プランB
誤字脱字を減らす方法が欲しい……
読み直す以外でorz
弾けた火花のような光が、消えることなく周囲へと飛び散っていった。
さすがのラティも、こういった偶発的な不意打ちには反応できない。
自身を狙った意思があれば、【心感】を持つラティなら死角からの攻撃であろうと反応できる。
だがこれは違った。
飛び散った光の針が、ハリゼオイと対峙しているラティの背中へと――
「パリィいいいいいいい!」
堀の向こう側で、唯一戦闘に参加していなかった小山だけは、不意打ちのようなこの攻撃に反応してみせた。ほとんど横っ飛びに近い体勢でラティを庇う。
「ナイス小山!」
「へっ、任せろってんだい。オラの前で女の子に傷一つ負わせるか!」
調子乗ってイキる小山。だが本当に危機一髪だった。
今だけは素直にヤツを褒めることにする。『よくやった』と俺は声を上げた。小山は与えられた仕事をしっかりとこなしたのだ。
しかし強引に割って入ったためか、小山の太もも辺りには光の針が刺さっていた。
大きな怪我ではない様子だが、また同じように動くのはキツイかもしれない。
椎名の方は、聖剣の結界を展開させて被弾を防いでいる。
「はぁ~、良かった。――橘っ! てめえっ、話をちゃんと聞いてなかったのかよ! 放出系でハリゼオイを狙うなって言っただろうが! それとも何だ、お前は人の言葉が理解できねえってのか!」
「ち、違う。ワタシは……そんなつもりじゃない。それに撃ったWSは竜核石を使ったWSなのよ。普通のWSとは威力が全然違うんだからっ。だから――」
橘は、ただただ言い訳を続けた。
自分の撃ったWSはただのWSではない、竜核石を使ったWS。
だから普通の放出系WSとは威力が違う。同じ放出系WSだけど、ただの放出系とは格が違うなどと、そんな言い訳を言い続けていた。
「ワタシは手伝おうとしただけよっ。だって苦戦しているみたいだし……それにアンタなんて何もしてないじゃん。何で陣内なんかに責められないといけないのよ。ワタシはただ、皆が苦戦して困っているみたいだから」
「――ってっめ」
コイツは本当に何を聞いていたのだと、もう喉を潰してその口を塞いでやろうかと手を伸ばし掛けたが――
「ジンナイっ!」
「――ッ!?」
レプソルさんの切羽詰まった声に引かれ、そちらに顔を向けると、肩から血を流しているガレオスさんが俺の視界に映った。
顔を苦痛に歪め、手で肩を押さえているガレオスさん。
そのガレオスさんを庇うように、伊吹が前に出てハリゼオイと戦っていた。
「マズイな……」
「さっきの弾かれたWSが当たったみたいなんだ」
「――ッ!?」
「ちっ、押され始めてきたな……」
伊吹の強さは、軽快な身のこなしから放たれる、思いっきりの良いWSだ。
だが今の伊吹は、怪我を負ったガレオスさんを守るために足を止めていた。
そして横に避けられないことを分かっているのか、ハリゼオイは伊吹へと猛攻を開始。きっとこれは、白いケーキ野郎の指示なのだろう。
自身の動き方が封じられた伊吹は、攻めあぐねてジリジリと押され始めている。
ガレオスさんが大きく後ろに下がれば良いのだが、あの白いケーキ野郎は――
「ぎゃぼー! 何か狼型がやたらめったらガレオスさんの方にですよです」
「”念願のアイスブランド”!」
「あの白いヤツ、ガレオスに狙いを定めやがった。どんどん雑魚を狩ってくれ! 絶対に後ろを取らせるな」
橘の横やりによって、有利だった戦況が一気に不利へと傾いた。
このまま長引くとよろしくないことになる。
「ジンナイっ」
「ああ、分かってる」
「プランBいくぞ。用意しろ。サリオさまも」
「了解してラジャです」
緊急用のプランB、バスター。
俺のリミッターオフチャージによって、一気に白いケーキ野郎を倒す作戦。
正直言って成功率は高くない。まず、距離があり過ぎるのだ。どうしても察知されてしまうだろう。
当然防がれた場合は、俺の強引な突入によって乱戦になる危険性が高い。
出来ることならば、もっと機会を窺ってから狙いたい作戦だ。
だがそんな悠長なことは言っていられない状況。
俺たちはプランBを決行することにした。
「プランBだ! 馬鹿で行くぞ! プラン『馬鹿が行く』だ」
「…………」
戦っているラティたち、精鋭アタッカー組の空気も変わった。
白いケーキ野郎から、戦っているハリゼオイの距離を少しでも離すように動く。各自が後ろに退きながら戦い始めた。
「……甘くないか」
白いケーキ野郎は馬鹿ではない。
自分の護衛である上位魔石魔物を、必要以上に追わせることはしなかった。
何かあればすぐに引き戻せる。そう言った距離をしっかりと維持していた。
「くそっ! やっぱ湧きやがった! コヤマ様、湧いたヤツをお願いします」
「ほいさっ! またオラの出番だな!」
もう一体、新たな魔石魔物級が湧いた。
狼男型に呼び出される形で、巨大な狼が姿を現したのだ。
それを即座に押さえにいく小山。
得意の【捕縛】【重縛】のコンボで押さえ込む。
倒すことは出来なくとも、湧いた直後の魔物であれば、小山なら十分に押さえ込むことは可能だった。
「サリオっ! たたっ切れ!」
「了解してラジャです! ”炎の斧”!」
サリオが唱えた魔法によって、小山が押さえていた巨大な狼は、背からバッサリと焼き切られた。
黒い霧となって霧散していく巨大な狼。
「ナイスっ! ……だけどこれは」
これは運が良かっただけだ。
もし湧いたのがハリゼオイだったら、今みたいな方法で倒すことはできない。
もっと言うならば、もし湧いたのがシロゼオイ・ノロイであれば……
「もう強引に行くしかねえ。サリオ、加速の魔法を――」
「――陣内君。僕が最初に囮で出るよ」
「下元? お前、王女さまの護衛は……」
「うん、その王女様に行ってくれって頼まれたんだ。じゃあ行くよ。もう強化の魔法は十分にもらっているし」
紫紺に輝く雷炎を纏いながら、勇者下元はそう言って前へと構えた。
「はああっ!」
「うおっ!」
下元の身体から、雷を纏った炎が大きく吹き上がる。
髪もぶわっと逆立ち、その姿はまるでどこぞの超凄い戦士。
「ありがとうございます、勇者シモモト様。おらぁっ! シモモト様の後にバカパルト行くぞっ! 誰か馬鹿のために道を作ってくれ」
下元の申し出に礼を言うレプソルさん。
その後に続いた言葉には、色々と訊きたいことがあるが、今はそれどころではないので自重する。
「陽一君、私が道を作るね」
「葉月、お前まで……」
「いくよー!」
元気のよい掛け声とともに、俺たちの前に結界で作られた足場が出来た。
氷で出来た道とは違い、滑ったり割れたりなどはしない結界で出来た道。
これならば全力で駆けることができる。
「カウントいきますっ! 3、2、1、ゼロ!」
「はあああああああっ!」
勇者下元が雷炎を巻き上げて駆けて行った。
明らかに人の限界を超えた速度。一瞬にして約20メートルほど駆け抜け、一気に白ケーキ野郎へと迫るが――
「――ッカアアアアア」
唸り声を上げ、伊吹と戦っていたハリゼオイが下元の突進をカットした。
しかし下元も、止められることは想定済み。即座に切り替えてハリゼオイへと対応した。
雷炎を纏った下元の剣が、ハリゼオイの爪を大きく弾き上げた。
「行け、ジンナイっ」
「任せろっ、サリオ、魔法を――」
「いけるですよです」
既に加速の魔法は掛けてあった。
淡い桃色の風が、俺の身体に纏わりつくように吹き流れていた。
「そこっ、馬鹿が行くから雑魚を寄せるなよ。射線上の魔物を全部退かせ!――いけジンナイ、ヤツに風穴を空けて来い。」
「……ああ」
本当に、本当に色々と訊きたいことがあるが、今は全力で戦場を駆けた――
読んで頂きありがとうございます。
宜しければ感想や誤字脱字などを頂けましたら嬉しいです。
どうやったら誤字が……