金欠
うっかり無駄使いをしてしまった陣内!
さぁ、困った
買い物をし過ぎた。
サリオの杖が金貨35枚
魔防装備一個金貨5枚
新しい槍が金貨12枚
薬品雑費で約金貨2枚分
薬品もワンランク上の高性能薬品に切り替えたのだ。
【大地の欠片】も売ったりしたが、残り金貨4枚。
三週間後には、宿代の更新もあるので金貨6枚は確保しないといけない。
その他に食費に風呂代。
「ラティさんサリオさん、ピンチです」
「あの、なんで槍まで買われてしまったのでしょうか?」
「杖は売らないですよーです」
「槍は俺の為に、イーレさんが仕入れてくれたみたいだったのから、」
槍はイーレさんが仕入れて此方の店舗に送ってくれた一品らしい。
掘り出し物の槍があったので、ワザワザ売らずにキープしてくれていたと。
実際に今までの槍よりも凄みを感じる一品だった。
かなり幅の広いショートソードの様な穂先の付いた槍である。
正直、超自分好みの槍の形だったのだ。
「あの、珍しい形をしていますねぇ、
突くだけじゃなく、切り裂くことにも重視している槍ですねぇ」
「そうなんだよ!切ることもやり易くなったし、戦いの幅が広がるんだよ!」
ラティは解っている、この槍の良さを!
これを買わない理由が無い事も分かってくれる筈!
「それで、うっかり買ってしまったと、、?」
( ダメでしたー )
まずい、、ラティさんがちょっと怒ってる、
さすがにお金を使い過ぎだったか、それなら稼ぐしかないわけで、
「なので、明日は魔石魔物狩りで金策をします!」
「何が『なので』なのか知りませんが仕方ないですねぇ」
「あたしの杖の出番ですねです」
なにやらサリオがノリノリだ、やはり杖を使いたいのだろうか、
崖下でユズールさんからの話だと、魔石魔物狩りは不安要素あるけど、
背に腹は変えられないから狩るしかないんだよな、
「今日は、この晩飯食い終わったら風呂に入って寝て明日に備えよう」
「あの、入浴代が掛かりますますので、あたしは、、」
「NOだ!風呂にはキッチリ入る!これは大事だ」
「おおぅ、お風呂にちゃんと入れるのは嬉しい事です」
「あの、ありがとう御座いますご主人様 嬉しいです」
ラティとサリオもやっぱり風呂は好きみたいだな、
やはり金欠だとしてもコレは削ってはいけない経費だよな、
そして次の日
俺達は、金策の為に地下迷宮に魔石魔物狩りに来ていた。
そしてその戦闘で大きな違いが出来ていた。
「圧縮!火系魔法”炎の斧”!」
――ッヒュゥゥォォオオオ!!――
赤い炎ではなく、青白い炎で作られた戦斧。
魔法を弾いていたイワオコトの魔石魔物を断ち切ったのだった。
「ぎゃっぼー!凄いですよ!凄いですよ!
無理矢理魔法を煮詰めるようにしてみたら、凄いです」
魔石杖によって強化された魔法の斧を、刃のサイズを1㍍まで縮めてみたら。
圧縮された分、温度が上がりイワオトコを一撃で倒せる魔法になっていたのだ。
そして俺の槍も
新しい槍と強化された赤布の効果で、イワオトコを切断出来るようになったのだ。
「なんと言うか、強くなったな俺達」
「火力だけ上がりましたねぇ」
「ららんちゃんの杖に感謝です!」
( 買った俺にも感謝しやがれ )
「だけど、魔石の値下がりが痛いな、」
「そうですねぇ、前の1/8ですからね売値が」
もしかしたら魔石魔物が、地上に湧くかも知れないリスクがある割りには、稼げなくなってきてるよなぁ、
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
結局その日稼ぎは、金貨1.5枚分だった。
「うう、前はあんにゃに稼げたのにです」
「俺もそう思うよ、」
「あの、気になったのですが、魔石魔物が湧くまでの時間が長くなっていませんでしたか?」
「ぎゃぼう!気付きたくなかったです、やっぱりです?」
「俺も思った、何か原因があるのか偶々なのか明らかに湧くの遅くなったな」
その次の日は、もっと魔石魔物が湧かなくなり、
魔石の値下がりも重なり、稼げる金貨が1枚以下になっていたのだ。
そしてその日の夕食時。
「あの、ご主人様 これはあまりよろしくない流れですねぇ」
「魔石だけの金策は行き詰まるな、これは」
「まだ稼げてるんじゃないです?」
「いや、もっと魔石魔物が湧かない事があることも視野に入れないとだから」
「ですねぇ、今以上に魔石魔物が湧かない可能性が高そうな気がしますし」
多分ラティは、崖下で聞いた話も考慮しての発言だろうな、
あの地下迷宮の話が正しければ。
地下迷宮で倒し過ぎた魔物は、地上に湧き始めるはず。
本来地下迷宮に溜まる筈の魔物が外に湧くから。
外に居る分の魔物が地下迷宮で湧かなくなることに。
( アレ?外の魔物を倒さないと最終的には、、)
あれ?もしかして、、
歴代勇者達も地下迷宮でレベル上げをしたって聞かされた、
その時は、勇者の恩恵で魔物討伐数が多くなったはずだよな、それなら、、
魔王復活が近いと起きるって言われてた、魔物大移動の原因ってまさか、
魔王じゃなくて、勇者の行動に、、
思考の渦にハマり、そしてある仮説を思い付いたその時に。
――バン!!――
扉を乱暴に開けた音なのか、それとも効果音なのか音が響き。
食堂に駆け込んで来た男が大声で報告をしてくる。
「おい、みんな聞いてくれ!北のボレアス領で魔物の大移動が始まっている!」
稼ぎ時という歓喜なのか、食堂に歓声が木霊す。
「っしゃぁ!来たぜ!」
「時間が遅いから明日朝一で出発だな」
「おい、いまのウチに手配急げよ~」
「北は報酬が良いからありがたいぜ」
何処か無責任な歓声する中で、報告に来た男が続きを語る。
「あ~~それなんだけどな、今回はちょっと厳しいらしいんだ、
なんでも魔物の平均レベルがかなり高いらしくてな、、そのなんだ、、」
「おいおい、なんだよ歯切れがワリいなぁ、」
「なんだよ問題でもあったのかよ?」
男が気まずそうに目を逸らしながら答える。
「参加条件がレベル30以上なんだよ、、」
「はぁぁああ?なんだよ雑魚はイラねぇってかよ」
「30以上なんて高すぎんだろうが!」
「おいおい、そんなんなったら半分どころか、もっと少ないぞ行ける奴は」
「それ間違いじゃねぇのかよ!」
「雑魚にやる金は無ねぇってのかよ!」
食堂を見回してみると、ほぼ全員が文句を言っていた。
あれ?ひょっとしてコイツらみんなレベル30以下なのか、
何人参加出来るんだろ、この町の冒険者は、
( まぁ、俺達は問題無いな )
朝一の馬車の取り合いも少なそうだな、この状況なら、、
「あの、ご主人様 これに参加されるご予定ですか?」
「ぎゃぼー!これはあたしの出番の予感ですです」
「もちろん、冒険者ギルドが使えない俺達でも参加出来る貴重な機会だしな」
「確かに、実入りは良さそうですしねぇ」
( 冒険者ギルド出入り禁止されている俺達には依頼系受けれないからなぁ、)
「あ~~あとな、今回の魔物大移動なんだけど、
多数の魔石魔物も混ざっているって情報が来てるからな」
また此処で、別の意味で歓声と怒号が飛び交い合う。
だけど俺は。
って!これってまさか地下迷宮で魔石魔物狩りまくったのが、
その可能性は十分考えれるな、今回の魔石魔物が多数混ざってる理由が、、
「あの、ご主人様 これはやはり崖下の話の件と関わりがあるのでは?」
「たぶん、そうだろうな」
俺はその時、ユズールさんの話と俺の仮説が正しいと確信したのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
そして次の日は、早朝から馬車に乗って北に向かった。
今回の参加する勇者達は、意外な事に【ルリガミンの町】からは居なかったのだ。
赤城組は、盾役を失った為に新しい盾役を育成を行っており、伊吹組は赤城達の失敗を見て、パーティ全員をレベル75まで上げることを優先させるようだ。
馬車での移動時間は約三日
前回は葉月達勇者がいたので、寝る場所は非常識な豪邸持ち込みによってラティ達は確保出来たが、今回はそれを期待出来ないので、その辺りは苦労しそうだった。
「はうぁ、今回はお風呂無しなんですねです」
「サリオさん前回がおかしかったんですよ」
「サリオ今回は葉月達が来てないんだから仕方ないだろ」
そう言えば、最近葉月を見てないな、教会側に呼ばれたとか聞いたけど、
葉月に合わせて、橘も八十神も見てないなぁ、勇者の楔の件を伝えておきたいのに、、
ハーティとの殴り合いから会ってないのか、
他の勇者は俺を避けていたけど、葉月は案外俺を避けて無かったなぁ、ん?、
「ラティどうしたの?なんかこっち睨んでるけど、、?」
「いえ、何でもありません」
( ・・・・・・ )
「えっと、折角だから頭か尻尾撫でさせてくれないかな?」
「何が折角なのか分かりかねますが、両方売り切れ中ですねぇ」
まだ反抗期が終わって無いのか、何時まで続くんだろう、、ぐすん、、
その後は、サリオはとっとと昼寝をしてしまい。
俺は何故か機嫌の悪いラティにかまって貰えず、退屈な馬車移動を過ごした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
その日の移動は終え、夜の夜営と食事の用意を開始した。
「今回の移動費と夜営や食費で、また金貨1枚近く掛かったな」
「あの、その辺りの経費は仕方ないですねぇ、」
「ケチケチな旅は辛いです」
今回の遠征にはレベル30以上という条件がある為に。
駆け出しの冒険者や、いわゆる雑魚がいない為にラティに絡んで来る奴がいなかった。
ある程度の実力者は、ラティの強さを知っている為に絡んで来ないのだ。
「ジンナイ様、あたしこう言う場所で絡まれないラティちゃんを初めて見たです」
「ああ俺も思った、こう言う場所ってほぼラティって絡まれてるよな、」
「あの、わたしを何かトラブルメーカーみたいに言うの止めてください」
「あ~~ごめんそんなつもり無いんだけどな、ただ、、」
「ただ?」
ラティは見目麗しい外見、特に高校男子ならまず喰い付く容姿。
勇者の影響もあるし、寄ってくる男共が多すぎるんだよな、まるで花が虫を引き寄せるような、、
強力に惹き寄せる南米最大の花ラフレシアような、、
そう、まさにラフラティア!ん?アレこれアウトかな?
( 気のせいだ!気付かなければ問題無い! )
「ただ、なんですか?ご主人様」
下らない事を考えていたら、ラティが訝しんで再び聞いてくる。
「いあ、ホントなんでも無いです!」
「むぅ、そうですか言えないことなのでしょうねぇ」
ラティが少し拗ねてしまった!ちょっと珍しい、けど、
流石にラティが綺麗過ぎで心配だ!的なことを言うのは恥ずかしいぃ、
( 前は簡単にそう言うの、言えてた気がしたんだけどなぁ、)
閑話休題
馬車での道のりは特に問題無く、目的地の北のボレアスに辿り着いた。
馬車の向かった場所は、北のボレアス領の防衛戦用の陣営だった。
今回の防衛陣営の規模は、前回よりも規模が大きく見えた。
人数は少なく見えるが、天幕や用意してある物が豪勢に見えるのだった。
馬車を泊める場所から、人の列が見えた。
前回の防衛戦と同じで、陣営に入る前に参加者達には受付審査が待っていた。
特に今回はレベル制限などがあるので、前回よりも念入りの様子だ。
前は、この時点で雇い主側に喧嘩を売ってしまったが、今回は注意する。
よし落ち着け俺、ラティが絡まれても今回は上手く避けて行くんだ、
前みたいに険悪な感じにならないように、注意するんだ俺!よし行くか、、
( 無用なトラブルは前回で懲りた、)
落ち着いて受付の順番を待ち、そして俺達の番が回ってきた。
「スイマセン、防衛戦参加希望です」
「えっと3人ですか?」
「はい、この3人で登録を」
「では、一応レベル30に達しているか確認させて頂きますね」
「はい、みんな30超えてます」
俺は自信満々に返事をしたが、。
「あれ?貴方のステータスおかしくないですか?レベルが見えない、、?」
「あああああああ!!」
忘れてた、、、
まさかのラティが絡まれるのではなくて、俺が絡まれる展開になっていたのだ。
読んで頂きありがとうございますー
宜しければ感想などお待ちしております!




