嫡男無双ブレイヴストーリー物語サーガ
前半、不快でキモい表現があります。
オレは生まれた時から勝利が約束されていた。
まずは地位。
公爵家の長男とは、誰もが羨むモノだった。
次男のリュウジィとは一歳しか年が変わらないのに、家での扱いは別格であり、まさに天と地ほどの差があった。
一例をあげるならば、オレには大きな離れの屋敷を与えられた。
そして幸運にも、自分の時代に勇者召喚が行われた。
一般の民草は、魔王の発生に怯えているが、公爵家嫡男のオレにとっては、これ程の好機はなかった。
上手く勇者を取り込めば、貴族としての地位がより高くなる。
四大貴族の公爵家と言っても、他の公爵家に比べるとどうしても見劣りしてしまう。
落ちぶれたノトス公爵家は別として、他の公爵家に比べると華が欠けた。
だが、勇者を手に入れればそれは変わる。
そして聖剣の勇者をエウロス公爵家は支援した。
これで安泰かと思った。
しかし、他の公爵家は女の勇者を支援していた。
活躍で言えば聖剣の勇者がきっと一番だろう、しかし貴族としての、いや、男としての格を上げるのであれば、勇者の子が欲しい。
そう、貴族が生ませた子が欲しい。
男の勇者の子供よりも、女勇者に産ませた子の方が価値がある。
それは貴族にとって最高のステータスのひとつ。
この時代を生きる貴族であれば、誰もが望むモノ。
聖剣の勇者を支援したが、欲が出て他の勇者も欲しくなる。
最終的には、伯爵家の勇者を脅し取れば良いと思っていたが、伯爵家の勇者達は野に下った。
まるで何かの手引きでもあったかのように、呆気ないほどあっさりと去って行った。
本来であれば、勇者を手放すなど考えられない。
だが、女の勇者達は去って行った。
しかし、オレは勝利が約束された男だった。
その女勇者を手に入れる機会がやってきた。そしてその機会をモノにして彼女を手に入れ、自分の館へと迎え入れる事が出来たのだ。
ただ邪魔なのは居るが……。
彼女、コトノハには常に、無い女勇者のミクモが張り付いている。
そして、コトノハを連れて来たのだから、もう用がないので本館へと戻れば良いのに、いまだにこの離れに居座り続ける聖剣の勇者シイナ。
侍女などはオレの命令で下げさせる事は出来る。
だがこの二人は、オレの命令では引かない、いつまでもコトノハのもとに居座り続ける。
無い勇者ミクモなどは、夜をコトノハと共にする。
まるでオレを妨害するかのように、常にコトノハに張り付いている。
夜這いをする隙がない。
本当に我慢ならない。
コトノハはオレの理想を持っている。
エウロスの嗜好は理解している、そして自分の嗜好も。
彼女をモノにしたい。
今代の女勇者に、子供を宿した貴族はまだいない。
しかしタイムリミットは刻一刻と迫っている、魔王発生までの……。
急がねばならない。
勇者達は――男の方は違うのだが、女勇者は子を宿し難いと言われている。
理由は謎だが、なかなか子が宿らないと言う。
だからこそ、貴族には求められる【固有能力】があった。
子を宿し易くなる【固有能力】のひとつである【絶倫】。
それは、勇者召喚の時期には特に重宝とされる【固有能力】。
これを持たない奴らは、下種なことに、複数の男をあてがう方法を取ると聞いた事がある。
そんな事をして得た子供に、一体なんの価値があると言うのだろうか、本当に理解しがたいモノだ。
だからオレはこの機会を逃さない。
二人の勇者が揃ってコトノハから離れたこの瞬間を。
聖剣の勇者シイナは、オレのコトノハに好意を持っている。
実際にそこを突いて彼には動いて貰った。
だからきっと、オレがコトノハを奪えば怒り狂うかもしれない。
しかし、コトノハがオレを求めるのならば話は変わってくる。
女勇者を篭絡させる為、オレは今までありとあらゆる経験を積んできた。そう数多くの女を抱いてきた、この時の為に。
オレの持つ【固有能力】には、【魅了】【柔撫】【絶倫】【心響】【神格】がある。これらを駆使すれば、どんな女であろうと堕ちる。
一度抱いてしまえば、コトノハはオレのモノになる自信がある。
今まで、どの女もそうだったのだから。
コトノハからオレを求めてくるのであれば、奴も文句など言わないだろう。
いや、言えないだろう。
そしてオレは行動に移した。
コトノハが臥せっている部屋へと向かう。
過剰の見張りは引かせた。万が一にも邪魔されぬように。
客間となっている部屋へと入ると、オレは虎の子の結界の付加魔法品を使用する。
この結界が発動している限り、何人たりとも扉を通ることは出来ない。
それこそ壁を破壊した方が早いほど強固な結界だ。
中に入ると、客間から寝室へと続く扉を開く。
広めに作られた寝室、その部屋の奥の方に存在する天蓋付きのベッド。
5人ぐらい同時に寝ても余るほどのサイズのベッド。
そのベッドに、顔を青くしたコトノハが横たわっている。
何か拒否の言葉を言い放ってくるが関係ない。
オレに抱かれてしまえば、拒否ではなく、懇願へと変わるだろう。
想像するだけで滾る。
コトノハはよろめきながらも立ち上がり、ベッドの上から逃げようとする。
だが、そんな面倒なことはさせない。
オレは素早く靴を脱いでベッドの上に駆け上がり、すぐにコトノハとの距離を詰める。
コトノハはオレを拒むかのように、両腕を上げてこぶしを握り、怯えるような姿勢を取った。
肩を強張らせ、ぐっと両手を己へと引き寄せる。
襟も裾もしっかりと覆った厚手の寝間着。
下もズボンのようになっており、踝までしっかりと覆っており、色気が少々薄い姿。
だが、引き寄せた両腕が大きな双丘を押しつぶし、柔らかそうな胸元がそそるように形を変えている。
オレはコトノハの、拒否の声と拒む態度を無視して手を伸ばす。
右手でコトノハの右手首を掴み、ぐいっと上に持ち上げる。
そして右腕によって押し潰されていた右胸が解放され、オレはその右胸に左手を伸ばしそれを鷲掴みにする。
想像を遥かに超える柔らかさ。
質量、張り、大きさ、全てが素晴らしい。
次は脱がせて形と色の確認をしなくては。
コトノハを全てで味わいたい。
感触はいま堪能している。
次は味覚、唇だけではなく全てを貪りたい。
その次は視覚、奥の奥まで全てを瞳に焼き付けたい。
最後には聴覚、オレを求める声音で鼓膜を震わせたい。
だが今は、極上の感触を楽しむ。
指先を柔らかさにより沈める。
( くはは、もう顔つきが変わっていやがる )
歪んでいたコトノハの表情が、今は恍惚に嬉しそうな笑みを浮かべている。
やはりオレの【固有能力】の効果は絶大だ。それに今までの経験も生かされているのだろう。
( さぁ、邪魔が入る前にッ――――!? )
――――――――――――――――――――――――
「汚ねぇ手で言葉に触れてんじゃねえよっ!」
俺は目の前の男を張り倒し昏睡させた。
この男は、俺の前で言葉に押しかかろうとしていた。
俺は即駆け寄り、木刀によるフルスイングで首筋を強打してやった。
少し前。
俺はラティが異変を感じてから、全力で廊下を駆けていた。
運が良い事に、見張りの奴らは誰も居なかった。そして結界によって塞がれている扉の奥に言葉が居るとラティが言い、俺は木刀によって結界を破壊した。
音も無く、霧散するように結界は散った。
そして部屋に飛び込み、半開きの扉の奥を覗けば、言葉が襲われていた。
ラティの睡眠系の魔法などは考えず、俺はぶん殴った。
「言葉、悪い遅くなった、すまん……」
俺は言葉に謝った、こんな目に遭わせてしまったのだから。いっそ謝罪の意味も込めて、この倒れている男の左手の骨でも砕いてやろうかと思っていると、言葉が。
「ううん、きっと来てくれるって信じていたから、私は平気でした」
「ああ……それなんだけど、俺が来たからって露骨に嬉しそうな顔されるとバレるから……一応隠密なんだし」
「だって、本当に嬉しかったんです。陣内く、いえ、陽一さんが本当に来てくれたから」
「――ッ!? 陽一って……ああ、そうかっ」
――そうだった、
俺はあの時に、下の名前で呼んでもイイって言ったんだった……
――って!?
俺は言葉の両手を咄嗟に抑えた。
何故か言葉は、突然俺を【鑑定】しようとしたのだ。
「えっと、言葉さん? 何で【鑑定】を……」
「あ、分かりません。でも何故か、なんとなく【鑑定】をしなければいけないと……女の勘というモノでしょうか?」
( 勘弁してくれ、何だよ女の勘って )
俺は嘆きたい気持ちで、何となく天井を見上げていると、俺に腕を掴まれている言葉が、俺の手を自分の頬へと導いた。
「へ? 言葉?」
「良かったです、また陽一さんに会えて。あの後の事は聞きました。そして陽一さんがした事も……だから貴方に会いたかったのです」
薄っすらと涙を浮かべ、真っ直ぐ俺を見つめる言葉。
不意に告白された事を思い出す。
そして、それに応じる事の出来ない自分に対し、言葉に出来ない痛みのようなモノが心を締め付ける。
「言葉……」
「陽一さん……」
濡れた瞳が俺を見つめる。
そしてその時――。
「ご主人様!」
ラティの声が響く。
俺はすぐに頭を切り替えた。それはラティの声音が警告を示すモノだった。
「ッ!? やっぱ来たか……」
「陣内、言葉さんから離れて貰おうか」
「椎名君……」
言葉が臥せっていた寝室に、一人の男がやってきた。
ベッドの上に立っている俺を睨み付ける男、聖剣の勇者椎名秋人が戻って来ていた。
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あと、誤字脱字なども……




