表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

391/690

さあ、潜ろう

新章、『槍剣(そうけん)乱舞』編の始まりです。

開幕なのでちょっと短め~


レビュー、超感謝です!!

 想いは届かなかった。

 勇気を振り絞って一生懸命伝えたのに……。


 彼には届かなかった――。



 そう(・・)、ガレオスさんは役に立たなかった。

 ベテランとはいえ、冒険者の育成は出来ても、赤子の育成は無理だった。

 

 心の底からの相談は、『ダンナ。他の人に相談してくだせぇ』との切り捨て。

 やはりここは、乳母のナタリアさんが言うように、今は様子を見守るしかないのかもしれない。

 

 赤ちゃんの教育に特効薬は無い。

 もしあるとすれば、赤ちゃんに熱い物に触れさせて、火傷をさせてトラウマを植え付けるような教育。

 そうすれば、これは危険だと認識するようになるらしいが、あれは教育などというモノではなく躾という名の虐待だ。


 なのでやはり、赤ちゃんの教育に特効薬は無い。

 

 今はモモちゃんが飽きるのを待つしかない。

 俺も小学生ぐらいの時、カンフー映画を観た後は『アチョー』とやっていた気がするし、七日間どっかに立て籠る戦争的なヤツを観た後も、自分の部屋に、誰に向けた罠なのか、無数のトラップを設置した記憶がある。


 何故あそこまで夢中になったのか、いま思うと不思議だ。


 やはり飽きるのを待つしかないのだろう。

 いまも俺の首筋を執拗に狙って来ているが、いつか飽きる時を……


「あぷぁ? あぷぷぷぅ」

「…………モモちゃん、今度は手首を狙ってくるの? ねえ、一体どこからそれを習ってくるの? やっぱり本能か何かなのかな?」

  

 そのうち別の()も狙ってくるかもしれない。

 むしろそちらの方は、赤子の本能として狙ってくるだろう。


「…………言葉(ことのは)に預けるのも一手か……」



 その後、手首を狙うように教えた犯人が判明したので、顔面を全力で鷲掴みしておいた。




          閑話休題(このっ、イカっ腹が!)




 ゴタゴタがあったが、深淵迷宮(ディープダンジョン)遠征前に問題は解決した。

 モモちゃんの興味が別のモノに移ったのだ。


 それは音の鳴る積み木。

 ららんさんが特別に作ってくれた、特製の積み木にモモちゃんは夢中になったのだ。


 言葉(ことのは)に相談したところ、積み木などはどうかとアドバイスを貰い、たまたまその場に居合わせたららんさんが、たった一晩で作ってくれた。


 原理は分からないのだが、積み木を重ねると澄んだ鈴の音が鳴る積み木。

 モモちゃんはこの積み木(オモチャ)に、乳母姉妹のラフタリナちゃんと一緒に夢中となった。


 積み木を重ねて音が鳴ると、『おおおっ』とはしゃぎ声を上げ、また別のを乗せては『おおおー!』と興奮する。


 しかもららんさんのこだわりなのか、鳴る音色は何種類かあり、簡単には飽きさせないようになっていた。


 もう何の憂いもなく探索に向かえる。

 モモちゃん問題と並行で進めていた探索の準備も、問題無く完了した。

 長期探索時、ストレスの一番の原因となる食事問題は、勇者達の【宝箱】の中身を全て食材で埋める事で解決した。


 本来であれば、食材は保存性を重視するところ。しかしそれでは味や鮮度といった部分に問題が出て来る。

 だが【宝箱】に収納された物は腐る事がないので、生モノやパン類、他には菓子類などといった物を詰め込めた。

 

 戦闘要員は十分に足りているので、今回の勇者の仕事は、食材を保存する缶詰役。


 当然、言葉(ことのは)の【宝箱】に納められていたテーブルや椅子などの一式は遠慮して貰った。


 これによって、探索や行軍時に一番大変な食料という物資の問題が解決した。

 後はもう楽だとレプさんは言う。


 飲料水などの水は、魔法で作り出す事で解決。

 移動時の負担も、移動補助魔法のゴリ押しで解決予定。

 部隊の統制なども、事前にガレオスさん、レプソルさん、ハーティでしっかりと決めているようで、指揮系統が混乱する事は無いそうだ。


 全体の総指揮はレプさん。

 そのレプさん補佐と、今回だけ参加する雑用係であるサポーターの纏め役がガレオスさん。

 移動速度や進む方向などはハーティが担当するそうだ。

 

 因みに、明かりなどの光源担当はサリオだった。

 今のサリオなら、大量の”アカリ”を作ってもMPが枯渇する事は無いという事と、サリオの”アカリ”の質の良さを知っているメンツからの要望だ。


 この配慮も、暗い深淵迷宮(ディープダンジョン)探索でのストレス軽減に繋がるそうだ。


 思ったよりも細かい配慮や気遣い。

 ガレオスさん曰く、長期遠征の一番の敵はストレスらしい。


 こうして全ての用意が完了し、俺たちは深淵迷宮(ディープダンジョン)を囲う砦に全員集合した。

 女性陣の勇者たちは既に到着しており、皆が集まって何かを話し合っている。

 そしてそれを、何か尊いモノを見るように冒険者達が遠巻きに眺めていた。


「ん、あれがそうか……」


 勇者達を眺めているメンツの中に、何人か初めて(・・・)見る者達が居た。


「……ラティ」

「はい」


 俺はすぐに探りを入れた。

 ガレオスさんを信用していない訳ではないが、これから長期間行動を共にする者だ。用心するに越したことはない。

 

「あの、ご主人様。それなりに何か抱えているようですが、害をなすような悪意や敵意は視えません。取り敢えずは平気かと」

「了解。それなら食事に何かを混ぜられるとかは無さそうだな」


 俺はラティに、サポーターのメンバーを探ってもらった。

 基本的にラティがいる限り不意打ちなど喰らう事はない。だが今回の遠征は、ガレオスさんに注意されたので、四六時中一緒には居られない。


 どうしてもその辺りが不安だった。

 それに食事も任せるので、しっかりと調べる必要があった。

 疑い過ぎは良くないと思うが、そうでないと寝首を掻かれる事がある。


「はぁ……。ラティ、俺は疑い過ぎかな?」

「あの、その様な事は無いかと。わたしの【心感】でも、料理に混入されたモノは見る事が出来ないので……」


「そうだよな……ん?」

「えっ……?」


 ラティと話をしていると、突然辺りが騒がしくなった。  

 騒がしくなっている方は、勇者たちが集まっていた方だった。


「何だ? 勇者たちに誰か突撃でもかましたのか?」

「あの、それがご主人様……あの……」


「ラティ?」


 ラティが珍しく驚きの表情を見せていた。

 愛らしい口元をぷくっと開けており、モモちゃんもよくそんな口をしている事を思い出す。


 狼人の特徴だなぁと、そんな呑気な事を考えていると――。


「間に合って良かった。ボクもこの探索に参加させてくれるかな? 一度行った事があるからね、足を引っ張ることは無いと思うんだ。食料なんかもしっかりと用意して来たし」


「――っな!? お前は……椎名」


 聖剣の勇者椎名秋人(あきと)が、とても爽やかな顔で姿を現したのだった。 

 

読んで頂きありがとうございます。

宜しければ、感想など頂けましたら幸いです。



あと、誤字脱字なども教えて頂けましたら……


レビュー、超感謝です!!


重ねたら音の鳴る積み木って売れそうじゃないです?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ