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矛盾剣盾、ときどき弓からの盾

感想欄の名言に嫉妬!!

荒木と八十神が○兄弟とか……その発想はなかった!

ええ、感想欄が本編並に盛り上がっていますねw

 真っ直ぐな目で見てくる小山。

 躊躇っているような口調だったが、その瞳には迷いが一切ない。

 いま宣言したように、本当に”守る”つもりなのだろう。


 盾をどっしりと構え、椎名の前に立つその姿は、紛うことなき護りの勇者。

 もしくは盾の勇者と呼ぶべきだろう。


 ( だけど…… )


 立ち位置がなっていない。

 椎名の前に立つということは、椎名が前に出られないことを意味している。

 小山が前に居る限り、ある意味こちらも安全と言えた。


 俺は視線を遥か横へとズラし、離れた場所にある見張り塔を中心に捉える。

 木材を骨組みにして、石材を積んで補強してある建造物。その見張り塔の窓に腹立つヤツが見えた。


「ん、居るな。――斬鉄穿!」

「え?」

「はえ?」

「おう?」


 椎名、小山、上杉が揃って不思議そうに声を漏らした。

 そして放たれたWS(ウエポンスキル)の先へと視線を向ける。

 放たれたWSは、約百メートルほど離れた場所に建っている見張り塔の一部を貫いていた。


「……陣内君、一体何を……」

 

 椎名が不思議そうに訊ねてきたが、俺はそれを無視する形で斬鉄穿を放ち続ける。

 そして4発目が着弾した辺りで見張り塔が倒壊した。


「ああっ! 誰か落ちた……って、え? あれってまさか……」 


 覗きをやっているから目が良いのか、小山には誰が巻き込まれて落ちたのか判ったようだ。


「――っ! まさか、陣内君っ。……あの塔に居たのは」

「ん? ああ、橘。あのクソ女が居た」


「お、おい……」


 姿をくらませている橘の行方には見当がついていた。

 どうせアイツのことだから、何処か離れた場所から狙ってくるだろうと予想をしていた。


 攻撃されない離れた距離で、上からの射線が確保できて、身を隠すことができる場所。

 その条件が揃っているのが、あの見張り塔と後ろの見張り塔だけだった。

 

 それ以外の場所は射線の都合上厳しい。

 すぐそこの建物の上という選択肢もあるが、それでは近すぎるので、アイツは距離が取れるあの塔へ行くと睨んでいたのだ。


 そして狙撃する機会を窺っていたのか、丁度ヤツの姿が見えたので倒壊させた。


 倒壊するまで時間があったのだから、下に居た者は逃げることができたはず。

 逃げることが叶わなかったのは、塔に登っていた橘だけ。

 もしかすると誰かしら居たのかもしれないが、その辺りは申し訳ない、だ。

 正直、そこまで気を回す余裕がない。


「さてと、これでアイツは倒したし、次は――」

「させない!!」


 俺は、蒼月に回復魔法を掛けようとしていた柊に照準を合わせた。

 先を視て即座に反応した椎名。

 ヤツは結界を何枚も飛ばし、俺の斬鉄穿を防ごうと試みるが――


「きゃっ」

「雪っ!?」


 木刀から放たれた斬鉄穿は、椎名の結界を貫き柊の肩を掠めた。

 初めて攻撃に晒された恐怖からか、柊は顔を青ざめさせながら尻もちをつく。


「蒼月、柊に言え。回復しようなんて考えるなって」

「………………ああ、わかった。雪、回復魔法はいい。安全な位置まで下がってくれ。下がるなら見逃すって言ってる」

「……」


 無言で(うなず)いたあと、ヨロヨロと下がっていく柊。

 彼女は心配そうに蒼月の方を何度か振り返るが、蒼月は首を横に振って下げさせた。


「陣内っ! てめえ、女を狙いやがって! 恥ずかしくねえのか!」

「アホか! 恥ずかしいに決まってんだろ! やりたくてやってんじゃねえ! んなことぐらい分かんだろ!」


 俺のやったことに激怒する上杉。

 橘は別だが、他の女性陣はできれば狙いたくなかった。

 しかしだからと言って、やっとの思いで倒した蒼月を復活されては困る。

 だから俺は、威嚇射撃に斬鉄穿を放ったのだ。


「そこっ、こっそり薬品ポーションなんて使ってんじゃねえ!」

「――ぐあっ!?」


 薬品ポーションを使おうとしていた八十神の手を射貫く。

 手から零れ落ちた薬瓶が地面へと転がる。

 これも椎名が結界で阻止を試みたが、木刀の斬鉄穿は易々と砕き貫いた。

 

「くそっ、陣内、貴様ぁ――――があああ!」


 イラッと来たので追い斬鉄をかます。

 脚を撃ち抜かれた八十神がのたうち回る。

 先ほどから何度も斬鉄穿を放っているためか、最初よりも動作がスムーズになってきた気がする。


 前は突く動作だけだったのに、いま突いた後にしっかりと引き戻す動作も流れに組み込まれている。

 八十神と荒木の呻き声が五月蠅い中、斬鉄穿の手応えを確かめていると、椎名の結界に揺らぎが見えた。


「斬鉄閃!」


 閃光のような鋭い斬り込みがきた。

 しかし今度はそれを完全に捌き受け流すことに成功する。


「――っらああ!」

「ぐっ」


 受け流しから、流れるような突きを椎名へと見舞う。

 辛うじてそれを避ける椎名。

 当然、俺はそのまま追撃に移ろうとしたが――


「うっわああああ!」


 雄叫びを上げながら小山が突っ込んできた。

 その横では、上杉が大斧を下段に構えて迫ってきている。

 俺は追撃を止めて距離を取ることを選択する。


「あれ? 引くの?」


 引いたことに不思議そうな顔をする小山。

 どうやらコイツは、俺が止まらずに攻めてくると思っていたようだ。

 上杉の方も、俺が引いたので攻めるのを止めていた。

 

 俺は身をもって知っている、優秀な盾役の恐ろしさを。

 だから引いたのだ。


 ( こんなところでイエロとの戦いが生きるとは…… )


 元五神樹(ごしんき)イエロとの戦いを思い出す。

 大したことないと思っていた掴みが、予想以上に脅威だったことを覚えている。

 振り解くことはできず、体験したことがない重さが襲ってきた。


 もしその状態に陥れば、俺は間違いなくやられるだろう。

 そうやって魔物を倒していったのだから。


――ん~、【重縛】は面倒だな、

 まあ、戦い方はいくらでもあるか…… 

 

 

 俺は、小山を障害物にすることにした。ヤツには大した攻撃力がない。

 一応、片手剣によるWSを放つことはできるが、アタッカーでない盾役の攻撃など大したことはない。


 俺と椎名の間に小山がくるように動き、斬鉄穿でチクチクやれば良いのだ。

 アタッカーでは上杉がいるが、蒼月がいない上杉などは――


「斬鉄穿っ」

「いってええええええ!!」


 上杉の両脚を撃ち抜いた。

 事前に察知した椎名が結界で防ぎに来たが、先ほどと同じで貫いた。


「くそ、いきなり攻撃しやがって……」


 上杉のことはずっと観察していた。

 何度かWS(斬鉄穿)を放ったとき、ヤツはほとんど反応できていなかった。現に今も攻撃をまともにもらっている。

 

 実のところ、上杉は餌だった。

 上杉を使って蒼月を仕留めると、そうプランを立てていたのだ。

 そしてその役目は終えたのだから……


「ぐがあああっ! てめえ、陣内。くそっ! 腕が」

「これであと二人……」


 肩を射貫き、上杉を完全に無力化した。

 あとは小山を利用して椎名を倒すだけ。

 【束縛】と【重縛】は脅威だが、事前に把握していれば冷静に対処できる。

 正直言って、椎名と小山のコンビは悪手だと思う。少なくとも俺には逆効果だ。



     ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

  



「え? あれ? ちょっと!?」

「くそっ。小山君、前を空けてくれ」


「え? オラ?」


 ちぐはぐな動きを見せる椎名と小山。

 【加速】と【迅閃】を駆使する俺に、椎名はともかく小山は一切ついて来れない。

 向かってくる相手には慣れているようだが、そうでない場合の経験が足りなすぎる。少し横に動いただけで対処が遅れている。


 立ち向かう勇気だけではどうにもならないことを、俺は小山に突きつけてやる。


「あ~~~もうっ」


 翻弄された小山が、闇雲に剣を振る。

 当然、そんなモノに当たってやるほど甘くない。

 守備はできても、攻撃がからっきし駄目な小山は、完全に椎名の足を引っ張っていた。 


 一方椎名の方は、何とか俺を捉えようと結界の数を増やしていた。

 結界で進路を塞ぐなどの手を打ってくる。だが、世界樹の木刀があるので苦もなくそれを突破する。


 そして何より、椎名の結界は、ヤツ自身の行動を俺に知らせていた。

 

 ( 焦ってきてんな )


 椎名の攻撃精度が下がってきていた。

 手数を補おうと結界の数を増やすが、結界の数が増えれば増えるほど操作精度は下がる。

 しかもその結界の揺らぎが次の行動を俺に知らせるので、【神勘】の効果も合わさって難なく捌いていった。


「もらったっ!」

「くぅっ」

 

 突きを間一髪で躱す椎名。

 守ってくれるはずの小山が、いまは完全に邪魔な障害物となっている。

 反撃に出たくとも、小山の身体がそれを遮っている。


「たああ!」

「よっと」


 強引に横から攻めてくるが、俺はすぐに反対側へと移動をする。

 小山は椎名の動きを全くフォローできていない。


 ( そろそろだな…… )


 椎名を倒すプランが浮かぶ。

 小山をブラインドにしてEXカリバーを放ち、小山(障害物)+EXカリバーを椎名にぶち当て、怯んだその隙に椎名ヤツの脚を狩る。


 次に椎名が動きを見せたら合わせる形(カウンター)を取る。

 俺は横へと移動しながら、結界の動向に注目する。


「ん?」


 椎名の結界が、いままで見せたことのない動きをし始めた。

 結界が7ヵ所に集まり、それが重なるように合わさっていく。


「あれ? 椎名クン?」


 小山も椎名の動きに気が付いたようで、無防備に後ろを振り向いた。

 今なら小山を倒すことが可能だが、俺は障害物として残すことを選ぶ。


「うん、ボクはまた振り回されていたのかもしれない。増やせばいいってもんじゃないね」


 椎名がポツリと呟いた。

 舞い散る花びらのように無数にあった結界は、いつの間にか、たった七枚だけになっていた。

 そして結界同士が合わさることで、正六角形だった形は長細く、まるで西洋の棺桶のような形へと変わっていた。


 形の変わった結界を背中へと回す椎名。


「小山君、ここからはボク一人に任せて欲しい」

「え? はい? 一人で?」


「うん。ボク一人だけで陣内君を倒すよ――っ!」

「――っ!?」

「え? え? 止めた?」


 椎名の異変を察知した俺は、無言で小山に斬鉄穿を放った。


 何か嫌な予感がする。

 そう感じたから予定を変更して、即座に小山の排除へと動いたのだ。

 しかし……


「うん、これなら止められるね」


 勇者椎名は、結界を七つに集結させることで、斬鉄穿を止めることができる結界を作り上げたのだった。

読んで頂きありがとうございます。

宜しければ感想など頂けましたら嬉しいです。


あと、誤字脱字なども……何卒、何卒ー

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