あむあむ
申し訳ないです。
前回の前書きで、少し紛らわしいことを書いてしまい。
申し訳ありませんでした。
あとご報告をひとつ。
サブタイの『英雄再び!』で、ドライゼンの所に記入漏れがあり、追加させて頂きました。
書いたつもりの設定が抜けておりまして。(もしかしたら、何処かに書いたかもですが……
ギームルとの話し中に、アムさんから告げられた新情報。
魔力の渦の急激な変化。
あと一年後に発生すると言われている魔王。
正確には1年と2カ月後だが、魔王が発生するにはまだ時間があるのだが、アムさんからの話では、東側に独立して渦巻いていた魔力の渦が、急激な変化を見せたのだという。
その情報に対し一応驚きはあった。――のだが。
それよりも、その急激な変化が”起きた日”の方に、引っ掛かるモノがあった。
渦に変化が起きた日は、俺とラティが再会した日だったのだから。
その話を聞いた後、俺は自分の部屋へと戻った。
そして俺は食みながら、”その日”の事を思い出していた。
考え過ぎなのかもしれない。――だが引っ掛かるのだ。俺の勘が告げるのだ、『油断するな』と。
――あの時……
確かに変な感覚がしたよな、
木刀を握った瞬間途切れた感じが……あれは、
口の中、そして鼻腔を抜けていく甘いような香り。
喩えるならば、プリンを凄く薄めたような香りと、焦がしカラメルを物凄く伸ばしたような味。
俺はそれを堪能しながら、アムさんから聞いた話で引っ掛かった所を考えていた。
「ん~あぐあぐ」
「あ、あの……」
「あふぃ? うぉうひぁ?」
「あの、そろそろ……」
「ぷはっ、ああ、わりぃ。コレ以上は濡れちゃうな」
「あの、そういうことではなくて、あの……」
「大丈夫、次は逆側にするよ。だから心配しないでくれラティ」
「あの、あのそういうことではなくっ――」
「ああ、耳が……」
逆側の耳を食もうとした俺だが、ラティの手に押し退けられ、彼女に耳から離されてしまった。
『子供には教えられることがある』と言う名言があるが、俺はそれを、いま実感していたのだが。
「あの、ご主人様。ラフタリナちゃんの真似をしなくても……」
「いや、でもコレって結構心地良くて、癖になると言うか」
俺はラティの耳を食んでいた。
モモちゃんと遊んでいる時に、じゃれるようにしてモモちゃんの耳を食んでいる、乳姉妹のラフタリナちゃんを見て、俺もやってみようと閃いたのだ。
ただ、あまり食み過ぎると、耳がベタベタになるので注意が必要そうだ。
しかし今、ラティに嫌がられてしまったので、俺は完全完璧頭撫でへと移行する。
「ふぅ、聞いてくれるかラティ」
「……はい、ご主人様」
俺はラティに相談をする為、いつもの様にラティを自分の部屋へと招いていた。
因みに、ラティが部屋に来てから一時間は経過していた。
話す内容を纏める為に、俺は耳を食みながら考えていたのだが、どうしても食むことに夢中になってしまっていたのだ。
俺は一度仕切り直し、ラティを撫でながら話し始める。
まず、木刀が俺に夢の中で見せたことを話した。
世界樹の木刀が俺に夢を見せ、その夢の中で初代勇者が世界樹の切り株の所へ来いと言ったことを。
必要の無い情報なので、出現したラーシルの姿が言葉に似ていた経緯と詳細は伏せておいた。
そしてラティからは、木刀には感情のようなモノは視えず、精神が宿った魔石とは違うようだと訊いた。
ラティの【心感】が正しければ、木刀に初代勇者の精神などが宿っている様子ではないらしい。
正直、俺はホッとした。
もしかすると、木刀を通して全て見られていたのかもしれないのだから。
一応木刀は、布で包んで部屋の隅に置いてある。
次にギームルからの話。
勇者絡みの問題などを、俺が対処しろという話。
この話をラティに訊かせている間、ふとエルネのことを思い出していた。
エルネも俺を利用しようとしていた。――いや、利用していた。
ユニコーンは巻き込むような形で、葉月絡みの問題を俺に解決させていた。
そして小さく気付いてしまう。
エルネと違ってギームルには、目的の為に配慮があることを。
少なくともギームルは、目的の為に高額な装備品の支給や、装備品メンテ費用などを出してくれた。
王女様を助ける為に消耗した装備品だが、奴は恩着せがましい事などは言わず、黙ってそれをしてくれた。
見方によっては当然の事だが、それを当然として受け取るのは間違っている気がするし、俺はそれに対して礼を返していない。
ハッキリ言って、俺は礼を言えないクソガキな事をしている。
約束などを取り付けた訳ではないが、ギームルは、何かを成しえたのなら、それに対しての見返りをしっかりとするタイプだろうと感じた。
短いやり取りだったが、奴からはそれを感じたのだ。
ある意味では割り切ったドライな対応。
だが、うやむやにしたり、なあなあな対応で済ますタイプでは無さそうだ。
ナントーの村で再会した時も、しっかりと腹パンも受け入れたりもしていたのだから。
そしてこの件については、ラティからは特に何か言ってくることはなかった。
そして最後に魔力の渦の件。これは二つ伝える事があった。
ひとつは、魔力の渦が大きく変化したこと。
そしてもうひとつは、”再会したあの日”に、ラティから視て俺はどうだったのかを訊ねた。
魔力の渦の件は、『そうですか』『まだ一年以上残っているのに』との感想。
ラティからしてみればそうなのだろう。そして俺も同じ感想だった。
再会した日の件は、俺には特に不自然な変化はなかったという。
何か悪いモノが纏わりついている様子には見えなかったと。あえて言うならば、大きな動揺と歓喜の感情が視えたと。
ただの杞憂だったのかもしれない。
だが何故か、俺には強く引っ掛かっていた。嫌な予感がした。
予想外の魔力の渦なのだから、ハズレゆうしゃの俺が魔王化しそうだったのではと。
そんな予感がしたのだ――
「あの、ご主人様」
「ん? どうしたラティ?」
話を全て終え、少し呆けていた俺にラティが話し掛けてきた。
戸惑うような声音で弱弱しく、だがしっかりと俺を見据え、彼女の可愛らしい口が小さく開く。
「あの、何故ラーシル様らしき人のお姿が、勇者コトノハ様に似ておられるのでしょうか? それを少々お尋ねしたいのですが」
「あっ……」
( 俺、ラティの尻尾撫でてた…… )
閑話休題
狼人の尻尾の恐ろしさを、再確認させられた次の日。
俺達は再び深淵迷宮へと向かった。
借金返済の為、俺はお金を稼がなくてならない。
夢で呼ばれた件もあるが、今はさすがに動けない。
金貨600枚の借金だけではなく、再会したモモちゃんの事や、他にも色々とゴタゴタがあるのだから。
昨日の夜の話し合いで、現状はこのままノトスに滞在すると決めたのだ。
「さて、今日も潜りますか」
「うん、今日も一緒に頑張ろうね、陽一君」
俺の隣を陣取った葉月が、ふわっとした笑顔を向ける。
なんとも対処に困る。
ラティの方を見ると、彼女は後ろに控えつつも、いつでも切り込める位置取りをしている。
「今日も魔石魔物が沢山湧くとイイね」
「ああ、そうだな。一応期待してんぞ葉月」
「うん、頑張っちゃう」
俺がそう言うと、葉月は俺に見せるようにしてステータスプレートを開いた。
ステータス
名前 葉月 由香
【職業】勇者
【レベル】84
【SP】361/361
【MP】597/612+50
【STR】241
【DEX】270
【VIT】208
【AGI】276+8
【INT】339+5
【MND】401+5
【CHR】349
【固有能力】【鑑定】【宝箱】【聖女】【範囲】【魔力】【黄金】【結界】【幸運】
【魔法】雷系 風系 火系 水系 土系 氷系 聖系
【EX】見えそうで見えない(強)魔力回復(中)
【パーティ】陣内陽一
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彼女の持っている【固有能力】のひとつ【黄金】。
これの恩恵なのか、他の冒険者連隊よりも魔石魔物が湧いており、昨日の稼ぎはどの冒険者連隊よりも稼いでいたのだ。
これならば、予定よりも早く借金を返せるかもしれない。
俺は少々浮かれ気味に深淵迷宮を囲っている砦の中に入ると、そこには陣内組のメンツが既に集まっていた。
「お? ジンナイ来たか。ちょっと顔合わせしたい奴らがいるんだ。陣内組に入りたいって奴らで、三人ともレベルは40超えだ」
「あいよレプさん。それじゃあ今日から参加するのかな――ラティ!?」
俺を見つけるなり声を掛けてきた、後衛と指揮担当のレプソルさん。
そのレプソルさんは、新しいメンツが3人増えるかもしれないと言ってきただけなのだが――
「ラティ……どうした?」
( 何だ? 何があったんだ? )
強い敵意を顕にするラティ。
チリチリと焼けつくような激しい感情が流れ込んでくる。
「ぎゃぼう!? ラティちゃんどうしたんです――って、ああ!!」
「え? サリオちゃんまでどうしちゃったの?」
ラティに続き、サリオまでも驚きの声をあげ、そして警戒心を顕にする。
「あの、ご主人様……」
「ああ、アレが?」
ラティの敵意の先が判った。
彼女は新しいメンツだという3人を睨み付けて言う。
「彼等は、【ルリガミンの町】でわたし達を襲ってきた人達です。あの時、わたしが手首を切り落とした人達です」
読んで頂きありがとう御座います。
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