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視線が走るっ

もう少しです、本当にあと少しです。

色々とあり、ご予約をオススメ致します<(_ _)>

 地底大都市(オーバーバックヤード)の探索は順調に進んだ。

 最早探索などと言う探る要素はほぼなく、淡々とダンジョンを潜る。

 ダンジョンに潜り三日程経過するが、特に負担を感じる事は無かった。

 一つ不満があるとすれば、サリオの”アカリ”ではないので、光源に揺らめきがあり目が少し疲れたぐらい。


 前に最奥まで潜った事のある元黒獣隊は思いの外優秀で、本当にテキパキと動き、俺たちはただ案内されるだけだった。


 ベースキャンプの方も、一度設置した場所に再設置している為か、前回使った物を上手く再利用している様子で、驚くほど快適な空間となっていた。

 前回の探索時、荒木はどれだけ贅沢をしたのだろうと思う。


 そしてそれとは他に、この三日間で気付いた事があった。

 それは、このダンジョンは魔物の数が少ないという事。

 中央の地下迷宮ダンジョンに比べると三分の一程度で、魔物と遭遇する回数は本当に少なかった。

 

 それにここの魔物の特徴である待ち伏せ。

 魔物は基本的に待ち伏せをしているので、一度広場などを占拠すると魔物が襲ってくる事はなかった。

 これが他のダンジョンであれば、こちらを察知するとすぐに襲ってくるのだが、このダンジョンではそれがなく、一度ベースキャンプに入ってしまえば気を張る必要がなく楽だった。


 話によると、魔石魔物も湧きづらいのだとか。

 前にフユイシ伯爵がルリガミンの町を支配下に置いたのは、この地底大都市(オーバーバックヤード)ではあまり魔石を集められないからかもしれない。


 地底大都市(オーバーバックヤード)だけでは足りない。

 だから地下迷宮ダンジョンから魔石を得ようとした。もう真相は判らないが……。



「はぁ、…………ダンジョンは楽なんだけどな」


 そう、ダンジョンの攻略は順調だった。

 ダンジョンの難解な構造は攻略済み、魔物の対処もほぼ完璧。

 行く先々に休憩所やベースキャンプが設置されていて至れり尽くせり。 

 

 ダンジョン(・・・・・)自体は楽なのだが……。


「くそっ、何だってんだよっ!」


 ダンジョンの方は問題無かったが、案内役のストライク・ナブラが気になってしかたなかった。


 チラチラと探るように見続けるストライク・ナブラ。

 そのあまりの頻度に俺は、再びラティに敵意の有無を訊ねてしまった。

 まるでラティの事を信用していないような行為だが、どうしても再度確かめたかった。

 

 視線の事はラティも気付いているようで、敵意は無しだが、引き続き注視すると言ってくれた。が……。


「――ったく」

「およ? どうしたんだ陽一君。なんかむっずかしい顔をして」

「はは、確かにちょっと気になりますよね」


 視線に全く気が付いていない小山と、視線に気が付いてはいるが、人に見られる事に慣れているのか、全く動じた様子がない霧島。


「しかしまぁ、あの目はアレですねえ」

「ん? 霧島、お前分かるのか?」


「ええ、何となくですけど…………探っているんでしょうね」

「アホかっ、んな事は分かってんだよ」


 一瞬光明が見えた気がしたが、どうやら気のせいだった。

 したり顔の霧島を睨みつける。


「はぁ、陣内先輩、早とちりしないで下さい。”探っている”ですが、要は陣内先輩の動きを見ているんですよ」

「ん? だから探っているって事だろうが」


「ちょっと違いますよ。えっとそうですね~、相手の動き……強さとかを見極めようとしている感じですね。アレです、時々陣内先輩がやっているのと同じですよ。陣内先輩って【鑑定】が無いからか、相手を動きとかで見極めようとしていますよね? まるでいつか戦う事を想定でもしているかのように観察していますよね」

「…………」


 油断ならない。

 いま俺の頭の中に過ぎったモノはそれだった。

 役者だからこそ相手のことをよく観察しているのか、霧島はズバリと言い当てた。


 『今も観察していますよね?』と、目で語りながら椎名と赤城の方に視線を向ける。


 霧島の言う通り、俺は椎名と赤城を観察していた。

 特に赤城の方は昨日のことがあったのでいつも以上に見ていたかもしれない。


 そしてそれに気付かれているとは思わなかった。


 ( コイツ、油断ならねえな )


 ニッコリととても人懐っこい笑みを浮かべる霧島。

 思い返してみると、コイツは探る為に俺に戦いを仕掛けてきた事がある。

 だが今は――。


「……なあ霧島、あいつ等は、俺と同じように俺のことを見極めようとしてるって事か?」 

「ですね。少なくともボクにはそう見えます」


――なるほど、

 確かにラティは、『探っている』って言ってたな、

 だけど何でだ? もしかして俺を襲撃する為に?

 いや、だったらその感情(敵意)にラティが反応するはずだ……



 一つ分かった気がしたが、結局のところその先にある真意は見えない。

 俺が誰かを観察するのは、そいつと戦う事を想定しての事。

  

「どうすっかなぁ……」


 俺はあらゆる事を想定しながら前を見る。

 先頭は【索敵】持ちとアタッカーで固め、中盤は勇者達と、その勇者達を囲むようにして護衛につく三雲組。


 この先で何かが待ち構えている様子はない。

 純粋に任務をこなしているようにしか見えない。

 俺の方に視線を向けるのも、隊列の後方を気にしているとも取れる。

 だがしかし……。


「……まただ」

「あの人が一番陣内先輩のことを見ていますね」


「ああ」


 ストライク・ナブラの隊長らしき者が一番俺を見ていた。

 厳つい顔をした大男。身体がデカいので、ちょっとした動作でも目立つ。

 俺の方をチラリと一瞥した後、赤城とハーティに何か報告をしている。


「最初は、陣内先輩のことでも狙っているのかと思いましたよ」

「……狙っているか」


「ほら、このダンジョンに入ってすぐにそんな話をしていたじゃないですか。だからひょっとしてそっち系の人なのかな~って」

「へ?」


 霧島そう言って、意味深な視線を俺の尻の方へと向けた。

 一瞬、何を言っているのか判らなかったが――。

 

「え? 陽一君、掘られちゃうの? 『アッー!』しちゃうの!?」

「よしっ、死ね小山! あと、俺の名前を下で呼ぶんじゃねえ」


 俺は小山の顔を鷲掴みにして、小山を『アッー!』させたのだった。




         閑話休題(アイアンクロー!)

 



 予定していたベースキャンプに辿り着いた。

 トラブルらしいトラブルは無く、小山がちょっと顔を負傷しただけ。

 本当にすんなりと俺たちは、地底大都市(オーバーバックヤード)下層エリア一歩手前までやって来た。


 普通に挑んだのならば、どれだけ時間が掛かったか見当もつかない。

 この地底大都市(オーバーバックヤード)は本当に複雑な構造だった。

 まず、下に降りれば良いという、深淵迷宮(ディープダンジョン)でも使った攻略方法が通用しない。


 途中でいったん階段を上り、しばらく進んでから階段を降りるといった道があった。

 

 下を目指しているのに、一度上がってから降りる必要があるなど反則だ。

 探索者を苦しめる作りをしているとしか思えないようなダンジョン。

 下へと向かう為のルート()を探すのは本当に大変だっただろう。

 潤沢な資金で人海戦術でもしない限りどれだけ時間が掛かるか……。


「その点は助かったかな」


 俺はポツリと感想を呟く。

 身銭を切ってダンジョンに挑んだ事があるから判る。

 ダンジョン探索には本当に金が掛かる。

 深淵迷宮(ディープダンジョン)で身銭を切って挑み破産しかかった。


 そして、多額の費用が掛かる癖に見返りがほぼ無い。

 ゲームのように、伝説の武器や莫大な財宝が眠っている訳ではない。


「本当に助かったな……」

 

 ふと辺りを見回すと、せっせと働くストライク・ナブラが視界に入る。

 

 彼等は本当によく働く。

 今も到着したばかりだというのに、休むことなく食事の用意を開始している。

 だがしかし……。


「見てるよな……」


 真綿で首を締めるような、じわじわと責める視線を浴びながら、俺は食事が出来るのを待った。



 

       ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 


 

 食事を終えると、赤城がみんなを集めて明日の予定を話し始めた。


 明日からは最下層エリア。

 最下層エリアはいままでのエリアとは違い、魔物の脅威度が上がる。

 そして、他のダンジョンが精神の宿った魔石を失った影響からか、最下層エリアがどんどん広がっている。


 いま最下層に居る先発隊からの報告によると、やっと丁度良い部屋を見つけたので、そこにベースキャンプを設置する。

 目印となるマーカーが残してあるので、それを追って来て欲しいとの報告があったので、明日はそのマーカーを追ってベースキャンプを目指すと言った。

 

 赤城に直接聞いて確認した訳では無いが、今の話の流れからして、ここから先の最下層エリアは未知の空間になっているのだと察する。 

 

 深淵迷宮(ディープダンジョン)でもそうだった。

 穴を降りるといくつもの通路が広がっていた。

 きっとこの地底大都市(オーバーバックヤード)でも同じような現象が起きているだろう。


 俺は最下層のベースキャンプに着いたら、魔石魔物を湧かす事で最奥を判定する方法を試すべきだと考え、それを赤城に話そうとした。が――。


「申し訳ないジンナイ殿。ひとつ、お手合わせを願えないだろうか」

「えっと、アンタは?」


「自分は、ストライク・ナブラ一番隊隊長ガルマン。……元黒獣隊だ」

「元黒獣隊……」


 俺の前にやってきた男は、真っ直ぐ俺を見つめながら戦えと言ってきた。

 黒髪で眼光の鋭い大男。

 厳つく、精悍な顔立ちはガーイル将軍を思い出させる。

 決して似ている訳ではないが、武人というよりも軍人といった雰囲気がガーイル将軍にとてもよく似ていた。


 そして、俺のことを一番見ていたストライク・ナブラだ。


「ひとつ聞きたい、何で戦う――ってか、手合わせをする必要がある? それにここで戦うってのは周りに迷惑が掛かるんじゃ――へ?」


 俺はコイツを止めろと赤城の方に目を向けた。

 だがしかし赤城は、親指を突き出した『GO』サインをしていた。

 しかもその隣にいるハーティまでも、目で『行け』と言っている。


 ( 何だ? 何があってこんな事に……? ) 


 ラティの方からも敵意は無しとのアイコンタクト(合図)


「一体何が……」


 あまりの急展開に困惑する。

 既に話が纏まっているのか、いつの間にかギャラリーも集まっており――。


「自分と手合わせを願います。勇者アラキ様を倒したジンナイ殿」 


 そう言って大男は、俺に向かって頭を垂れたのだった。


読んで頂きありがとうございます。

感想、本当にありがとうございます。

返信がしっかりと出来ていませんが、全部読んでモチベと励みにさせてもらっています。

中には本当に気が付かされる事も、本当に感謝です<(_ _)>


あと、誤字脱字も教えて頂けましたら幸いです。

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