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訓練

この章が動き出します

 赤毛の冒険者、ドライゼンが出て行った後に、転がっているららんさんを起こしてあげた。


( 笑うのを堪える為に、呼吸困難になるってどんだけだよ、)



 ららんさんが席に座り直した辺りで、ラティ達もこちらの席にやって来た。

 俺の左側にラティ、正面にららんさん、ららんさんの隣にサリオが席に着いた


「いや~、さっきの冒険者面白かったのう、にしし」


「俺は逆に気まずくなりましたよ」

「ん?ナニナニ、何か面白いことがあったです?」


 サリオが『がぶり』と聞こえてきそうな位に喰い付いて来る。

 先程のドライゼンとの会話はラティには聞こえてたが、サリオには聞こえなかったのだろう。


 

 ららんさんが、サリオにさっきの冒険者との会話のやり取りを面白可笑しく説明している。

 俺はその少し盛ってる話を聞きながら、ラティの方を眺めていた。


 ラティは、食事の改善と毎日風呂に入浴した成果か、薄暗い亜麻色だった髪は綺麗な亜麻色の髪に、少し眠そうだった瞳は、切れ長い目を僅かに目蓋が下がっている程度に、身体つきは最初の頃とは比べ物にならない位に、ガリガリだった印象から、女性らしさを強調する身体つきに変わっている。


 まぁ、すっごい可愛綺麗になったなぁ、


 そんな事を思いながら右手で頬杖を付き、ラティの顔を覗いていると、口元から『ふっふしゅ~』と 聞いた事のない息漏れをしている事に気がついた。


 これって、テレ隠しの為のクールダウン的なモノかな?

 ららんさんの話の内容は、ラティの噂話のネタだし、、



 そのラティを眺めていると、テレれている彼女を珍しく感じながら、自然と頭を撫でていた。



「サリオちゃんや、あのナチュラルにやっている行動を馬車の中でも?」

「しょうなの、ナチュナルやってたのです、しかも尻尾を撫でたです」


 ららんさんが驚きの表情でサリオに聞き返す。


「マジで?」

「マジマジで」


「ほっほ~そうやったか、そうやったんか」

「だから、あたしもさっきその確認でラティちゃんに聞いちゃったよ」


「ほうほう、それでそれで」


 ららんさんが楽しそうにがぶりと喰い付いて来ている。


「【狼人】にとって尻尾は其処まで重い認識じゃないんだってです」

「おもい?それってどういう事?」


「あら、じんないさんって知らんかったのや、尻尾のこと」

「尻尾が?」

  

 確かにラティの尻尾は触り心地が良かった、金貨1枚払っても良い位によかった、、


「じんないさん、尻尾は種族によってはオチリと同じ扱いだよ」

「おちり?って、えっとまさか お尻?」


「そそ、お尻に触る行為ってことやね」

( あっぶねーー!! )


 危なかった、うっかりラティの首輪が赤から橙になるところだったのかも知れなかったのか、


「そうなのです!猫人の尻尾は恋人でもなかなか触らせないと言うくらいです」


 なるほど、それでサリオは尻尾を触らせたラティにその辺りの確認をしてたのか、、

 


 ららんさんが尻尾の説明をまだ続ける。


「確か、何代目かの勇者が特に気にするようになって広まったと聞いたの」

「はい?」


「過去の勇者様が、尻尾は気軽に触らせてはいけないって言ったです」


( またあいつ等か――! )


「何でも”わっち”とか言う獣人が尻尾を触らせなかったから価値があるモノやと」

「なるほどね、、」


 やっぱ勇者の影響力は酷いな、倫理観とか平気で捻じ曲げやがる、

 探せばもっと酷い影響与えたのがありそうだな、スパッツの件も酷かったし、


 う~~んラティにとって尻尾ってどんな認識なんだろう?

 出来れば今後定期的に触らせて貰おうかと思ってたのに、癒し効果的にも、



 そんな事を考えていると、ららんさんがニヤニヤしながら俺に聞いてきた。 


「そういや、じんないさんはラティちゃんが噂とかされても怒らなくなったのね」


 『え?』と戸惑っているとららんさんが話を続ける。


「ノトス領では、凄かったのにねぇえ過剰反応が」

「その頃の話は勘弁してください、」

 

 やめてーその頃の話は、確かに過剰過ぎました、北原とか上杉とか

 ラティに寄って来る男は皆排除してやるーって無闇に喧嘩売ってた時代の事は、、


「あの、確かにあの頃のご主人様は凄かったですね、王族だろうが関係無しって感じでしたね」

「ぎゃぼー!そんな過剰反応なのですかです」


 おふ、まさかのラティの裏切り、案外ラティも大変だったのだろうか俺の扱いに、

 あ、今でもラティ寄越せって王族が来たとしたら、即喧嘩売りには行くけどね、、



 その後も、ららんさんは俺をネタに弄ってきた。

 俺を弄り倒した後に、ふと思い出したように俺達に話をしてきた。


「そうやった、さっき言いかけた面白い話だけど、赤髪が来て中断された話やね」

「ああ、そう言えば何か言いかけてましたね」



「実はね、魔石の相場が間違い無く下がるってことを言いたかったんや」

「予想はしていたけど、魔石魔物狩りの影響で?」


「そそ、オレの所は付加魔法品アクセサリー扱ってるから魔石をよく仕入れるから早めに気が付いたけど、たぶん、一気に値下がりするやね」


「魔石魔物狩りで稼げるのも今のうちと?」

「うん、そうやね あとは魔石魔物狩りの効率と有効性が知れ渡って

 ここ最近、また勇者の仲間になりたいって冒険者が増えたのよ」


「ああ、赤城の時は失敗したけど、今度は魔石魔物狩りの効果で冒険者が寄ってきたのか」

「そそ、前は強くなれるで集まったけど、今度はもっと早く強くなれるって噂流れてるんよ」



 なるほど、恩恵ギフトの経験値とステータス強化に魔石魔物狩りの経験値

 この二つが合わさって、もっと効果で出たから冒険者がまた集まり出したのか、、


 

「あの赤毛の冒険者も多分、それで来た一人やろうね」

「あれ?それなら、勇者もここに集まったりするのかも?」


「あ~確かに、来る勇者もおるやろうね」


 もしかしたら、別の場所に行ってた勇者が来るかも知れないのか、

 と、いう事は、また勇者での混乱ってか、勇者の捻じ曲げ要素が増えるかもか、、


 余所の場所にいた勇者が、この【ルリガミンの町】に来て新しいルールや考え方を持ち込むかも知れないのか、、


「あの、ご主人様 どうしたのですか?凄いお顔をしてましたので」

「ごめん、ちょっと考え事をしてた、後でラティにも考えを纏めてから話すね」


「はい、ご主人様」

「あたしをーのけ者にしないでーです」


 勇者に因る面倒ごとは、ある程度予測をして警戒が必要だからな、

 幽霊になった冒険者、イリスさんが警告してきたことだから注意しておかないとだな、、



 その後は、ららんさんと別れ、部屋に戻り勇者が起こす可能性をラティ達に話した。


 余所の場所にいた勇者がこの町に来て、地元ルールを押し付けて来る可能性などを。

 昨日まで当たり前の事が、明日には変わるかも知れない可能性を話して置いた。





 その次の日からは、暴落する前に魔石魔物狩りで稼ぐ方針にした。


 そして今、地下迷宮ダンジョン内で、魔石魔物湧き待ちをしている。


「ジンナイ様、良かったですね、都合良い部屋が見つかってです」

「そうだなぁ、魔石魔物は一応危険だから、出口の狭い部屋じゃないと逃げ出して迷惑かけるかもだからな」


「あの、それよりもご主人様、お一人で魔石魔物と戦うのは危険なのでは?」

「平気だと思うよ、もし危なくなったら、サリオの魔法で消し飛ばせば良いし」 


 言えない、、最近は魔石魔物狩りで出番が無くて戦って無かったら

 鍛え直す意味も込めて、魔石魔物とタイマンして特訓をしたいだなんて、

 

 ラティに並び立てる男になる為に、WSウエポンスキルが無い俺でも戦える為の特訓だなんて、


 誰にも言わないで特訓をする俺、、カッコイイ!

 (って、アホか、見守られながらの特訓ってダサイな )


 

 と、一人で心にツッコミを入れていると、魔石が揺れだした。


「ご主人様、沸きます」

「おう!」


 揺れだした魔石に地面から湧き出した黒い霧が吸収されていく。


 そして、魔石が砕けるように弾けると、其処に魔石魔物が生まれた。


「カゲクモの魔石魔物です!」

「なら、槍が通る!」


  

 こうして俺は、ラティとサリオに見守られながらの魔石魔物とのタイマンを繰り返した。

 因みに、経験値はすでに入らなくなっていた。


 

 そして、5体を倒した辺りで休憩に入る。


「いや~、ジンナイ様って一応一人でも戦えるのですねです」

「おい、サリオ、俺がまるで戦えないみたいじゃないか」


「え?だって、いつもラティちゃんの後ろから槍でチクチクやってる印象ばかりです」

「ちょ!【加速】とか駆使して戦ってたジャン!」


「えっと、【加速】って風系魔法にもあるし、大した事ない印象だったのでです」


 なにーー!!俺の唯一の【固有能力】が魔法で使えるだと、、これは、、


「サリオさんや、魔法で【加速】ってあるの?そしてどんな効果なの?」

「ほへ?【加速】は【加速】ですよ、速く動けるようになる魔法です」


「ぐっは、、俺の唯一のが、、」

「あ、でも魔法は効果時間3秒ですけどね」


「なるほど、あまり使えない魔法だな」

「はい、全く使い物にならない魔法ですです」


 ちょっとぉ?サリオさん、なんで俺をガン見しながら使い物にならないって言うのかな?

 あれかな?暗に俺が使えないって言ってるのかな?ちょっと説教が必要かな?



「あれ?ジンナイ様?何でこっちに嫌な手つきで寄ってくるです?」

「別に何もしないよ」


「いやいや、あたし赤首奴隷ですよ?色変わっちゃいますよ?」

「気にしないで、変な事はしなから、ちょっとこめかみにグリグリするだけだから」



 そのあと、『ぎゃぼーーー』とサリオが泣き叫ぶことがあったが、

 何事も無く、魔石魔物を7体倒して、その日の地下迷宮ダンジョン稼ぎは終了した。



 それから約一週間、タイマンでの魔石魔物狩りを続けた。


 そして今は、今日最後の魔石魔物との戦闘中


「あの、ご主人様 鈍ってしまいますのでラスト参加しても宜しいですか?」

「ああ、ごめん鈍っちゃうよね、それなら参加してくれ」


「あたしは、この魔物きらーい」


 今、俺達が相手にしてるのは、イワオトコの魔石魔物だった。

 この魔石魔物は魔法を弾くのでサリオは苦手なのである、そして強い。


「先行します!」

「おう!」


 ラティが身構えて腰を低く落とす。

 

 あれ?、ラティが尻尾を振っている、

 普段は戦闘中は冷静になろうとする為か、尻尾は全く動かないのに、これは、ひょっとして、久々の戦闘に、冷静になり切れず、心が高揚してるのかも知れないな、、


 散歩を止められていた犬が、久々の散歩みたいなモノなのかも知れないな、今度からラティにも戦わせて上げないと、ストレスが溜まるかも知れない注意しないとだ、、



 そんな事と考えながら、ラティの髪と腰にスカートの動きを注目する。

 ラティの動きを予測し、動く準備をする。


 そして、電光石火の動きでイワオトコに急接近、上下左右に飛び回る。

 俺は、その隙を突いて、いやもう隙と呼ぶほどの小さいモノじゃない、完全にガラ空きの胸元に槍を突き立て、表面の岩を砕く、そしてその砕いた隙間に。


「 ファランクス! 」


 結界の小手の楔をねじ込み、結界発動のキーワードを吼える


――――ッボッガ!!――


 イワオトコが一瞬で弾け、その後黒い霧になって霧散した。


「ふぅ、今日の分はこれで終わりだね」

「お見事でしたご主人様、この辺りの魔石魔物ならもう問題無しで倒せますね」


「ぎゃぼう、前まで恐れられてた魔石魔物が今ではザコザコです」



 ラスト予定の魔石魔物倒したので、地上に戻る為に出口まで向かった。


 そして出口付近になった頃に、後ろから冒険者が”アカリ”も使わずに駆けて来た。


「ご主人様!注意してください、”アカリ”も使わずに来ると言うことは、、」

「ぎゃぼう、盗賊ですかです?」


「いあ、違う、あれは、、多分、、」



 走って来た冒険者は赤い髪をした若い冒険者だった。

 

「あの慌てようは、きっと何かのトラブルがあったんだ、地下迷宮ダンジョンで」


 経験者の俺だから解る、何かトラブルが起きたのだと。



 そして、冒険者の顔が確認出来る距離まで来た。 



 その冒険者が。



「あああ、あの酒場に居たルーキーと、瞬迅!」


「えっと、ドライゼンさんでしたっけ?」


 慌てて駆けて来たのは、赤毛の冒険者ドライゼンだった、

読んで頂きありがとうございます。


次回はトラブル予定?

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