閑話 出会った事のない女性
すいません、閑話を挟んでしまって……
本編とは関係の無い部分が多いです。
あ、最近、本当に忙しいのですよー!
「え? 何処だここ?」
俺は一人、夜空の中に立っていた。
見上げても夜空、下を見下ろしても夜空。
左右を見ても夜空。
光源が何処にあるのか不明だが、自分の姿はしっかりと確認出来る。
着ている鎧は黒鱗装束。
「マジでここは……?」
俺はオロオロと辺りを見渡し続けた。
すると――。
「どうしたんですか冒険者さん?」
「えっ、え? 貴方は!?」
気が付くと俺の横に、妙齢の女性が立っていた。
広がるような緩いウェーブがかった腰下まである、淡い緑の色の髪。
母性を感じさせる、優しさに満ちた表情。
知り合いのおっとりとした女の子が、普通に年を重ねたらこの様になるのでは? っと思える顔立ち。
そしてその女子を彷彿させる大きな胸元、むしろその女子よりも大きい。
しかも、その胸元をより強調させる、ギリシャ神話にでも出て来る女神達が着ていそうなクリーム色のドレス。
本気で目のやり場に困る。
しかも、身長が俺とほぼ同じなので、妙な迫力に押されてしまう。
俺は激しく動揺したが、現状の把握の為、彼女にこの場所が何処かを訊ねる。
「あ、あのスイマセン。ここって何処でしょうか? 気が付いたらここに居まして……」
俺は若干挙動不審になりながらも、それを訊ねた。
「ここぉ? どこかの街の中ですよぉ?」
「へ!?」
俺は彼女にそう言われ、すぐに辺りを見渡すと、そこは本当に街の中だった。
しかも、一度見たことがある街並み。
とても広い直線の道路と、その道路に沿って立ち並ぶ建物。
何処か懐かしい風景。
「なっ!? なんで、確かさっきまで……」
「どうしたんですかぁ~冒険者さん」
「えっと……」
――なんだ? 夢でも見てたのか?
って、言うよりも俺はここで何をして……
「じゃあぁ冒険者さん。行きましょうか」
「へ? 行くって、どこに……?」
「お食事と言うモノをしてみたいです」
「え……あ、はいどうぞ、呼び止めてしまってスイマセン」
――マジでどうなってんだ、
なんで俺はここに一人で……ん?
「…………じぃ~~~~」
「……じ~って、自分で言いますか。あの、それで何か御用でしょうか?」
「連れて行ってくれないのですかぁ~?」
「へ?」
謎の女性は、下唇をツンと突き出し、あざと可愛らしく不満そうな表情を見せる。
( L○t式並みにあざとい…… )
「ホットドッグって言うのを食べてみたいですぅ」
「はいぃ?」
俺の袖をぐいぐいと掴み、見た事があるホットドッグ屋を指差す謎の女性。
年上のお姉さんっぽいのに、幼い言動に調子が狂う。
「えっと、奢れ? と言うことですか?」
「うんっ。いつも一緒に居る子には買ってあげていたのにぃ、※※には買ってくれないんですかぁ~」
「え、だって……」
「いつも、あんなに強くに握ってくるのにぃ、下の方をぐぃぐぃって」
「ちょ!? 止めてください! なんか人聞きが悪いっ。……わかりました、買いますよ、奢らせて頂きます」
――なんだこの人は?
なんか妙に馴れ馴れしいというか、なんと言うか……
あれ、でも、
「あの、一応名前を教えて頂けますか? その、ちょっと気になったので」
「ぅん? なまえぇ~? 私の名前はラーシル。他には※※って呼ばれているけどぉ」
( やっぱ、聞き取れない…… )
「ラーシルさんですか。それでラーシルさん、ちょっと人目があるので、少し離れて頂けましたら……」
( なんか距離が近い人だな )
「ほえ? いつもはもっと近いのにぃ? 普段は腰に添えるようにしてくれているのに? なんか変なのぉ」
「いやいやいやっ、そんなこと誰にもした事ないからっ! なに? ランバダでも踊ってたの俺達?」
閑話休題
その後。
ホットドッグ食べながら、俺は謎の女性ラーシルに問い詰められていた。
「酷いよね貴方は、私のことを置いていっちゃうんだから。いつも下の方をぎゅっぎゅってしていたのにぃ」
「いやいやいやいやいやっ、そんな事していないからっ! そんなのバレたら俺は狩られるんだからね」
街の広場にあるベンチに、いま俺達は座っているが、俺はすぐ逃げ出したい衝動に駆られていた。
――なんなのこの人!?
見た目はおっとり系なのに、謎のぐいぐい系なんだけど、
あと人聞きが悪い事しか言わねぇ! 下の方って何だよ!?
「私は貴方に置いて行かれてから、知らない人に二人掛かりで上と下を乱暴に持たれて、すっごく嫌で必死に抵抗したけど強引に……」
「ええええ、いや、それは……えっと、すいません」
( あっれ~? なんか俺、素直に謝っちゃったよ )
「他にも、他にも複数の人に……うぅぅぅ」
「えっと……」
――マジでどうしたらいいの?
いや、そもそも俺が悪いの? おかしいよな……
「それでねぇ、それで……やっとまた会えたんだよ貴方に……」
「…………」
「やっぱり貴方に握って貰うの一番なのぉ」
「……握る」
「うん、今ならきっと何にだって負けないよ。あの世界樹断ちにだって――」
「あっ!? まさか」
「ラーシルさん、貴方はもしかしてっ!」
「あの、ご主人様? ……ラーシルさんとは?」
「あれ? ラティ」
「陣内君起きたか。しかし、ラーシルって懐かしい名前聞いたな」
「ハーティさん……あっ、ここは馬車の中か」
俺はエウロスへと向かう馬車の中で、つい寝ていたらしい。
昨日の夜は、ラティと夜が明けるまで見張りをしつつ、情報のすり合わせをしていたので、その眠気が来ていたのかもしれない。
「えっと、俺がラーシルって言ったんですか? ラティもそんな事を」
「うん、寝言? かな、さっきラーシルさんって叫んでいたよ」
「う~~んなんだろ、よく思い出せねぇ、夢でも見てたのか」
「そっか、陣内君は知らないんだったな。ラーシルってのは、例のゲームでのユグドラシルに宿っていた意思のようなモノかな?」
「意思?」
「人格とも言うのかな? ユグドラシルが語り掛けてくる時は、『ラーシル』って表示されていたんだよ」
「じゃあ姿とかは?」
「ん? いや、無かったかな。代弁している意思のような存在って感じで、なんかあやふやだったからね」
俺の疑問に、何処か懐かしそうに答えるハーティさん。
転生する前にやっていたゲームの事を、久々に思い出しているのかもしれない。
「まぁ、覚えていない程度の夢の事だし、どうでもいいか――って、ラティ?」
横に座っているラティが、何故か少し問うような視線を飛ばして来る。
そしてその表情には、怒りのようなモノが見える。
「え? あれ、俺って寝相でも悪かった?」
「…………」
「えっと、ラティさん?」
少しだった問うような視線が、完全に問う視線へと変わってきて――。
「…………ご主人様。昨日の情報のすり合わせで、とても大事な事が抜け落ちておりましたよ?」
「えっ、俺は全部話したはずだけど……え?」
――え?
なんだ? 何を言い忘れた?
いや、聞き忘れたとかか? いや違うか、なんだ……?
「あとで休憩の時に、少々お話があります」
「ああ……」
( なんか怖いんだけどっ )
「ステータスの件で」
「あっ」
( 詰んだ…… )
その後、滅茶苦茶土下座した。
読んで頂きありがとう御座います。
初夢的なネタでした。
誤字脱字などのご指摘を頂けましたら嬉しいです。
 




