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休日

休日回 

 


 今日は休日。

 

 その前に防衛戦後の後日談を。


 ラティは次の日の朝方に目を覚ました。そして起きてからは、もの凄く申し訳無さそうに縮こまってしまう。

 

 睡眠薬で寝かされた事を恥じている様子であった。


 

 その後は、復活したラティの【索敵】のお陰で、魔物に見つかる事もなく【ルリガミンの町】に馬車で無事に帰ることが出来た。


 【ルリガミンの町】に帰り着いた次に日に、葉月達勇者も帰ってきた。その際に葉月からは、報酬を預かっていると言われ、彼女から金貨三十枚を受け取る

 

 この金額はかなりの高額であり、アムさん辺りが奮発してくれた様子だ。



 その時に、葉月からノトス領での出来事を聞けた――


『なんで先に帰っちゃうのよ~、陣内君お祝いの祭りに来なくて探したんだよ』

『お、おう‥ごめん』


『それに、指揮官だったヴェノムさんが、森で魔物の生き残りにやられて大変だったんだよ』

『そうなんだ』

( やっぱ事故・・死扱いか‥ )


『でもね、弟さんのアムドゥシアスさんが出て来て、あとを継ぐとかになってね』

『ああ、うん』


『もーー聞いてるの?』



 そんな流れで、あの後の出来事を聞けた。

 どうやら、アムさんの画策した通りの流れとなった様子であった。

 


 それと、一緒に来たららんさんは――


『さてさて、オレは今度ここで始めるかなアクセサリー作りを』 

『アクセサリーって飾りの?』


『ちょっと違うかな、物に魔法の効果を乗せる仕事って感じかの』

『ラティのスカートとの効果の奴?』


『そうそれ、ラチちゃんのスカートとか物に付加エンチャントさせるお仕事』

『なるほどね』


『そんな訳だから、今度買いにきてね、高いけどね にしし♪』



 ららんさんは、ノトス領のゴタゴタに巻き込まれないように【ルリガミンの町】に避難してきたというのだ。ただ‥


 ――わざわざ避難させる?

 アムさんが避難させる程の人物ってのが気になるな、


 


 そして現在は休日を満喫しているのだが。


「っで、ダンナはやること無くて、ここで暇つぶし?」

「ガレオスさん、休日取ってみたけど、何も娯楽が無くてやる事が無い」


「娯楽なら賭けはどうよ、確か町外れの方に数軒あるだろう」

「賭け事できるほど、お金に余裕なし」


「まぁ、賭けはオススメ出来ないな、ここの賭け事はみんなで・・・・イカサマありありだから」

「イカサマありありって‥、そういやここの賭けって何です?」


「賭けと言ったらマージャンだろ、他に賭け事ってあるのか?」

「トランプとかは?」



「聞いた事ないなそれ、マージャンみたいなものか?」

「ひょっとして歴代勇者ってマージャンしかしてない?」 


「ああそうだ、勇者達が愛したマージャンだからな」

「偏ってるな…イチイチ4人集めないといけないのに」


「4人?マージャンは集まった人数でやるぞ?」

「へ?5人いたら5人でやるの?」


「そりゃそうだろ」

「ちょっと気になる!やってみたいな」


( 4人以上のマージャンってどんなんだよ! )


「お!ダンナいくかい」

「いくでしょ!」





        ◇   ◇   ◇   ◇   ◇






「ダンナ…ボロ負けだったな」

「勝てるか!あんなの」


「あれが普通なんだが、あと結構人が集まってたな10人もいるなんて」

「順番も酷かったぞ、普通右回りとかじゃないのか?」


「はぁ?普通に速い・・者勝ちだろ、遠慮してて勝てる世界じゃない」

「山から各自勝手に取っていくとか斬新過ぎだよ!」


「一応順番あるぞ、3回連続で取っちゃ駄目とか」

「でも横の奴から取っていくのはありだよな?気が付いたら8個しか残ってないって」


「手牌取られすぎだろ、それはしっかりと護らないとだろ」

「でも魔法で目潰ししてきたぞ」


「本気だったら火で牽制してくるぞ、まだ手加減してくれた方だな」

「もう賭けはやらん!イカサマとか言うレベルじゃなかった…」


 因みに、魔法で妨害することをイカサマと言うらしい。

 


 ――ああ!もういっそ地下迷宮ダンジョンでも行ってやろうか、

 あ!駄目か、ラティ達には休日って言っちゃったか、

 休んでるのに呼び出すのは悪いよな…



「そういえば、牌の数多すぎない?牌が山のようにあったけど」

「そりゃ10人だったからな、牌の数多くするさ、当たり前だろ」


「白のみの四暗刻とか、なに馬鹿のこと言ってるのかと思ったよ」

「ああ、喰らってたなダブル役満を」



 丸いテーブルを10人で囲み。山のように積まれた麻雀牌をよーいドンで各自奪い、それで役を作るという、謎のゲームがこの世界のマージャンであった。



「他に何か娯楽と言えるモノはないの?」

「あとは‥、結構金かかるけど定番の娯楽があるな」


「金がかからないのがいいな」

「お触りアリアリの”商館”かな」


( いま、ちょっと気になるワードが! )


「商館とは、具体的にどのような?」

「ダンナぁ~、喰い付いてキタね、お触りアリアリって言えばアリアリだよ」


「待った!でも…そんな店は見かけたこと無いぞ!」

「そりゃ当たり前だ、それなりに気を使ってるからな。何も看板とか掲げていない下りの階段って見たこと無いか?」


 ――ある!確かに見たことがある、

 あの階段は何だろうって思ってたけど…まさか…

 いや!俺は未成年だし、不味いよな…


「俺は未成年だし、マズイよね?」

「うん?未成年、こっちの異世界では14才から成人だぞ?」


「はぁ?14才って…」

「昔の勇者が決めたとか」


( 地味に心当たりがあるような…無いような )


「どうよダンナ、一緒に行くかい?」

「た、高いのでは?」


「まぁ、銀貨40枚もあれば足りるかな」

「――ッ!」


 ――最近金貨30枚入ったし、

 余裕だ、余裕なのだが…行っても良いのだろうか。


「オレが案内してやるぜ、よくお触り・・が出来る店を」



 男なら誰もが一度は行ってみたい場所である。

 だが行くには、金と勇気と勢いが必要な場所でもあるが‥


 ――悩むな俺! 

 今まさに、その全てが揃っているではないか!



「―――ッ!!」

「――ッ!!」


 俺が心の中で決断した瞬間に、強大な殺気プレッシャーを叩き付けられた。

 それはまるで、絶対的な首狩り族に出会ってしまったような感覚。



「ダンナ…アリアリな店(お触り)に行くのは止めよう」

「ああ、止めよう命が惜しい」



 俺達が諦めると、店内に充満していた強大な殺気が霧散した。


 恐る恐るプレッシャーの感じた方を肩越しに覗いてみると。其処には、サリオと一緒に食事をしていたラティが凄い勢いで目を逸らした。


 目を逸らしたラティを見つめていると。


「あれ?ダンナ、あれってナンパか?」

「かな…」



 ラティを眺めていると、丁度其処に、2人組の冒険者がラティに話しかけに行っているところであった。


「ありゃぁ、あいつらダンナの地雷踏みに行ってるけど、良いのかい?」

「ああ、別にそんなでもないだろうし」



 ――そう、俺は成長するのだ、

 ラティに近寄るからって何でもかんでも排除しようとするのでは無く、

 もっと落ち着ける俺に成長するんだ、



「お!ダンナちょっと変わったな?」

「ああ、変わろうと思ってな…なんにでも噛み付くのは駄目って思ってな」


「やっぱ、この前のノトス領の件か?」

「結果はともかく。イラっとしたらすぐに頭にきて失敗続きで、しかもアムさんに最後は助けられただけだし」



 あのノトス領での防衛戦で俺は、デウスにラティの事ですぐにキレて噛み付き、指揮が酷いからとイライラして指揮官に喧嘩を売り、前に出過ぎとは言え指揮に従ってた八十神にも喧嘩売っていたのだ。


 なんでもかんでも我慢するのは駄目だとは思うが、感情を抑えることも大事だと学んだのだ。ただ不満だからと騒ぎ立てるのは、ただの子供(ガキ)だと。



「何でもかんでも噛み付くのは止めるようにしたんだ」

「なるほどねぇ、まぁ、あのナンパもラティ嬢の見た目に釣られて声かけただけだろうしな」


「うん、まだ若そうだしね、同い年くらいかな」

「たぶん最近この町にきた奴だろうな、瞬迅に声をかけるなんて」



 もうルリガミンの町の冒険者で、瞬迅ラティを知らない奴は居ない位に彼女は有名になってたのだ。


「ラティ嬢は、どうやって断るんだろうな」

「あ、こっちに来た」


 冒険者二人に話しかけられていたラティは、おもむろに立ち上がり、そして俺の隣に…


 座ってきた――


「あ、あのラティさん、何故俺の隣にいきなり座ってきたうえに引っ付くのかな?」


 ――あっれーラティが、俺にしなだれかかって来てるんだけどー!

 あ、冒険者達の目が…


 そこにガレオスさんが助け舟を出してくれる。


「よう、お前らまだここに着たばかりの冒険者だろ?この子が瞬迅だぜ」


「――ッ!」

「あの瞬迅か!」


 ガレオスさんに忠告され、自分達の行動に気まずくなったのか、二人の冒険者は逃げるよう去って行った。


「で、ラティはいつまでこうしてるのかな」

「ラティ嬢は、ダンナが助けに来なかったから拗ねてるかもな」


 ラティは無言で隣に座ったままである。


 だが、ラティに拗ねられると言うのは、新鮮で良いモノであった。


( あ、でもさっきの殺気は勘弁してほしいな )



「あ、陣内君」

「葉月…」


 同級生に出会うには何とも気まずい状況。


「と、ラティさん…」

「葉月様、こんにちはです」


 ――ここは頼れるガレオスさんに助けて!

 この何とも言えない空気を!変えてください!


 願いを込めてガレオスさんのアイコンタクトを送ると『コクリ』と頷き…

 

「オレ、イブキ様に呼ばれてたからもう行くわ」

「―――ッ!」


 ――逃げられた!! 

 まだだ!俺にはまだサリオがいる、彼女ならきっと


 願いを込めて俺はサリオがいた席に振り向くが。其処には――


「サリオ、何処行った…」



 サリオはいつの間にか居なくなっていたのだった。

 まるで、察したように消えていた。


 俺はその後、『ららんさんに呼ばれてた』っと、言いながら席を立って離脱した。




 その後は当てもなく町をフラフラとほっつき歩く。

 そして何の因果か、例の階段を見つけてしまう…


「ここが、アリアリかも知れない店か‥」


 ――今の俺には、金貨30枚もある、

 ちょっとくらいなら、うん!俺は冒険者だ、冒険をするのは当たり前だ!


「――――ッ!?」


 再び襲い来る強大な殺気。

 そして百メートル離れていても判る、凛とした綺麗な姿勢での歩き姿。


「そうだった、俺はららんさんの所でもいくな」



 誰も聞いていないであろう、呟きを放ち。

 俺はその凛とした綺麗な人影から逃げるようにして、最近知り合った、ららんさんに会いに行くのであった。


 そう、逃げるようにして…

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