表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

52/690

蘇生

ふわふあ~

 ――俺は、

 どこか暗いが明るい場所を漂っている、

 まるでSF映画で見たことのあるような宇宙空間をふわふわと‥‥



 そして遠くに、手足を割れたガラスみたいなモノに挟まれ、身動きの取れない男が見える。見た目は30前後だろうか、ぐったりと首を横に傾けた男が、、。


「――――!!」

「――――――」

「――ッ――!?」


「陣内君起きて!」


 ――誰か俺を呼んでいる、、


「目を覚まして!お願い陣内君!」



 ――呼ばれてる、起きないと、


「あああ、良かった、間に合ってよかった、」



 俺は気が付くと、横に寝かされて。

 多分、言葉に膝枕をされている状態だ。



 頭がボーっとフラ付くが、起き上がれない程では無かった。

 『ありがとう』と返事を返し起き上がる。


「助かった、言葉ことのはが回復魔法を掛けてくれたんだよな、」

「良かったです、間に合ってホントに傷が酷くて、、」



 俺は自分がすべきことを思い出す。

 ――すぐに追わなくては!ラティを助けに行かねば!



「言葉!俺はどれくらい寝ていた?それとどうして此処に?」

 

 言葉ことのはに状況の確認をするが、よく見れば彼女は凄い泣き顔していた。



「あああ、ごめん、俺が何かしたみたいだな?」

「ううん、良いの。それよりもホントに助かってよかった」


「陣内君。君はほとんど死んでいたんだよ」

「へ?」


 ハーティが神妙な顔をして俺に話し掛けてきた。



「いや、死んでいたんだ、それ位の怪我を負っていたんだよ」 

「ああ、脇腹か」


「それを言葉さんが無理矢理回復させたんだよ、もしかしたら蘇生だったのかもね」

「そうか、言葉ことのはありがと、、う、?」



 再び言葉の方を見ると。彼女は魔法の使いすぎで気絶しているのか、それとも疲労から寝ているのか。静かに目を閉じていた。


 その言葉ことのはを三雲が支えていた。

( って、三雲いたのか )


「陣内、貴方は言葉に感謝しないさいよ、とても助かるような怪我じゃなかったんだから、それを言葉ことのはが無理矢理治してくれたんだからね」


「ああ、分かってる、起きたら必ず言うよ」

( あの抉れた脇腹を完全に塞ぐなんて、肉も再生している、 )



「もう一度聞くけど、俺はどれ位寝ていたんだ、教えてくれ!」

「ああ、多分だが5分も寝ていなかったよ、ほら其処の彼が君に埋めて証拠隠滅しようとしていたのか、丁度下に降りるところを、魔法で寝かしたんだ」


「なるほど、それならまだ時間は経ってないか」



 少し離れた所に、腕を後ろで縛られ転がされている男がいた。


「あ!サリオは?」

「彼女も寝てるよ、多分 気絶でもしてるのかな?」



 気が付くと俺のすぐ横に、毛布の上で寝かされていた。

 どうやら俺は、テンパっているのか、横にいるのに気付いてなかったのだ。


 

 ――っだが今は!

 

「ラティを助けに行く!」


 今回も酷い理由で浚われたが、どうなってんだよ

 完全に酷い逆恨みだろ、何をされるかわからん、急がないと、



「あ~~陣内君。それなんだけど、きっと平気だと思うよ」

「へ?」



 ハーティは手短に、ラティ達が来たことと、彼女が安全な理由を教えてくれた。

 その内容は。

 

 天幕で三雲組と留守番をしていた筈のラティが此処に来た理由は、防衛戦の指揮をしていたアゼルが忠告に来たからだと。


 アゼルは今回の防衛戦のついでに、ある人物の捕縛も目的にしていたと。その人物は黒獣隊のジャアと、その隊員達9名だと。


 この地で捕縛する理由は、彼等が北の領地で色々と”やりすぎ”だったと。ただ、貴族の息子らしく、街中で捕縛するには、世間体や色々な障害あるからだと。

( 確かに色々とやらかしているな、絶対に、うん )


 そのジャア達、黒獣隊に夜営用天幕を、罰として撤収の片付けを命令し足止めをしていたのだが、何故か巨大な堀の方に向かって行ったと。


 そしてスパイとして潜り込ませていた密偵から、俺の呼び出しと待ち伏せを知り。その件で確認と警告をしに来たが、すでに俺は向かっていたと。


 それを聞いたラティとサリオが飛び出し、今回の出来事に。



「それで、その潜り込んでいるスパイがいるから平気だと?」

「うん、だから今 急いでラティさんを助けに行かなくても平気だよ」



 ――スパイってのは、多分、ラティを運ぶ事を提案した奴だろうな、

 確かに入ったばかりの新人だって言っていたな、

 

 あの提案は、ラティを一時でも助ける為のモノだってのは理解できたが、、




「本当に安全と断言出来るのか?」

「陣内君ごめん。正直に言うと完全には無事じゃないかも知れない。ただ、アゼルさんが逮捕の邪魔はするなと」



 僅かでも頭に浮んでしまった可能性。

 相手が下衆なら十分考えられるありえる可能性。

 捕縛のみを優先した場合の可能性。



 俺には口にすることも出来ないことだが、ハーティは。


「ラティさんを餌に、あの連中をひとつの天幕に集めて包囲してからの、捕縛の作戦の可能性もあるかも。アゼルさんは絶対に今回は、逃がす訳にはいかないと言っていたんだ」



 権力者の息子だから一旦屋敷や何処かに引き込まれると、手を出し出来なくなる。権力者の力が届き難い場所で捕縛して、護送してしまいたいと。


( 元の世界でも似たような事があるな、帰国されたら手出し出来ないとか、)


「行ったらアゼルさん達が行う逮捕の邪魔をすることになるよ?」

「それで?」


「それと陣内君。ラティさんの命は助かると思うよ絶対に」

「それで?」


「もし無理に助けに行けば、今度こそ君が命を落とすかもだよ?」

「それで?」


「助けに行かなくても、助かる可能性の方が高いよ?」

「それで?」


「それでも君は行くのかい?」

「ラティを助けに行かない理由が、俺には無いからな」



「そう言うと思ったよ」


 ハーティは芝居じみた動作で、両の手のひらを上げて首を横に倒し『やれやれだ』と聞こえて来そうな仕草をしてから、俺に向き直る。



「それじゃ、惚れた相手を取り戻しにいきますか!」

「へ?ハーティさん、?」


  

 ハーティはすぐさま、サリオと言葉の面倒を三雲にお願いしてから、次は俺に魔法を掛けてくる。


「ハーティさん。この魔法は?」

「これは移動補佐魔法だよ、分かり易く言うとマラソンが速くなる」


「急いで行くよ陣内くん、俺達の惚れた女を取り戻しに」

「いや俺達のって、ええ?おかしいでしょ!」



「ほらほら、行くよ」



 ハーティは俺の言葉をバッサリと無視して走り出した。

 俺はハーティに2~3個言いたいことが出来たが、今は感謝しつつ後を追った。







         ◇   ◇   ◇   ◇   ◇







 ここは防衛戦の堀から距離にして500~600㍍離れた場所

 なだらかな起伏が続く草原地帯


「たく、隊長と新人だけ先に馬車でいくなんて、」

「あれだろ、遅れてから来いってことだろ、察しろ」

「あえて言ってるんだよ、歩くのダルいしよぉ」

「どうせ全員は馬車に乗れないんだからいいだろ?」

「ッチ、俺が魔法で寝かしたのに、」



 愚痴を吐きながら、踏み固められた道をゆっくりと歩く集団。



「しかし、隊長も無茶するよな、殺しと人攫いって」

「別にいつものことだろ?」

「いくら伯爵だかの貴族の息子だからって平気なのかよ」

「平気なんじゃねぇの?しらんけどな」

「まぁ、それよりも楽しみだな、あの狼人は、」

「確かにな、狼人族とか趣味じゃないけど、アレは別だな」

「俺も一目見た時に、いいなって思ってたんだよな」

「正直言って、こういう美味しいのがあるから、隊長についていくんだけな」

「あるある、隊長についていくと結構無茶でもいけるからな」

「取り敢えず、急ぎ過ぎて機嫌損ねないようにしないとだ」

「帰ってみたら、気まずいタイミングでしたとかヤダだな」



 ――ッゴ!!!  バタリ、

「ん?」

 ―ッガ!!   バタ、


「なん、」

 ―ッド!!  ズザァ、、 


「あ!なんだテメーって、お前は!!」

「帰れると思うなよー!」

「いつの間に後ろに!」


「陣内君!囲まれないように乱戦に持ち込んで!」

「分かってる!」


「止めれば僕が寝かしていく!」

「もう俺ごと全部沈黙掛けちまえ」


「――!!」

「――――!」

『――!?――!」

『――!?」


 俺とハーティは奇襲をかけて、8人を同時に相手にした。

 

 

 作戦はハーティが考えた。移動補助を掛けてもらい走りながら、ハーティが提案してきたのだ。

 

 内容は

 音の遮断魔法で近寄り、無言で相手を木刀で殴り奇襲を仕掛ける。その後は、相手に同士討ちを誘うように乱戦に持ち込む。


 動き回る速度が足りない分を、ハーティから速度強化魔法を掛けてもらう事で解決した。俺に強化魔法を掛けると、本来は速度が1.2倍程度の魔法効果が、俺だと1.5倍の効果があるらしい、ほぼ倍の効果に近い。


 一度接近してしまえば、どうしよもない雑魚達だったのだ。


 木刀で殴り、動きの止まった奴からハーティが睡眠効果の魔法や麻痺魔法で無力化。それに範囲沈黙魔法を使えば、相手は魔法も使えなくなる。


 先にこれを使ってしまうと、冷静に対処される可能性があるので、まずは混戦にする必要があったのだ。



 結果、2分も掛からずに8人の無力化を達成した。



 ハーティから簡単にではあるが事前に魔法の説明も受けていた。

 攻撃魔法は飛んでいき、それが当たる事で力を発揮するモノ。

 これの命中精度はかなり良いみたいだ、狙った場所にほぼ飛んでいくと。


 実際にサリオと魔法戦の練習をした時に、それは感じていた。



 次に弱体や強化魔法や妨害魔法は、位置範囲を決めて、そこに魔法の力を発生させるモノだと。

 飛んで来るのとは違うので、結界の小手では防げないようだ。盾で防げるのは飛んで来るもの、その場に発生するので盾を出しても意味がないみたいだ。



 なので、魔法の対処方法は動きまわること、これでほぼ防げるらしい。注意するのは、気付かれない場所からの、睡眠魔法や弱体魔法の奇襲。こればかりは防げない。



 そして真に凄いのは、この内容を簡潔に1分ちょっとで俺に説明しきった、ハーティの頭の良さ・・だ。元の世界に居れたら、きっと良い先生になれたかも知れない。

( コミュ力が異様に高いな、 )

   

 もしかすると、ハーティに与えられたチート能力かも知れなかった




 そして現在俺達は、寝かしている8人を、、。


「陣内君。コイツ等はどうする?縛り上げておきたいけど、縄が無いから」

「ほっといて急ぎましょう」



 俺はそう言って走り出す。そしてハーティは俺を追いながら、困惑した表情で放置した8人の方を見ながら話し掛けてくる。


「魔法で寝かしたけど、もしかしたら5分もすれば起きてしまうかも知れないよ?一応奴等も捕縛対象だから、逃げられるとマズいみたいだけど」


「ハーティさん。俺の目的は何ですか?」

「――っ!?なるほどね、確かにそうだったね、よし急ごう!」



 俺達の目的はラティを無事に救出すること。

 あの8人を倒したのは、隊長のジャアをぶっとばす時に邪魔をされる可能性が高く、無視して先に進めば、辿り着いた先で挟み撃ちされることになるからだ。


 決してアイツ等を捕まえる為に倒した訳ではないのだ。急いでいる今は、縛り上げている時間が惜しいので、放置することを選択したのだ。



 それを即座に理解し納得もしてくれるハーティは、俺と同じで、ラティを最優先にしてくれるということだ。


( 後でアゼルさんに怒られるかもな、)





           ◇   ◇   ◇   ◇   ◇






 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 ???


「この馬鹿!早く中に運べ!ったく、ドンくせえ奴だな」

「はい、スイマセンねぇ~」


「んだぁ?口のきき方しらねぇみたいだな、なんだコイツは」

「はぁ、」



 ――っち ホントつかえねぇ奴だ、馬車はトロトロ走らせるし、途中で意味もねぇ車輪のチェックとか始めるし、他の冒険者共は街に向かってるからよかったが、女を隠して運ぶのも遅えしよぉ、


 後でアイツ等が戻って来たらシメさせねえとだな、

 

「女は手を後ろで縛っとけよ、あと足は、、」



 ――この女の動きはヤバかったからな、まぁ足を縛ってもヤレるしな、一応念の為にと、


「おい!あと両足も縛っとけ、ついでに弱体魔法も掛けとけ!それで中に運んだらすぐ出てけよ、そんで外で見張りしてろ」


「はぁ、すぐ始めるんで?」

「なんだその気の抜けた返事は!さっさと中に運べ!」



 女を運んでいた男が、他の天幕よりも一際豪華な天幕の中に運び込む。それを眺めながら命令をしていた男は、つい先程の事を思い出していた。


 

 最初は腹いせに奴隷でも奪ってやって泣き顔でも見てやろうと思っていた。確かに強い奴だが、自分は領地に戻れば、おいそれとは手が出せないと思っていた。



 腐った魚みたいな目をしていたが、奴隷の話になったら目が変わっていた。此方がどんなに上の立場の人間だろうと、ソイツはヤリ・・に来るタイプだと直感した。


 後先考えずに、やらかす人間だと。たかが奴隷の為にソイツは貴族だろうが王族だろうが、ヤリに来ると。



 殺すまではしないつもりだったが、生かして返すと絶対にマズいと、だから魔法で逃げられないように攻撃させたし、トドメも任せた。



「まぁ殺したし心配することはないな、ウチの連中が戻って来る前に楽しむか」


 ――赤首奴隷だから終わった後は売れなくなるが。どうせ【狼人】だし元から高く売れないから別に構わないか、連中にくれてやってもいいしな、






「見つけたぞ、この野郎――!!」 

「ん?――っな!なんでテメーが!」


 ――なんでアイツが生きてんだ!?

 殺したはずだろ!?おい、他の連中は何処行ったんだよ!トドメを刺しに行った奴は?ちょっとまてよオイ、あの堀に降りて普通に生きて戻ってきた”化け物”とまともに正面からヤレってのか!




 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 ――しまったー!思わず声を上げちまったよ。

 無言背後からブン殴ってやろうかと思ってたのに、見つけたらカっとなっちまった、まぁいいか、正面からぶん殴る!


 ジャアは派手な天幕の前で棒立ちになっていた。


「ラティを返してもらうぞ!このクソ野郎!!」

「くっそぉ、おい新人お前が囮になれ、その間に俺が逃げて助けを呼ぶから」



 ジャアが声を掛けると、天幕の中からひょろりとした男が姿を現し、頭の後ろを手で掻きながら小馬鹿にした態度でジャアに伝えてくる。


「いや~~隊長さん、もう詰んでますので、ねぇ?」



 彼はそう言って周囲に目をやると、完全に包囲したことを示すかのように、派手な洋紅色で統一した鎧を着た騎士達が30名ほど姿を現した。 


「っんな!まさか俺を捕まえようってのか?」

「そんな感じです♪あ、でもその前に後ろ見たほうがいいですよ」


 ひょろりとした男が軽いテンションでジャアに話しかける。そして話し掛けられたジャアが、ひどく怯えゆっくりと此方に目を向ける。



 俺はジャアと目が合うと、それが合図のように奴に向かって走り出す。


 奴との距離は約30㍍。相手が魔法で反撃を行うには十分な距離。


 

 ――っだから、正面から突っ込んで魔法攻撃を誘う!

 


 そして狙い通りに、ジャアは手を突き出し魔法を唱えてきた。その魔法が見えた瞬間に横に避け、そして一気に距離を詰める。


 魔法は的が狙いやすければ、正確にその場所に飛んでいくのだ、それなら真っ直ぐ進みワザと相手に狙わせて、魔法が発動した瞬間に横に避ければ必ず避けれるのだ。


 逆に動き過ぎると、相手が適当に放った魔法に当たる可能性があるので、正確過ぎる魔法を逆手に取って回避した。

 

 

 そして最後に相手が出来そうなことは、接近される直前に前方に対して範囲の広い魔法を唱えて反撃すること。それを先読みし拳を地面に突き立てる。


「ファランクス」


「――ッボッフゥ!!――」


「ぶぉお!?魔法が跳ね返った」


 最後の賭けの範囲系の爆発魔法を、結界の小手で防ぐ。そして


「――ふぅッ!」


 小さく掛け声を出しながら、鎧の隙間の腹部に木刀を穿つ。


「ガッハ!!」


 ジャアは呻き声を上げながら、腹を押さえ体をくの字に曲げる。そしてくの字に体を曲げた事により、胸の高さまでに下がってきたジャアの顔を


「ッシャ!」


 肘を折りたたみショートフックのモーションで、こめかみを掌底で打ち抜き横に吹き飛ばす。こめかみを打ち抜かれたジャアはそのまま、地面に顔から着地した。



「ああ、アレ痛いんだよね」


 後ろからハーティの感想が聞こえてくる

( そういやハーティにも喰らわせたな )



 ――あとは、これ以上魔法での反撃が出来ないように、潰せば終わりと、 


 特に何処を潰すのかを決めずに、ジャアの反撃を用心しつつ近寄ろうとすると。



「あの、ご主人様 これ以上はもう宜しいかと、」


 いつの間にか、ラティが天幕の入り口の前に立っていた。彼女の姿は、草色の肌着に薄い緑色のバトルスカート姿、そして真紅の首輪それを確認して気を緩めるが。






 ――すぐに周りを警戒した!――


 経験上この瞬間が一番狙われると感じ・・たからだ。


 そして感じた相手は、北原とかでは無く、横に吹き飛ばしたジャアが最後の悪足掻きに魔法を唱えようとしており、即座に詰め寄り顎を踏み抜いた。



「―――!―ッ!――!!―」


 何かを必死に叫んでいるようだが、たぶん『痛い』とかそんなことを言っているのだろう。やはり油断するのは危険と思い追撃を行おうとしたが。



「ご主人様失礼しました、ですが後は周りの方に任せた方が宜しいかと。」


 ラティに言われて周りを見渡すと、派手な色をした騎士達が慌ててジャアの保護に駆け付けていた。



「あの、ご主人様もう安心なので、お休みください」

「いやまだ、ジャアをやらないとヤツは、」


 ラティが心配そうな顔で語りかけてきた。


 ――まだアイツはラティを狙うかも知れない、少なくともまだ魔法を使おうとしていたし、



「もうお休みください、ご主人様の顔色が、、」


 ――ひょっとしたら、今日は流血が多かったから酷い顔をしているのかも知れない、


 ラティは若干涙目になりながら、しかし気丈な態度は崩さずに懇願してくる。


「あの、だから、どうか‥‥」

「じゃあ、素直に休むからお願い聞いてくれる?」


「はい、わたしに出来ることでしたら」

「それじゃ尻尾と頭を撫でさせてくれる?」


「はい、いくらでもどうぞ」



 ラティは即座に答えてきた、一瞬も迷わずに。

 俺の見間違えかも知れないが、微笑みを浮かべて答えてくれた


 俺はそれを聞くと、気が抜けたのか立って居られずに、その場で両の膝をついてしまった。


「だからヨーイチ様、お休みください」


 ラティはそう言って俺の顔を胸に優しく抱え込んだ。そして本格的に血が足りなくなってきたのか、それとも別の場所に血液が集まった為なのか。


 急に意識が遠のいていく。



 俺はラティの胸の柔らかさに意識を断ち切られた。 

読んで頂きありがとうございます!


ご感想などお待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 主人公はラティの命を救う,ジュエリーの色は変わりません,処女危機は奇妙ではありません,主人公は無駄に命を落とした,ラティ脱出アクションなし,睡眠魔法はコンパニオンマジシャンによって使用…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ