⑤
「相変わらず嫌味な男ね……良いわ、引き受けましょう。但し、高くつくわよ」
「オレとお前の仲だ、少しは負けろよ」
ミッテの吹っ掛けに、クライスは意味有り気に答えた。
「冗談でしょ。仕事は仕事よ。1ルッツも負けないわよ」
ミッテはあっさりとクライスの冗談を撥ね除けた。
それを聞いたクライスは、やれやれ、と呟いた。だが、毅然として。
「なら、報酬は内容で決めさせて貰う」
と言った。
「チッ、手厳しいのも相変わらずね」
「当然だろう? そこらで買える様な内容だったら、お前に頼む意味は無いからな」
お前に頼むから意味が有るのだと、言わんばかりである。
それだけクライスはミッテの情報を当てにしているのだろう。
そこまで言われては、ミッテとしても言い返せない。
判ったわ、と答えると木の枝へと飛び上がった。
「情報が集まったら、いつもの様にミーツェに届けさせるわ」
それだけ言い残し、ミッテは木々から木々へと飛び移りながら去って行った。
暫く木々の枝や葉とミッテが擦れ合う、ガサガサと言う音が聞こえていたが、次第に聞こえなくなった。
完全に聞こえなくなると、それまで大人しく見ていたモーザが口を開く。
「……3C」
「何だ?」
「ミッテなんかに調べさせてどーすんだ?」
モーザは怪訝そうに尋ねると、クライスはフッと笑いモーザを見る。
「お前が最初にアイツを変な魔力だと言ったんだぞ?」
ニヤニヤと笑うクライス。その眼は何やら輝いている様に見えた。
「……興味持ったって事か?」
「持たない訳が無いだろ? あんな……光と闇が混在している様な魔力、滅多に居ない。実に面白そうじゃないか」
まるで新しい玩具を手にした子供の様に、直ぐにでもハシャギ出しそうな顔だ。
そんなクライスを前に、自分が射落とした名前も知らない彼女にモーザは同情を禁じ得なかった。
それは、モーザがクライスの性格をよく知っているからに他ならない。
(あの子、可哀相だなぁ……クライスに眼を付けられるなんて)
ぼんやりと考えていると。
「モーザ。お前、アイツにちょっかい出すなよ? アレは、オレの獲物だ」
クライスが真剣な眼差しでモーザに迫る。
「わ、わかっているって……3Cの獲物に手を出す程アホじゃない」
そうか、そこまでアホじゃなかったか。と笑うクライスだった。