表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

280/690

ファジーでハードでホットなアレ。

ちょっと遊び回

ひとつ前の話に、サリオのキャラデザが載せてあります。

 油断であった。

 その兆候はあったのに油断した。

 不意を突かれたのだ。油断さえしていなければ、突かれるような不意ではなかった、だが俺は油断していた。


「くっころ!」

「……なんですかそれは? ご主人様」


 俺の上にまたがるラティ。

 現在俺は、ラティに組み敷かれていると言っても差し支えの無い状況だった。

 そしてそのラティの頭上では、”アカリ”が弱弱しい光を放っている。


「……いい」


 思わず言葉が漏れる。

 白いシャツより零れ見える健康的な肌と双丘。

 俺の視線はそれに奪われており、しかも両の手までも布で縛られ、その自由を奪われていた。


「ら、ラティさん。ノトスに戻れば……イイんだったよね? なんで手を縛られているのかなぁ? なんでかなぁ?」


 あまりの動揺に、つい葉月(はづき)の真似をしてしまう。

 そして俺のその質問に、ラティが吐息を漏らすようにして答える。


「あの、わたしは言いました。尻尾を触れられると……その、前後不覚に陥ると」

「ああ、確かそう言ってたな。だから、安全なノトスならって……」


「ええ、そうです。今のノトス公爵家の離れは、現在安全とは言えないのです。一応眠らせては来たのですが、その油断は出来ないので……」

「へ? 眠らせたって何だよ!? え? 敵がいるの?」


「まさか、連れて戻るとは……」

「一体何を……?」


「あの、お話はここまでです。――ではご覚悟を」

「くっころー!!」



 油断していた。

 次の日はやっとの休日。裸Yシャツでラティが部屋に来たのだから、その可能性が高いことは分かっていたはずなのに。

 俺は”アカリ”を消されるまでは、無いと判断していた。

 そしてフルアーマーラティの状態では、彼女の予備動作を読むことが出来ない。

 だから”アカリ”の方を注視し、ラティの動きを先読みしようと思っていたのだが。彼女は”アカリ”を消すことなく攻めてきた。


 そしてその結果。不意を突かれた俺は、手を縛られてベッドへと押し倒され、そのまま狩られたのだった。





        閑話休題(三連敗した)





「くそぉぉ……聞いていますかガレオッスンさん」

「へいへい、聞いていますぜダンナ。――はぁ~~失敗した。ダンナがまさかこんなに酒癖が悪いとは。たった二杯しか飲んでいないのに」


「さけぇ? 何をぉ言ってんですか。これは苦みがする果実水(ジュース)ですよ」


 今日は休日だったのだが、昨日の夜の敗北が引きずってしまい。魔石魔物狩りを終えたガレオスさんを見つけ、俺はつい絡んでしまっていた。

 しかし、あまりに情けない悩みの為、具体的な事は言えずグダグダとしていると、熟練冒険者のガレオスさんは、ある飲み物をすすめてくれた。


 さすがに酒はアレなので断ったのだが、『ならば、コレならイイだろ?』と、果実水を注文してくれたのだ。

 フルーツジュースのような飲みもので、基本的に甘い飲み物なのだが。何故か不快感を感じない苦みが混ざっており、それがアクセントとなって中々美味な飲み物だった。


 俺はそれを飲んでいると、何故か気分がふわふわとしてきて。気が付くと言い難いことをペラペラと口にしていた。


「聞いてくらさいガオスさん。俺は”夜のカポエラ”を習得したいのですよです!」

「夜のかぽえら? なんだそりゃ? つか、マジで何がなんだか……サリオの嬢ちゃんみたいなことまで言い出して」


 俺は必死に懇願した。

 俺には夜のカポエラがどうしても必要なのだと。

 手を使わずに戦える技が必要だと。そうでなければ、俺はいつまでも負け続ける事になってしまうと、俺はそう熱く語った。


 そして俺の熱意に胸を打たれたのか、ガレオスさんはとても苦そうな顔をして、ある提案をしてきた。

 

「あ~~~~~~、あれか。まぁ分からんでもないか……、よしっ! その”夜のカポエラ”を覚えられるかどうかわからんが協力してやろう」

「おお~~さすがガスさん!」


「修練の場へ冒険に行くか!」

「――ッ!? い、いや、今はマズくて……」


 俺はガレオスさんに、今はマズイ訳を説明をした。

 頭の中は、苦い味のするジュースでほわほわするのだが、修練の場(そこに)冒険する(行く)と、きっと亜麻色の狩人が察知してやってくると理解していたのだ。


 その狩人は、三軒隣の喫茶店で女子会のような事している。

 昨日の夜、その狩人が何かをやったらしく、それを聞くとかどうとか葉月と言葉(ことのは)が言っており、連行されるように連れられていったのだ。


 俺はそれを見て、きっと知らない方が良いことのような気がしてスルーしていた。

 だから現在、この場は狩人の範囲内(テリトリー)。俺が下手に動けば狩人も動く。


 その事をガレオスさんに説明すると――


「ふむ、よく分からんがぁ、要は【索敵】に察知されなければイイんだろ?」

「ほぇ? えっと~確かにそうだけど……」


 それが出来たら苦労しない。

 【心感】の範囲から逃げることなど不可能に近いのだから。


「ダンナ、いい作戦があるぜぇ~、乗るかい?」

「ん~~? どんな作戦が?」


 ガレオスさんの言う『いい作戦』とは、俺を魔法で寝かして運ぶという方法だった。

 【索敵】は、睡眠などで意識を失っている状態の相手は感知出来ず、俺が寝ている状態であれば、察知されずに移動が出来るのだという。

 

 当然俺はその『いい方法』に乗った。

 ただ、何かを見落としている気もするが、ほわほわする心地良さが判断を鈍らせる。


「頼んます、ガさん」

「ダンナ……どんどん短くなっていますぜ、オレの名前」


 

 その後、俺は酒場に居合わせた伊吹組の後衛に睡眠系の魔法を掛けて貰い、一瞬にして眠りに就いた。

 次に起きた時はきっと階段下のはず。

 ガレオスさんは俺が眠ったら、伊吹組の何人かで運んでやると言っていた。


 

 だが、目を覚ますとそこは――


「あれ、ここって離れの客間……? なんでココに?」

「うん正解。ここは公爵家の離れの客間だよ、陽一君」

「陽一さん、あのう……お話がありますっ」


 床で寝かされていた俺の両隣には、葉月と言葉(ことのは)が立っていた。

 そして身体を起こそうとした俺の背後から。


「あの、ご主人様。何故睡眠系魔法を掛けて貰ったのか、……その訳はお聞きしました。ただ、突然ご主人様の気配が消えたので、本当に肝を冷やしましたよ。少々取り乱して、周りの方々にご迷惑をお掛けしてしまいました」


 背後から、温かさも冷たさも感じない、まるで温度がないような声音が聞こえてくる。

 咄嗟に浮かんだ感想は、『詰んだ』。

 

 左右を抑えられ、背後にはラティ(狩人)

 正面がガラ空きなのは、きっと罠であろう。葉月が魔法障壁でも張ればすぐに塞がれてしまう。


 観念したフリをしつつ腰に手を当てるが、やはりそこには木刀はなく、障壁を破っての逃走は不可能だった。

 俺は降参するかのように両手をあげて、そしてそのまま体を倒し土下座した。


 何に対して謝罪しているのかは明確にせず。

 俺は誠心誠意土下座した。

 これが一番被害が少なくて済むだろうと考え。

  


 ある偉大な人が言っていた。

 言葉は誤解を招き、言葉は言質を取られ、言葉は情けない言い訳を生むと。


 きっとこれは、誰かが悪いのではなく。

 社会が悪いのだろう。俺はそう思うことにした。


 だがその後、『あれ? これって誤魔化そうとしているのかなぁ?』と、葉月に言われ。

 『はい、どうやらその様子ですねぇ』と、ラティに追い打ちを掛けられた。


 因みに言葉(ことのは)は、無言で俺を見つめるだけであり、それはそれで何か居た堪れない思いだった。


 


 後日、ある冒険者は語る。

 ジンナイを魔法で眠らせたら、瞬迅が物凄い勢いでやって来て首を狩られそうになったと。

 リーダーのガレオス氏が、すぐに陣内を売らなければ(白状しなければ)本当に危なかったと語った。



       挿絵(By みてみん)

          ↑

           三人に、超怒られた人


読んで頂きありがとう御座います。

宜しければ、感想など頂けましたら、幸いです。


あと、誤字脱字なども……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
[良い点] ラティちゃんてひょっとしてS?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ