表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

521/690

下調べと~~訓練!

誤字脱字のご指摘、本当にありがとうございます。

誤用などのご指摘も、本当に、本当にありがとうございます。

 次の日、合流予定の三雲組の到着はまだ先なので、俺たちは下調べのついでに魔石魔物狩りを行うことにした。

 いまの地下迷宮ダンジョンの様子と、どれぐらいの頻度でハリゼオイが湧くのか調べる予定だ。


 本来、浅い層で上位魔石魔物が湧くことはほぼない。

 これは調べておいて損のないことだ。

 それにこれは、対ハリゼオイの良い訓練にもなる。

 

 ヤツの背中に生えている剣山のような針と、正面に立つ者を容赦なく切り伏せる鋭爪は、冒険者の放つWS(ウエポンスキル)や魔法を容易に切り裂く。 

 それなりの修羅場をくぐり抜けてきた今だってヤツが相手では緊張する。

 

 単純な力押しでは倒すことができない強敵。

 ハリゼオイとはそんな魔物だ。


「おっし、じゃあさっき説明した通りで行きますからね。いいですね?」

「ん、了解」

「……任せろ」

「んだば、やってやるのおぅ」


 テイシ、スペシオールさん、シキが返事をする。

 俺はハリゼオイの倒し方を全員に説明していた。

 

 魔石からハリゼオイが湧いたら、まずシキがハリゼオイの足を束縛系の魔法で縛る。

 そして身動きが取れなくなったハリゼオイの両手を、俺とスペシオールさんが武器で押さえつける。

 あとはガラ空きになった腹に、テイシが近接系WS(ウエポンスキル)を叩き込む。いまのテイシの実力ならば一撃で倒せるはずだ。


「ラティ、倒し切れなかった場合はフォローを頼む。葉月も障壁を頼むな、爪に当てなければ持つはずだ」

「はい、ご主人様」

「うん、わかった、陽一君」


 俺は倒し切れなかった場合の指示も出しておく。

 全て予定通り行くとは限らない。

 

 早乙女からは、わたしの出番はないのとか目で訴えられるが、コイツの場合は嫌な予感しかしないので出番は無しだ。

 もし予定外のことが起きるとすれば、何となくコイツが原因な気がする。


 そもそも早乙女は三雲のような精密射撃は苦手だ。

 それに下手をすると、俺、テイシ、スペシオールさんを巻き込む散弾系のWSを放ちそうな気がする。

 一度喰らったことがある身としては、どうしても警戒してしまう。


「うん、やっぱ無しだな……」

「あの、ご主人様。外の方たちですが……始めたようです」


 思考(厄介)にとらわれていると、ラティがおずおずと報告にきた。


「……そうか。で、どんな感じだ?」

「あの、およそですが、60名を超えるアライアンスのようです」


「そっか。まあそれだけ居んなら何とかなんだろ」

 

 いま俺たちが狩りを行っている場所は、昔、ハーティや赤城たちが魔石魔物狩りをしていた大部屋だ。

 この大部屋への入り口は狭いので、そこを土魔法などで塞げば誰も入って来られなくなる。


 要は部屋の扉を閉めたような状態だ。

 帰るときになったら土魔法で作った壁を壊せば良い。


 俺たちが地下迷宮ダンジョンに入ることに気が付いた駄目冒険者の連中は、俺たちのことを当てにして魔石魔物狩りを行おうとしていた。

 ハリゼオイが湧いてピンチになったとしても、俺たちの近くに居れば助けてもらえるという厚かましく図々しい考えだ。 


 ノトスの深淵迷宮(ディープダンジョン)でも似たようなことはしているが、あれはお互いに助け合うことが前提だ。決して一方的な関係ではない。

 

 だから俺たちは通路を塞ぐことで、『助けない』『頼るな』という意思表示をした。


 そしてラティの【心感】で探った結果、どうやら俺たちのことを当てにしてやってきた連中は、集まった全員でアライアンスを組んで魔石魔物狩りを始めたようだ。


 それだけの人数が居るのならば、余程のことがない限り大丈夫だろう。

 分散して各自の稼ぎを上げるよりも、全員で一つに纏まって安全を取ったようだ。

 

「んじゃ、あっちは平気そうだし、こっちに集中するか」

「はい、ご主人様」


 

      ◇   ◇   ◇   ◇   ◇



「ハズレか。サリオ、やっちゃってくれ」

「了解してラジャです。火系魔法”炎の斧”」


 ごうっと燃えさかる炎で出来た戦斧が、固い表面を持つ魔石魔物のイワオトコをバターのように切り裂いた。

 

 黒い霧となって霧散していくイワオトコ。

 並の魔法では歯が立たない魔石魔物のイワオトコだが、サリオの炎の斧(魔法)には関係なかった。


「むふ~ですよです」

「よっ、さすが焔斧!」

「もう斧じゃねえな……」

「次はあたしにやらせろっ! 一発でズタズタにしてやる」

 

 どや顔のサリオをヨイショする陣内組のメンツ。

 そしてそれに対抗心を燃やすポンコツ2号。

 

 俺は巻き込まれないように早乙女の後ろに回る。

 射線付近に居たヤツらも、さり気なく横へと移動していく。

 

「早乙女、ハリゼオイが湧いた場合は手を出すなよ。あれに放出系は相性が悪すぎるからな。ってか、天敵だ」 

「あん? 背中に撃たなきゃいいんだろ?」

「あ、あの、ご主人様。魔石が……」


「合ってるけどっ、違ぇよ! そうだけどそうじゃねえんだよ」

「うん? だから合ってんでしょ?」

「あの……」


「だからっ! いいか、ハリゼオイは――」

「あ、ハリゼオイが湧いたですよです」


「うぉぉぉおおいい!?」



 俺の出遅れによって一瞬ヤバかった。

 葉月が障壁を上手いこと使ってハリゼオイの手を挟み、ヤツの攻撃を遅らせることによって無事に倒すことができた。


 魔石魔物狩りの肝は、湧いた直後の初動だ。

 これをしくじってはならないのだった。



       ◇   ◇   ◇   ◇   ◇ 



「……やはり早乙女が原因だ」


 現在は休憩時間、俺は地面に座って冷静に先程の失敗について考えていた。

 そして出た答えをつぶやいていると……


「あの、ご主人様。……どうなされたのですかそれ?」


 ラティが俺に不思議そうに話し掛けてきた。


「ん? いやちょっと考えごとをしていてな」

「あの、いえ、そうではなくて……それのことなのですが」


「へ?」


 ラティが示す先に目を向けると、俺が腰を下ろしている付近が荒れていた。

 地面を何かで突き続けたような凸凹が広がっており、まるで俺が八つ当たりで荒らしたかのようになっていた。


「いや、何もしてないんだけど……最初からこうなってたのかな?」

「あの、そうですか。でしたら良いのですが……。あの、ご主人様。バルバスさんから、あと2~3匹倒したら今日は終了でどうかとのご提案が」


 ラティは本来の用件を俺に伝えてきた。

 今日は調査が目的なのだから、このまま魔石魔物狩りをするのではなく、今日はもう帰って休もうとのことだった。


 俺はそれに同意し、あと3匹湧いたら終わりにしようと返した。

 それから2時間後に3匹目が湧き、それを倒した後、俺たちは帰り支度をした。


 サリオが作った土の壁は、世界樹の木刀で突いて崩壊させた。

 土の壁は地面をせり上げて作ったモノだが、それを構築したのはサリオの魔法だ。

 ならば魔法殺しである木刀で軽く突くだけで崩壊する。


「おっし、終わり。んじゃ、帰りますか」

「あいよ」

「置き忘れの魔石とかねえな?」

「さて、戻ったら魔石を売っぱらって、そんでそれで飲むか?」

「あれ? ここっていくらで売れんだっけ?」

「まあ、余裕で酒代にはなんだろ」

「階段は――いえ、何でもないです」

「馬鹿っ、ハヅキ様の前で何言ってんだ! ちゃんとハンドサインを使え」

「…………」

「……」



 地上に戻った後の予定を口にしながら帰路につく。

 そして大部屋から出てしばらく歩いていると、駄目冒険者のアライアンスが狩りをしている所に出くわした。


 だが特に挨拶をするような間柄ではない。

 しかし俺たちの方が無視をしても、あちらの方は違うようで……


 ( ……嫌な視線だな )


 その視線を一言で言うならば妬み。

 嫉妬よりも重く、もっとネチっこい視線を向けていた。

 60人を超える視線はなかなかのもので、俺は自然と庇うように動いていた。

 

 そして俺に同調でもするかのように、陣内組のメンツも葉月と早乙女を庇うように壁となった。


 相手も馬鹿ではない、自分たちの視線が遮られたことに気が付き、けっと悪態をついた、その時――


「そこっ! 魔石揺れてんぞ!」

「おい、そっちも!」

「配置に着けっ」

「おいっ、どっちからやるんだよ!」

「優先通りだよ! イワオトコが先に――くそっハリゼオイだ!」

「そっちを先に――クソッタレ、こっちもハリゼオイだよ、ちくしょう」


 湧いた魔石魔物はハリゼオイだった。

 二体のハリゼオイが、隙を突くように同時に湧いた。


 こんなことは滅多にない。

 いくら湧くことがあるとはいえ、そこまで湧くことのないハリゼオイが同時に二体湧いたのだった。


 虚を突かれ、想定外の状況に駄目冒険者たちは浮き足立っていた。

 ハリゼオイを縛る魔法を唱える役目の後衛は、どちらを先に縛るべきか迷い、それが致命的な後れとなった。


「っぎゃあああ!!」


 ハリゼオイの近くに居たアタッカーの腕が宙を舞った。

 そして血飛沫を上げながら、べちょりと地面に転がったのだった。

  

読んで頂きありがとうございます。

宜しければ感想など頂けましたら嬉しいです。


あと、誤字脱字のご指摘なども……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ