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北からの~

ごめんなさい、短いです。

ドミニクは55話で出てきたおっさんです

 目の前の中年男性、ドミニクが親しげに話し掛けて来ていた。

 その顔には、悪意や欺瞞に満ちたモノは一切感じられず。心の底から歓迎の気持ちが表されていた。


 ――うっ!?これは、

 俺を騙そうとしているようには見えないな、

 だとしたら、純粋に俺を‥?



 俺は戸惑っていた。 

 この異世界では基本的に嫌われて、邪険にされるのが普通だったのだ。

 裏のない歓迎や好意などはほぼ無かったのだ。


「えっと、ドミニクさん?でしたっけ、なんで俺の事を知っているんですか?」


 ――ここは少し探るか、

 あの北防衛戦の時に俺を知った様子だけど、 

 あ!もしかしてジャアの取り巻きとかか!?



 俺の後ろ向きな警戒心全開の心境とは逆に、何処か誇らしげに彼は語る。


「俺は前の北防衛戦に参加してたんだよ。ソコの狼人の嬢ちゃんの隣で俺は戦ってたんだぜ。それに堀に落ちたアンタら救出に、堀の下にも降りて戦ったし」


 彼はその後も、懐かしい昔の話でもするかのように話し続けた。

 初日は俺のことを”冴えない奴”だと言う印象を持っていただとか、勇者荒木の乱闘もすぐ傍で見ていたなどを。詳細に語る内容から、実際にその場にいたのだろうと思えた。


 そう、彼は間違いなくに居たのだと。

 北イコール敵と言う考えは、短絡的思考だと思うがどうしても警戒してしまう。

 レーダー(ラティ)の方は敵意に反応していない。


 ――ここは距離を置くか、

 まずは距離を置いて様子を見るべきだな、



 俺は心の中で方針を決める。

 


 それから暫くして斥候から。魔物の群れは明日の早朝あたりに到着、と報告があがってきた。防衛に参加する冒険者達は、村に待機という流れとなった。


 監視役のエルドラさんが、他の冒険者達にローテーションを組んで見張りを役を立てるように指示をだしていた。

 明日到着だと言っても、予想外の事は起こるもの。

 それを回避する為にも、しっかりと見張りを立てるのだと言う。


 監視役のエルドラさんに言われ、しぶしぶ見張りの編成を組む冒険者達。

 エルドラさんは雇い主側、報酬を貰う側の冒険者達は監視官のエルドラさんには逆らうつもりはない様子であった。



 そして俺達は――


「ジンナイさん達は、そのまま自由にしていてください。あ、村からは出ないでくださいね。霊体タイプの奇襲の可能性もあるので」

「わかりました。んじゃラティ、サリオ、村の散策でもするか」


「あの、散策ですか?まぁお気持ちは分かりますねぇ」

「まぁ何もすることないですしね、散歩に行こうです」



 俺は速やかにその場から去った、無用なトラブルを避ける為に。

 どうやらラティは気付いていたようだ。 


 やっかみと言う程ではないが、俺は嫌な視線を貰っていた。

 俺達だけが贔屓されている事が気に喰わないのであろう。


 うぬぼれるわけではないが、最近は軽んじられることが減っていた・・・・・

 前までは、このポンコツステータスや狼人の奴隷を連れている等で、侮蔑や軽く見られることが多かったが。今は一角の冒険者として見られている。

 特に高レベル冒険者相手には一目置かれ。魔石魔物狩りなどで、それなりの評価は受けているのだ。

 


 だが、低~中辺りの冒険者からは、それほど高い評価は受けていなかった。

 低いレベル帯の冒険者達とは、一緒に戦う事が少ないからだ。寧ろ無い。


 魔石魔物狩りは、周囲に思わぬ被害を出さない為に比較的奥の方で狩りをしているのだ。だからレベルの低い冒険者達からは見られることが少なく、認知されない分、舐められている感がある。


 数値が明確化され、比較し易いステータスなら良かったのだが。ひらがなステータスでは比較し辛いのだろう。



 俺はトラブルを避けるために、村の散策に出たのだが。

 運悪くドミニク(トラブル?)がやって来た。


「おお!イイ所で会った!丁度探してたんだよお前を」

「探してた‥?」


 俺は身構えてしまっていた。まるで謀ったかのように現れたのだから。

 身構えた俺を怪訝そうに見ながらドミニクは話を続けてきた。


「さっき話をチラっと聞いたけど、まだ暇なんだろお前達は?」

「ああ、一応待機だけど、暇って言えば暇かな」


「だったら、俺の家に寄らないか?話もしたいし、ちょっと紹介したい奴もいんだけどよ」


 ――仕掛けてきたか!?

 俺に紹介したいか、誰だ?

 しかもこんな堂々と誘って来るとは‥読めない、



 ドミニクは親指でナイスガイ風な感じで、踏み固められた道の先、一軒のログハウスを指していた。

 口ぶりから察するに、今彼が住んでいる家のようだが。


 ――周りには何も無いし、潜んでいる気配も無い、

 罠にしては露骨過ぎるし、コレ‥


 

 目線でラティに確認を飛ばすが、彼女からは危険は無いと目で返してきた。

 ドミニクの言うとおり、待っているのは一人だけの様子。


「ああ、分かった別に用事がある訳でもないしな」

「おお、よかったぜ!じゃあ早速行こうか」



 俺達はドミニクに案内されるままに、ドミニクの家に向かった。

 家に向かうまでの短い距離でもドミニクは話し掛けてきた。


「ふぅ~良かったぜ来てくれてよ、なんだか雰囲気がかてぇから断られるかと思ったぜ。折角再会出来たんだから話がしたかったんだよな」

「再会って、悪いけど俺は覚えてないからなぁ、」


 俺からの少しの棘も『ハハハッ』と屈託の無い笑顔で返してくるドミニク。

 思わず警戒を解きそうになる顔を向けてくる。

 そして家の前まで来ると――


「あ~~ちょっとだけ待って貰ってイイか?部屋ちょっと片すからよ」


 そう言ってドミニクは返事も待たず家にさっと入っていく。

 扉は少しだけ開けて中が覗けないようにしながら。



 俺は声を潜め、中の様子に集中する。

 ラティも【索敵】を使ってか、中の気配を探ろうとしている。

 そして聞こえてくる会話は――


「おい!リーシャ前に話してた奴が来たぞ!」

「奴って誰よ?あたしが知ってるひとぉ~?」


「ほら、前に防衛戦で出会ったって言ってた」

「ああ!英雄さんだっけ?」


「それそれ前に話してただろ!」

「ホント!?その人最近じゃ有名なお芝居にも出てるんでしょ?見てないけど」


「ああ、『谷底の弓乙女』で下に降りた冒険者のモデルになった人だよ」

「すっご~い!有名だよね?そのお芝居。お芝居のモデルになるって」


「ああ、そんな凄い人なんだよ」

「来てるんだよね?会いたい!絶対に会いたい!そのイケメン!」



 何やらハードルが上がっていた。

 しかも、『谷底の弓乙女』での俺の役は嫌われ者(悪役側)役だ。

 今までとは違う別のイヤな汗が噴き出てくる。


「あの、ご主人様これは‥‥」

「ぎゃぼー!なにやら楽しそうな予感がするよです!」

「ざけんな!嫌な予感しかしねぇよ‥」


 ――大体なんだよイケメンって、

 ドコの情報だよソレ!



 そして扉が開き。


「ワリィな、ちょっと散らかってたからよ」

「いや、中の声聞こえてましたよ‥」 


 俺達はドミニクに案内されるままにログハウスに入って行った。

 中から聞こえてきた会話は、とても芝居をうって俺達を騙そうとしているようには思えなかったのだ。これは間違いなく、純粋な気持ちで俺達を歓迎しているのだと。


 

 簡素な作りの室内。使い込まれたような生活感の感じる室内ではなかった。

 例えるならば、引越し三日後。

 そう感じさせるほど、部屋は殺風景であり、家具などが少なかった。


「すまねぇな、椅子もまだ二つしかなくてよ、」


 家具の少なさを示すかのように、椅子も足りていなかった。

 他に誰かを招くことは想定していない感じであった。

 ドミニクは、何かの箱を椅子代わりに用意し、俺達に座るように勧めてくる。


 なんとも大雑把な対応であるが、俺はそれを嫌いでは無かった。

 寧ろ堅っ苦しくないのでこちらの方が好きである。



 そして、其処まで広くない室内に、俺、ラティ、サリオ、ドミニク、最後に‥


「ねぇ!ねぇ!お父さん、何時来るの?その英雄さんって」

「‥‥リーシャ」


「お父さんから話聞いてちょっと興味あったんだよねあたし」

「お前なぁ、」



 何故か俺と目を合わそうとしてない、村娘。

 年はラティよりも一つ上と言った程度。明るい茶色の髪を二つのお下げにして肩から流し、薄い緑色のワンピースを着た少女。

 その表情は可愛らしいと言うよりは、強かさを感じさせる表情。

 何処か三雲を思い出させる。


 

 彼女はワザとらしく、キョロキョロと狭い室内を見渡す。

 

「リーシャ、ワザとやってるよな、いい加減になぁ、」

「はぁ~~、やっぱり彼がそうなの?」



 彼女はそう言って、心底興味の無さそうな視線を俺に突き刺す。

 そして――


「ないわ~、コレはないわ~、ドコがイケメンなのよ!村のみんな(村娘達)で付けたランキングで、ブッチギリの最下位の人じゃん、マジないわぁ~」


 ――マジないわぁ~

 何だよコイツ!?新手の精神攻撃なの?

 コレが俺に会わせたかった相手なの?



「すまないなジンナイ、娘のリーシャだ」

「ふんっ」


 紹介されても悪態をつき続けるリーシャ。そのやりとりを腹を抱えて爆笑しているサリオ。そして、何故か安心しきってその光景を眺めているラティ。



 どうやらドミニクは敵ではなそうな感触ではあったが、娘の方は俺の中の何かをガリガリと削ってくる存在だった。


 外の冒険者に、内のリーシャ。

 久々の冷遇を受けながらの小規模防衛戦が始まるのであった。

読んで頂きありがとう御座います。


宜しければ感想など頂けましたら、幸いです

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