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幼女

まさかのハーレム突入か!違うか、

「あのな、無理して付いて来なくても大丈夫なんだぞ?」

「いえいえ、あたしは付いていきますです」


「あの、ご主人様、」

「うん?」


「そろそろ、撫でるのを、」

「ああ、ごめん」


 いま俺達は馬車に揺られながら向かっている先は【ルリガミンの町】である。  


 バザーの売り子から、剣に使う素材収集の依頼を受けて。

 素材であるカゲクモの糸を獲りに行くために、地下迷宮ダンジョンがある【ルリガミンの町】に向かっているのである。

 

「ましゃか、ご依頼をお願いした人が、噂のハズレ勇者の人だったとは」

「どんな噂だよ」


「えっと、それは滝汗ものですが、ちょっと乙女の口から言うのには、難易度が高いと言いますかなのです」

「OK、何の噂か理解した」


「しょの、あまり信用出来ない人とも聞いておりまして、ですが藁にも縋る思いですです」

「それで監視の意味も含めて付いてくると?」


「ぎくぅう!違いますよ違いますからね、しゅこし心配なだけです、あまりお強くないと聞いてますしです」

「わかったよ、でも安全は保障出来ないからな」


「あたしは、もしこれで糸を持ち帰れなかったら、保護を解除されてしまうかも知れないのです」


「保護?解除って?」

「嫌われ者のハーフエルフは、保護者の人がいないと街などには入れないです、勿論エルフの里にも」


「保護者と言うのは親なの?」

「ハーフエルフの親は、、察してくらさいです」


 売り子は暗い顔をして俯く。


「なので、追い出されると野垂れ死にでチーンなのです」


「あの、ご主人様、世間ではハーフエルフは【狼人】くらいに厳しい扱いなのです」



 ラティが簡単に説明をしてくれた。


「だからそれだけ必死なのか、監視して逃げられないために」

「なのです!ヘタレで女子に狼になって無法者でハズレで変態で王女さまに迷惑かけて勇者様達の敵でヘタレと噂のあなたに頼るしかないので監視をするです」


「ちょっと噂酷すぎません?盛るにしてもないでしょ」

「ほえ?まだこれ半分くらいですよ」


「ちくしょぅ、いつか絶対に見返してやる、つか精神的にくるなこれ」

「あの、頭を撫でるのは」


「ラティごめん、心の弱い俺を許してくれ」

「はあぁ‥‥?」



「なんとなくですけど、一つの噂は嘘みたいですね、、もう爆発しないかなコレです」






           閑話休題なんのことやら





 

 特に事故もなく【ルリガミンの町】に辿り着く。


「さて、地下迷宮ダンジョンに行って来るけど、えっと、売り子さんはホントに付いて来るの?何処かで待っててもらえれば」

「サリオです!サリオちゃんです!今更ですか全く!」


「んじゃ、サリオ行って来るよ」

「ぎゃぼーー!いきなり呼び捨てですが!そして付いて行きますよです」


「いや、地下迷宮ダンジョン危険だし流石に危ないかと」

「あたしはこれでも魔法得意ですから、ついて行くです」



 サリオに信用されてないのか、必死に食い下がって地下迷宮ダンジョンに付いて来ようとしていた。


「失礼ですが、ジンナイさんは弱いとお聞きしてますですので、不安で不安で胃痛がするレベルでしてです」

( 失礼な奴だ、もう帰ってしまおうか、 )


「あの、ご主人様 サリオ様も魔法がお使いになれると言うのであれば、一緒に行くのも宜しいかと」



 ラティからの提案に俺は思案する。


 ――魔法があるなら回復魔法を使えるかも知れない、

 クモが居た場所もそこまで危険な場所じゃないし、

 メインルート通れば安全か、トラブルでも無い限り、


「よし、サリオ一緒に行こう」

「了解してラジャでついて行きますです」


「おう、一応魔法は期待してるよ、回復魔法があると心強い」

「‥‥‥‥」



 急にサリオが黙り込み、そして滝のような汗を流し始め目が泳ぎまくる。

 目の動きが軽く引くぐらいに、泳ぎまくる。


「サリオさん、もしかして?」

「っち違うのです!攻撃魔法は使えるのです!ジャベリン系も使えるし、他のだって」


「回復魔法は使えないんだ?」

「はぃ」



 しょんぼりとしょげるサリオ。

 だが、元から回復は薬品ポーション頼りな訳で。


「仕方ない、このまま潜ろう3人で」


 俺達はいつも二人で、地下迷宮ダンジョンに潜っているので気にしなかったが。



「がぉーーん!何言ってるのですか?回復無しで行くのですかです?」

薬品ポーションあるし」


「頼りなさ過ぎる!地下迷宮ダンジョンですよ?です」

「いや、そう言われてもな」


「そです!誰か回復出来る人を探しましょう、これだけ冒険者いるのですから誰か‥」


「自慢じゃないが俺はここでは嫌われ者だ、誰も来てくれる奴なんて居ない」

「ホント自慢じゃないです、あとここだけじゃ無くて城下町でも嫌われ者です」



 サリオとギャアギャァ騒いでいると、いつの間にか野次馬が増えており、ほとんど見世物状態になってしまっていた。

 

 そしてその野次馬の中から、突然予想外の声をかけられた。


「ねぇ、回復魔法役が欲しいなら私がいくよ~」

「ぎゃぼーー!ホントですかー?」


 サリオは嬉しそうに振り向く。

 俺はその声に嫌な予感を感じつつ、声の聞こえた方を見た。


「私は今日休日で手が空いてるの」

「いや、休日なら休めよ葉月」


 回復役に名乗りを上げたのは、勇者で聖女様の葉月由香だった。


「いや、ホント回復役は足りてるんで平気だから」

「どこにいるの?その子は違うよね」


「袋の中の薬品ポーション君が頑張る」


「む~~私には来て欲しくないの」

「いや、そう言う訳じゃ、」


 どういう訳が、葉月はまだ押してくる。


「前にお城で誤解とは言え、酷いことしちゃったから、その罪滅ぼしかな」

「あの裁判モドキの事なら、ラティを助けて貰ったから、チャラでイイよ」



 勇者達が苦手な俺は、やんわりとお断りを入れてみるが。


「それなら、陣内君を助けた分で借りを一つ返して欲しいかな~」

「なんでついて来ようとするんだよ」


「返して欲しいかな~~」


 葉月は可愛らしく首を傾げながら、俺に言い寄ってくる。


「欲しいかなぁ~~」

「くう、分かった、前に助けた貰った所までだ、そこに用がある」



 謎のゴリ押しに負けてパーティに参加を認めた。

 その後、準備を終え地下迷宮ダンジョンメインルートに向かう。


 だがそこで。


「おい、ホントだ!聖女様が他のパーティに参加してるぞ」

「他のパーティには参加出来ないって聞いていたんだが?」

「よく見たら”翔迅”のラティちゃんまでいるじゃん」

「あれ、”翔迅って帰ったんじゃ?戻って来てたのか」


 メインルートは冒険者が多いためか、そこらじゅうから話し声が聞こえた。

 それも、このパーティの噂話が。



「ラティって新しい二つ名出来てたんだな、ラビットラティにボーパルラティと今回の翔迅しょうじんか」


「あの、ご主人様?一つ聞いたことないのが混ざっているのですが?」 

( ボーパルラティは俺だけが呼んでたか )


「あのぅジンナイさん、聖女様ってあの有名な聖女様です?それにラティさんも有名みたいですが‥」

「たぶん、その聖女様だろうな、あとラティはこっちでは最近有名になった」


「ぎゃぼー!みんなこっちを見ていて居た堪れないんですけどです」

「大丈夫だ俺もそうだ、だから早く地下迷宮ダンジョンに入っちまおう」

「了解してラジャです!」



 好奇の目で見られながら、俺達は地下迷宮ダンジョンに逃げるように入った。

 地下迷宮ダンジョンに入ってから確認の意味も込めてステプレをチェックする。


ステータス


名前 陣内 陽一

職業 ゆうしゃ


【力のつよさ】34

【すばやさ】 33       

【身の固さ】 30


【固有能力】【加速】

【パーティ】ラティ32 葉月由香43 サリオ3



―――――――――――――――――――――――――――――――――


ステータス


名前 ラティ

【職業】奴隷(赤)(陣内陽一)

【レベル】32

【SP】173/173

【MP】190/190

【STR】 102

【DEX】118

【VIT】 95

【AGI】170+2

【INT】 96

【MND】 98

【CHR】129

【固有能力】【鑑定】【体術】【駆技】【索敵】【天翔】【蒼狼】

【魔法】雷系 風系 火系

【EX】見えそうで見えない(弱)

【パーティ】陣内陽一 葉月由香43 サリオ3 


 ――――――――――――――――――――――――――――――――


ステータス


名前 葉月 由香

【職業】勇者

【レベル】43

【SP】237/237

【MP】328/328+50

【STR】 98 

【DEX】130

【VIT】105

【AGI】121+8

【INT】148+5

【MND】157+5 

【CHR】145

【固有能力】【鑑定】【宝箱】【聖女】【範囲】【魔力】【黄金】【結界】【幸運】

【魔法】雷系 風系 火系 水系 土系 氷系 聖系

【EX】見えそうで見えない(強)魔力回復(中)

【パーティ】陣内陽一 ラティ32 サリオ3

 ――――――――――――――――――――――――――――――――


名前 サリオ

【職業】魔術師

【レベル】3

【SP】24/24

【MP】62/62

【STR】 9

【DEX】 7

【VIT】 6

【AGI】10

【INT】14

【MND】13

【CHR】10

【固有能力】【鑑定】【天魔】【魔泉】【弱気】【火魔】【幼女】【理解】

【魔法】雷系 風系 火系 土系 闇系


【パーティ】陣内陽一 葉月由香48 ラティ32


 ――――――――――――――――――――――――――――――――

  

「ほへ~、お二人共凄いですねです」


「うん、私頑張ってるんだ、魔王倒さないと帰れないし」

「サリオ様、お褒め頂きありがとう御座います」



「そして滝汗ものですが、噂に聞いてた通りぶっ飛んだステータスですねです」


「俺か?」

「はいです」


「噂?って陣内君の?」

「はい聖女様、王国の方では凄いんですよジンナイさんは」


 サリオはパーティのステータスを見て驚き、そして葉月の質問に素直に答えた。


「すんごいんですよ、特にここ最近は」

「え?ええっと、ちょっと怖いけど聞いてみたいかな?」


「そうですねぇ、ヘタレで女と見れば襲って王女様まで襲うししかも弱くてお金に汚くて目が腐っててヘタレで顔が酷くて奴隷をコキ使って勇者様に嫌われてるっと聞いてますね。」


「あはははは、そうなんだ‥‥うん、凄いねそれ」

「おい!さっきより酷くなってるうえに、もう完全に悪口だろソレ」


「ですよね、あたしも会ってみて、流石に盛り過ぎかなと思ってたです」

「全くだ!何だよ目が腐ってるって、なぁラティ?」


「‥‥はい、ご主人様ソウオモイマス」

( おい!ラティが片言だと )

 

 ラティが目を逸らしながら答える、追求すると心にキズを負いそうなので、話を無理矢理変える。



「そういやサリオの【幼女】って凄いのあるね、」

「ぎゃぼう、やはり気付かれましたかそれにです」


「うん、まあ」

「えっと、成長が遅くなる能力なんです、あたし今21才なんですぉー」


 サリオの見た目は6~7才の女の子、ダークグリーンの長めのおかっぱ頭で、顔は丸く目は茶色、分かり易く言うと幼女だった。


 ハーフエルフだから成長遅いのかと思ったら違ったらしい。


「そ、そうか、なんと言うか良いイカ腹だな」

「 ぎゃぼおおーーーーー気にしてること言われたーーー! 」







           閑話休題それはさておき 

 




 


 地下迷宮ダンジョンに潜り到着した場所は、三日前に瀕死になりながら、カゲクモごとブチ破った壁の穴の前。

 最近開いたばかりだからか、誰も通った形跡はなかった。



「この奥に糸があるはずだけど、注意しろよサリオ」


「ぎゃぼう!大丈夫ですラティさんがいるから」

「うん、ラティちゃん強いよね、ステータスとかじゃなくて動きが別次元かな」

「壁とか半分走ってましたよね、天井まで使ってたし」



「あの、これは【固有能力】のお陰ですので」


 葉月とサリオは、道中のラティの戦いを見て驚いていた様子だった。

 因みに俺は、後ろで槍ってただけだった。



「おーい行くぞ~、葉月、悪いけどサリオのフォローお願いしたい」

「うん、わかったよ陣内君」



 そして以前、カゲクモと死闘を演じた、丸い部屋に再び入る。


「がぉーーーん!糸ありましたよ、これで追い出されずに済みます」

 

「あの時はそれ所じゃなかったから気づかなかったな」

「あ!奥の通路にも沢山張ってある、あれも取っていこうよ」



 葉月に言われ、奥の通路に行くと、その先にも広い部屋がある事に気がついた。

 一応探索の為にその部屋に入ると、すぐにラティが反応した。


「――ッ!上ですご主人様!」

「っな!?、二匹」


「ぎゃぼう!」

「サリオちゃん、静かにしてね」



 高さ15㍍以上ある天井に二匹のカゲクモが張り付いていた。


 一匹は以前のと同じ胴体が2㍍くらい、だがもう一匹が5㍍を超える大物。

 そしてそのクモはなんと――


「おい‥あのデカイの、糸で魔物を捕獲して運んでないか」

「はい、ご主人様 魔物クロウラーを運んでます」


「ぎゃぼう、魔物さんも魔物をお食べになるのですね」

「私は初めて見たけど、魔物を襲う魔物って」



 巨大カゲクモは、なんと他の魔物を捕獲して運んでいたのだ。

 そこで俺が思ったのは、倒せば霧になる魔物を食べれるのか?と言う疑問と。

 

 魔物の魔石はどうなるのかと。



「ひょっとして、前に居た二匹の魔石魔物が沸いた原因ってあのクモが‥」

「陣内君それなら外にすぐ知らせに行かないと!」


「ご主人様!来ます」


 

 考えてうちに、もう一匹のカゲクモが天井から降りて此方に向かって来ていた。

 俺は戦う事を選択した、本来はすぐに外に知らせに行くべきなのだが。

 逃げるには、サリオの足が心配だったのだ。


「先行します!」

「葉月!サリオをフォローと支援魔法があれば」


「はい、上昇系かけるね」

「ぎゃぼーー!近くで見るとキモいですー」


 カゲクモとの戦闘が始まった。

 ラティは引き付けるように左に回り、サリオからクモ引き離す。

 以前とは変わって、手堅く足を切り裂いて戦っていく。


「いいぞラティ!俺は後ろに回る、糸だけは注意しろ」

「はい!」


 武器を新しいのに買い換えた為か、クモの足をすでに3本斬り飛ばしている。

 俺はクモの背後から胴体を槍で突き刺し、以前よりも楽に戦えていた。


 体が明らかに速く感じるが、これは葉月の支援魔法の効果なのだろう。


 そして足が切断され、ほぼ動けないカゲクモにトドメの一撃を入れ、黒い霧にして霧散させる。


「ひゃほーい!強いです!ジンナイさんも戦えるじゃないですか」

「あ、サリオちゃん待って!まだ前に出ちゃダメ」


 サリオが霧となって霧散した魔物を見てはしゃいで前に出て来るが。


「――!ご主人様危ない!」

「サリオちゃん!」


「っぐ、ラティ!?」

「ほへ?」



 俺はラティに突き飛ばされ、葉月はサリオを庇って、いつの間にか頭上に来ていたカゲクモが飛ばした糸に、ラティと葉月が捕まってしまったのだ。


「ラティ!」

「ぎゃぼう!」


「「――――――ッ!!」」


 完全に糸に捕まった二人が上に引き上げられていく。


 俺は咄嗟に槍を投げるがクモの足で簡単に弾かれた。


 カゲクモはそのまま連れ去ろうと、天井を這って移動を開始する。

 流石のラティも、糸で縛られ身動きが取れない状態だ。



「サリオ!魔法で落せるか?」

「はっはいやりますです!火系魔法”カエン”!」


 サリオは慌て気味に魔法を唱えた。

 野球のボールサイズの火の玉を発生させ、それを飛ばしてカゲクモを狙う。


 だが、慌てている為か、火の玉は大きく外れ、天井を焦がすだけだった。


「サリオ落ち着いて狙え、あともっと強いので」

「はいぃぃぃい!!火系魔法”焔の槍”えい!」


 サリオは自身の体に見合わないサイズの炎の槍を作り出し、それを懸命に投げるが、今度は届かずに落下する。


「ふえっぇぇぇぇん、どうしたら?どうしたらです」

 

 俺は咄嗟に考える。 

 ――遠隔武器を持っていないのが痛すぎた。

 魔法はレベル3のサリオを当てにするのが間違ってんだ。

 それならどうする?このままじゃラティがクモに、誰かを呼んで来るか?

 いや時間が足りない、誰かに頼ろうとするな、俺が、

 

 俺が助けるんだ槍を投げてでも、槍を投げ‥‥!?


「サリオ!全力でさっきの炎の槍の魔法を!」

「え?でもでも届きませんよです」


「いいからやれ!」

「はいぃぃい!火系魔法”焔の槍」 


 サリオが半べそになって魔法を唱え炎の槍を作りだす。

 それ・・を俺が――


「サリオ槍寄越せ!」

「えええぇぇぇ!!」


「――――ブオン!――――」

 

 俺は炎で出来た槍をぶんどり、そしてカゲクモに向かって投げつける」


「キュシャアアーッ!!」


 槍は狙い通りクモの顔に当たり、口から垂らしていた糸が焼き切れた。

 当然、糸に縛られたままのラティと葉月が落ちてくる。


「やべぇ!ラティ!」

「落ちゃいますですー!」


 落下してくるラティと葉月を、受け止める為に、【加速】を使って駆ける。

 落下地点で腕を広げ、二人を受け止める為に身構え‥‥。


「――っぐっふうぅぅぅ!!」

「ジンナイさんナイスキャッチです!」



 ラティは体を捻って隙間を作り、糸を切って葉月と一緒に抜け出す。

 俺はそのまま『腰』をやってしまい動けずにへたり込む。


「腰がぁぁ!くっそ、クモは?」

「ぎゃぼ?、あ、逃げてますです!」


「陣内君!回復魔法掛けるから、横になって」

「ああ、頼む、」


「ご主人様、一度引いた方が宜しいかと」

「あ、うん、そうだな‥‥」



 腰の激痛が凄かった、危うく漏らしそうになるレベルだった。




 その後すぐにラティの肩を借りながら地上に引き返した。

 あのクモは危険過ぎる可能性がある為、外に危険性の報告が必要だった。


 そして地上に戻ってからは、迅速に行動を開始した。

 主に葉月が。 


「陣内君、私はみんなにクモの事を報告してくる、それと回復は、」

「いい、気にすんな、魔法だって完全に万能じゃないんだろ」


「あの、ご主人様、宿までわたしが運びます」


「わわわ、あたしはどうしたらです?」


「お前はその糸持って城下町に帰れ、持って帰らないとまずいんだろ?」

「ぎゃう、、それではこの住所に後日来て下さいです」


「わかった、腰が治り次第いくよ」



 俺はそのまま宿に向かった、腰を酷くやってしまったらしい。

 葉月の回復魔法で少しは楽になったがとても動ける状態では無かったのだ。

 


 それからしばらくしたら、葉月が宿の部屋にやって来て状況を教えてくれた。


 今回の事態を重く見た【ルリガミンの町】側は。

 巨大カゲクモ討伐の、冒険者同盟連合隊オーバーアライアンスと言うもので挑むと。

 この町にいる、全冒険者が強制参加に近いものらしい。


 俺は腰の負傷の為に、冒険者同盟連合隊オーバーアライアンスの参加は無理だった。



「ラティ、俺の看病はいいからお前は討伐に行って来てくれ」

「あの、でもご主人様が‥‥」


 ――ああ、オロオロするラティが可愛い‥‥

 って、そうじゃない、言わないと、


「俺はここで横になってるから平気だよ」

「はい‥‥」


「それにあのクモと戦い慣れているラティに来て欲しいだろうし」

「はい、ラティさんがいれば百人力です」


 渋るラティに俺は説得を続ける。


「ラティ、葉月もこう言ってるし、葉月がいるならラティも安全だろうし」

「はい、回復は任せてください!ラティさんには怪我させません」


「あの、わかりましたご主人様、では行って来ます」



 俺は『ああ、行って来い』と言ってラティを送り出した。

 サリオは馬車で一足先に城下町に帰っているので、部屋に1人っきりだ。


 俺は一人で居るのは久々で、ちょっと心細くなりながら横になった。

 そして、仕方ないとは言え、やっぱ1人は寂しくて後悔した。





 

          ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   





 

 数時間後、日は既に沈み、深夜近くにラティと蒼月亮二が部屋にやってきた。

 巨大カゲクモ討伐の報告に来てくれた。


「ご主人様、戻りました」

「ラティお帰り、怪我は無さそうだな?あと変な事は無かったか?」


「変なことですか?何ことでしょうか?」


「大丈夫だったぜ陽一、今回は誰も寄って来てないよ安心しろって」

「ああ、そうか」


「でだ、良い話と悪い話があるんだけど、どっちが先に聞きたい?」

「良い話だけを聞いて、生きたい行きたい」


「んじゃ、良い話から、ラティちゃんが活躍して人気が上がった」

「ほう」

( ある意味それ悪い話だよ )


「で、次は悪い話だけど、葉月さんを責めないでやってくれよ」

「へ?」


「葉月さんも頑張ったんだけど、お前の評判が悪過ぎたんだ」

「ん?どういう」


 ラティの表情が暗くなる、何か凄い悔しそうにしている。

 そして亮二がその理由を教えてくれた。


「陽一、お前の評判がもっと酷いことになった、今回の冒険者同盟連合隊オーバーアライアンスに不参加だったからだ、葉月も理由を説明してたんだけどな、誰も聞いちゃいなかった」


「ご主人様申し訳ないです、」


 その後、亮二は今回の顛末を教えてくれた。

 あの奥には魔石魔物が二匹居て、それと巨大カゲクモも一匹。

 人数が多くても、地下迷宮ダンジョンでは一度に戦える人数にも限りがあり、苦戦して7名も亡くなったそうだ。

 

 そしてその、行き場の無い悲しみって奴が、不参加者にいったみたいだと。

 活躍したラティや勇者達は称え、来なかった者を叩くことで心を静めたと。



「葉月から伝言頼まれてる、『ごめんなさい』だそうだ、ここに来ようとしたらしいが、橘さんに反対されて来れなくなった。今は討伐宴会で捕まってるよ」


「あの、わたしはご主人様が心配でしたので、そう伝え戻って着ました」

「そうか‥‥」


 ――戻って来てくれて嬉しい、けど、

 また恨まれる要素増えてないか俺、



「じゃあ俺は宴会に戻るよ、一応勇者様だしな、じゃねラティちゃん」



 亮二は報告を終えると部屋を出て行き、討伐宴会に戻っていった。


 亮二は律儀に俺に結果報告を伝えに来てくれたが。

 もしかしたら、ラティが宴会を抜け出せたのも、亮二のお陰かも知れない。




 そして今はラティと二人っきり。



「あの、ご主人様 腰の具合はどうでしょうか?」

「ああ、明日には何とか動けそうかな、城下町に帰ってサリオに会わないと」


「はい、良かったです」



「ラティちょっとお願いがあるんだけど」

「はい何でしょう?」


「ちょっと屈んで頭をこちらに向けて」

「‥‥‥はい」



 俺はラティの頭を撫でた。何となく痛みが引く気がしたからだ。 


 実際に痛みがちょっと和らいだ。

 もしかしたらラティの半分は優しさで出来ているのかも知れない と 馬鹿の事を考えながら、頭を撫で続けた。


 口元からの『ぷしゅぅ~』の音を聴きつつ、撫で心地を堪能しながら、俺は眠りに就いた。

 


読んで頂き ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 陣内陽一は冒険者の登録を断られていて冒険者でないのになぜ冒険者同盟連合隊の参加義務があるのでしょうか? 冒険者に登録していないのに冒険者として扱われているのがとても違和感があります。 …
[気になる点] 陽一もラティも冒険者登録をしてなかったので、参加義務はないのでは? 無視してやればいいのに、お人好しだねぇ(苦笑)
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