方のないことだろう。
だけど――
「ラティ、一度宿の部屋に戻ろうサリオはここで待っててくれ」
「あの?ご主人様?」
ラティが不安そうな表情から、困惑の表情に変える。
「部屋に置いてある魔石を取りに行こう」
――そう、イリスさんの魔石を‥‥
ラティは77になって睡眠魔法を習得しました。
風系の手から睡眠系の香りを出す感じの魔法です、なので実戦では使い物になりません
読んでいただきありがとうございます!
今度こそ早めに出せれば、、
あと感想とご指摘コメントもお待ちしておりますー




