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オレンジピンチ

忙しく投稿が遅れました、申し訳ないです。

新章”狼の子守歌”編開始です。



172部 「おてつき」で一部修正入ったのご報告を忘れておりました。

ちょっとセリフの追加です。

「おいいいいいいいいいいいい!?」

「ぎゃぼーーーーーーーー!?」


「おいサリオ! なんでお前、首輪の色が変わってんだよ!」

「ぎゃぼぼぼって、ほへ? 色がです?」


 首に巻かれている首輪は、しっかりとサリオの首に巻かれている為に、装着者からは見えないようだった。俺に色が変わった事を指摘されても、サリオは不思議そうに首を傾げるだけで、今の状況を理解していない様子。


 ――拙いマズイ不味いまずい!

 色が変わったところを目撃されたら、マズイ誤解を受ける、

 俺がロリコンだって‥‥



 頭にふと、西で出会ったエルフのタルンタが浮かんだが、俺はアンタの仲間じゃないと心の中で否定をしていると。


「ご主人様! いま何か凄い声がぁ‥‥」

「ラティ‥‥」

「ありゃ?ラティちゃん、もうお風呂あがったんです?」



 俺の部屋に駆け込んで来たラティは、湯上りでホコホコそうだが、とても冷めた目をして俺を見つめていた。

( 詰んだ‥ )





           閑話休題(エマージェンシー)







 俺は、どうやってこの誤解を解こうかと思っていたのだが。

 

「あの、何となくですが、状況が解りました」

「いやコレには深い訳が‥‥え?」


 状況は、俺がサリオを高い高いしているような状態。

 お腹に手を添えて、上に掲げているような体勢。見方によっては、父が娘をあやすような微笑ましい光景なのだが、首輪の色は(セーフ)から(アウト)に変わっており、普通ならばアウトなのだが。


「あの、ご主人様からは、その、疚しい感情は見えませんでした、何かの拍子に首輪の色が変わってしまったのですねぇ? ですが、首輪の色が変わってしまったという事は‥、あの、奴隷の没収は避けられない事態かと」

「おぉ、ラティさんがチート過ぎて助かった」

「ジンナイ様、いい加減に降ろしてくださいですよです」


 俺はラティに誤解されていないことに安堵し、そして【心感】(チート)に感謝した、




 俺はサリオを下に降ろし、彼女に何故、奴隷の首輪の色が変わったのかを尋ねる。

  

「ほへ? 何ででしょうね? 何で首輪の色が変わったのでしょうか?です」

「おい‥お前が分からないのかよ」

「あの、ご主人様、多分なのですが――」



 ラティは俺達に、奴隷の首輪の色が変わった理由を、彼女自身の体験や、彼女なりの考察を混ぜた説明を話してくれた。


 ラティ曰く、奴隷の首輪の色が変わる原因は接触と感情。

 視線や言葉など、直接触れるモノでない場合は、首輪の色は変わらず、肌に直接触れられた時に感じる不快な感情によって、奴隷の首輪の色は変わると言うのだ。


 俺はふと思い、『寝ている時は?』っと尋ねると、寝ている時は感情が働かないので、『多分、色は変わらないでしょう』とラティは答える。



 かなり前の事だが、北の防衛戦に参加した時、貴族の馬鹿息子ジャアに、ラティは革の鎧を剥ぎ取られた事があった、もしあの時にラティが寝かされていなければ、もしかすると首輪の色が変わっていたのかもしれない。


 ――くそ、思い出したら腹立って来た、いつかぶん殴って‥もういないか、

 それよりも、感情と接触、それが色の変わるトリガーか、

 アレ? だとすると‥‥



「サリオ!お前まさかっ、さっきのアイアンクローがっ!?」

「がぉーーん! だって痛いんですよ? 乙女の柔肌がピンチなのですよです」

「たぶん、直接お腹を掴んだのがよろしくなかったのかと‥あと、サリオさんはお酒も飲まれている様子ですし‥」


 暫くの間、俺とサリオはぎゃいぎゃいと言い合った、お互いに自分には非がないと。そしてそれを困った顔でラティが見ている時――


「なんやか五月蠅いのう、じんないさんちょっと相談が――ッ!?おい、それは」

「あ、ららんちゃん」

「ららんさん、スマンちょっと騒ぎ過ぎた‥‥って、あれ?」


 ららんさんの顔は、今まで一度も見た事がないほど真剣な表情となっていた。そしてその真剣な表情からは怒りの感情がチロチロと窺える。


「えっと、あれ? ららんさん怒ってる? そこまで騒がしかった‥かな?」

「じんないさん、さりおちゃんの首輪の色が変わっているように見えるんやけど」


 笑みを浮かべながら、『どういうこと?』っと聞いて来るららんさん。普段の『にしし』な笑みではなく、ゾクッとするような、温度を感じさせない虚無な笑み。


「ららん様っ これはご主人様がいつもの折檻をやりすぎて、それが手違いと申しますか、関係無いのに首輪が反応してしまったのです、決してお考えになっているような事ではありません」



 ららんさんの感情の色を読み取ったラティが、咄嗟に慌てながら弁護をしてくれる。そしてその話を、虚無な笑みのままで聞いていたららんさんは。


「あ~~なるほどのう、オレの早とちりだったんか、にしし♪ 疑ってゴメンよ」

「誤解が解けてよかった、全くタルンタじゃないんだから‥」



 普段の『にしし』な笑みに戻るららんさん。

 ただ、タルンタの単語には、何故かピクリと反応をした。



「全く人騒がせやのう、あ、そうやった、じんないさんちょっと確認なんやけどね、預かっている忍胴衣、もうちょっといじって良い?」

「え? 着心地とかに問題がなければイイですけど、どうするんですか?」


「それは見てからのお楽しみやの」



 俺は全面的にららんさんを信用しているので、全てを彼に任せる事にした。

 ららんさんの腕は確かであり、そして実際に凄いモノを作っている。サリオのローブやラティの鎧など、どれも素晴らしい物ばかりである。


 だが、最後に一つだけ不安な事が――


「じゃオレは戻るね」

「はい、あとスイマセン騒ぎ過ぎちゃって‥」


「ええよ、ええよ、でもまぁ、ちょっと驚いたかのう首輪のこととか、一応アムさんに報告しておくやね」

「っう、アムさんか‥」


「じゃあの…… あと、釣り上げてやる」

「え?何を?」

( 値じゃないよね? )


 そう言い残して、ららんさんは俺の部屋を後にする。




 その後、俺達は打開策は無いか話し合った。

 基本的に橙色に変わった赤首輪の奴隷は、奴隷商に没収される。

 詳しい経緯などは分からないが、多分、没収された後、再び売りに出されるのであろうと予想した。


 ラティの時はどうだったのが、聞き辛いが事だが尋ねる。


「回収された後は、また普通に赤首奴隷として売られただけでしたねぇ」

「なるほど、」



 それならば、サリオも普通に買い戻せば良いだけなのだが。


「何か買い戻すのに金貨1~2枚払うのヤダな、金がもったいない‥」

「ぎゃぼー! ジンナイ様酷いです~見捨てないでくださいです~」


「喧しい! 金貨1枚あればスキヤキを3人前、3回は余裕で喰いに行けるんだぞ? これならお前でも理解出来るだろう?」

「そ、それは卵を付けたお値段ですか?です」

「愚か者、卵無しの値段だ」


 この異世界にも卵はある。だが元の世界とは若干違うのか、卵を生で食べれる程に衛生的ではなく、加熱ならば問題はないのだが、生で食べれる用の卵は、驚くほど高価なのだ。

 一個で銀貨1枚。


 3人の食事の平均単価が銀貨2枚の異世界では、かなりの高額食材である。

 しかし、生卵の無いスキヤキなどは容認出来るモノではなく、俺達がスキヤキを食べる時は、いつも生卵を注文(トッピング)していた。

 

 そして俺の、食べ物(スキヤキ)を例に上げた説明はサリオに届いたらしく。


「がぉーーん、めっさ凄い高価だったのですねあたしは」

「わかってくれて何よりだ」


「あの、いまってそんなお話をしておりましたのでしょうか?」


 サリオの何百倍も高いラティは首をこてんっと傾げていた。






         ◇   ◇   ◇   ◇   ◇






 次の日、俺は朝一でアムさんを訪ねる。

 南の公爵代理アムさんであれば、橙色に変わってしまった奴隷でも、大貴族の権力的な何かで何とか出来ないだろうかと思い、彼に相談に行ったのだが――


「ジンナイ君、流石にちょっと厳しいかな」

「う、公爵でも?」


深淵迷宮(ディープダンジョン)のような限られた狭い場所ではなく、奴隷となると全体の話になるからね。もしそれが漏れたりしたら、批判が集まり過ぎるだろう」

「なるほど‥」


 やはりそう簡単に行くものではなかった。しかも――


「それに奴隷商というのは、実は中央の国が管理しているんだよ」

「うん? それって」


「奴隷商というのは、個人ではなくて、国が裏で管理しているのさ――」



 アムさんは俺に、奴隷商の仕組みを教えてくれた。


 奴隷商というのは、国から権利を得た人が運営しており、利益などはその店の物だが、それ以外の部分は国が関与しているらしい。

 赤首の奴隷などを、無理矢理に普通の奴隷として売るなど出来ないように、しっかりと管理して不正をなくし、そして言い方は変だが、健全な奴隷商売を行うように、徹底的に指導しているのだと。


 当然違反があれば、即、奴隷商の権利を剥奪されるので、皆が守っていると。



 アムさん曰く、国が表立っての管理だと体裁が悪いので、奴隷商が商売として行っている風を装っているのだと。そしてそれは当然、一般の市民は知らされていない。


「だから公爵家だとしても、介入は難しいんだよ。もしそれがバレたりしたらきっと奴隷の没収だろう、勿論、サリオさんだけじゃなく、ラティさんの方もね」


 ――あああ、なるほど、

 こりゃ確かに、正々堂々と買い戻した方がいいな、

 国って事は、宰相のギームルだよな‥



 俺はサリオをそのままノトスの奴隷商に連れて行き、首輪の色を見せて彼女を引き取らせる。


「これはこれは、中々の高尚なご趣味をお持ちなようで」

「誰がロリコン(高尚な趣味)だよ! ちょっとした事故だ、それですぐに買い戻しをお願いしたいんですが」


 橙色に変わった赤首輪の奴隷はすぐに買い戻しが出来る。

 一見ガバガバなルールだが、没収された奴隷を、再び高額の奴隷代を支払ってまで買い戻す奴は少ないらしい。


 なので俺は、簡単に買い戻せると思っていたのだが――


「ほほ~、ハーフエルフですか、本来であれば全く需要は無いのですが、このありえない程の高レベル‥‥、これはオークション形式でも取りますかね」

「へ?」

「ぎゃぼ?」




 奴隷として、再び売りに出されたサリオのお値段は、公平な競売によって価値が決められる事となってしまった。


 本来の価格は金貨1~2枚。

 だが、サリオはレベル100を超えており、常識的に考えて金貨1~2枚で買い戻せる訳がなかったのだ。俺はそれを失念しており、人目につく前に、素早く買い戻すことばかり考えていた。


 もし、サリオの首輪の色が変わったと知れ渡れば、あるぬ誤解を受けることが確定していたからだ。幼女誘拐(ロリハンター)などの二つ名だって貰う恐れまである。


「くそお、もっと考えるんだった‥」

「ぎゃぼー! ジンナイ様~、ちゃんと買い戻してくださいですよです~」



 即席で作られたオークション会場。

 奴隷商の館の前に台を運び、その上にサリオを立たせているだけの、まるで小学校の朝礼のような光景。


 どういう宣伝方法をとったのか、シャレにならない人数が集まっていた。

 約100人程の冒険者達が、オークションに参加しており、皆が俺に目を向けながらヒソヒソと話し、そしてその倍の人数が、少し離れた場所で見学している。

 

 此処で俺はある事に気付く。


 ――ん? 全部冒険者?

 あ~~分かった、深淵迷宮(ディープダンジョン)の前に行って宣伝したのか、

 だから短時間でこれで集めれたのか、



 そして、ヒソヒソ話に耳を澄ませると――


「(おい、瞬迅が売りに出されたんじゃねぇのかよ!)」

「(知らねえよ、必殺(フェイタル)の奴隷が売りに出たって聞いただけだし)」

「(売ってんのは、あの小さい方か、)」

「(あのハーフエルフって焔斧だよな?)」

「(くそ騙された、瞬迅じゃねえのかよ‥)」


 聞こえる会話を聞いた限りでは、ラティが売りに出たと、誤情報に釣られて来ている連中も多数いた。いくら何でも集まり過ぎだと思っていた謎が解ける。


「ぎゃぼーーう! あたしを求めてこんなに人が来たよです!」


 『あたしを巡って争わないで~』っと、サリオはこの状況に酔っており、頬に手をあわせて、イヤンイヤンと身を捩っている。

( あとで真相を教えてやるか‥ )



 ラティ目当ても多かったが、しっかりとサリオ目当ても多く、最終的に60人ほどが残り競売に参加することになった。


「あの、何だか大事になりましたねぇ」

「ああ、出来ればひっそりとして欲しかった‥」


 ――くそ、これで完全に知れ渡った、

 絶対に俺がサリオに手を出したと思われたよな‥

 あ、ニヤニヤしながら俺を見てる奴が、



 こうして俺を絶望に叩き落としながら、サリオを賭けた競売が開始されるのであった。


読んで頂きありがとう御座います。

宜しければ、感想や忌憚のないご意見などお待ちしております。


あと、誤字脱字なども。



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