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祭りの後

短めですーちょっと甘め

 荒木との乱闘後、結果から言えば超怒られた。


 ガス抜きの意味である程度の乱闘は黙認されていた、解毒用に揃えた人員がいるので、回復魔法も使用出来る人材が多数いるからこその配慮だったが。だが、まさかの殺し合い近くまでに発展したことが、怒られる原因となった。

( まぁ当たり前か、)

 

 アゼル曰く『武器も無しで殺し合いをするとは、』と呆れられた。



 防衛戦後の宴会は、乱闘後に少ししてからお開きとなった。

 

 俺と勇者荒木を引き離すために、俺は街の宿屋に保護と言う名の軟禁に、荒木は中央への凱旋と言う名の強制送還をされた。



 その時に早乙女からは、荒木との乱闘を咎める意味なのか、やたらと睨まれている気がした。やはり仲間の勇者荒木をボコったのが気に喰わなかったのだろう。



 乱闘の時に俺が肩に負った怪我は、また言葉に回復魔法を掛けてもらった。


 言葉には、あまりにも助けてもらっているので、助けてもらったお返しに何か『俺に出来ることを』と伝えたところ、『今はまだいいです、いつかきっと』と返事を返されてしまった。きっと俺がレベル上がって稼げるようになった辺りで、何かを要求されるのかも知れない。考えすぎだろうか?。



 俺がイケメンでデキル男だったら、きっと恋愛的なモノに発展する可能性もあるのだろうが、その辺りを自分には縁の無い事なので、期待するのは空しいので止めておいた。



 そして現在は

 3人部屋にラティとサリオにことの顛末を伝え終わったところだった。

 

 俺を保護かんきんしようとするアゼルに、3人一緒の部屋をお願いした時に色々と誤解されたのか、蔑むような目で見られた。自衛のために3人集まっていると説明したが、理解して誤解が解けたかどうかは怪しかった。



 そして今度はラティから、無茶をしないでくださいと進言されてしまっていた。ジャアとの一件はすでに反省済みだったが、今度のは荒木との乱闘の方だった。


 それを部屋で一番左端のベットで横になっていたサリオが、思い付いた疑問を訊ねてきた。


「あのぅジンナイ様。偉そうな勇者さんとケンカしてた時、ジンナイ様が滅茶苦茶押してましたが、勇者さんって弱かったんです?」



 『ステータスは凄かったんですが』とも呟きながら、サリオが俺に聞いてきた。確かに荒木との喧嘩では、一方的に俺が押していた。喰らったと言えば、最後の一撃くらいだった。しかもソレも早乙女を庇ったから避け損ねた程度。


「サリオ。理由は多分だけど、武器の違いかも知れないな」

「ほへ?武器がですかです?」



 俺はサリオに簡単に説明してやった。

 あの喧嘩の時、俺は常に頭の位置を動かし、的を絞らせないようにしていた。荒木が普段使っている武器大剣、それを突くよりも縦や横に振るように使うのがメインだろう。


 結果として、荒木は止まっている相手なら殴れても、動いてる的には拳を当てる技術が備わっていなかったのだ。逆に俺は槍で突くのメイン、動いている相手にも慣れている。


 ――飛んで来るボールをバットで打つのと、バットで突くのだと難易度は圧倒的に違うからな、


 

 それが俺と荒木に決定的な差があったと、そうサリオに伝えた。


「ほへ~なるほどです、あの勇者様は横に切り払うとか楽なことばっかりをしていたと、そういう訳ですねです」


 サリオは【理解】持ちなので、こういった理論的なことはすぐに理解出来るようだった。空気を読むや人の感情は全く理解しないが。


( 優秀だけど、馬鹿ってタイプなのかな? ) 



 そして聞くことを聞いたのと満腹のためか、サリオが寝ると告げてくる。


「それじゃサリオちゃんはもう寝ますね、あ!他の宿屋だからって盛り上がっておっ始めないでくださいね」


 ――ッコイツ!マジで空気とか読めない奴だな!

 一応ラティは今日危なかったんだぞー!その辺りを配慮しろー!



 サリオに心の中で怒りつつ、ラティの心境は?と思い、三つ並んでいる真ん中のベットに腰を下ろしている、ラティの表情を盗み見してみると。



 ――安定の無表情か、

( いや、ちょっと違う口元がいつもと違うぞ! )


 ラティの表情は無表情だったが、口元が∧のようになっていた、への字よりも短くそれでいて鋭く。いままでとは違う彼女の表情に戸惑ってしまう。



 なんとも言えないこの空気を変える為に、ジャアとの戦闘後にねだったモノをお願いしてみることにした。


「ラティ、頭撫でてもイイ?」

「‥‥あの、少々お待ちください」


 そう言ってラティは、スッっと立ち上がり、そのままサリオが寝ている横まで移動すると、彼女はサリオの頭に手をかざし、小声で魔法を唱えた。


「ラティ?」

「あの、これで簡単には起きません」



 短く結果だけを俺に報告してきた。方法も理由もすっとばし結果だけを。


「では、そちらに行きますね」



 そう言ってラティは、サリオの横から俺の目の前まで移動してきて。


「あの、宜しくお願いします、ご主人様」


 彼女は俺の横に腰を下ろすのではなく、ベットに椅子のように座っている俺の前で床に座り、俺の足にしなだれかかるようにして、そのまま頬を俺の膝の上に乗せて頭を差し出してくる。


 雰囲気で例えるなら、縁側に腰を下ろしているお婆ちゃんが、膝の上に猫を乗せているような。だが、その頭に手を添えて撫でると、今までとは別な何かをドキドキと感じることが出来た。


 これまでに何回もラティの頭を撫でたことはあったが、いままでとは全く違う雰囲気でラティの頭を撫でていた。


 今まではラティに協力をして貰わなくても頭を撫でることは出来たが、この撫で方は彼女の協力無しでは成立しない撫で方だった。そして俺は、両手を使って優しく解きほぐすように彼女を慈しんだ。





 それから彼女のピンと張った耳の後ろ辺りを、コリコリを優しく掻きながら、先程のサリオに何を掛けたのかを訊ねる。


「ラティ、さっきサリオに掛けた魔法ってなに?」

「先程の魔法は追加睡眠魔法ですねぇ」


 ラティが目を気持ち良さそうに目を細めながら答えた。たぶん寝ている相手をより深く寝かす魔法なのだろうと予想が出来たが、その理由を訊ねると、この至福の時間が終わりを告げそうな気がしたので控える事にした。


 両手で彼女の髪をゆったりと梳かしながら、別のことをラティに訊ねる。


「そう言えば、ラティでも隠密系魔法は見破れないの?」

「あの、気配を消している相手なら、探れるのですが、魔法系はどうしても、」


 膝に乗せていた頬をずらし、目蓋を膝に押し付けるようして俯きながら、申し訳無さそうに彼女はつぶやいてきた。



 俺は『そっか、』と返事をしつつ、ズレ下がっていったラティの頭を再び膝に乗せな直しながら、次の話題を投げかける。


「睡眠魔法とかって耐えるのって難しいのかな?」

「個人差があるみたいですが、わたしはどうも苦手みたいですねぇ」


 彼女はそう答えつつ、反対側の頬を膝に乗せてきた。きっと反対側の耳の後ろも掻いて欲しいだろうと思い、差し出された耳の後ろをコリコリと掻いてやった。




 それから時折『ぷしゅ~』と口元から零れる音を聞きつつ、話題をふっていった。ただ、聞くことのほとんどが、戦いに関係することばかりだったことに、自分の話題作りの下手さを痛感させられた。


 途中ラティからは『後生ですからもう無茶はしないでください』と、黒獣隊とのやりとりを注意される一幕もあった。 



 最後に明日のことを考えて就寝しようとした時に、自分だけはなく、ラティも名残惜しそうに膝から離れて行ったのを感じれて、撫でられることが嫌いではないと確信を持つことが出来た。

 

 それが堪らなく嬉しかった。







          ◇   ◇   ◇   ◇   ◇







 次の日は、防衛戦で使われた天幕がある場所まで一度戻り、そこから馬車で【ルリガミンの町】に戻ることにした。

 ハーティ達三雲組は、この街スノウにしばらく滞在すると言っていた。



 そして俺は【ルリガミンの町】行きの馬車の中で、ラティとサリオに今後の方針を伝える。


「【ルリガミンの町】に戻ったら、ららんさんの所に相談に行こう」


「ほへ!?いきなり何をです?」

「あの、ご主人様 何を相談しに行かれるのですか?」



 サリオからは呆れ顔で、ラティからは怪訝そうな顔でこちらを見ている。


 そんな二人に俺は、ららんさんにお願いする予定の物を説明をして馬車移動の暇つぶしをしたのだった。



 ――やべぇ、またお金が凄く掛かりそうだ、、仕方ないか、




 こうして、二回目の防衛戦遠征が終わったのだった。

読んで頂きありがとうございます。


今回は間が開いてしまって申し訳ないです。

そして、感想などお待ちしておりますー

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