表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

509/690

緊急オーダー

投稿!!

本当はもうちょっと待たないといけないんだけど……

レンズ入れちゃいました。(もう痛くないので


あと、レビュー感謝です!! 感謝です!!

 違法奴隷商とは。

 要は、人身売買を生業とする奴らだ。


 普通の奴隷商も人身売買を生業としているが、一応、人と人との契約による取引が成立している。


 例えば赤色首輪の奴隷がそれだ。

 エッチ(性的)なのは無しという契約がある。当然、違反すれば即没収だ。

 過去に二回ほどそれを味わったことがある。俺は悪くないのに……


 ギームルの言った違法奴隷商とは、そういった契約やルールがない人身売買をする連中だ。完全に闇の部分だ。

 俺は奴隷商というモノが存在しているのだから、そういったヤツらはいないと思っていたのだが、どうやらそれは勘違いだったようだ。


 よく考えてみれば、元の世界でも似たような者が存在している。

 だからそれがあってもなんら不思議ではなかった。



「どうじゃ? この仕事を引き受けるか?」

「あ、ああ……ちょっとだけ考えさせて――いや、やるか」


 僅かな逡巡のあと、俺はギームルからの依頼を引き受けることにした。

 違法奴隷商狩りということは、相手は人間だ。人を斬る可能性があるので、俺は一瞬だけ怯んだ。 

 

 だがしかし、決して野放しにして良い相手ではない。

 これは正義感ではなく、ラティという奴隷がいる俺にとって、何となく無視したくない問題だった。


 普通の奴隷商でもそこそこ酷い扱いをしているのだ。

 それが違法ということは、もっと酷い扱いをしていることは容易に想像ができる。


「……ギームル、その違法の奴らって」

「ふむ、一応説明をしておこう――」


 ギームルからの説明は、吐き気を催すようなものではなかったが、それなりに憤る話だった。


 この異世界(イセカイ)の奴隷制度では、最初に身を売る側と買う側で取引が行われる。 

 身の売り方で値段が上下するし、種族や見目麗しさで値段が跳ね上がったりする。当然、その逆もあるが……


 要は、最初に何かしらの取り決めが発生する。

 そしてこの異世界(イセカイ)では、売る方の同意が無ければ無効となる。

 奴隷落ちするときの契約を交わせるのは、奴隷落ちする本人かその親だけとされている。


 それ以外の者が、誰かを奴隷落ちさせることは原則的にできない。

 もしそれらを無視すれば重罪となる。

 仮に無理矢理奴隷落ちされたとしても、奴隷となった者が訴えて正当性が認められれば解放されると、俺は最初にそう教えてもらっていた。


 しかし違法奴隷商は、その手順を一切踏まず誰かを奴隷にするヤツら。

 文字通り、人狩りをする連中のこと。


 そこで取引される奴隷たちは一切表には出されず、人目につかない裏で扱われる。


 ラティのように街中を連れて歩くことはできないが、屋敷の中や、周囲から隔離された場所でなら使うことはできるのだ。



「……はぁ。まあ元の世界でも、よその国じゃそういったのがあるってテレビで見たことがあるな」


 俺はそんな感想を口にした。

 正直、この異世界(イセカイ)の奴隷制度は意外とマシだと思っていた。

 金で人が売り買いされてはいるが、人の()や尊厳までは売り買いされていなかった。


 自分の奴隷だからと、勝手に命を奪うことは禁止されていたし、奴隷側にも多少なりの拒否権もあった。


「ってか、何で俺にそれを頼むんだ? そういったのって警備兵とかそういうのが相手にするんじゃないのか?」 

「ふん、自分で言っておるではないか。警備兵は警備、衛兵とてそうじゃ。要は起きた事態に対して対処する者たちじゃ。踏み込む、攻めることに関しては冒険者の領域じゃ」

「そうことだよジンナイ。兵士たちは守るなどの訓練はしているが、建物とかに攻め込むといったことは訓練していないからね。それを無理に運用すればどんな被害が出るか分かったもんじゃない。だからこういった案件は冒険者に頼んでいるんだよ――」


 ギームルに代わり、アムさんが冒険者()に依頼する理由を話してくれた。


 兵士たち向きではない違法奴隷商狩りは、基本的に冒険者に依頼するらしい。

 ただ、冒険者に依頼するといっても、信頼の置ける冒険者にだけ。

 信頼のできない者に依頼すると、その情報を売られてしまう危険性があるのだとか。


 だから街を治める領主たちは、騎士や兵士以外にも、信頼の置ける冒険者を囲っているのだとか。ノトス(うち)でいうと陣内組がそれだ。

 囲っている冒険者には多少の融通やお目こぼしをして、こういったときに彼らに働いてもらう。


 しかし今回は、その陣内組が別件の依頼で既に動いているそうだ。

 それは広範囲防衛戦。

 現在ノトスでは、その広範囲防衛戦が行われているそうで、陣内組の大半はそれに駆り出されているそうだ。


 そしてそんなときに俺が帰還したので、丁度良いと今回の件を依頼したらしい。



「そうか、そういや言ってたもんな。そんな兆しが観測されたって……」

「ああ、だから頼んだぞジンナイ。そろそろ依頼した物が仕上がる頃だろうし」


「ん? 依頼した物?」

「うん、今回の作戦に必要な物をららんに頼んだんだよ。作戦を成功させるために必要なものを――」

「アムさ~んっ、依頼された物やけどな、やっぱ一文字分しか――って、じんないさん。そっか、さっきの騒ぎはじんないさんが帰ってきたからか」


 ノトス専属の彫金師ともいえるららんさんが、ノック無しで部屋に入ってきた。そして俺に気が付くと、いつもの『にしし』な笑顔を見せてきた。


 俺はその『にしし』を見て、彼に借金をしていることを思い出す。


「ただいまです、ららんさん。えっと、借金のことだけど、ちょっとだけ待ってください。アムさんからの依頼を受けて、そんで返していくんで……」

「ららん、頼んでいた付加魔法品アクセサリーは?」

「ほいよアムさん。でものう、さっきも言いかけたことやけど、やっぱ一文字が限界やのう」 


 アムさんの執務室にやってきたららんさんは、そう話しながら緑色の石が付いたネックレスをアムさんに手渡した。


 アムさんはそれを首に掛けて、自分のステータスプレートを開いた。


ステータス


名前 トス・アムドゥシアス

【職業】公爵

【レベル】23

【SP】168/168

【MP】195/209

【STR】 117

【DEX】 107

【VIT】 121

【AGI】 98

【INT】 120

【MND】 132

【CHR】 148

【固有能力】【鑑定】【指揮】【伊達】【神格】【僥倖】【絶倫】【楽天】【心響】【死心】【博打】

【魔法】光系 水系 風系 火系 土系

【EX】毒感知(大)耐毒(大)風守り(中)

【パーティ】



 ――――――――――――――――――――――――



「なるほど、確かに一文字だけか……。これだと少し弱いな」 

「何か力のある魔石でもあればもうちっといけるんやろうけど、手持ちの普通の魔石じゃこれが限界やのう」

「あ、これって偽装とかのアクセサリーか」


 話の流れから察するに、これでステータス(名前)を偽るなどをして、例の違法奴隷商と接触するつもりなのだろうと判った。


 ああ言った手合いの黒幕は、奥の方に潜んで下っ端に仕事をさせるものだ。

 だからこのアクセサリーを利用して内部へと入り込み、黒幕の尻尾を掴んでから踏み込む。


 俺は『なるほどな~』と思いながら、ふとあることを思い出した。


「そうだ。ららんさん、これって使えないかな?」

「うん? これって魔石――って、じんないさんっ。これをどこで? いや、竜の巣(ネスト)に行っておったんやから、そこで拾うてきたんか。なるほど、これなら確かに……」


 ららんさんは、俺から渡されたシャーウッドさんが宿っていた魔石にかぶりつきとなった。

 こぶしよりも小さい魔石を、横や下からも覗き込み、『にしし』な笑みを深めていく。


「ほう、【嗤う彫金師】の御眼鏡に適うほどの物か」

「これなら余裕やのっ、借金帳消しどころか金貨50枚を支払うでえ」

「マジかっ!? じゃあこれとかは?」


 俺は残りの魔石もららんさんに見せた。

 それを見たららんさんは、それはもう本当に良い嗤い顔(笑顔)だった。



 その後、ららんさんは魔石をもっと調べると言って出て行き、残された俺たちは今後の話を詰めた。


 違法奴隷商の件も大事だが、俺たちにはもっと大事な仕事、中央の地下迷宮ダンジョン攻略という大仕事が残っていた。


 地下迷宮ダンジョン攻略への調整や根回しなどは、一日や二日で終わるものではない。そして何より、中央からの許可も要る。

 

 俺はその辺りの説明をギームルから受けた。

 全部丸投げしてしまいたところだが、できる限り内容を頭に叩き込んだ。

 そして話を終えた俺は、癒やしを求めてモモちゃんのところへと向かった。


 モモちゃんがいるのは離れの屋敷。

 そっと扉を開けて中に入ると――


「ちあちぁ~」

「どこだぁ~?」


「ちらちらー!」

「こっちかなぁ~」


 離れの屋敷の中では、モモちゃんと早乙女がテンチラをやっていた。

 階段の影から顔を覗かせるモモちゃんを、下っ手くそな芝居で探す振りをする早乙女。余程テンチラに夢中なのか、早乙女は入ってきた俺に気付いていない。


 俺は音を立てずに忍び寄り――


「…………おい」

「ひゃうっ!? え? 陽一? こ、これは……何でもないのぉおおお」

「あぇ?」


 早乙女は叫びながら奥へと走り去って行った。

 それはとても、いかにもポンコツテンプレらしいリアクションで。


「何やってんだか。本当はアイツもこれをやりたかったのか……」

「ちあちあ?」

 

「ちらちらー!」


 早乙女がモモちゃんを放り出して行ったので、俺がテンチラを引き継いだのだった。

読んで頂きありがとうございます。

宜しければ感想やご質問など頂けましたら幸いです。


あと、誤字脱字なども……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ