ヤツが来た
げ、激務過ぎてカリカリクポー
説明が行われていた部屋を出て、俺とレプソルさんは真っ直ぐ外へ向かった。
警備の兵士がジロジロと見る中、カツカツと早足で歩く。
急ぐ一方、俺の頭の中は、自分がやらかしたことにより、陣内組まで巻き込んでしまった後ろめたさで一杯だった。のだが――
「ふう、丁度良かったよジンナイ。どうやって切り出したらイイのか悩んでいたんだよ」
「へ?」
「勇者アカギ様から聞いていたからな、中央の連中は冒険者達を使い潰すつもりかもしれないと」
「あ……」
――言ってた!
確かに注意しろ的なことを言ってたな、
そっか、俺以外にも言っていたのか……
「まぁそれだけじゃないんだけどな……もっと前にある人から今回のことを忠告されていたんだよ。取り敢えずオレはあんな連中に使われてやるつもりは無い。アイツ等の指揮に従っていたら、無謀な突撃とかさせられそうだ」
レプソルさんは歩きながら、兵士の目など気にせずに否定の言葉を吐き続けた。
防衛戦の経験がほとんどない中央が、しっかりとした指揮を執れるはずがない、勇者に頼ればなんとかなる的な発想がおかしいなど、指揮や作戦に対しての批判を。
――ああ、
そういやレプさんって、作戦とか指揮には五月蠅かったな……
深淵迷宮での俺の指示も、超ボロクソに貶していたし、
その後、俺達は宿へと戻り、勇者が帰って来るのを待った。
勢いで思わず城を出てしまったが、情報の聴き漏れがあるとマズいからだ。
それに冒険者側と勇者側では、与えられる情報に差があるのかもしれない。
その辺りの情報のすり合わせを、しっかりとやるべきだとレプソルさんが主張し、俺達は宿で葉月の帰りを待っていたのだが――やって来たのは赤城だった。
「赤城? あれ、葉月は……?」
「陣内君、もしかすると葉月さんは今日は帰って来れないかもしれない」
「ッ何かあったのか!?」
「ああ、それを伝えに僕が来たんだ」
やってきた赤城は、手短に何があったのかを話してくれた。
葉月が戻って来れなかったのは、MP枯渇による軽い貧血のような状態になったから。
そしてそのMP切れになった理由は。
負傷していた小山の治癒の為。
手足を欠損するほどの怪我を負っていた小山が、つい先程中央の城に運び込まれたそうだ。
そして聖女の勇者葉月は、魔王によって重傷を負わされていた鉄壁の勇者小山を助ける為に、自身のMPを全て使い切ったらしい。
だが――
「ちょっと待ってくれ。葉月のMPが切れた? アイツのMPが空になるって……瀕死のジジイを三回は助けられる程のMPがあんだぞ?」
「うん、その疑問は当然だろう。彼女ほどのMPが枯れるなんてそうは無いからね。だけど今回は事情がちょっと違ったのさ。……普通の怪我じゃなかったんだ、まるで呪いとでも言うべきか。――それと、どんな換算だいそれは? ジジイ三回分って……」
( あん? あのクソジジイだよ )
少々話が脱線したが、俺は赤城から詳しく話を訊いた。
小山の怪我は、普通の回復魔法では治癒し切らず、困った小山のパーティは、『聖女の勇者様なら』と判断し、中央へと担ぎ込んだらしい。
そしてその傷は、まるで回復魔法を受け付けない呪われたような状態だったらしく、浄化系魔法を唱えつつ回復魔法を掛ける方法を行ったそうだ。
しかも、なかなか治らない傷口を凝視しながらの作業となり、それも精神の負荷となったらしい。
一応完治はしたらしいのだが、一緒にいた言葉は、それを見て参ってしまったという。
俺はその話を聴き終えて二人の事を心配する。
どこまで酷い怪我だったのかは分からないが、その傷を凝視。
普段なら魔法ですぐに治るのだろうけど、それがMPを全て使い切るほどの間、その怪我と向き合っていたのなら、精神の負担はかなりのモノ。
そのまま城に留まるのは当然だろう。それと――
「赤城、その傷ってのは回復魔法が効き辛いって事だよな? それって……」
「ああ、かなり厄介だね。WSや魔法が効きにくい上に、受けた怪我まで厄介だってことだ」
これは予測していなかった。
今までそんな魔物はいなかったのだから。
これでまた、魔王討伐の難易度が上がったのだった。
その後赤城は、2~3個伝えることを伝えると帰っていった。
しばらくの間は待機や、怒って南に帰るなよ等々。そしてこの戦いが終わったら、ドライゼンの件を手伝って欲しいと、再び告げられた。
それに対する俺からの返事は、『まずは魔王戦だな』だった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
その日の夜。
俺はラティ撫でをこなしながら考え事をしていた
まずは決まった事や分かった事の確認。
報酬は無いが魔王戦には参加するという事。
魔王が強そうという事
ドライゼンと北の事。
そして何故か、俺だけではなく陣内組まで魔王戦に参加するという事。
報酬が出ないにも関わらず、陣内組のメンツは魔王戦に参加するというのだ。
勇者と共に戦うは誉れとされているのかもしれないが、命懸けの戦いを無報酬というのは思う所があった。
それについて、『本当に良いのか?』と訊ねると、返事は全て、『事前に聞いている』だった。
当然、『何を?』と訊ねると。
皆が含みのある笑みを見せて去っていったのだ。
――わからん、
事前に聞いていた……?
あ、ラティなら何か知っているかも
「なあラティ――ッ地震!?」
「あの、揺れています……?」
ラティに訊ねようとしたその瞬間、地震が起きたのだ。
( 震度2~3? )
「ラティ、地震って珍しいよな?」
「はい、ほとんど無いかと……。私も地震の経験というと、深淵迷宮の時などの揺れ程度しかないですねぇ」
その日の夜、規模は小さいながらも地震が起きた。
元の世界で地震には慣れているので、そこまで驚くことではなかったのだが、とても嫌な予感がする揺れであった。
魔王が発生した為に揺れたのか、それとも別の理由なのかは不明だが。
とても嫌な予感がする地震だった。
そして次の日の昼。
嫌な予感がする人物がやってきた。
「国の一大事だからな。仕事を全部片付けてやって来たぞ」
「ジジイ……」
中央へ、元宰相ギームルがやってきた。
俺は確信する。
こいつは国の為ではなく、孫娘の為に来たのだろうと。
そんな確信をしたのだった。
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あと誤字脱字なども……




