勢力を塗り替えるチート
面倒回ですー!
「これが噂の恩恵ってヤツかぁ。本当に凄いのう」
「あ、レベル上がったんだ?」
「ららんさんレベルアップおめでとうです! これでお風呂を確保です!」
名前 陣内 陽一
職業 ゆうしゃ (非童貞)
【力のつよさ】103
【すばやさ】109
【身の固さ】 102
【EX】『武器強化(中)赤布』『魔防(強)髪飾り』
【固有能力】【加速】
【パーティ】ラティ101 サリオ113 ららん3
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ステータス
名前 ラティ
【職業】奴隷(赤)(陣内陽一)
【レベル】101
【SP】529/529
【MP】355/371
【STR】 343
【DEX】 385
【VIT】 309+8
【AGI】 506+13
【INT】 302
【MND】 331
【CHR】 418+8
【固有能力】【鑑定】【体術】【駆技】【索敵】【天翔】【蒼狼】
【魔法】雷系 風系 火系
【EX】『見えそうで見えない(強)』『回復(弱)リング』『防御補助(特)』
【パーティ】陣内陽一 サリオ113 ららん3
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ステータス
名前 サリオ
【職業】冒険者
【レベル】113
【SP】310/310
【MP】758/766
【STR】238
【DEX】282
【VIT】229
【AGI】294+5
【INT】501
【MND】439
【CHR】340
【固有能力】【鑑定】【天魔】【魔泉】【弱気】【火魔】【幼女】【理解】
【魔法】雷系 風系 火系 土系 闇系
【EX】『見えそうで見えない(強)』
【パーティ】陣内陽一 ラティ101 ららん3
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【名前】ららん
【職業】彫金師
【レベル】3
【SP】30/30
【MP】41/52
【STR】12
【DEX】21
【VIT】9
【AGI】14
【INT】19
【MND】17
【CHR】20
【固有能力】【鑑定】【真鑑】【幼男】【楽天】【道化】【火錬】【裸乱】【石切】【神巧】
【魔法】雷系 風系 火系 土系 水系 闇系 氷系 聖系
【EX】『防御補助(強)』『毒感知(大)』『耐毒(大)』
【パーティ】陣内陽一 ラティ101 サリオ113
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俺たちは西に向かいながら、なんとレベル上げも同時にしていた。
ただ、俺たちのレベルはもう高いので、周辺に湧く雑魚の魔物では経験値を得ることは出来ない。だが、ららんさんだけは別だった。
ららんさんからの提案は、俺の恩恵を利用したレベル上げをする事。
これによって上昇したステータス、今回の目的はMP。それの最大値を上昇させる事で、風呂を作り出せる程のMPを確保しようというモノだった。
そして都合が良いと言うと不謹慎だが、精神の宿った魔石が無くなった事により、ボレアス側では魔物が湧きやすくなっていた。
馬車を走らせながらラティに【索敵】をしてもらい、近くに魔物が居ればそれを倒して行ったのだ。
いつもなら魔物を避けて通るところ、逆に魔物へと……。
そして、日が暮れてきて野営の準備をする頃には、ららんさんのレベルは5まで上がっていた。
俺にはあまりピンと来ない事だが、ららんさん曰く、あり得ない程のスピードでレベルが上がったとの事だ。
野営の準備を済ませ、食事も終えた俺たちは、サリオの希望である風呂の用意をした。
と言っても、その準備をしたのはサリオとららんさんだ。
サリオが土系魔法で地面を凹ませ、その凹ませた場所にブルーシートのようなモノを敷いて、張ったお湯が地面に沁み込まないようにした即席の露天風呂。
ただ、地面に敷いたブルーシートのようなモノは、元の世界にあるようなブルーシートほど水を通さないというモノではないので、僅かずつだがお湯が抜けていった。
なので、二人一組で入浴するという事になり、現在はラティとサリオが一緒に入浴していた。
当然、男性陣である俺たちは、馬車の中でお互いを監視するという事になった。
もしかすると、他に風呂を覗こうとする者がいるかもしれないが、現在居る場所は外であり、しかも夜中だから人が通りかかる事はほぼ無い。常識的に言って、夜に馬車を走らせる者はいないのだ。
仮に誰かが通り掛かったとしても、ラティが事前に気付く。魔物が近くに湧く危険性もあるが、それも気付けるだろうから問題はなかった。
閑話休題
俺は、ららんさんと馬車の中で少々気まずい時間を過ごす。
サリオのはしゃぐ声と、それを嗜めるラティの声、そして時折聞こえてくる水音がなんとも気まずくする。
覗きに行くつもりなどは無いが、いつもとは違うシチュエーションにどうにも落ち着けない。
チラリとららんさんの方を見ると、生活魔法でお湯を作り出すのにMPを使い切った為か、少々グッタリとしていた。
気怠そうにしているららんさんを気遣い、俺が話し掛けずに黙っていると、ダルそうにしていたららんさんの方から話し掛けてきた。
「まさか一日で、お風呂と飲み水を同時に用意出来るほど上がるとはのぅ」
「うん? レベルが?」
「そうや。一応訊いてはおったけど、まさかここまでとは……ホントに驚きやのう」
「まあ、上がったと言っても、ららんさんのレベルが低かったからだし。多分だけどレベル15からは地下迷宮にでも潜らないとキツいかな」
かなり懐かしい事だが、俺が地下迷宮に潜ったのは、地上にいる魔物では経験値が入らなくなったからだ。それまでは城下町の外をウロウロしていた記憶がある。
俺が昔の思い出に浸っていると、ららんさんが溜め息を吐きながら俺に言ってくる。
「はぁ、まったくじんないさんは、自分の価値にホントに気付いておらんのう」
「あ、そういやそんな事を言ってたけど、俺は戦うぐらいしか……ないでしょ?」
それが俺の率直な感想だった。
WSが使えないなどの欠点はあるが、足を止めた近接戦や、逆にWSを頼らない事による戦闘継続時間の長さなど、自分だけの強みはある。
だがそれだけ、魔王相手に木刀を振っていたりはしたが、結局、トドメは伊吹だったり橘だった。
だからそう思っていたのだが――。
「じんないさん、恩恵の効果を侮り過ぎやろ? ハッキリ言ってシャレにならんよ、その効果は」
「いや、そうは言っても、勇者達ならみんな持ってる効果だろ?」
「でもじんないさんの恩恵って確か、本来あるはずの人数制限が無いんやろ?」
「あ~~、確か勇者達のはパーティの人数が6人を超えると効果がどんどん薄くなるだっけか? 確かに俺の場合はその制限がないらしいな。正確に調べた訳じゃないけど……。でも、欠点もあるぞ―― 」
俺は、勇者に備わっている力、恩恵の効果を、ららんさんに再確認させるかのように説明した。
魔物を倒した時に得られる経験値が桁違いに跳ね上がる事や、レベルアップによるステータスの上昇値が倍近くになる事。そしてパーティを組んでいる人数が6名を超えると、その効果が分散するように薄まる事を話した。
だが『ゆうしゃ』である俺の場合は、何故かその人数制限がない。
しかし、余程俺の事を信頼していないと、何故か恩恵の効果が発揮されないという大きな欠点がある事を、改めてららんさんに説明し直した。のだが――。
「だからのう、それがすっごい力やっての。信頼されていないと効果が発揮されないのが欠点? そんなん逆やっての? だって信頼してないヤツは育たないって事やろ? その意味は分かるやろ?」
「あ……」
「そんでそんで。大人数でも一気に成長させる事が出来るんやで? ハッキリ言って一番やばい力やっての。ラチちゃんやサリオちゃんも凄いけど、じんないさんのその恩恵は、下手したら全部がひっくり返る怖さがあるんよ。だからアムさんもギームルさんも――」
ららんさんの熱弁はさらに続いた。
俺が所属している陣内組は、俺の名前を使ってはいるが、実質リーダーはレプソルさん。そして組の運営を仕切っているのはイシスさん。俺はどちらかと言うとただの前衛役。
最初から意図した訳ではないが、この体制をいまだに継続しているのは、アムさんとギームルの指示だとららんさんは言った。
特にギームルは、今の体制を維持するように働きかけているらしい。
要は、俺が自分の意思だけで動かせる組を作らせないようにしているのだという。
その理由は――。
「じんないさん、じんないさんがその気になったら、本当にしゃれにならん冒険者連隊が作れるんよ? もっと大人数のオーバーアライアンスだって可能やろうね、超高レベルの……それがどれだけヤバいか分かるやろ?」
「なるほど……確かにそうか……」
「ちっと言い方は悪くなるけど、ある意味飼い殺しているって感じやろうね。自分で勝手に組を大きく出来ないように、そしてどっか他所に行かないようにって……」
「…………」
ららんさんに言われ、確かにと思えた。
だが一方で、ららんさんが何故、この事を俺に教えたのかが気になった。
ららんさんはアムさんの腹心のような存在。少なくとも、アムさんを裏切るような真似はしないと思っている。
だからこそ気になった。
「ららんさん。……何でそれを俺に話したってか、わざわざ教えたの?」
「うん? そんなん簡単やの。――だって話しても平気やと思ったから」
「へ?」
「じんないさんに国盗りをするような野心は無いやろうし、する気も無いやろ? それに後で気付かれた方が拗れて厄介やと思ってな」
確かにそうだった。
自分の持つ恩恵で、自分に従う強い部隊を作るつもりはない。それに、そういった部隊のようなモノを運営していく大変さも今は知っている。
そして、ららんさんが指摘したように、自分で気付くよりもららんさんに先に言ってもらった方がスッキリとした。下手な疑心暗鬼に陥るような気持ちは湧いてこない。
もしこれが、誰かに誘導されるように教えられて、そして不信感を抱いた俺を、上手く自軍に引き抜こうとするヤツが居たかもしれない。
そう思うと、いま明かされたのは良かったと思う。だが――。
「はあ……最近ギームルが色々と話してくれるし、もう隠し事なんかは無いと思ってたんだけどな」
「じんないさん、突然、人が沢山のことを語ったり、何かを打ち明けた場合ってのは、大半の場合が、本当に隠しておきたいことを埋もれさせる為の手段やで? 腹黒いヤツが使う常套手段や」
「……知っておいた方が良い事なんだけど、出来れば知りたくなかった知識だなそれ」
――そういや昔、似たような事を訊いた事があるな……。
女子は嫌いな相手を相手にしなくてはいけない時、当たり障りのない事を話しまくるって、
そうすれば嫌いな相手に、したくない話題の話をしなくて済むとか……。
俺が頭の中で、必要の無い雑学を思い浮かべていると、ららんさんが少し真剣な顔で話してきた。
「あとな、じんないさん。オレはちょっと怒っておるんよ、じんないさんのその自己評価の低さに。なんか最近ちょっと卑屈になってたやろ? 戦闘しか能がないって」
「え、ああ……」
俺は曖昧な返事を返した。
今ここで、『だってそうだろ』などと言おうモノなら、ららんさんの逆鱗に触れそうな気がしたのだ。
「ええかい、じんないさん? 低すぎる自己評価なんてモンは罪よ。勿論、高過ぎるのも駄目や。ちゃんとした自己評価を持っておらんと、自分だけでなく周りも不幸にするだけや」
「ららんさん……?」
「昔、アムさんはな、自分は後継者になる器ではないって言ってたんよ。自分ではノトスを治めきれないってな。でもアムさんは自分を見つめ直して後継者となるべく動いた」
「ああ、あったな、そんな事が……」
「あのまま次男として引っ込んでおったら、間違いなくノトスは駄目になっておったろうね」
ららんさんが何を言わんとしているのか分かる。
そして確かにその通りだったと思う。あのままだったら、きっとノトスは駄目になってガタガタとなっていただろう。
「それにな、じんないさん。これはガレオスのおっちゃんも言っていた事なんやけど…………じんないさんには期待をしてしまうんやと。あ、信頼やないで、期待をしちゃうんだって。ガレオスさんはそれを英雄って感じで言ってたけどな。まぁオレの場合はじんないさんに、解き放ってくれるかもって期待してるん」
「解き放つって……?」
「オレにもようわからんの。……でも、何故かそう感じるんや。――いつか解き放ってくれるってな」
何とも返答に困った。
取り敢えず出来る事といえば、照れ隠しのように頭をガシガシと掻くことだけ。
「あ、それにじんないさんには頑張って貰わんと駄目なんよ。今のオレの力では、あの子をよう護り切れんからのう……。だからじんないさんには張り切って貰わんとだから」
「ららんさん……」
「いつかは……」
ららんさんはそう言って、ラティとサリオが居る方の壁を見つめた。
彼の見つめる先が何なのか、俺はそれを察するのを――止める。
こうして馬車の中で、少し長い沈黙が続いたのだった。
因みに。
入浴している二人の近くに魔物が突然湧いて、俺たちがそれを助けに行ってトラ○ルといった展開は起きなかった。
読んで頂きありがとうございます。
宜しければ、感想など頂けましたら幸いです。
あと、誤字などのご指摘も;