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想定外の出会い

資金稼ぎに防衛戦に傭兵で来た陣内達

「レベルの確認が出来ないのですが」 



 俺は必死に言い訳を考えていた。 

 誰かにラティとサリオが絡まれて平気なように、色々と想定はしていた。


 上手く避けれるように考えていたが、まさか自分が原因になるとは。


「あの、すいませんはステータスが特殊でして、、」

「はぁ?」


 受付の男が訝しむ視線で俺を見ている。



「なんか、レベルが表示されないんですよ、」

「でも、30あるか証明出来ないですしねえ、しかもこれって、」


( 俺のステータスが表示のことだろうな、)



「後ろの二人と一緒に地下迷宮ダンジョンにも潜ってますし」

「後ろの二人って奴隷ですよね?二人だけ地下迷宮ダンジョンに行かせてるんじゃ?」



 後ろに並んで順番待ちをしている、冒険者達の視線が背に突き刺さる。

 

( ああ、速く諦めてどけってことかよ )



「証明が出来ないから、参加は無理ですね」

「ああ、待ったえっと、、」



 俺が必死にレベル30超えを証明出来る方法を考えていると、横から。


「おう!陣内じゃねぇかよ、ん?お前も防衛戦参加希望か?」

「、、、荒木」


 

 横から声を掛けてきたのは、勇者 荒木冬吾あらきとうごだった。

 ある意味、会いたく無い勇者No1だ。



「なんだよ、何をモメてんだ受け付けで?」

「これは勇者アラキ様、この者がレベル30に達していないのに参加させろと」


「待ってください、は30は超えていますよ表示はされていないですが」



受付の男は、俺がレベル30に達していないの厚かましく防衛戦参加させろと主張している。面倒な冒険者と決め付けているようだ。


 其処に、嫌な笑みの浮かべた荒木が割り込んで来る。


「なんだぁ~陣内は参加出来なくて困ってるのかよ~。

 仕方ないなぁ~、コイツの参加させてやれ。レベルだけは30あるだろうから」


「なんで、お前が、?」


 俺の嫌がる事をしてきそうなコイツが俺を助ける?

 何か絶対に裏がある。俺を参加させることでコイツに何か得をするような事が。



「あ!でも陣内、しっかり働けよキッチリ監視するからな」

「監視ってなんだよ、、」


「お前がちゃんと 戦える・・・か見といてやるんだよ」



 荒木は何か含みを持たせる様に俺に言ってきた。

 だが、俺には防衛戦に参加が出来る事になるので断る理由も無いので。



「ああ、3人で参加させてもらうよ」




 俺達は北ボレアス領の防衛戦に参加出来ることになった。






       ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 






 そして俺達は、宿泊用天幕に案内された。


 一応男女は別けられ、泊まる場所は別々になった。

 今回の防衛戦の総大将が、なんと女性らしくてそういう配慮があるみたいだ。



 広さ20mを超える天幕の中で、俺は意外な人物にまた出会う。


「やぁ、陣内君ちょっと久々だね」

「俺は東に行くって聞いてましたけどね、ハーティさん」



 食堂でラティを巡って殴り合いをした。冒険者ハーティが居たのだ。

 しかも殴り合いの事など、無かったかの様に笑顔で接してくる。



「いや、東に行こうかと思ったけど、此処で防衛戦が起きそうだったからね」

「え?魔物大移動が起きることを予測してんですか?」


「ん~、まぁそんな感じかな。それに此処の防衛戦は報酬も良いからね」

「あ、それは俺も期待してるんですよ、一人金貨3枚」



「しかも、活躍次第で追加報酬ありだしね」

「今回はウチのサリオが期待出来るんですよね。魔法強化をしたから」



「へぇ~、あのちびっ子は確かに魔法凄かったからね。 

 アレからもっと強化されたのか、それはかなり興味あるね」



 ハーティとは諍いが合ったが、最後の殴り合いかたりあいでスッキリ終わった為か、俺の中では蟠りが無くなっていた。

( ちくしょう、この人コミュ力が高いな )



 それから雑談の流れで、今回の防衛戦の話になっていった。



「ここの指揮、総大将の人がね仕事出来る人だから、

 他の防衛戦よりもかなり戦い易く、そして安全になってるんだよ」



「ん?安全性はともかく、戦い易いって 具体的にどう言う風に?」

「魔物の進行ルートに穴が掘ってあって、魔法と遠隔武器が狙いやすい様に櫓まで複数作ってあるんだよ」



 酷かった前回の南ノトス領とは大きく違うなぁ、

 あれ?それだとサリオとは別行動になるのかな?



「櫓があるなら、ウチのサリオはその櫓の上から魔法使うのかな?」

「多分そうだろうね、ウチだと三雲様が弓使うから櫓に登るかもね」


 今回はサリオとは別行動か~、ちょっと心配だけど、

 サリオの火力を生かすには仕方ないかもな、



 その後は、知り合いなどは居ないと思っていた遠征先で、殴り合いを演じたとは言え一応知り合いとなる、ハーティと一緒に天幕では行動を共にした。


 ハーティの方も、ラティの奪い合い殴り合いをした俺に対して、突っぱねる事も無く受け入れてくれた。

 三雲組パーティメンツの男達からは、若干距離を取られているようだった。



 大規模な防衛戦は、斥候からの情報で明日の朝方と言う報告が届き。その日は、そのまま待機と言う流れになった、


 食事は男女に分かれる事無く、一緒の食事になっていた。

 天幕の外で配給される食事を受け取り、各々が好き勝手な場所で食事を取っている。


 

 俺はラティとサリオの二人と合流して食事を取ることにした。

 こういう人の多い場所でも、パーティを組んでいると居場所が分かるので合流するのは楽であった。


 配給された食事は、焼き鳥の盛り合わせで味付けは塩のみ。米生産地なのに米は出ないのかよと、考えていると、後ろから声を掛けられる。



「陣内君、僕達のパーティと一緒に食事でもどうかな?」

「え?」


 ハーティからの突然の誘いに、少し戸惑ったが。

 奴隷の首輪を着けている二人が居る自分としては、ある程度の人数が周りに居る方が絡まれないだろうと判断して。その誘いを受けることにした。

 


 簡易的に作られたベンチのような椅子やテーブル、すべて他の冒険者達が使用していた為に、俺達は適度に開けた場所を探し、言葉ことのはが【宝箱】から取り出した、地下迷宮ダンジョンでも使ってた休憩用のテーブルと椅子を使い食事を取ることにした。

 


 何か暗黙了解でもあるのか、食事中は男女別れるように席に着いた。

 其処でハーティが、不思議そうにラティのことを俺に聞いてきた。


「ねぇ陣内君、ラティさんって何かいい事でもあったのかな?」

「はい?いや、ちょっと機嫌が悪い筈ですが?」


( 最近、尻尾はおろか頭も撫でさせてくれない。) 


 

「そうなんだ、それにしては表情が」

「表情が?」


「前に会った時に比べて、柔らかくなったな~ってね、前は無表情だったのに」          

「え?そうですか、確かに出会った当初は無表情でしたけど」


「普段から見慣れてるから気付き難いのかもね」

「そんなものですかね」


  

 何気無い会話だったが、なんだか嬉しくなる会話だった。

  


「あと、サリオさんは何時も通りだね。前のデザートの時もそうだったけど」             

「すいません、食べるのが好きなタイプらしく」



 何気無い会話だったが、なんだか申し訳なくなる会話だった。 


( アイツは遠慮を覚えろよ、、)



 その後は、特にトラブルもなく食事を終え解散の流れになった。

 因みに、勇者の三雲には嫌われているらしく距離を取られた。もう一人の勇者言葉にも、謎の距離感を取られていた。


 ハーティからの情報だと、この防衛戦には勇者が5人参加で。

 荒木を抜く後の二人は、柊雪子ひいらぎゆきこ後衛魔法アタッカーと、早乙女京子さおとめきょうこの弓使いアタッカーと教えてくれた。





         ◇   ◇   ◇   ◇   ◇




 

 次の日は、早朝から防衛戦の準備をする事になった。


 斥候からの追加情報で魔物の群れ到着が早まると知らせが来たのだ。

 その為に、人員の配置が少し大雑把になった。俺は中央のメインでサリオは櫓上魔法アタッカー枠、ラティは左翼陣で。皆がバラバラに配置されたのだった。



 今回の防衛戦は、前回の南ノトス領とは違い。しっかりと事前の準備がされていた。

 まず、魔物進行ルートが特定されているらしく、深さ3㍍に縦幅10㍍、横幅100㍍はある巨大な堀があるのが特徴だった。


 前の時は、森から出てくる魔物を倒す形だったが。今回は森から距離を取り防衛ラインを構築されていた。

 戦闘の流れを説明すると。櫓で高さを確保した攻撃魔法と遠隔武器持ちが、進軍してくる魔物を群れを攻撃で削り、3㍍の深さに掘った堀に魔物が落ち、それを上から攻撃し上がって来る魔物を倒す。



 魔物の群れが何故、堀のある場所をワザワザ通過しようとするのか?

 それを聞いたところ、そのルートしか魔物が通らないからだと説明された。

 

 昔から魔物の群れはこのルートを通過する為に、この巨大な堀が作られていると。



 説明は聞かされたが、納得の出来ない返答でもあった。



 そこで俺は少し考えた。

 もしかしたら、これも勇者の楔の効果の影響があるのではと。もしかしたら勇者が望んだルートだとか、そんな都合の良いことが起きているのではと。この異世界で理不尽だったり訳の分からない事は、大体が勇者が原因である。


( 今度、魔石に精神移した人にあったら聞いてみるか。)



 そんな事を少し考え事をしていると、魔物の群れが近くまで迫っていた。

 巨大の堀の手前に冒険者達が約200名、三箇所に設置された櫓上には20名、迫り来る魔物の数は此方の10倍以上に見える。そして中央櫓から声があがる。



「――ッ撃ち方用意!」

 

 指揮官が声を張りあげる。 

 指揮官は、戦い前に防衛戦の説明を行った人だった、金髪ポニーテイルで目つきが少しツリ目で、気の強そうな美人さん。


 名前はアゼル、今回の総大将兼指揮官の人だ。 

 

 

「撃てーー!」


 某艦長のように良いモノを揺らしながら大袈裟に右手を横に凪ぐ。


 掛け声を合図に魔法と弓のWSウエポンスキルが、迫り来る魔物の群れに着弾していく。


――ッドドドドォオオン!!―― 



 巨大な堀の向こう側が一斉に轟音と共に色鮮やかな光の華を咲く!

 魔法や弓WSウエポンスキルの着弾で爆発し、それがまるで花が咲くように見える。



 弓や魔法の攻撃は着弾地点を2~3㍍辺りを吹き飛ばす攻撃を放っていたが、一つだけ違う別のモノが猛威を振るっていた。

  

 サリオの火系魔法”炎の斧”だ。

 長さを20㍍まで伸ばした範囲攻撃型にした炎の斧は、魔物の群れの一角を完全に横凪にしていた。


「おぃぃい!なんかすげぇのが混ざってるぞ!」

「炎の斧ってあんなにデカかったけ?」

「弓部隊の立場ねーな、ざまぁ!」

「お前弓職嫌いだもんな、、」

「弓は最近調子乗りすぎなんだよ」

「弓使いの勇者様がいるからだろ調子乗ってるのって」



「なんか魔法に驚いてるのかと思ったら。突然弓への愚痴が始まってるな」


 まだ魔物が巨大な堀に到達してないので、俺は余裕があってつぶやいていると、俺の横に配置されている冒険者が話し掛けてきた。



「ああ、アレね最近は魔石魔物狩りとかで弓使いが重宝されてたからね。それで近接系、特に片手武器系には嫌われ始めていてね」


「え?それはどういう事で?」

「魔石魔物狩りに参加出来ないことが多いみたいだよ片手剣とかは。弓使いばかりが優先で参加出来るみたいでね」



 ああ、なるほど俺には分かる。他の武器に比べると片手剣WSウエポンスキルは射程とか威力がイマイチだもんな、あの狩りでは活躍し難いな、、、


 俺も共感出来るぜ!弓はズルいよな。WSウエポンスキルは強いうえに遠くから攻撃も出来るし、乱戦が無い戦闘では有利過ぎるよな。よし俺もディスってやろう!



「弓は魔法に比べると大した事ないな~」

( サリオの魔法が異様に強いだけみたいだけどな。)


 

 流れに乗って弓を貶してみたが。俺だけが言うのが遅れて、弓を貶してるのを俺だけが特定される事になってしまったのだ。 

 

( しまったー!極力、波風立てないようにしてたのに、 )


 

 猛烈に反省をしていると、弓部隊が乗っていた櫓から、一人の女性が飛び降りてきた。       



「随分と調子乗ったことを言うじゃない。ハズレ勇者の陣内陽一」

「あ、お前は早乙女!」



 黒く艶がある長い髪をポニーテイルにした、見た目が和風美人の同じクラスの女子生徒、背の高さは俺と同じ位で、女性にしては背が高めの彼女が、俺を威圧するように彼女が睨んでキタのだ。


 

 確かに今回の俺の発言は、調子に乗って言ったことなので、気まずくて反論出来ずに目を逸らしていると、怯んだ俺に彼女は予想外の追撃を掛けてきた。


「陣内、アンタそんなことを言うんだったら、さぞ強いWSウエポンスキルを放てるのよね?いつの間にWSウエポンスキルを撃てる様になったのか知らないけどさぁ」



 確かに俺の失言ではあったが、早乙女は必要以上に俺に食って掛かる。

 俺は自分に非があるので何も言えずにいると、それすらも面白く無いのか、語気を強めて俺に話しかけて来る。



「アンタの横で弓より強いらしいWSウエポンスキル見てあげるわ」

「いや、弓より強いとは言って無いし」


「いいから、穴に落ちた魔物を上からWSウエポンスキルで攻撃するのがアンタ達の仕事でしょ、横で監視してあげるわ」


 其処で再び俺は気が付く。

 

「あれ?これって上からWSウエポンスキルで攻撃する戦い方?」


 その時、俺の横にまた別の勇者が来ていて、話し掛けてきた。



「さぁ陣内よぉ~。WSウエポンスキルでお仕事してもらうか」

「――ッ荒木!テメェこれを知ってて受付で助けやがったなぁ」



 俺の予想が正解だと言わんとばかりに、ニヤついた笑みを浮かべているのだった。


読んで頂きありがとうございます


感想などありましたよろしくおねがいします

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