裏切り者
物語が動きだす。
感想欄にもちょっと書いたのですが。
某有名ラノベで、青い髪の子は本編の出番が減ったのにIFルートで無双しているの見て。
『あ、勇者召喚されなかった、学校での陣内と早乙女さんのIFストーリーを書けば!?』と思ったのですが、需要は無そうだし、よく考えたら自分は恋愛系なんて書けないので、却下しました。
「くっころーー!!」
――ダンッ!!――
俺は、癖になる苦みのある果実水の入った木のジョッキをテーブルに叩き付けた。
「英雄のダンナ……。なんかアンタって休日の度に荒れてんなぁ」
「し、仕方ないだろっ、だって、だって――ッ」
俺はガレオスさんに、吐き出すようにして話していた。
ラティに狩られ続けている事を。
そして一刻も早く夜のカポエラが必要だと、そう説明をした。
「あ~~~、魔石魔物狩りで喩えると。WSが使えず、ズルズルと押されていって。でも何とか持ち直したと思っても、すでに壁際に追い込まれていて。最終的にはやられるって感じか?」
「そうなんだよ! 流れを完全に持っていかれて……もう」
だからこそ、戦えるWSが必要であり、その技を習得したいと、俺は熱くそう語った。
そして俺の熱意にうたれたのか、ガレオスさんは――
「ダンナ。魔石魔物の倒しかたって知っているかい? いや、戦い方かな」
「へ? そりゃ槍で貫く?」
「そりゃダンナだけだから。イイですかい? 魔石魔物が湧く前に、まず仲間に強化魔法を掛ける。次に陣形を整え、魔石魔物が湧いたらすぐに弱体魔法漬けにする」
「ふんふん」
「そんで盾役が魔物の動きを押さえ、動きを止めているウチに一気にWSで押し切るんでさぁ」
「ああ? だから俺も夜のWSが欲しいって言ってんじゃん」
俺はガレオスさんの意図が読めず、つい苛立ち棘のある口調になってしまう。
そんな俺に熟練冒険者のガレオスさんは、優しく諭すように語る。
「ダンナ。オレが言いたいのは前半の部分でさ。戦いってのは戦いが始まる前から始まっているんでさぁ。自身を強化し、相手を弱体化させてから戦いを始める。ある意味で戦いの基本ですよ」
「強化……弱体化……」
「ええそうです。戦いが始まる前に流れを作るんですよ」
「な、それってまさか。いや、俺は魔法が使えないし、やっぱ駄目じゃん」
「ダンナ。強化とは、弱体化とは、何も魔法だけじゃありやせんぜ。――薬ですよ薬。要は薬品を使うんですよ」
――アウトーー!!
いやいやいや、それってアレだよね?
媚から始まって薬で終わるヤツの事だよね?
駄目でしょうそれはっ!
俺はガレオスさんにそれはマズいと言った。
倫理的にいけないと、そう語っていると。
「――いや、おれはアリだと思うな」
「え? アンタは確か三雲組のドルドレー」
「おい、何言ってんだっ! ナシに決まってんだろアホか」
「アンタは伊吹組のサイフア……」
「頭が固いなぁアンタ等。ケースバイケースっしょ」
「陣内組バルバスまで……」
気が付くといつの間にか、知り合いの冒険者達が集まっていた。そして――
「おう、話は聞いたぜ陣内。何かに頼るだなんて小せぇなお前」
「上杉……」
最近ノトスに戻ってきた、勇者上杉までも俺達のテーブルにやって来た。
そして集まった野郎どもは、己の体験談や武勇伝。また失敗談までをも競うように語りだした。
特に上杉は、腹立つようなドヤ顔で、腹の立つ自慢話を語っていた。
当然、ムカついたので殴った。
突発的に始まった、それはそれはしょうもない会議。
それは男らしくない、頼り切るのは情けない、相手のことを考えろ、綺麗ごとを言ってんな、セーラは俺の嫁、ぶっとばす。などと話が二転三転し、最終的にある結論に辿り着いた。
「相手に使うのはナシ。でも自分に使うのはアリって事で」
「有効な物は使うべきだよな」
「まぁ仕方ないか」
「まぁ落とし所としては妥当だな」
「おう、イイんじゃね? 俺は使わねえけどな」
魔物との戦闘でも、自身に強化魔法を使うのは当たり前。
ならば自分に使うのは問題なし、だが今回の相手は魔物ではなく人。その人間を弱体化させるのは邪道。
結果、結論としては、薬を相手に使うのはナシだが、自分がドーピングする分にはセーフとなった。
だが――
「あ、そういった薬が売っている場所知らないな……」
「あ~~、そりゃ普通に店には売ってねえだろうな」
俺の前に新たな問題が立ち塞がった。
だが、それはすぐに解決する。
「へっ、仕方ねえな。俺がその場所を教えてやるよ」
「ドルドレー!?」
「やっぱ知ってたか、お前ってそういうの頼ってそうだもんな」
「うるせえよサイフア。じゃあジンナイ、オレは先に行って話をつけておくから、ちょっとココで待っててくれ」
「わ、わかった。あ、一応金を多めに取ってくる。いったん屋敷に戻るな」
「おお、行って来い。オレもそれまでには戻るからよ」
「んじゃちょっと戻る。ガレオスさんもまた後で」
「おお、ココで飲んで待ってるからな」
「……ふぅ行ったか。……ガレオスさん、妙に付き合いがイイですね、あんな話に乗ってやって。普段なら『階段でも』って感じで終わるのに」
「ん? ああ……。なんかよぅ、ダンナが煮詰まっている感じがしてな。だから気晴らしにでもなればってな」
「煮詰まっている……? ウチのジンナイが?」
「ああ、なんか悩みでも抱えてんだろうな。それから目を背ける為に騒いでいるように見えてよぉ。だから大人としては付き合ってやらんとだろ?」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
俺は、現在自分が持っている金を全て持ってきた。
そしてドルドレーの案内により、俺とガレオスさんの三人は、街の中心から離れた場所へと向かう。
その向かった先は、近くに階段などがあるエリアで、ひょっとすると、ここで買い物をした客がそのまま階段へと向かうのかもしれない。
心の中に謎の罪悪感を抱きつつ、俺は例の店へと近づいた。
「あ、あの店だよ」
「あん? 誰か出て来るぞ。買い物をした客かぁ?」
いかにも魔女が住んでいます的な建物。
機能性よりもデザイン性を重視した建物から、複数の男女が姿を現した。
思わず観察してしまう。
少々いかがわしい店から出て来た客なのだから、何となく興味あって観察をした。
一人は、見たことがある冒険者風の男。
もう一人は、よく見たことがある冒険者風の男。
さらに一人は、学校でよく見たことがある勇者風の男。
そして――
「――なっ!? これは……」
「マズイ!? ダンナ逃げろっ、これは罠だ。奴らは裏切り者だ」
「くっくく、我ら嫉妬組を侮ったな。さぁ狩られるがよいジンナイ!」
「くそっ!」
俺は全力で駆け出した。
【加速】も使用し、力の限り駆け抜けた。
本当にガチで一生懸命に。
だが、直線だけではない街中。しかも相手は【天翔】による建物無視が可能な狩人。
俺は呆気なく捕まり、その後、超怒られたのだった。
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あと、誤字なども;




