地上で考え
今回のまとめ回です
突然ユズールに魔法をかけられ、目の前が真っ白な世界になった。
しかし次の瞬間には、見慣れた場所にラティと一緒に立っていたのだ。
「あの、これは一体、、」
「ああ、たぶんよくある転移系魔法とかだろうな、」
「あの、ご主人様はその魔法ご存知なのですか?」
「異世界ならあるかも知れないな~って認識だけどね」
「はぁ、そうなのですか、」
ラティは困惑した表情で、無理矢理納得しようとしていた。
( 困惑するよなぁ、 )
そして俺も崖下での出来事には困惑していた、衝撃的な出来事だったのだ。
あの形は綺麗だった、まるで重力を無視しているかのような 整った双丘。
何故俺は、すぐに行動してしまったのだ、まずは様子を見るべきだった、、くそう、、
落ち着くんだ俺、大事なことを見失うな、、
俺はいつも、弾ける様に行動を起こす事が多かったが、それだけでは駄目だと言うことを自覚するんだ
次に生かすんだ、こんな後悔を二度とすること無いように、魂に刻むんだ!
俺が、心の中で魂の反省会をしていると、ラティが無言半目のジト目で此方を見ていた。
「あれ、何かなラティさん?」
「あの、今何か考えなくても良い事を、人生の決断レベルの指針を決めてませんでしたか?」
そんな事は無い!俺の中では絶対に大事なことを魂に刻んだのだから、
「はぁ、困ったお人ですねぇ」
「そ、それよりも無事に戻れたことを皆に知らせに行こう」
何とか誤魔化せたかな、、あと、何か別の大事なことを忘れているような気もするけど、
パーティメンバーのサリオを示す矢印に従って、彼女のいる場所に向かった。
サリオのいる場所は、どうやら地下迷宮入り口付近のようだ。
入り口に近づくと、冒険者の人だかりが見えてきた、何か話し合っている様子だ。
「ラティさんを助けるぞー!」
「瞬迅を救うんだー!」
「出来るだけロープをかき集めよう、崖下までの距離はわからないけど、」
「おいおい、どれだけ必要かも分からないのかよ」
「上杉君落ち着いて、ただ長さがあれば良いというものではないのだから」
「だけど、ラ、、瞬迅も落ちて言ったんだぞ」
「彼女ならきっと平気な筈だ、【天翔】があるから落下を和らげることが出来るはずだ」
「だからこそ、急いで助けたいんだろうが!」
「司、落ち着こうぜ、焦り過ぎだよ」
「亮二お前まで、そんな余裕ぶってんなよ」
「赤城だってラティ、 さんは助けたいって思ってるよ」
「分かってるよ!赤城だって、今はパーティの盾役が死んだから盾としても欲しい、、」
「――ッ司!!もうちょい言い方考えようぜ、あと、陽一だって生きてるだろうし」
どうやら、ラティ救出の為の、ロープを集めて崖を降りるつもりだったらしい。
それを焦りながら話している上杉を、赤城と蒼月が宥めて落ち着かせようとしてる。
しかし、なんで俺が『生きてる』の所で、残念そうに地面蹴ってんだよ上杉の奴は!
( アイツまだラティを諦めてなかったのかよ! )
それを眺めていて、ひとつ気になった事があった。
赤城達勇者がラティを助けたい気持ちは、多分能力だけじゃなく外見も影響しているのだろう、
ラティは男子高校生なら、誰もが高い好感を持つ見た目をしているからだ、、
だが、この異世界ではラティ、【狼人】は忌み嫌われる存在だったはずだ、なのに
集まっている冒険者達、全員が助け出そうという熱意を見せているのだ。
ラティを嫌わない冒険者は多くなったが、これは異常過ぎる、
どっかのアイドルの親衛隊みたいになってるぞ、、一体これは、、あ!!
思い出した!ユズールさんが言ってた勇者の楔か!
勇者の発言が伝染するって言ってた効果か、赤城達が言ってるから冒険者達にも、、
思い出した内容に納得しながら、人だかりを観察していると。
あれ?何だあの小さい子は、赤城らと一緒にいる濃い緑色の髪をしたオカッパ頭の子は、
あんな小さい子が赤城組か?一緒にいるけど、あれを連れて行く正気の沙汰じゃないな、、
冒険者の人だかりに、不自然に浮いてる少女が居たのだ。
その浮いている少女が何かに気が付いた様に、俺たちの方に顔を向けた。
「ぎゃぼ――!ジンナイ様いつの間に戻ってきたです!?
もう、崖を這い上がってきたですか?ラティちゃんがいるから早いのですです?」
距離があって顔が分からなかったが、浮いている幼女はサリオだった。
普段見下ろしてるから、全く気付かなかった、、、
( と 言うかアレって離れて外から見ると色々と酷いなぁ、 )
サリオの声に冒険者達が一斉に此方に振り返った。
おい、赤城と上杉お前ら少し残念そうに俺を見やがったな、、救援に行った恩忘れやがって、
どんだけラティが欲しいんだよコイツら、
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
その後、今回の崖下での出来事を話す為に、勇者達に集まって貰った。
混乱させると面倒なので、冒険者達には転移で上がって来たことは伏せて誤魔化した。
集まって貰ったメンツは勇者の赤城、蒼月、上杉、伊吹の4人と。
冒険者の代表としてガレオスさんにラティとサリオの3人だ、他の勇者は不在だった。
食堂の個室を借りて、集まったメンツに崖下での出来事を話した。
内容は。
勇者の楔のこと、発言や行動が伝染するように当たり前に受け入れられてしまう事。
地下迷宮の魔物を倒すと、外に魔物が湧いてしまうこと、これに合わせて魔石魔物狩りの危険性も追加して置いた。
世界樹と木刀のことは、直接問題が無さそうなので、黙っていることにした。
そして最後に勇者達は、地下迷宮最奥にいる初代勇者に会いに行けと、アドバイスもして置いた。
しかし、返ってきた返答は酷かった。
「陣内君、君のパーティだと人数が少なくて魔石魔物狩りが出来ないからって作り話は駄目だよ」
「陣内よぉ、魔石魔物狩りが出来ないからって僻みで、その作り話はないわぁ、」
赤城と上杉の反応は酷かった。
地上に戻って余裕出たのか、赤城の口調が元に戻ったな。それと、
俺達は3人で浅い層のだけど、魔石魔物狩りしてること知らないのかな?
「確かに、姫さんや貴族連中はそんなこと言ってなかったし、
それに地下迷宮で魔物が倒しちゃ駄目になったらレベル上げも大変になるし」
亮二まで否定派だった。
「あたしはなんとも言えないかな~、流石に全部嘘とは思えないしね」
「俺は信じてやりたいが、今まで当たり前だったモノが違うってのはなぁ、」
伊吹とガレオスさんは完全否定ではない、中立気味だった。
サリオは、、どうでもいいかな、
そして赤城の否定は続く。
「それとね、僕は前にレギオン参加を冒険者に募集したから分かるけど、
そんな風に言ったからって、みんなが勇者の言うことに従うとかは無かったですよ」
上杉がムカツク顔で赤城の話に乗ってくる。
「そうそう、言うだけで都合良くなるんなら苦労なんてしねぇ~っての」
頭から完全に否定していて、全く受け入れも考えもしやがらない、、それなら、
「ラティを見ろよ、本来【狼人】は差別対象らしいぞこの異世界では、
それが勇者達がラティを認める発言とか行動をしているから好意的になってるんだぞ」
( くっそ、言ってて心が痛くなる、、ラティごめん、 )
「はあぁぁあああ?ラティさんが受け入れらるのは当たり前だろ!」
「陣内君、君は何を言ってるんだい?有能なラティさんに好意的になるのは当たり前だよ」
ちきしょー!コイツ等、城下町での悲惨さ見てないから言えるんだよ!
もう、説得するの止めだ止めだ!もう最奥行って会ってもらうしかないな、
「お前等もう地下迷宮の最奥行って来い、そうすれば解るから」
「陣内てめー、俺達に死ねってのかよ、未だに下層には行けてねーよ」
「まぁ行けなくは無いと思いますけど、さすがに危険ですね、盾のガインさんが居なくなったし」
「くそ、このヘタレ共め!もう崖から落ちろよ!」
この一言で、完全に物別れに終わった。
俺の言うことは、他の勇者達には納得が出来るモノではないみたいだった。
現在は、3人で宿の部屋に戻って来ている。
「あの、ご主人様 申し訳御座いません、お力になれず」
ラティも崖下で聞いた話を説明したのだが、ラティの話でも聞いては貰えなかった。
「いあ、ラティは頑張ってくれたよ、ただアイツ等が話を聞かな過ぎだ、
違和感がバリバリあるのに、なんで何も思わないんだろう、、、あ!!」
俺はさっきの地下迷宮入り口でのサリオを思い出した。
部屋のベットで寝ているサリオを見ながら、俺は心の中で考えた。
あの時のサリオは冒険者の中に、小さい彼女がいる事に違和感を感じたのだ。
普段一緒にいる時は違和感を感じないのに、離れて外から見ると違和感を感じたこと。
近くに居るとか、その当事者だと違和感を感じないのかも知れないんだ。
俺は、勇者から離れて見てるから違和感を感じる、そういう訳か、、
勇者の楔の件は、最奥に居るユズールかその仲間達に会って貰うしかなさそうだな、
本当に他の地下迷宮にも居るかどうかは確信が持てないけど、それしかないかなぁ、、
( ってか、最奥に行くのって普通にいって行けるのかな? )
あとは、、
地下迷宮の本来の役目が、捻じ曲がって伝わっている事だ、
なんで正確に伝わらなかったのか、意図的なのか、それとも何かしらで失伝したとか、、
失伝はともかく、意図的に変えたのだったら、色々と不味そうだな、
この地下迷宮真実を、バレると面白くない連中がどう動くか分からないからな、
王族か貴族、どちらも信用出来ない存在になってきたな、
情報が欲しい、
これは、何もしないで適当に過ごしていると、勇者の楔に巻き込まれる可能性も出てきたぞ、
色々と考えないといけないことばかり増えていきやがる、、これはもう、
その日は、ストレス解消の癒しの為に。
ラティの頭と、誰も見ていないので尻尾も撫でさせて貰うことで、心の平穏を保ったのだった。
投稿おくれましたー
今回も読んで頂きありがとうございますー
ブクマに感想コメントもありがとう御座いました




