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バレタイン

リクエストにあった閑話的なお話です、

細かい突っ込みは無しで、、

 順調に魔石魔物狩りは進んだ。


 そしてパーティ参加者にも変化が表れてきた。

 最初は巨大魔石の稼ぎに釣られてくるのが殆どであったが。最近は――


 経験値目的の者も増えてきたのだ。


 元々、魔石魔物狩りでも経験値が圧倒的に稼げるのだ。だが、それに勇者の恩恵ギフトの効果が重なり、もっと経験値が獲られるのだから、それに気付いた冒険者達が殺到したのだ。


 もしパーティ編成を行うのが俺であったら、きっと処理仕切れなかったのだが、そこはミズチさんとレプソルさんが仕切ってくれたので、問題なく回ることが出来た。


 特にレプソルさんは、【指揮】持ちの為か。18人を超えるメンバーであっても、苦も無く仕切っていったのであった。


 その活躍はまさに。

 俺に心の中で、赤城の上位互換と認識されているだけの事はあった。 



 今の俺達は、アムさんに言わせると”春風満々”と言った感じらしい。


 その意味は、春が訪れ暖かく過ごし易い日々という意味だ。

 どうやら、歴代勇者の言葉らしいのだが‥



 そして現在、春風満々な俺は休日を食堂で満喫していた。

 ノトス地方の方では、三日ごとに休日を設けるらしい。働き詰めは逆に効率が落ちると言うのだ。


 この異世界では、100年ごとに勇者がやって来るので、意外と現代知識などが浸透している。


 俺も最初は現代知識でチート出来ないか?と考えもしたのだが。普通の高校生程度の知識はすでに浸透しており、現代知識で無双は夢と消えた。





「う~ん、やっぱゲームと同じ部分が多いな‥」   

「やっぱりそうでしたか、」



 俺の前には、ハーティさんが座っていた。

 昨日ハーティ達、三雲組がノトスにやって来たのだ。


 彼等もルリガミンの町の変わりように違和感を感じ。そして北のボレアス支配下に入った事を知り、身の危険を感じて西に向かったらしい。其処で小山から俺がノトスにいる事を聞いてノトスにやって来たと言うのだ。


 現在俺達は、ゲームとこの異世界の共通点や、それをすり合わせた意見交換を交わしていた。


 俺からは狼男の件や、白いケーキ野郎の魔物を操る能力などをハーティに話し。そしてそれを聞いたハーティから、ゲームに類似している部分を聞いていた。


「ゲームだと白い奴、確かハクタイサイとか言う奴だったかな、そいつは近くの魔物に力を分け与えて、特殊攻撃を連発させていたね」

「あ~、狼がブレス吐いてたな、アレがそれか、」


「狼男は普通に眷属召喚だったかな?」

「それで魔石からすぐに湧いたのか、」



 暫くハーティとの話し合いが続く。

 本来ならこの場に、レプソルさんも参加して欲しいのだが。転生やゲームの事を説明し切れないと思い、今回はハーティと2人だけで話し合っている。 


 その時に、ふと俺は思いつく事があった。


「そういえばハーティさん」

「うん?なんだい陣内君」


「ハーティさん以外にも転生者っていないんですか?」

「ああ‥‥、居たよ、」


 ――やっぱ居たんだ、

 って居たよ、って事は‥



「2人居たんだが、両方死んだんだ。1人は貴族に逆らって処刑、もう一人はゲームをやっていたみたいで、『転生でチートで無双する』って言いながら冒険者やってて、呆気なく死んだよ」

「‥‥‥」

  

 ――もしかして、

 その2人が、ハーティさんに取って反面教師になったのかもな、



 彼は勇者と一緒にいるのに貴族から距離を取り、魔石魔物狩りでも手堅い(リスクの少ない)冒険(敵選び)をしている。俺はハーティさんにそう感じた。


 しんみりとした空気が俺とハーティさんの間に流れる。

 だが突然、何かを思い出したかのようにハーティさんが口を開く。


「あ!そういやちょっと面白い話を思い出した」

「へ?」


『転生した奴って、俺も含めてトラックに轢かれてるんだよね、トラックに轢かれて気付いたら転生してたって言ってたな」

「おお‥、この異世界への転生条件かまさかのトラックか、」


 ――ってホントかよ!

 でもそれを確かめる手段ないし、

 それと否定出来る根拠も無いな、何気にありそうだし、



 話が脱線気味に、あまり関係の事をハーティさんと話していると。


「――ドガドガゴーンンゥゥ――」



 突然何かが崩れる衝撃音と、街の住人の悲鳴が聞こえて来たのだ。


「なんだ!?」

「何か起きたみたいだね陣内君」



 そしてその騒ぎに関係するであろう、大声が聞こえてくる。


「大変だー!茶色いイワオトコが街に湧いたぞー!」

「なんだか甘い異臭を放っているぞ!誰か冒険者を呼んでこいー!」

「茶色いのが凄い速さで中央に向かったぞ!」



 食堂で座っていた俺達に、外の声が聞こえて来る。

 その会話の内容から、どうやら魔物のイワオトコが湧いた様子だ。


「街に湧いた?近くに深淵迷宮(ディープダンジョン)があるのに、」

「まさか、」



 本来魔物は、深淵迷宮(ディープダンジョン)に湧くようにと、初代勇者の仲間(精神)に制御されているはずなのだ。


 深淵迷宮(ディープダンジョン)から離れて場所なら地上に湧くだろうが、深淵迷宮(ディープダンジョン)は近くにあるのだ。それなのに、街に湧くというのは異常事態なのだ。


 だが。


「茶色?街に湧く?速い‥、まさか、」

「ハーティさん、何か知ってるんですか?」



 俺は様子のおかしいハーティに問い詰める。

 彼は何かを知っているのに、それを無理に否定しようとしているように見えた。


「いや、時期的にそうなのか?それだとしたら、」

「それだとしたら?」



 ハーティさんは何かを決意し、そして覚悟した様子で俺に語りかける。


「ああ、バレタインオトコだ‥」

「へ?」


「ゲームの時にイベントとしてあったんだよ、運営が試験的に行った奴で、街中を茶色のイワオトコが疾走して、それを倒すとハート型のチョコが出たらしいんだ」

「ああ、よくありますね、その手のイベントってゲームとかに、」


「それで当時は、倒した後にドロップするチョコを異性に渡すと、両思いになれる効果があるとか、アホみたいな噂が流れて、お祭り騒ぎだったんだよ‥」

「アホか‥」


 俺は思わず、素直な感想を呟いた。

 だが、隣のテーブルでは別の感想を呟いている者達がいた。


「そのチョコ、ちょっと興味あるかな、」

「‥‥両思いになれるチョコですか‥そうですか、」



 横のテーブルには、勇者であり聖女と崇められている葉月(はづき)と女神と囁かれている言葉ことのはが謎の同席をしていたのだ。


「お前等、何を?」


 2人は何かを呟いていた。

 葉月(はづき)も昨日、このノトスにやって来ていたのだ。



 そして外では伝令役なのか、複数の男達が叫びまわっていた。


「緊急依頼!緊急依頼!冒険者に街からの魔物討伐を要請します」

「街に現れた魔物の討伐を要請します!」

「緊急!緊急!街からの――」



 どうやら冒険者相手に、街に湧いた魔物の討伐を手当たり次第要請してる様子であった。何人もの男達が、走り回りながら叫んでいく。


 だが現在俺は、アムさんに雇われている状況なのだ。なので勝手に要請に応じる訳にはいかない。一応は街からの要請なのだろうから、受けても平気だとは思うのだが。


 ――行った方がいいのかな、

 でも、何処にいるのか探しにいくものなぁ、

 街にいる冒険者も多いし、何とかなんだろ、



 俺は正直乗り気になれなかった。

 聞こえて来る話も、ただ魔物が走り回っているだけで、人は襲っていない様子だ。

 特に今日は、俺達陣内組は休日なので、レベル50を超える冒険者達が、複数街にで休日を楽しんでいるのだ。


 誰かが倒すだろうと思っていると。


「私、倒しに行ってこようかな」

「えっと、私も倒しに行ってきます‥」

「へ?」



 何故か後衛役の葉月(はづき)言葉ことのはが行く気になっていたのだ。

 そしてそれが伝染でもしたかのように。


「そうだね~私も行ってほうがいいね大変そうだし、サリオちゃんとラティちゃんはどうするの?」



 今度は我がパーティの後衛役、ミズチさんまで参加しようとし始めたのだ。


「あうぅぅ、あたしの魔法だと速い相手には当たらないのです‥」

「あの、わたしは、」



 ――うん?サリオもラティは消極的かな?

 でも、一応は街を守る為に行ったほういいのかな、

 どうしよ――


「あの、わたしはチョコにはちょっと惹かれますねぇ、確か手の平ぐらいの大きさで金貨1枚もする食品ですよねぇ?チョコって」


 ――あ、そっか、

 この異世界ではチョコは貴重品なのか、


「昔、チョコは大変美味しいと聞いた事がありますが、高くて手が届かないですけど、一度は食してみたいですねぇ、」

「よし、行くぞチョコ狩りだ!」


「ええっ!陣内君なんでチョコを?え?なんで‥」

「えっと陣内君もチョコを欲しいのですか?」



 俺の発言に何故か反応する葉月(はづき)言葉ことのは

 だが、今の俺はそれを無視して真っ先にチョコ狩りへ向かう。

 

 それは誰かに先に魔物が討伐されてチョコを取られると困るからだ。何故なら、ラティがチョコを食べてみたいと言ったのだから。


 チョコを狩りに行かない理由が無いのだ。



 そして俺を追う様に各々が街へと駆け出した。








             閑話休題(狩りの時間だ)








 その日、ノトスの街の住人は、魔物が街に湧くという事態に恐怖した。

 安全だと思われていた場所に魔物が湧いたのだから当然である。だが、それとは別で恐ろしい事態が発生していた。



 勇者であり、聖女様と呼ばれている葉月(はづき)様が、光の槌を天空から降り注がせて魔物を追い。


 勇者であり、女神様と噂されている言葉ことのは様が、光る杭を空より降らせ魔物を追い。


 この地に、偶然にも集まっていた4人の勇者様達が、血眼になって魔物を追い立てていたのだ。それは見る者をドン引きさせるような光景であった。



 そして最後には、魔物を10人で囲み討伐し、黒い霧へ・・・・と変えたのだ。



 だが何故か、その場にいた者すべてが、膝から崩れ落ちていた。


 『そりゃそうだ、黒い霧になるよな‥』と、呟きながら――


読んで頂きありがとう御座います。


誤字脱字などありましたら、コメント頂けると嬉しいです!

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