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再び北へと……

   挿絵(By みてみん)


  夕兎様からファンアート頂きましたっ!

 マジ言葉様っ!!

「そろそろ見えてくる頃かな?」  

「あ、あの、ボレアスの街はまだ先かと、――んぅ」


 ガラガラと快走する馬車の中、俺はラティをグルーミングしながら、窓の外を眺めながらそう呟いた。


 俺の前には早乙女が眠っており、一応寝顔を見ないようにと配慮する。

 視界を外の風景へと固定し、文字通り手探りでラティの髪と耳を撫で梳く。


 

 現在俺たちは、北のダンジョンを攻略する為にボレアスを目指していた。

 仮装パーティの翌日、ギームルから連絡が届いた。

 ギームルの配下らしき者から渡された紙には、北の用意が出来たから、三雲組と合流後、ボレアスの街へ向かえと書いてあった。


 そして詳しい内容は、合流した時にハーティから聞けとあった。


 連絡を受けた三日後、ノトスの街を発った三雲組が到着した。

 陣内組と伊吹組はノトスの街に待機で、現在その二組は、ノトスに湧く魔物を狩っているらしい。

 

 ライエルさんが宿っていた魔石が無くなった影響が出てきたのか、明らかに魔物の湧きが増えたと、やって来たハーティさんが教えてくれた。

 そして今後は、魔物大移動も起きるだろうと付け足した。


 そんな理由もあり、ノトス所属の陣内組は、今後容易には動かせないだろうとも言われた。


 他に、ギームル以外の報告としては、伊吹の新装備の話があった。

 シャレにならない程の作成報酬を要求された事と、とても豪華なメンツで装備を作っているとの話を聞いた。


 報酬の方は予想がついていたが、豪華なメンツの方はイマイチ分からず、それをハーティに訊ねると、確かに豪華なメンツとも言えた。


 伊吹の装備品の素材となるのは、ライエルさんが宿っていたあの魔石。

 どうやらそれを上手く生かすには、理由は良く解らないが色々と大変らしく、早い話が、膨大なMPが必要なんだとか。


 そしてその為に呼ばれたのが、MPが異様に多いサリオと、MP回復魔法のエキスパートであり、マテリアルコンバートも使えるレプソルさん。


 その二人の協力を得て、伊吹専用の武器を作っているのだとか。

 ららんさん曰く、構想自体はあったが、実現不可能だと諦めていた物を作るのだとかどうだとか。

 今度伊吹と会う時には、その武器(大剣)を見せてもらおうと思う。


 そして他にも、ちょっとした報告も聞いた。

 サポーター役だったニーニャさんが、ノトス周辺の警備兵として就職したと教えてもらった。

 今はドミニクさんやモモちゃん兄と一緒に、街の周辺を見回っているらしい。


「状況はどんどん動いているか……」


 俺はふと、ある双子の事を思い出す。

 銀髪オッドアイで非常にキャラが立っている双子。


 あの双子は俺と出会ってから、俺の事を探すようになっていた。

 仮装パーティの翌日、一応王女様のところに挨拶にでも行こうと思ったのだが、俺はあの双子の女の方に捕まった。


 彼女は俺を魔王候補だと決めつけ、俺から『魔王候補です』と自供を取ろうとしたのだ。

 

 当然そんなモノに応じる気はない。アホらしいとその場を去った。

 だがしかし、その決めつけは間違ってはいない。

 確かに俺は、世界樹の木刀を手放せば魔王候補なのだから。


 そんな少々後ろめたい気持ちもあり、俺はその双子をひたすら避け続けた。

 泊まっている部屋を突き止められてやってくる事は無かったが、俺を探すためにヤツが徘徊していたので、俺はアイリス王女と会う事はなく、そのまま城を出立した。

 

――くそ、聞いてみたい事もあったのに、

 アイツが邪魔をしなければ会えたのに…………俺が魔王候補か、



 窓の外を眺めながら、頭の中で魔王について纏めてみる。


 魔王の発生は止められない。

 しかし魔王を倒してもまた発生。

 しかも倒す為の勇者の存在が、この異世界(イセカイ)を決壊。

 だがしかし、勇者を召喚しないと魔王でヤバイ。

 ヤバイから勇者を召喚して、やっぱイセカイがヤバイ。

 その流れを止める事を出来るのが、俺と世界樹の木刀と言われた。

 だけど今のままでは、魔王を消滅させることが出来ない。

 消滅させる力を得るには、俺のステータスを書き換える必要。

 そしてその力を得るには、精神の宿った魔石から集める。

 その精神の宿った魔石は、魔王を集める役目。

 他にもその魔石は、魔物の湧き調整。

 だからそれを無くすと、さあ大変。

 だけどその魔石から力を得ないと、魔王消滅させられない。

 じゃあ結局、魔石から力を得るしかねえじゃん。←いまココ


「ふむ、やっぱ今さら後には引けないよな。それに俺と木刀がいないと駄目……そうしないと魔王は完全には倒せない……か」

「んっ、あの、ご主人様。何か考え事でしょうか?」


「あ、いや、ちょっとした再確認をしていただけ」


 ラティの髪と耳は撫でているが、尻尾の方は触れていなかったので、俺の思考はラティへと届いていなかった。

 

「そういや、先の事も考えないと駄目かぁ」


――例のパレードの前に言うべきかな?

 お前達が魔王になる可能性があるって……むう、しかし、

 言ったら言ったで揉めるかな~、でも――



 もし事前にそれを告げていなければ、誰かが魔王になった時に躊躇うだろう。

 特に八十神などは、『まだ助けられる』など言って正義感を振りかざし、魔王を倒すのを邪魔するかもしれない。  


 それに他の連中だって、躊躇い倒すのを止めようとするかもしれない。


――やはりそうなると、

 覚悟を決める意味でも、事前に明かしておく必要があるな、

 そうしないと9代目の時のように……あっ、


 

「秋音なら、帰還ゲートの為に躊躇わないだろうな」


 誰が魔王になろうと、躊躇わずに刃を向ける秋音が容易に想像出来た。

 秋音の場合は必要ない。

 もう覚悟は出来ている、彼女の場合は揺らいだりなどはしないだろう。


 それが少しおかしく、つい苦笑いと共に口に出してしまった。


「……あの、ご主人様」

「うん? もっと奥の方を掻いて欲しいか?」


「あ、いえ、そうではなくて……。あの、ご主人様は魔王を倒した後……」

「うん? 魔王を?」


「あ、あのっ、何でもありませんっ」

「あっ」


 ラティはスッと身体を起こし、俺から離れて、早乙女が寝ている席の方へと移った。

 そして早乙女を、そろそろ休憩時間ですよと起こす。


 尻尾に触れていなかったので、ラティが何を尋ねようとしていたのか判らなかった。しかし、俺に尻尾を触れさせないように、さり気なく距離を取ったのは分かった。


 これは、知られたくない聞かれたくないとの事だ。

 ラティにしては珍しい行動だが、彼女が知られたくないと思うのであれば、俺はそれを尊重する。


 ( くっ、だけどやっぱ気になるな…… )


「んんぅ、もう朝ぁ?」

「あの、朝ではないです。そろそろ休憩の時間だと思いますので……」


 早乙女は完全に寝ボケ、間延びしたマヌケ声で聞いてきた。

 一応視界には入れないようにしているが、どうしても視界の端に入ってしまい、何とも油断し切った顔が目に入る。


「んふぅ? あしゃ()じゃないって――ってえええ!! 陽一!? えっ!? あれ? 何であたし寝て……あああああああああっ、アンタ、またあたしの寝顔を見たでしょ! 死ねっ」



 それからしばらくの間、ポンコツ二号がうるさかった。

 お陰で俺は、ラティに尋ねるタイミングを完全に逃したのだった。 



 そして次の日、俺たちはボレアスへと辿り着いた。

 

読んで頂きありがとうございます。

宜しければ、宜しければ感想など頂けましたら嬉しいです。

あと、誤字脱字も……


    挿絵(By みてみん)


桑島様に許可を頂き、口絵一部公開です。

マジでラティは可愛い。

見開きのカラーイラストなどは本当に凄いですよー

あと、一巻では出番の無かったサリオも超描かれていますっ!


なので、是非是非見て頂きたいです。

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― 新着の感想 ―
[一言] もー勇者はすぐに死ねとか言う、言葉が軽い幼い心のままではいけませんぞー楔の効果でまじやばいですよです。
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