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宴会

前回の50話ちょっと追加加筆しました

特に影響は無い程度です

 ラティの胸の中で眠りに就いた。 




 だがすぐに俺は魔法の力で無理矢理叩き起されていた。


 理由は怒られる為に。


「ハーティ殿と、ゆうしゃ?ジンナイ?に言いたい事があります」

「はい、僕は止めたんですが彼がどうしても行くと言って」



 いきなりハーティに裏切られた俺である。   

  


 現在どこかの天幕の中で俺はベットに寝かされていた。

 寝ながら見える範囲だと、一般の冒険者用のとは違うようだった。どちらかと言うと豪勢に見え、予想だと内装から黒獣隊かアゼル達の天幕だと思えた。


 そして取り囲まれる程物々しい雰囲気ではないが、派手な色の騎士達が多数待機もしている。他に居るのは勇者三雲と言葉に、冒険者はラティとサリオあとハーティ。最後に顔の左頬を赤く腫らしたひょろっとした男。


 何かこれから尋問でも始めるような雰囲気が漂っているが、何故かラティが俺に膝枕をしているので、重い空気をソレひざまくらが相殺していた。


( いや!むしろ押してるな! )



「なんの事でしょうかハーティさん?は自分の奴隷を取り返しに行っただけなのですが、急がないと彼女が色々と危険でしたし」



 凄く怒られそうな雰囲気だったのと、ハーティの裏切りがあったので、全力でとぼけてみる事にしてみた。

 

「いやだな~陣内君。僕はちゃんと言ったじゃないか、アゼル様が動いているから平気だと、困るよ忘れてもらっちゃあ」


 ――っちぃい!コイツは俺を逃がさないつもりか、ここは普通、俺が何も知らずに動いた事すれば、俺にはお咎め無しになる可能性が高いと言うのに!


 くそ!俺を道連れにするつもりか!



 俺とハーティが激しい攻防を繰り広げていると、それを静かに横で聞いていたアゼルが、再び問いを繰り返す。ただ先程と違うのは、首を少し横に傾け、片手を腰に添えベットに横になっている俺を、三白眼気味の目で俺を見下ろしていたのだ。


「言いたい事はありますか?」





 その後ハーティと一緒に滅茶苦茶怒られた。







           閑話休題おこです







 アゼルからは、取り敢えず目標のジャアの身柄と、部下9名の捕縛が無事に出来たので最終的には許してもらえた。


 事前に密偵からの情報で注意されていたにも係わらず、それをブチ壊しかねない動きをしてしまったのだから、怒られるのも仕方ないので受け入れた。



 それから俺の寝ている天幕は、どうやらジャア達黒獣隊の天幕のようだった、中に多数いた派手な色の騎士達は、何かの証拠の品を探していたのだった。


 今回の貴族の息子でもあるジャアの逮捕となったきっかけ、それは、お忍びで市勢観察と言う名の息抜きをしていた貴族令嬢を、一般の市民と勘違いし浚ってしまったのが原因だと。


 何が目的なのかは知りたくも無いが、市民とか思えない器量良しの娘が、村娘の姿でうろついており、これ幸いと浚ってしまったみたいだった。


( 似たような事は他でもしていたと、)


 その貴族令嬢の親が公爵だったらしく、今まではある程度見逃されていたジャアだが、貴族側も重い腰を上げた形になったと。


( 自分達に害が来ない限りスルーしてた辺りは、同じクソだな )


 

 そして今回の作戦を行うことになったと、そして現在。


「ありましたアゼル団長!」

「む、令嬢が身に着けてたモノですか?」


「たぶん、その可能性が高いかと、コレほどの首飾りですと」

「そうか分かったランガ・ボレアス公爵に後日確認をしてもらうわ」



 ――身柄確保と同時に証拠探しもか、言い逃れ出来ない様に堀を埋めていくのか、



 家捜しをしていた騎士がネックレスをアゼルに手渡し、目的の物が見つかったからか、数名を残し騎士達が外に出て行った。



 俺はそれを眺めながら、首に添えられた手の温もりを堪能していた。


「あの、ご主人様お寒くはないですか?」

「ああ、ありがとうラティ」



 大量の血液を失い、それでも暴れまわった俺は、気を失った後に横になってから尋常では無いくらいに震えていたらしい、さすがに人目があるので添い寝は出来ないが、膝枕をしつつ首筋に手を添える事で、温めてようと試みたらしい。



 今回の俺の無茶な行動を、彼女は自分の為に無茶をしてくれたと理解しているようで、詰め寄るアゼル達に一歩も退かず、俺の傍にいてくれるようだ。



 因みにサリオはアゼルが怖いのか、視界に入らないように距離を取っている。あと俺に体力・・回復の魔法は言葉ことのはが掛けてくれたようだった。


( 言葉には後で、土下座をしながらの感謝のお礼を言わないとだな、)



 その言葉ことのはは、再びの魔法を使いすぎの為か、サリオの隣で疲れての為か元気がなさげ俯いてしまっている。今は土下座に行ける空気ではなかったので控えることにした。


 

 そしてアゼルがネックレスを眺め確認後、それを大事そうに懐にしまうと、此方に再び向き直り、心なしか悪い笑みを浮かべ語りかけてくる。


「それと今回のことは他言無用でお願いします」


「へ?」

「‥‥‥‥」


 俺個人としては別に構わないことだったが、ラティには何か不満なのか眉を顰めアゼルを見つめていた。


 俺の首に添えているラティの手に少し力がこもる。



 俺は主犯のジャアをぶん殴れて、僅かながら溜飲を下げれたが、ラティにはまだ不満か何かがあるのかと思っていると、見つめられていたアゼルが語りだす。


「そう睨むな、確かに貴族達は身内の罪を何か・・で取引をして、何も無かった事にすることがあるが、今回の件ではそれは絶対に無い、私としても同じ女性として奴を見逃すことは出来ないわ」


「あの、わたしはご主人様が逆恨みで再び狙われるのが心配でして」



 ――ッく!考えて無かった、まだ甘かったのか俺は、

 逮捕出来ない奴を逮捕したのだから、その逮捕を揉み消して無かった事にする可能性がある事を考えてなかった。それとラティが気に掛けてくれていたことは俺のことだったのか、、


 結構嬉しいな、



「その辺りも含めての他言無用なのだ、今回の件はこれからも秘密裏に進めて行くつもりなのだ、キッチリと逃げ道を無くしてから罪を問うつもりだ、二度と外に出れないようにな。それと捕縛までの経緯も秘密にするつもりだ、それなら伯爵家からの逆恨みでお前達が狙われる心配も減るだろうしな」



 それは納得の出来る内容であった。下手をすると貴族に恨みを買うことになる可能性があったのだから、どちらかと言うと8割狙われていただろう。そしてラティも安心出来たのか、力のこもっていた手から、力が抜けてまた優しい手つきに戻った。



「あとコレを渡しておくわ」

「へ?――っええ!?」



 寝かされているベットに、金貨が積むように置かれたのだ。渡す金額を見せ付けるように、そして手渡しではなく、置いていく辺りが受け取りを拒否させない空気を含ませていた。


「それは口止め料だ、ああ、ハーティ殿にも同じ金額を渡しておこう」



 そう言ってアゼルは金貨50枚ずつを、俺とハーティに渡したのだった。


 ――拒否する理由もないし、今回はお金を稼ぐ為に来たんだから、嬉しい誤算って奴だな、うん、‥‥ちょっと誤算で死にそうになったのは予想外だったけど、、

 


「それと貴方達には、今夜の宴には必ず出席してもらいます、居なかったりすると下手に勘ぐられる可能性があろうから」



 どうやら俺達は強制参加らしいが。

 俺もその宴にはどうしても用がある奴がいるので丁度よかったのである。




 




           ◇   ◇   ◇   ◇   ◇








 防衛戦終了の祝勝会のような宴。


 どちらかと、ただのデカイ飲み会だった。誰かの演説や挨拶があるわけでもなく、無料で提供される酒と料理をかっ喰らう場だった。あとは喧嘩の場だった、多分、戦いで気に喰わない相手に喧嘩をふっかける人が妙に多かった。



 会場となっている場所は街のすぐ外の正門前だった。

 街の中だと、荒くれ者の冒険者が色々とやらかす為の配慮らしい、だが酒と料理が約250人分は振舞われるので、不満はそれほど出ていない様子だった。

 

 時刻も7時近くなっているので暗くはなっているが、まるで光の天井のような量の生活魔法”アカリ”が設置されていた。そしてその下には急ごしらえの200名分を超えるテーブルや椅子と、何処かで見たことがある料理が並べられていた。


 

「あの、ご主人様 このお料理はもしかして噂のオスシですかねぇ」

「そうか噂の料理になってるのか、確かに歴代勇者が残して行きそうだが」


 俺達は他のテーブルとは違い、言葉が【宝箱】から出した綺麗なテーブルと椅子に腰を下ろし、提供された料理を眺めていた。


 そう、肉を鮨ネタにした、握り鮨を。



「そう言えば、海外だと案外あるみたいだね、肉の握り鮨って」

 ハーティがどうでも良い豆知識を披露する。


「肉とお米で食べるんだから別に問題は無いわね」

 前向きな発想な三雲。


「コレって火の通りがレアで作られたお鮨が多いのですね」

 鮨ネタに危険を感じる言葉。


「ぎゃぼー!初のオスシですー」

 鮨にはしゃぐサリオ。


「安心しろ!解毒の魔法を使える者を何人も手配してある」

 気遣いに抜かり無しと胸を張るアゼル。



「オイ!これ絶対に生で食べるとマズい奴が混ざってるだろ!?」


 ――それともアレなのか?この異世界では鳥とか豚でも生で平気なのか?

 だが、今まで食べてきた料理は全部火が入ってたよな、それなら、、


「困るなぁ陣内君。折角の料理をマズいだなんて、用意してくれたアゼルさんに悪いだろう」


 いつもの芝居がかった仕草で、ハーティが両手をあげて『ヤレヤレだ』と、言わんとばかりに頭を左右に振る。



「これはヤバいですよね?寝込むレベルで 食あたり起しますよね?」


 人肌の米にのせられたレアな焼き加減の肉達、中には『お前完全に生だよね?』と声を掛けたくなる逸材にくもいる。完全にアウトの奴だ。 



「ジンナイは知らないようだな、コレは歴代勇者様が大好きで祝いの席などで食すモノなのですよ」

 

 ――コレ絶対に間違って伝わったパターンだ!

 しっかりと伝えろよ勇者共!料理は大事な文化だろうが、スパッツとか獣人の耳とか訳分からん執着心こだわりはしっかりと残しているのに、



「と言うか、言葉ならこの危険性を理解出来るはずだろ!?」

 

 ――彼女は、ややたれ目の黒髪のロングヘアーで清楚タイプ、きっと料理が出来るはずだ、彼女なら危険なのを理解しているはず、あ!でも胸がデカイから下手かも、

 


「えっと私はもう何回か食べたことがあるので、美味しいですよ」


 ――おおぅ、すでに勇者汚染済みだった、最初の台詞は本当にただの感想だったのかよ!それとも本当に美味しいのかな?問題は別のことだけど、





  

           閑話休題おいしかった






 レアな肉鮨は、予想よりも大変美味だった。米も酢飯ではなく普通に白米で作られており、色々な種類のタレで食べるスタイルになっていた。


 当然”解毒の魔法”をかけてもらいながらだったが。



「で、アゼルさんはここに居ても平気なんですか?」

「ええ、そろそろ他のテーブルにも顔を出す予定ですよ」


 アゼルは演説などは無いが、その分挨拶回りが大変だと教えてくれた。

 だがそれも強襲遊撃特殊防衛団”ユナイト”の団長としての仕事だと言っていた。


( 長い名前だ、でも勇者が好きそうな名前だな、)



 そう言ってアゼルは他のテーブルへと消えていった。すると、今まで遠慮をしていたのか勇者目当ての冒険者達が何人もやってきた。


「見ていましたよ~勇者ミクモ様。素晴らしいWSウエポンスキルでした」

「ホントに凄かった、勇者サオトメ様と同等にお強さで、いや以上か?」

「自分を覚えているでしょうかコトノハ様、回復魔法を掛けてもらった者です」



 いつもの勇者賛美が始まったか、と 思い見ている。


「おお!このちびっ子が例の炎の斧の?」

「チビッ、彼女が噂の焔斧エンフサリオか」

「単純な働きじゃ、今回で一番だったかもな焔斧エンフが」  

          



 ――っなにぃぃいい!サリオがチヤホヤされているだと!

 いあ、褒めるべきなんだろう、忌避され疎まれていたハーフエルフの彼女が、頑張った結果なのだから。何だかんだ言って冒険者って、偏見や凝り固まった思想が薄いからいいな、見たままで評価している。


( 貴族ではこうはいかないな、)



 俺はいつもの慣れた光景を眺めていた。

 勇者達やラティに群がる冒険者達、それを少し離れた場所で1人寂しくそれを眺めている俺、の筈だったが。今日はいつもと違っていた。


「お!袋小路の”英雄”じゃん、俺は見てたぜ~」

「巨人に釣られてたボンクラ共は、見てなかっただろうけどな」

「凄かったぜぇ、あの奮闘はよぉ」

 


 俺にまで冒険者達が集まって来たのだ。ただ俺に寄って来る冒険者の平均年齢が他のより高いのが気になった。


 そして歴戦風の冒険者達が遠慮無しに話し掛けてくる。


「最初は下に降りた馬鹿バカが!またいるのと思ってたんだけどよう、だけどよく見たら、惚れた女を助けに行く馬鹿えいゆうだったんだよな」



 ――おうぅ、元の世界では本気と書いてマジだったけど、異世界コッチでは英雄と書いてバカと読むのだろうか、、素直に褒められている気がしない、



「って!惚れてるって誰に?」 

「うん?だから勇者のサオトメ様にだよ、そうじゃなきゃ降りないだろ」


「そうだよな~降りたら一瞬でミンチになるもんな普通は」

「純粋に助けに行ったってのかよ、まさかなぁ?」


 

 酔っ払っている為か、必要以上にオッサン達が絡んできていた。これは、酒の肴にって意味も含まれているのかも知れない。



 ――それでも、

 素直に嬉しいなこれは‥‥


「あの、ご主人様がこんなに囲まれているの始めて見ました、なんだか感慨深いもの感じますねぇ」



 ――おおっふ、ラティまで生暖かい評価を、


 俺が今までに味わったことのない雰囲気に包まれた空間だった、似たような雰囲気な時もあったが、あの時は光の下には居ずに、離れた壁際の暗い場所だった。

( 初の魔石魔物討伐時を思い出すな、) 


 周りの喧騒が今日は心地良い、離れた場所で繰り広げられている殴り合いの喧嘩も、ちょっとした余興として見ていられる、そんな楽しい初めての宴だった。





 奴が姿を現すまでは。


「よう陣内。大変だったみたいだな」

「来たか、そろそろコッチから行こうかと思ってたぜ」



 俺が今日どうしても用がある奴、荒木冬吾あらきとうごやってきた。


読んで頂きありがとうございます

 

感想などお待ちしておりますー

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