表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

0:三千世界への誘い(改定後)

 最近の流行に感化され筆を執りました。見切り発車感が否めないので、御目汚しになるかと思いますが生暖かい目で見てあげてください。暇つぶしの種になれば御の字です。物書き初心者の作者の駄文ですがよろしくお願いします。^^;

 『ログアウトできません。』


 何度見直しても、無機質で簡素な文字で表示されたままだった。

 何が起こったのかと混乱する自分と、どこか冷めた風にテンプレ乙と苦笑する自分がいる。

 

 嗚呼、つまり今この身に何が起こっているのかといえば簡単なことだ。


 『ログアウトできません。』

 

 この一言に尽きる。




 西暦も2000年を超えて結構たつと技術もそれなりに進むもので、過去において想像の産物であったものが現実に生活の中でちらほら見受けられるようになってきていた。


 電車はリニアに。


 電話は空中に相手がホログラムで映り会話できるように。


 宇宙旅行もいまだに高額だが、一般庶民でも手が出ないことは無くなり。


 VR世界でショッピングを楽しむこともできる。


 そういった技術の革新は、様々な分野で応用され広がっていった。


 娯楽の分野でもそれは多分にもれず、VR技術はゲーム業界において飛躍的な進化を促していた。


 過去ゲーム機といえば、据え置きでTVなどの映像機器に接続するか、個人携帯できる小型のものであった。しかし、VR技術が進むことでゲームはさらにその先へと進み、仮想世界の中に入り自分の体を動かす感覚で動かすことができるようになっていった。


 無論、昔ながらのゲーム機も最新技術が用いられたものが数多く存在する。どちらかといえばそちらのほうがいまだ主流だ。VR技術を用いたゲームは基本的にR15指定以上であるものが多い。15歳以下の場合、脳の発育不足からもろもろの負担負荷がかかること考慮して安全面が心配されているからである。実際のところはそこまで危険はないと実証されているのだが、PTAやら教育委員会などからのクレームや疑問の訴えの嵐が殺到したことがあった話は万人が知ることであった。


 当初、大手メーカーがゴルフやボウリングなどといったスポーツ関連のゲームをメインに発売していた。そういったものが、一番VR技術と愛称が良かったこともあったが、既存のゲームにおいてVR技術と結びつける利点があるものが少なかったということもあった。


 そんな中、とある有名MMORPGを運営する会社がVR技術の導入を大々的に発表するという事が起こる。その会社は、今までのMMORPGのノウハウとVR技術の新たな可能性を作り上げることを目標に、莫大な資金と年月を投じついに最新のVRMMORPGを作り上げた。


 その名は『三千世界物語アンリミテッド・ストーリー』。


 数多の世界が連なるように存在する多元世界を舞台とした、SF&ファンタジーMMORPGである。


 クローズドβには国内のみならず世界各国から億を越える応募があったとも言われ、まさに全世界規模で注目されていた。各種メディアにも連日取り上げられ、TVを視聴している人ならば日に何度もそのCMを見ることになっていたはずだ。


 そしてついに訪れるプレオープンβ。


 この1週間後にオープンβ、さらに4週間後に正式サービスが開始される予定であった。


 クローズドβの際の応募のようにあまりにも多く、それ以上のログインが予想されていたため、プレオープンβを行い人数も10万人という限られた枠が用意されたのも仕方が無い事だと言えよう。


 その10万人のうちの一枠に滑り込めた俺は、その信じがたい幸運に変な奇声を上げてわけも分からぬ踊りを踊ってしまったほどだった。その現場を母親に遠い目で見られていたのは、忘れることにした。しかし、それほどにこの一枠は狭き門であったのだ。奇行に走ってしまったのが俺一人だけということはないと思う。うん、絶対に他にもいるはずだ。


 公式HPやクローズドβの参加者のレビューや解析記事などを読み漁り、今か今かとその日を待ち続けてついにそのときはやってきた。


 忘れもしない、それは夏季休暇に入って間もない8月の初日。


 午後0時。


 VRにダイブする、眩暈のような感覚と酩酊感。


 数瞬後目を開ければそこは光差す神殿であった。


 正確にはその前にある広大な広場。


 そこには今回のオープンβに当選した、つい(・・)ているプレイヤーたちがひしめき合っていた。


 ここにはログインしたプレイヤーの4分の1ほどが集まっているそうだ。同じものが他にも3か所あり、ランダムで振り分けられるらしい。


 公式HPの発表でまずはオープニングセレモニーとともに簡易チュートリアルやくじ引き大会などの各種イベントを行い、その後事前に各自が設定した自らの分身であるキャラクターへという流れになっているらしい。


 早くしろ、という声もちらほら聞こえるがここでしか手に入らないアイテムも多数あるということで、おとなしくしているものが大半であった。


 唐突に、今まで快晴で青一色だった空が暗転する。


 そして、数多の光の花が擬似的な夜空に咲いた。


 「みなさま、長らくお待たせいたしました! 最新の技術の粋を結集し、全世界が待ち望んだVRMMORPG『三千世界物語アンリミテッド・ストーリー(以降US)』のプレオープンβ開始を記念した、オープニングセレモニーの開幕です!」


 多くの者が司会者の写る近場のモニターを見ている中、思わず見とれていた夜空に一瞬のノイズが走る。


 「それでは、まず初めにこの『U  Sアンリミテッド・ストーリー』を作り上げた……。」


 思わず目をこすり再び夜空を凝視するが、そこには先ほどと変わらない夜空と大輪の花火。


 周りを見回すが、誰もが進行していくセレモニーに夢中であった。


 首をひねる。


 きっと、何かの見間違いだろう。


 これだけ人がいるのだから、何か知らの負荷がかかったのかもしれない。


 それ以上深く考えることをやめて、周りの人々と同じように意識を今なお長々と開発秘話を熱く語る社長の方へと向ける。


 セレモニーはつつがなく進行していく。


 各社方面からの祝辞。


 簡単なメニュー操作や、この後のゲーム開始に際する説明。


 立体映像を用いて作られた、この世界の物語(歴史と伝説)


 ここまで来ると、参加者の盛り上がりもかなりのもので、お祭り騒ぎである。


 そして、オープンβ限定のイベントであるくじ引き大会へと突入するともはや耳が痛くなるほどの歓声が上がった。


 くじ引きは一人につき一回、目の前に現れるおみくじアイコンをタッチし開封するだけの簡単な作業であった。


 そこかしこから、歓喜と落胆の声が聞こえてくる。


 このくじ引きは公式HPの告知によると、消費系アイテムセット(参加賞)・ゲーム内通貨(金額はランダム)・装備品1点(ここでしか手に入らないものもあるという)の3つが手に入るというもので、何が手に入るかはおみくじの名が示すとおり運次第であるらしい。


 多分にもれず俺も眼前に表示された『《おみくじ・オープンβ記念》を開封しますがよろしいでしょうか? OK/NO』の、もちろんOKを選択し触れる。


 ポップな感じのシステム音とともに、手に入ったものの一覧が表示される。


 ちなみに、現実世界において俺はおみくじを毎年元旦に近所の神社で引いているがその結果が散々なのは悲しい事実なわけで、はっきり言ってこれっぽっちも期待はしていない。


 道を歩けば迷い、財布を落とし、バスは眼前で出発し。


 学校ではテストの時間割を間違え、解答欄が一つずれ、途中で謎の腹痛が起こり。


 初恋は2分で破れ、告白する5分前に事故にあい、せっかくできた彼女は5日で転校しその転校先で新たな男が一月ででき振られた。


 何が言いたいかって、俺はとことんついてない人間だってことだ。


 当社比で2倍くらいは他の人よりも不幸に見舞われているはずだ。


 そんな俺だからこそ、目の前に表示されたそれを信じることができずにいた。


 『新しいアイテムを入手しました!


  《NEW!》オープンβ参加記念アイテムセット(内容:HP回復薬Ⅰ×100、MP回復薬Ⅰ×50、ST回復薬Ⅰ×50、万能薬Ⅰ×10、騎士の護符Ⅰ×10、術師の護符Ⅰ×10、狩人の護符Ⅰ×10、ラッキージュエル×5、吸魂の書Ⅰ×5、環魂(リザレクト)の書×5、解魂(アナライズ)の書Ⅰ×10、マジカルキー・銅×10、魔除けの聖水×5、おみくじ・^-^v×5)


  《NEW!》50000000000J


  《NEW!》未解析:長い木の棒                              』


 は?


 おk、落ち着こう、クールだ、クールに行こうぜ、俺。もしかしたら、また見間違えたのかもしれない。


 目を閉じて~、ゆっくり息を~、吸って~、吐いて~。


 それを3回繰り返し、目をゆっくり開けてログを確認。


 『新しいアイテムを入手しました!


  《NEW!》オープンβ参加記念アイテムセット(内容:HP回復薬Ⅰ×100、MP回復薬Ⅰ×50、ST回 復薬Ⅰ×50、万能薬Ⅰ×10、騎士の護符Ⅰ×10、術師の護符Ⅰ×10、狩人の護符Ⅰ×10、ラッキ ージュエル×5、吸魂の書Ⅰ×10、環魂(リザレクト)の書×5、解魂(アナライズ)の書×5、マジカルキー・銅×10、魔除けの 聖水×5、おみくじ・^-^v×5)



  《NEW!》50000000000J


  《NEW!》未解析:長い木の棒                              』

 

 おーまいごっど、変わってね~。


 あ、もしかしてこのゲームの通貨価値ってこのくらいが普通なのかもしれな……

 

 「くそ! 500Jぽっちかよ!」

 

 「へへっ、オレ7000Jも入ってたぜ!」

 

 「HPPOT一番安いのでも1個200Jするって言うからかなり得してるよね、このアイテムセット。」

 

 「これで予定してた装備一式何とか揃いそうや!」

 

 「誰か、手持ちの術師護符出せる方いませんかー? 1枚500Jほどで買い取り希望です!」

 

 「ちょwwwレザースカートってwww男のモレにどうしろとwww」

 

 「ワロタwww」

 

 「女装乙www」

 

 「このあと有志50名ほどでじゃんけん大会やりまーす! 参加費は1000Jで1位20000J、2位10000J、 3位5000J、参加賞はHPPOT1個です! 場所は……」

 

 ……そんなわけないですよねー。


 俺はそっとログを閉じると、ため息を一つつく。


 落ちつかねェ……。


 本来ならば飛び上がって喜ぶところなのだろうが、やけに冷静な自分がいる。

 何だこのもやもやした気分は?


 嫌な……、嫌な予感がする……。


 ザザッ……。


 どこかでまたノイズが走った気がした。


 嗚呼、兎にも角にも現実世界であろうとVRの世界であろうと俺はついていないのだろう。


 ザザッ……ザザッザザザザザーーーッ!


 突然の異変に周囲のざわめきが驚愕のものへと変わった。


 目の前には灰色の砂嵐。


 ノイズの不快な音が耳朶を打つ。


 そしてテレビの電源を落とした直後のように、ぶっつりと俺の意識は堕ちたのだった……。











 

 ~~~♪


 軽やかな音色とともに誰のものとも知れないウィンドウにログが流れる。


 『《NEW!》クエストが更新されました。


 全てのプレイヤーに新たにストーリークエスト【旅立ちの朝】が追加されました。


 全てのプレイヤーはログアウト不可になりました。


 全てのプレイヤーの感覚抑制プログラムは一部解除されました。


 全てのプレイヤーはそれぞれのPCの元への転送・憑依が完了されました。


 全てのプレイヤーの意識断絶を解除します。


 それでは良い旅を。


 良い冒険を。


 良い生を。


 三千世界の加護を……。                            』


 


 

 


 


   


 

 主人公はついてないひとです。の〇太(通常時・映画補正無し)くらいついてない人生を送ってきました。〇条さんはついていないというか、フラグホイホイでそれに係わった人を見捨てることができずに突っ込んでいく熱血漢な人と解釈しております。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ