ぺちぺち
すいません、簡潔に纏めたら短く……
そして区切りが良いので……すぐにつぎを書いていますので~
「うあああああ! 痛い!? なんでだ!? なんで痛いんだぁ!」
仰向けに倒れ込み、盾で頭部だけは死守する勇者八十神。
だが完全に死に体。
もう逃げ出すことは出来ず、攻撃が止まない限りは立つことが出来なくなっていた。
これで相手が人ならば、攻撃が止む可能性があるかもしれないが、相手魔王。とてもそれは期待出来そうにない。
「この鎧は全て防ぐはずなのに、なんで?なんで痛い!? なんでこんな衝撃が――がああああっ! 痛い痛いっ!」
――アホかコイツは!
あの黒い靄の中でなんも違和感を感じなかったのか?
付加魔法品の効果が下がってただろうがっ!
八十神は何が起きているのか分かっていない様子だった。
だが、他の奴らはみんな分かっているだろう、ウルドの鎧の効果が下がっているのだと。
衝撃などを全て防げている効果が今は完全ではない。
その完全ではない不完全な隙間に、魔王の振り下ろしによる衝撃が入り込んでいるのだろうと。
本来であれば即死レベルの猛攻。
だが効果が下がっているとはいえ、それでも鎧の性能は超高性能。
だから八十神はまだ生きており――
「援護おおおおっ!!」
俺は腹の底から吼えて、駆け出した。
( 3発までなら凌げるっ )
俺はまず木刀を八十神の横に投げ、次に一気に踏み込み全力で薙ぐ。
「――っらあああ!!」
渾身の横薙ぎ。
「っがああ!!」
我武者羅な振り上げ。
「だっらあああ!!」
全身全霊の叩き付けるような打ち下ろし。
俺は魔王の滝のような振り下ろしを、全力であり最速の3連撃で打ち返す。
それは時間にして1秒にも満たないような瞬間。
だが、瞬間のような時間であろうと稼げれば、きっといけると感じれた。
いま俺の周りにいる奴らならばと。
「はああああ!!」
「烈破大爆昇っ!」
俺がこじ開けた魔王の振り下ろしの隙間に、下元と上杉が捩じり込む。
二人ともアッパースイングのような振り上げで、魔王の振り下ろしを弾き返した。
再び出来た、生きていられる僅かな隙間。
その隙間に、今度は俺が動く。
「――がっりゃあ!!」
魔王の振り下ろしを横薙ぎで迎撃する。
そして、次の振り下ろしに備えるが。
「おらおらおらー」
「こっち来いやぁ」
「もっと広がれええ、もっと散らすんだ」
「横に走れええええ」
「的を絞らせんなあ」
「勇者さまを守れえええ」
「行け行けいけえええ!」
即座に引き返し、まるでカバディのように立ち回る冒険者たち。
精鋭組と囮組が再び魔王の射程内に入り、負傷して動けない八十神に攻撃が集中しないように、出来るだけ魔王の気を引くように動いていた。
「勇者さまからは距離を取れえ、近いとマズイ」
「誰かもっと援護をおお」
獲物が再び増え、こちらの狙い通りに振り下ろしが分散する。
そして余裕が出来た瞬間、俺達は次の行動に移る。
「蒼月! この馬鹿を頼む」
「了解!」
蒼月は即座に駆け付け、八十神の鎧の肩を掴み強引に引き摺っていく。
ヤツは足には自信があるタイプ、あっという間に射程範囲外まで八十神を運んでいく。
「葉月ちゃん、八十神に回復魔法を」
「はい、蒼月君」
こうして八十神を救出し、今度は俺達が撤退する番。
「よし、下がるぞ――って、上杉、お前は先に下がれ」
「はぁ? 俺だけ先に下がれって……ったく、分かってねえな。背中の傷は騎士の恥ってか? 俺だけ先に逃げれるかよ」
「アホか、カッコつけてる場合かよ。その背中がガッツリやられてんだろうが――蒼月ぃぃい! この馬鹿も連れて行ってくれええ」
「あいよー!」
「はぁ? 背中って、げぇ!? マジか、すげぇ血が出てんぞ俺……」
「どんだけアドレナリン出てんだよお前……まぁ、助かったよありがとうな」
「はっ、お前に礼を言われるなんてな、あの時の借りを返しただけだ」
「ん? あの時? まぁいいや、それよりも後でその傷に木刀を当てさせろ。たぶん、回復魔法が効きやすくなるはずだ」
「はぁ? 木刀をって何を言ってん――っおわ!? お、おい引っ張んなよ亮二」
「ほらほら、司も下がるよ」
物凄く雑に引き摺っていく勇者蒼月。
だがキッチリと上杉を撤退させてくれたお陰で、俺や囮役が下がる事が出来る。
そして上杉が安全圏まで下がり、俺達も一斉に退いた。
結果、精鋭組と囮組は、全員死ぬことなく退くことが出来た。
走り魔王から遠ざかりながら、俺は後ろを振り向きある一点を見詰める。
「……馬鹿野郎が」
遺品となるような物は回収は出来なかった。
元から回収するつもりも無かったが、それでも何か思うところはあった。
全く知らない奴という訳ではない。
「あ、名前は……セキだったかな」
こうして魔王戦、第3ラウンドは俺達の戦略的撤退で終わりを告げたのだった。
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