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宣言

ちょっと短いです分けたので

 

 「勇者の国の建国を宣言します」


 冒険者達は一瞬静まり次に歓声喝采怒号雄叫びが吹荒れる。


 そして、赤城は手で歓声を抑え、続きを語りだす。


「私達に付いて来れば、他の冒険者とは比べ物にならない強さが手に入ります」

( まぁ、確かに恩恵ギフトの効果は凄いな、 )



「我々と共に居れば、あの魔王と戦う栄誉も、そしてその勝利も!」


 ここで横に呼んでいた勇者達の中に居た、葉月に体ごと向けながら宣言する。


「今は教会に身を置いている勇者葉月も近いうちに我らの同士になる予定です」

( おい 言いやがった 葉月『え?』みたいな顔してんぞ )


 

 慌てる葉月を構わずに、次の爆弾を赤城は落す。


「そして、戦女神とも名高い冒険者の”翔迅”ラティも同士になる予定です」


 俺は思わずラティの前に立ち、赤城からの視線を遮る。

( マジか、コイツやりやがった! )


 そう、赤城は自分の勇者としては足りない名声やカリスマなどは

 実力・知名度の高いラティや葉月で補い、


 ちゃっかりと、自分主導の組織を作ろうとしているのだ。


 そう言う意味では、二人の効果はこの町では絶大だ。

 しかも、この二人なら、前に出て乗っ取るとかもしないだろうし。



「ラティ、あいつに【鑑定】使ってみろ、たぶん【独裁】とか【政治】、あとは【支配】あるぞ多分」

「あの、ご主人様よくお分かりでしたね、あります」


「でも統率とか纏める系は無いだろ?」

「はい、」


 嫌な予感しかしない演説がその後も続いていた。

 耳障りの良い言葉を並べ、満足げな顔で語っていた。


 ただ、俺には不安しかなかった。


 赤城が作る勇者同盟レギオンと言うモノに。





         ◇   ◇   ◇   ◇   ◇







 俺達3人は、その後、蒼月亮二に呼ばれて個室がある食堂に案内されていた。

 いつもの笑顔で、人に好かれてる高校野球児の雰囲気のまま。


 蒼月亮二は先程の爆弾を落してきた。


「ラティちゃんをウチに預けてくれないかな?」

「誰に言われてきた?」


「うん、上杉と赤城」

「アイツってそんなお前にとって良い奴なのか?」


「まぁね、それと俺はこれで帰るね」

「呼んどいていきなりかよ」


「謝っとくね、だまし討ちみたいになったからさ」



 ここで個室に人が入って来た、そう赤城である。

 俺はコイツとは会わないつもりだったが、亮二を使って釣られたようだ。


「亮二、前に討伐宴会で変なの寄って来なかったってのも、やっぱ嘘か」

「ごめん、上杉に頼まれてね、警戒されたくなくて」



 コイツあかぎは今忙しい筈なのに、わざわざやって来た。

 亮二も言っていた、勇者同盟レギオンへのラティの勧誘だろう。


 その為に、俺も勇者同盟レギオンにでも、取り込むつもりだろうか。



「亮二君ありがとう、あとは僕が話すよ」

「わかったよ、じゃね陽一」


 入れ替わるように亮二が出て行き赤城が入ってくる


「待っていたよ陣内君」

「ざけんな、」



 騙して呼んでおいて、いけしゃあしゃあと言いやがる。

 そして騙して呼ぶと言うことは、避けられる事を分かっているのだろう。


 ――いや、避けられると分かっていて、

 それでも、俺達に会いに来ると言う事は余程の凄い話しか?

 ある意味、聞く価値がある話が‥‥?



「勇者の国の結束を固める為には、御旗が必要だと思うんだよね」

「ほうほうそれで?」


 ――確かに大事ですね、

 カリスマだったり大義名分だったり、


「女性の冒険者って全体の2割くらいなんだよ、そして見目麗しいってなるともっと少なくなる」

「そうだろうな」


 ――普通に綺麗な人が冒険者って少ないだろうな、

 ある意味、冒険者以上に冒険者だな、


「それでラティさんは御旗になりうる人材だと思うんだ、奴隷も止めてくれると尚良い、まさに解放の象徴、ラティさんは最高だと思うんだよ」


「‥‥‥‥」

「‥‥‥‥」


 ラティとサリオは黙ったまま赤城の話を聞いている。

 

 

 コイツはラティの見た目と強さに価値を見出し。

 そして必要だと言っている それなら俺は――


「赤城、お前はラティに御旗や象徴、そう言った価値で、頼るつもりなんだな?」

「ああ、」


「そうか、だがな!俺はラティにすべて依存してるんだ!だから俺達はお前のいう勇者同盟レギオンには参加出来ないな」


( 絶対に碌なことが無い )


「陣内、依存はダメなんじゃないか?あと、勘違いしてるけどキミは必要無い、寧ろ迷惑かな」

「はひ?」


 ――変な返事でちゃった、

 それと依存ってダメか?ダメかな?それと俺は要らないって? 



「陣内君、キミはキミが思っている以上にマイナスのイメージなんだよ、そんな人材を取り込んだ周りからの評価が下がるよ」


 ――まさかの、危険人物リストに入ってんのかよ俺、

 それと、自分の都合だけ押してラティ寄越せって、頭おかしいじゃねえか? 

 もっとマシな提案があるかと思ったら、自己中過ぎるぞコイツ‥‥



 俺は赤城の改めた、

 コイツは、駄目な方の馬鹿であると。


「そうかよ、あと、建国とか言ってるけど人はともかく食料とかルール決めはどうするんだよ」


「勿論考えているさ、冒険者が多く来てくれれば、彼らにこの周辺で作物でも作ってもらうさ、ルールもみんなで考えていけば良いし」

「なるほど考えてはいるんだな」

( 絶対これダメだろ )


「また今度改めて詰めた話を」

「もうだまし討ちみたいな呼び出しはすんなよ」



 俺は赤城との話し合いを途中で打ち切り逃げた。

 アイツは勇者達のRPGとかじゃなくて

 建国シュミレーションゲームでもやっているつもりなのだろうか。


 俺でも解るくらいにヤバい。

 勝手に建国とかしたら、食料とか流通止められるだろ。

 

 しかも冒険者使って畑耕すとか、頭の中のお花畑を耕してるとしか思えん。


 ――今度話を詰めるじゃ無くて 

 詰んでるの方だ、次まで、まだあるのかな?勇者同盟レギオンは、 



「よし、この話は聞かなかった事にしてレベル上げを再開しよう」

  

「あの、ご主人様 結構わたしの話が出ていた気がしたのですが」

「そうそう、ラティちゃん大人気です」


「あんな地雷臭しかしないプランは無視しなさい、もうアイツと喋っちゃダメです」


「ぎゃぼぅ、何か親みたいなこと言い出したですよ」

「はい、分かりましたご主人様」


「ぎゃぼーーー!ソコ素直に聞いちゃうんだ」


 


 俺達はその後、赤城達勇者同盟レギオンとは距離を置いたまま活動をした。

 

 勇者同盟レギオンは勇者を6名まで集め。

 冒険者もそれなりに集まっていた。


 だが集まる冒険者は新人ルーキーや、うだつが上がらない冒険者ばかり。

 

 熟練の冒険者や上位冒険者は流石に様子見といった所だった。



 しかし、勇者同盟レギオン側も新人ルーキーだろうが、レベルを上げてしまえば良いと判断し。

 連日地下迷宮(ダンジョン)で無理なレベル上げを繰り返してた。


 優秀な人材確保の案は何処に行ったのだろうか。





 それから4日後に事件が起こった


赤城率いるパーティが、地下迷宮ダンジョン中層で、魔石魔物に襲われたと言う情報だ。


 俺達は、地下迷宮ダンジョンから戻って昼食を取っている時に、その情報を聞き、すぐに地下迷宮ダンジョン入口まで向かった。  



 入口では、赤城が必死に魔石魔物出現の報告をしていた。

 だが、状況がよろしくなかった。


 魔石魔物が出た場所が中層であること。

 中層エリアだと、熟練の冒険者でもないと危険で、簡単には向かえないのだ。


 話を聞く限りは、危機に陥っているのは、新人ばかりのパーティ12名。

 今回は葉月が同行していたようで、調子に乗り中層まで行ったそうだ。



 赤城が葉月には頼み込んで、同行を承諾して貰ったようだった。


 勇者同盟レギオンの格を上げる為にも。

 中層までは行きたいという思いが、最悪の結果になったのだ。


 最悪とは、赤城が葉月達パーティを置いて逃げてきた事。

 本人は報告のために自分だけ退いて来たと言っているが。



 そして今、大急ぎで中層救出組が作られている。



「あの、ご主人様、」

「ジンナイ様、」


 二人の目が俺に訴えてくる。

 確かに、葉月には二人の部屋でお世話になってる。

 裁判モドキの件も謝罪を受けている、恨む理由は無い。


 ちょっとまだ苦手意識はあるが、俺も助けてもらった恩もある訳で。



「ラティ、サリオ救出に俺達も参加するぞ!」


「はいご主人様!」

「了解してラジャです」


 

 俺達も救出組に参加する事を決め。

 冒険者連隊アライアンス16名で、中層へ救出に向かった。


 今回は特に速度重視、急いで助けに行かないとならない。

 赤城の道案内で急ぎ、皆駆け足で進んでいた。


 中層からは整備がされておらず。足場が悪くなっていた。

 特に恐ろしいのが、崖が多いことである。

 

 落ちればどうなるか考えたくない高さだった。


 

 俺は走りながらふと考えていた。

 今回の事での、自分の心境の変化に驚いていたのだ。


 以前の俺なら、葉月を助けには行かなかっただろうと。

 今は、葉月に恩があるから、行くと言うのは嘘では無い。

 だが多分、その場にはあのクソおんなも居るはずだ、これではアイツも助ける事になる。

 

 前の俺なら、きっと無視してた。

 それでも葉月を助けに行くのは、やはり前よりか俺は‥‥




 それから一時間後


 俺達はすぐに葉月達を発見できた。

 3㍍の段差の下に広がる四方50㍍の大広間、そしてその奥は深い崖。


 そして周りの壁は薄く光を放つ、不思議な空間だった。


 肝心の葉月達は、怪我人を引き連れて逃げていた。

 その怪我人を抱えている為に、魔石魔物から逃げ切れない様子。


 前衛がイワオトコの魔石魔物を足止めし、

 葉月達が、回復魔法で援護しながら撤退をしていた。


 前衛にはムカツク女の勇者橘も見える。



「よし、ここにロープを垂らして、下に降りて助けに行くぞ」

「何人かは上に残って場所の確保を、魔物を寄せ付けるな」

「まずは負傷者を引き上げからだ、いいな?」



 それぞれの役割を手早く決め、迅速に救出に向かう。


「ラティ!今回は、お前は上で敵が来ないか【索敵】で見といてくれ」

「はい、ご主人様」


「サリオも待機、あと前の魔法の槍を作ってくれ」

「ラジャ、火系魔法”焔の槍”!」



 俺は牽制に”焔の槍”を近づきならが魔石魔物に投げつけた。


「逃げろー!救出にきたぞー」


 俺の投げた槍が魔石魔物に突き刺さるが、やはり魔法無効マジキャンで弾かれる。


 それが合図のように、取り残され組が大急ぎ退いていく。


「走れーそいつは足が遅いから、助けがあれば逃げれるぞー」

「怪我人は何人かでひっぱってけー」

「怪我してる奴を優先で逃がせー!」



「――ッ聖女様を守れー!!」


 俺の投げた槍を合図のように、冒険者一斉に退いた、

 だが、タイミングが悪かったのか、1人が取り残される形になってしまった。



 葉月がイワオトコの前に、1人取り残されたのだ――



「ちぃいい!マズイ」

「――ッキャ!?」


 魔石魔物のイワオトコが、豪腕を横に薙ぎ払うように振り回す。

 葉月を完全に捉えた一撃――


 それを俺は突き飛ばす形で庇った、そして


「――――ッぐが!!」


「陣内君!!」

「ヨーイチ様!!」

「ジンナイ様」


 

 辛うじて、意識が飛ばされる事なくガードは出来た。

 だが、体重差は歴然、気前良く吹き飛ばされた。


 飛ばされた場所は運悪く。

 落ちたらどうなるか考えたくない場所だった。



 そして俺は崖へと飲み込まれて行った。


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