ファジーでハードでホットなアレ。
ちょっと遊び回
ひとつ前の話に、サリオのキャラデザが載せてあります。
油断であった。
その兆候はあったのに油断した。
不意を突かれたのだ。油断さえしていなければ、突かれるような不意ではなかった、だが俺は油断していた。
「くっころ!」
「……なんですかそれは? ご主人様」
俺の上にまたがるラティ。
現在俺は、ラティに組み敷かれていると言っても差し支えの無い状況だった。
そしてそのラティの頭上では、”アカリ”が弱弱しい光を放っている。
「……いい」
思わず言葉が漏れる。
白いシャツより零れ見える健康的な肌と双丘。
俺の視線はそれに奪われており、しかも両の手までも布で縛られ、その自由を奪われていた。
「ら、ラティさん。ノトスに戻れば……イイんだったよね? なんで手を縛られているのかなぁ? なんでかなぁ?」
あまりの動揺に、つい葉月の真似をしてしまう。
そして俺のその質問に、ラティが吐息を漏らすようにして答える。
「あの、わたしは言いました。尻尾を触れられると……その、前後不覚に陥ると」
「ああ、確かそう言ってたな。だから、安全なノトスならって……」
「ええ、そうです。今のノトス公爵家の離れは、現在安全とは言えないのです。一応眠らせては来たのですが、その油断は出来ないので……」
「へ? 眠らせたって何だよ!? え? 敵がいるの?」
「まさか、連れて戻るとは……」
「一体何を……?」
「あの、お話はここまでです。――ではご覚悟を」
「くっころー!!」
油断していた。
次の日はやっとの休日。裸Yシャツでラティが部屋に来たのだから、その可能性が高いことは分かっていたはずなのに。
俺は”アカリ”を消されるまでは、無いと判断していた。
そしてフルアーマーラティの状態では、彼女の予備動作を読むことが出来ない。
だから”アカリ”の方を注視し、ラティの動きを先読みしようと思っていたのだが。彼女は”アカリ”を消すことなく攻めてきた。
そしてその結果。不意を突かれた俺は、手を縛られてベッドへと押し倒され、そのまま狩られたのだった。
閑話休題
「くそぉぉ……聞いていますかガレオッスンさん」
「へいへい、聞いていますぜダンナ。――はぁ~~失敗した。ダンナがまさかこんなに酒癖が悪いとは。たった二杯しか飲んでいないのに」
「さけぇ? 何をぉ言ってんですか。これは苦みがする果実水ですよ」
今日は休日だったのだが、昨日の夜の敗北が引きずってしまい。魔石魔物狩りを終えたガレオスさんを見つけ、俺はつい絡んでしまっていた。
しかし、あまりに情けない悩みの為、具体的な事は言えずグダグダとしていると、熟練冒険者のガレオスさんは、ある飲み物をすすめてくれた。
さすがに酒はアレなので断ったのだが、『ならば、コレならイイだろ?』と、果実水を注文してくれたのだ。
フルーツジュースのような飲みもので、基本的に甘い飲み物なのだが。何故か不快感を感じない苦みが混ざっており、それがアクセントとなって中々美味な飲み物だった。
俺はそれを飲んでいると、何故か気分がふわふわとしてきて。気が付くと言い難いことをペラペラと口にしていた。
「聞いてくらさいガオスさん。俺は”夜のカポエラ”を習得したいのですよです!」
「夜のかぽえら? なんだそりゃ? つか、マジで何がなんだか……サリオの嬢ちゃんみたいなことまで言い出して」
俺は必死に懇願した。
俺には夜のカポエラがどうしても必要なのだと。
手を使わずに戦える技が必要だと。そうでなければ、俺はいつまでも負け続ける事になってしまうと、俺はそう熱く語った。
そして俺の熱意に胸を打たれたのか、ガレオスさんはとても苦そうな顔をして、ある提案をしてきた。
「あ~~~~~~、あれか。まぁ分からんでもないか……、よしっ! その”夜のカポエラ”を覚えられるかどうかわからんが協力してやろう」
「おお~~さすがガスさん!」
「修練の場へ冒険に行くか!」
「――ッ!? い、いや、今はマズくて……」
俺はガレオスさんに、今はマズイ訳を説明をした。
頭の中は、苦い味のするジュースでほわほわするのだが、修練の場に冒険すると、きっと亜麻色の狩人が察知してやってくると理解していたのだ。
その狩人は、三軒隣の喫茶店で女子会のような事している。
昨日の夜、その狩人が何かをやったらしく、それを聞くとかどうとか葉月と言葉が言っており、連行されるように連れられていったのだ。
俺はそれを見て、きっと知らない方が良いことのような気がしてスルーしていた。
だから現在、この場は狩人の範囲内。俺が下手に動けば狩人も動く。
その事をガレオスさんに説明すると――
「ふむ、よく分からんがぁ、要は【索敵】に察知されなければイイんだろ?」
「ほぇ? えっと~確かにそうだけど……」
それが出来たら苦労しない。
【心感】の範囲から逃げることなど不可能に近いのだから。
「ダンナ、いい作戦があるぜぇ~、乗るかい?」
「ん~~? どんな作戦が?」
ガレオスさんの言う『いい作戦』とは、俺を魔法で寝かして運ぶという方法だった。
【索敵】は、睡眠などで意識を失っている状態の相手は感知出来ず、俺が寝ている状態であれば、察知されずに移動が出来るのだという。
当然俺はその『いい方法』に乗った。
ただ、何かを見落としている気もするが、ほわほわする心地良さが判断を鈍らせる。
「頼んます、ガさん」
「ダンナ……どんどん短くなっていますぜ、オレの名前」
その後、俺は酒場に居合わせた伊吹組の後衛に睡眠系の魔法を掛けて貰い、一瞬にして眠りに就いた。
次に起きた時はきっと階段下のはず。
ガレオスさんは俺が眠ったら、伊吹組の何人かで運んでやると言っていた。
だが、目を覚ますとそこは――
「あれ、ここって離れの客間……? なんでココに?」
「うん正解。ここは公爵家の離れの客間だよ、陽一君」
「陽一さん、あのう……お話がありますっ」
床で寝かされていた俺の両隣には、葉月と言葉が立っていた。
そして身体を起こそうとした俺の背後から。
「あの、ご主人様。何故睡眠系魔法を掛けて貰ったのか、……その訳はお聞きしました。ただ、突然ご主人様の気配が消えたので、本当に肝を冷やしましたよ。少々取り乱して、周りの方々にご迷惑をお掛けしてしまいました」
背後から、温かさも冷たさも感じない、まるで温度がないような声音が聞こえてくる。
咄嗟に浮かんだ感想は、『詰んだ』。
左右を抑えられ、背後にはラティ。
正面がガラ空きなのは、きっと罠であろう。葉月が魔法障壁でも張ればすぐに塞がれてしまう。
観念したフリをしつつ腰に手を当てるが、やはりそこには木刀はなく、障壁を破っての逃走は不可能だった。
俺は降参するかのように両手をあげて、そしてそのまま体を倒し土下座した。
何に対して謝罪しているのかは明確にせず。
俺は誠心誠意土下座した。
これが一番被害が少なくて済むだろうと考え。
ある偉大な人が言っていた。
言葉は誤解を招き、言葉は言質を取られ、言葉は情けない言い訳を生むと。
きっとこれは、誰かが悪いのではなく。
社会が悪いのだろう。俺はそう思うことにした。
だがその後、『あれ? これって誤魔化そうとしているのかなぁ?』と、葉月に言われ。
『はい、どうやらその様子ですねぇ』と、ラティに追い打ちを掛けられた。
因みに言葉は、無言で俺を見つめるだけであり、それはそれで何か居た堪れない思いだった。
後日、ある冒険者は語る。
ジンナイを魔法で眠らせたら、瞬迅が物凄い勢いでやって来て首を狩られそうになったと。
リーダーのガレオス氏が、すぐに陣内を売らなければ本当に危なかったと語った。
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三人に、超怒られた人
読んで頂きありがとう御座います。
宜しければ、感想など頂けましたら、幸いです。
あと、誤字脱字なども……




