仄暗い檻の中で
ちょっと短めです。
※ちょっと胸糞なお話です。少しばかり注意です。
薄暗い部屋の中、男は息を荒くして黒髪の女を見下ろしていた。
女の腕は鎖で繋がれており、手を頭の高さに掲げたような格好で、ぐったりと項垂れたて気を失っていた。
長い黒髪が横に流れ、白磁のような白いうなじを晒す。
「――っ!」
薄暗い部屋に浮かぶ淡く白いうなじは、それを見つめる男を滾らせた。
だがしかし、血を流してズキズキと痛む左耳が男を抑えた。
「ふぅぅ……くそ、痛ぇ」
男は女を貪ろうとした。
だが激しい抵抗をされ、男はそのときに左耳を噛まれていた。
その痛みに男は激昂し、女を手の甲で力いっぱい叩いていた。
さすがに拳を握るほど我を忘れた訳ではないが、それなりの力を込めていたため、女は気を失ってしまっていた。
女は意識を手放し、襲ってきた男に無防備な身を晒す。
纏っている純白のウエディングドレスのような服は、頂を晒してしまいそうなほど胸元が引き延ばされており、人には見せられない格好になっている。
しかし仮に女が意識を取り戻したとしても、腕の自由を奪っている青色の鎖が、それを隠すことを許さないだろう。
神鉄ほどではないが、青神鉄鋼と呼ばれる希少金属で作られた青色の鎖。
とても粘りがある弾性に優れたその希少金属は、武器などの加工には向いていないが、防具や鎖などには向いていた。
多少の力ではビクともせず、ましてや武器を持たない女には、決して破壊することなど叶わない代物であり、そしてその鎖は女を一年以上捕らえ続けていた。
いま着ているドレスも、袖を通さずとも着れるように作られており、肩や腕のリボンで結んで纏うようになっていた。
もし肩の結び目を一つでも解けば、中の果実がまろび出てしまうようなドレスだ。
「ふぅうう……」
男の欲情がむくりと鎌首をもたげる。
この男は、一年間以上この欲情に耐え続けていた。
出来ることなら、この女を貪り続けたいと考えていた。
だがそれをするということは、この男にとって屈辱であり、ある男に対し負けを認めるような行為でもあった。
目の前にいる女が、ある男に惹かれていることを知っていた。
そしてこの男は、その男を見下していた。
自分よりも遥かに劣る奴であり、学校のクラスにおいてもカスのような存在。
雄としての優劣をつけるのならば、比較対象にもならないような奴。
だから、この女の心の中にあの男がいることが許せなかった。
この女が奴を求め続けているのに、この女を力尽くで抱くという行為は、この男にとって敗北であった。
プライドの高いこの男にとって、それは絶対に認めることが出来ないことだった。
だから鎖で躰を縛り付け、心を行動で懐柔し、自分を求めるように接していた。
何を言われようとも怒らずに、真摯に向き合っていった。
一年以上の時を……
しかしそれだけ尽くしているのにも関わらず、この女は一度たりとも首を縦に振らなかった。
男はそれに対し苛立っていた。
そして、そしてとうとうあの男がやって来た。
奴のことは元から叩き潰すつもりだった。
だから男は女に言った、『あいつが乗り込んできた』『俺がアイツを倒す』と。
そして自分の方が優れている、だから自分を受け入れろと。
しかし女は――
「くそっ、あんな顔を見せやがって……」
この男がここ一年、一度たりとも見たことがない顔だった。
そしてその笑顔は、男が心底欲していたモノだった。
だから我を忘れて熱くなってしまった。何故それを見せるのだと……
もう堪え切れなかった。
貪ってやろうという衝動に男は駆られた。
男の好みである、突き出すような大きな胸を貪ってやろうと。
密かに願っていた。絡めてみたい腰まである長い黒髪を。
腹に擦り付けてみたいと思っていた、すらりと長く美しい腿を。
そして触れてしまえば儚く散ってしまいそうな唇を欲した。
だが女は、拒絶と抵抗しか寄越さなかった。
女は顔を横に背け、ただひたすらに唇を遠ざけ、身動きが碌に取れない中で必死に抵抗し続けた。
首と胸元に口を這わせるも、女はアゴを上げて拒絶していた。
そして女は、左耳に噛みついてきたのだった。
「――――――――っ」
「――――――っ」
「――――――――――――っ!」
「……来やがったか」
痛みで熱を帯びた男の耳に、遠くからの怒号が聞こえてきた。
奴が近くまでやって来ているのが分かる。
「待っていろよ京子。俺がアイツを……陣内を叩き潰してやる。おいっ! お前ら、この部屋には誰も入れるなよ。いいな、わかったな!」
「は、はいアラキ様。決して誰も入れません」
「はぃ、――うぅぅ……」
男は、親子の侍女を横目に、檻がある仄暗い部屋を後にした。
奴との決着をつけるために。
読んで頂きありがとうございます。
そして続きを急いで書きますのでご容赦を……
それと安心してください大丈夫です^^
あと、関係ない話ですが、フェ〇トの桜ルート、HFの劇場公開が近いですね。
自分はフ〇イトの中で、あの話が一番好きです。




