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大探索

今回は難産でした

この物語名物?面倒臭い回です。

 総勢31名の冒険者連隊アライアンス深淵迷宮(ディープダンジョン)へと潜る。


 斥候がイシスさんとガレオスさん。

 熟練冒険者の2人が通路を駆けていく。


 俺はそれを後ろから眺めていると、横にいるサリオから話し掛けられる。


「ジンナイ様、これって深淵迷宮(ディープダンジョン)にお泊りするんですよねです?」

「うん?まぁ普通に数日はかかるかもな」


「と、言うことはですよ?お風呂はどうなるのでしょうです?あ!また勇者様が家とか出して入れるのです?」

「アホか!あんなふざけた【宝箱】持ってんのは橘だけだ!」


「サリオさん、無茶を言ってはいけませんよ?」

「ぎゃぼー!」


 勇者の固有能力である【宝箱】の収納可能スペースは、6畳分の部屋程度。

 家が入るような【宝箱】は【拡張】持ちの橘だけなのだ。



 今回は風呂などは無く、濡れた布で体を拭く程度だと伝えた。そしてその際の水も貴重だと言う事もサリオの頭に刷り込む。


 そう、今回はいつもとは違うのだ。

 地下迷宮ダンジョンなどには基本的に、魔物を倒し経験値と魔石を獲る場所。RPGのように宝箱が置いてあり、宝箱から金銀財宝などは無いのだ。あるとすれば、それは魔物に敗れて屍となった冒険者ぐらいなのである。


 当然その遺品は、戦利品として持ち帰る冒険者達。


 だから遺品も無さそうで他にも目ぼしいモノがない地下迷宮ダンジョンの最奥には基本的に冒険者は向かわないのだ。


 過去に魔石魔物が暴れて奥に逃げたので、討伐の為に追うという事はあったらしいのだが、それも本当に稀であり。


 そういった理由から、最奥を目指す探索のノウハウなどはほぼ無かったのだ。

 幸いに、熟練の冒険者のガレオスさんなどが居たので、彼等に知恵を借りて今回の編成などは組み上げれた。


 常に戦闘態勢なのは12人。残りは荷物運びなどを重視である。

 勇者の【宝箱】だけに頼るのは危険だとガレオスさんからアドバイスを貰ったのだ。勇者に何かあり、隊が分断された時に危険だと言うのだ。



 他にも、先に手持ちの方の物資から消費していき、ある程度消費してから勇者の【宝箱】から物資を出すと言う方法と取ることとなった。

 そうした方が荷物運びが楽になると言う理由だ。


 念には念を入れ、一応30日分の食料などを用意してある。



 物資の件はある程度の不安は払拭出来たが、冒険者連隊アライアンス内の連携には、一抹の不安を感じていた。


 冒険者の寄せ集めのように作った俺の陣内組はともかく、勇者達のパーティ同士が微妙に張り合っているのだ。特に椎名の連れて来た仲間が――







            ◇   ◇   ◇   ◇   ◇







 深淵迷宮(ディープダンジョン)突入から翌日。一抹の不安は、完全なる不安に昇華していた。

 ギスギスする予兆はあったのだが、夜の休憩時からその不安は顕著になってきた。


 お互いに仕える勇者を軸に、派閥が出来たのだ。

 勇者同士が仲が悪い訳ではないのだが、周りが勝手に盛り上がって争うような形となって来たのである。


 小学校のクラスなどではよく見かける光景だが、命を預け合う探索中には勘弁して欲しい諍いであった。


「あの、ご主人様」

「ん?どうしたラティ?」


「あの、何かパーティの雰囲気‥、感情がおかしく感じましたので、」

「ああ‥」



 ラティ不安を感じていた、だが把握はしていない様子。 

 ただ、レプソルさんはしっかりと把握しており『しまった、統括するリーダー決めてないからだ、』と口にしていた。


 諺で言うところの、”船頭多くして路頭に迷う”的な事らしい。

 この辺りの人の心の機微はラティには解らないのかも知れない。




 今回は俺の依頼で冒険者連隊アライアンスを組んでいるのだが。俺からの依頼は勇者が受けた事になっており。勇者のパーティメンバー達は勇者に頼られて参加という形なのだ。


 なので彼等にとって俺は、よそ者。一応は前にも組んだ事もあるのだが、認識としては勇者様に馴れ馴れしい奴。しかもハーティをぶっ飛ばした経緯もあり、ラティ達はともかく俺は避けられていたのだ。


 この微妙な人間関係の所に、追い討ちのように椎名組まで混ざるのだから、よりギスギスとし始めていた。


「嫌な予感しかしないな、」



 探索は進んだ。

 通路で襲ってくる魔物達は、ほとんど八つ当たりのように倒されていった。

 魔石魔物でない魔物などは、この冒険者連隊アライアンスの前には、何の障害にもなっていなかった。だが、別の意味で障害となっていた。


「おい!次は俺達にも戦わせろよ!」

「はぁ?お前達は荷物持ちだろ?何言ってんだよ!」

「おぅ、それは俺達にも言ってんのか?」



 パーティ内の空気が険しくなる。

 皆が不満の憂さ晴らしや、勇者に良いところを見せようと思い、魔物と戦いたい者達ばかりだったのだ。 

 椎名率いるパーティの5人は、あまり協力的では無く、好き勝手やっていたのだ。それは当然荷物運び組は面白くなく。

 

「はっ!レベル80にもなっていない前衛が何言ってんだか、」

「まったくだな、東の冒険者はレベル低いな」

「な、なんだと!?」


 

 前にハーティが、東は魔石魔物狩りに適していないと言っていただけに、東では魔石魔物狩りを行っていないらしく、椎名の連れているパーティメンバーは全員レベルが60台だったのだ。


 ただ、椎名だけは聖剣の加護なのかそれとも他に理由があるのか、奴は【鑑定】を弾くという特性を獲ており、椎名のステータスは覗くことが出来なかった。


  

 自分達よりもレベルの低い奴が前衛として戦っているのが面白くないらしく、ノトス組の冒険者からは不満が噴出していた。

 本来こんな時は、大人が纏めるなりして、場を収めたりするのだが。


「んじゃ~オレは斥候いくわ、」

「アタシも行くよ」



 面倒そうな空気から逃げるガレオスさんとテイシさん。

 流石は熟練冒険者、見事な危機回避能力である。


 ――くっそ、逃げやがって、

 後、この場を収められそうなのは‥



 頼りになる冒険者。レプソルさんに目をやると。


「あ~~、マッピングが忙しいな、あと今日の休憩のローテも考えないとだ‥」

「‥‥」



 俺に話し掛けるなとばかりに、予防線を張られる。

 いきなり詰んでいた。


 ここで俺が出ると余計にややっこしくなるが‥。


「み、皆さん!落ち着きましょう?さっき【宝箱】に空きが少し出来ましたので、また荷物を少し預かれますし。あと戦う人も、順番で仲良く回しましょうね?」


「ああ、女神様がそう言うのであれば、」

「お前等、コトノハ様に苦労かけんな!」

「申し訳ありませんコトノハ様、我々が心配をお掛けしてしまって」



 困窮する俺を見かねて言葉ことのはが、荒れている冒険者達に声をかけて宥めると言う流れが出来上がっていた。



 そして俺は、代わりに矢面に立ってくれた言葉ことのはに、今度は俺が声を掛ける。それを少し嬉しそうに受け答えする彼女。



 俺は鈍感系のつもりは無いので、ある程度は察する。

 言葉ことのはから、ある程度・・・・の好意を感じると。


 ただ、それがどの程度なのか、推し量ることは出来ないが。


 ――これで調子乗って、馴れ馴れしくしたら、

 『は?何言ってんの?』とか言葉ことのはに言われたら凹むな、



 彼女は今回とても協力的であった。

 【宝箱】に詰め込む食料も、他の勇者達よりも協力的であり。

 私物や余計な物はすべて宿の部屋に置いていき。今回の探索の為に、【宝箱】の空きのスペースを多く確保してくれたのだ。


 

 ただ、この彼女の態度が逆に、彼女を慕う冒険者達を苛立たせていた。







            閑話休題(面倒だ、)

 

 




 

 二日目の夜。

 正確の時間は解らないが、交代で睡眠を取る時間である。

 見張りを立て2交代で休憩時に、勇者達だけで話し合いを開始した。


 このままでは探索の進軍に支障がきたすだろうと。

 要は問題となっていた、統括のリーダーを決めようと言うモノだ。

 この問題はレプソルさんからも指摘が出ており、早急に解決して欲しいと言われていた。


 このグダグダは、勇者達が自分達のパーティだけに指示を出す形になっているのが問題であり。誰か1人だけが仕切り、それを他がフォローする形にしないといけないのだ

 

 いままで臨時の冒険者連隊(アライアンス)を組む事はあっても、それを維持して進軍するといった事は今まで無く。その辺りは熟練の冒険者であるガレオスさんも把握していなかったようだ。

 

「で?誰がわたし達のリーダーをやるのよ?あ、陣内は無しね」

「唯ちゃん‥」

「う~ん、一応勇者がやらないと不味いのかなぁ~?」

ゆうしゃ・・・・じゃ駄目だろうね、」


 ――椎名、ゆうしゃゆうしゃって、しつこいなコイツ、

 でも、嫌味くさいけど、普通だな今は・・



 椎名以外の勇者達が関心を持っていた事。

 学校の時と違う面を見せていた椎名。


 この二日間の観察である程度の予測は付いていた。

 明らかに奴らしくない、振る舞いをする時。


 それは戦闘中の時。

 戦闘時はとても好戦的になっていたのだ。まるで取り憑かれているかのように戦い、その後も暫くの間は横柄な態度のままになるのだ。



 もう、誰でも気が付くようなお約束(テンプレ)であった。

 アレは聖剣では無くて、妖刀じゃねぇのか?と――


 だが、聖剣を握っていない時はいつもの椎名であり、彼が。


「よし、真の勇者であるボクがリーダーやるよ!」


 こう言われ、なし崩し的に椎名がリーダーとなった。

 ただ、今のパーティ状態でリーダーをやるというのは案外大変であり、少なくとも一部の不満は奴に集中するので、苦労してしまえという気持ちもあった。


「あの、ご主人様、何かあまり宜しくない、悪い顔してますよ?」

「いや、ちょっと苦労してしまえって思っててな」


「あの、それはそれで、いえ何でも無いです」



 俺は椎名に人間関係で苦労しやがれ、と言う気持ちで奴を見つめる。

 出来れば、これで奴の勇者としての株が下がればイイな~と考えながら‥。



 こうして俺達は深淵迷宮(ディープダンジョン)生活三日目を迎える事となった。ただ‥


 ――俺はいったい何と戦ってんだろ、

 いつも魔王とは関係ないモノと戦ってばかりだな、



読んで頂きありがとう御座います。

ブクマも700が見えてきており、これを励みにさせて貰っています。


宜しければ、序に感想なども頂けましたら、幸いです。

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