日常風景
二次元でよくある風景に、可愛い妹や同い年の幼馴染が朝起こしてくれる…なんて現実で起こるはずのない誰しもが一度は夢見る出来事があるだろう。
俺もそんな夢見たことがある平凡な。平凡な男子高校生だ。
さて、なぜ今そんなことを考えているのかというと、いま俺は耳元で「兄さん…起きてください兄さん」と呼びかけられていることに問題がある。
そこまでは良しとしても、瞼を開いたときに見えたあの銀色に輝く手錠はいったい何なのか。怖かったのですぐに瞼を閉じたが。
そんなことを考えていると、俺を呼びかける言葉に変化が生じた。
「…起きませんか。なら、強硬手段に移りましょう」
なんだろう。とてつもなく嫌な予感がした。
「起きない兄さんが悪いんですよ?でも大丈夫ですよ。私のものになってくれるなら、いくらでも寝ていてもいいのですから…ね、兄さん」
ふふふ、と笑い声が聞こえる。
そして、俺の手首にひんやりと冷たい鉄のようなものが触れたのもそんな時だった。
「…って待て!」
とてつもない嫌な予感に、瞬時に体を起こしてすぐに見えた細く白い腕をつかんだ。
「おはようございます兄さん」
「おはよう桜。なぜ残念そうにしているのかは聞かないが、何をしようとしていたのかを聞こうか?」
優しく問いかけてみると、桜色の淡い髪色と同じ名前の少女は「何って…」と自らが手にする手錠をくるくると回しながら答えた。
「軟禁。もしくは監禁しようか、と思いつきまして」
「なぜそんなことを思いついたのか小一時間問い詰めたいが、聞かなかったことにしよう」