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カワイイヒト  作者: リオ
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3/10

第二話【失恋!?】


 凄く気に入って買ったピンクのワンピース。

 厚手の生地の裾に、白いレース、そのレースには、小振りなリボンがあちこちに結ばれている。

 ホットカーラーで髪にウェーブを作って、白のジャケットを羽織り、私は家を出る。

 いつもの通学路。

 でも、いつもと違って薔薇色に見えた。

 もうすぐ、景都さんのマンション。

 ドキドキする胸に手をあてて、深呼吸して前に進む。

 マンションが目に入ると、下に景都さんが立ってるのが見えた。

「あ……っ」

 二回目だ。

 窓からじゃない、景都さん。

 私に気付いて手を振ってる。

 私は嬉しくて、景都さんの元へ駆け寄った。

「こ、こんにちは……」

「こんにちは。わぁ、今日凄く可愛いね」

「う……ありがとう、ございます……」

 満面の笑みで、可愛いとか言われて。

 顔に血が逆流しそうになるのを、グッと堪えた。

 だって、また赤くなって恥ずかしがったりしたら、景都さんとちゃんとお話し、出来ないし。

 今日は、頑張るって決めたんだから。

「どうぞ。上がって」

「あ、お邪魔します」

 でも、今日、何をするんだろう?

 ちょっと付き合って、としか言われてないし。

 もしかして……なんて馬鹿な期待はしない様に、用意されたスリッパを履いた。

 室内は、凄く綺麗に片付けられていて。

 思わずキョロキョロと見渡してしまう。

 部屋中、この前微かに香った景都さんの匂いが支配していて。

 知らず知らずのうちに、顔が綻んだ。

「どうぞ座って」

「え! あ、はい……!」

 キッチンで紅茶を入れてくれていた景都さん。

 後ろから声をかけられたから、ニヤケた顔を見られなくて良かった……。

 ホッと胸を撫で下ろし、リビングにあるソファーに座った。

 カチャっと私の目の前にティーカップを置き、景都さんも私と対面する様に腰を下ろした。

 景都さんは、コーヒーを飲んでるみたい。

 伏せた瞳に、長い睫が映えて。

 私は、食い入る様に見つめてた。

「……エナちゃん」

「はいぃ!?」

 バレた!? 見てたのバレたの!?

 一人パニックになり、挙動不審になる私の手を、突然、景都さんが握り締める。

 ドクンと、心臓が跳ねた。

「景都さ……」

「お願いがあるんだ」

「……お願い?」

 ちょっと、ガッカリ。

 手、握られて、やっぱり馬鹿な期待しちゃって。

 そのガッカリを振り払い、私は景都さんを見る。

 不意に、真剣な眼差しとぶつかった。

「お願いって……何ですか……?」

「……脱いで欲しい」

 …………。

 はい? 私、耳がおかしくなったのかしら。

「ちょ……ちょっと聞こえなかったみたい」

「脱いで欲しいんだ」

 ――……。

 脱いで……欲しいとは? 脱いで……脱い……。

「はい!?」

「ごめんね! でも、一生のお願い!」

 両手を合わせて拝まれて。

 そんなことされても、いきなり脱いでくれって言われてもワケ分かんないよぉ!

「あの、何で……」

 クラクラと目眩を起こす頭を庇い、私は額に手をあてる。

 そんな私を見て、景都さんはポツリポツリと語り始めた。

「コンクールが近づいてて……。被写体をずっと探してたんだけど……」

 話しながら、景都さんは本当に申し訳なさそうな視線を私に向ける。

 追い詰められている様にも感じられた。

「構想は固まってるんだ。その絵にピッタリなモデルは、エナちゃんしかいなくて……」

 どんな形であれ、私は、好きになった人から求められてる。

 応えてあげたい。

 でも……。

 でも! ヌードなんでしょお!?

「コ、コンクールに出す絵なんですから、私なんかやめた方が…」

「君じゃなきゃ駄目なんだ! 三ヶ月前、初めて君を見た時から、この絵の構想を練ってたんだ!」

 少し、驚いた。

 いつも太陽みたいな可愛い笑顔の景都さんが、眉間に皺を寄せて、こんなに真剣に声を張り上げて。

「頭の中のイメージは、君なんだ……」

「でも、裸を男性に……なんて……」

 いくら好きな人でも、いきなり裸を見せるなんて、流石に出来ないよ……。

「――エナちゃん、大丈夫だよ」

「……え?」

 顔を上げると、景都さんは何故かニッコリと微笑んでいた。

「私、女の子には興味ないから」

 ニコニコ笑いながら、景都さんが発した言葉。

 耳を疑った。

 脱いでくれって言われた時よりも。

 私の頬を、冷や汗が伝う。

「そ……それってつまり……」

「うん、ゲイなのよ私ぃ」

「げ!?」

 ゲイ……?

 私が好きになった人は……ゲイ!!

「嘘ぉ!!」

「ほんとぉ」

 全く曇りのない笑顔。

 本当なの? 本当に頭痛くなって、目が回って。

 思考が、纏まらない。

「心は女だから、心配することないの。だから……お願い」

 そっ、そんな女みたいな色仕掛けを! ああ、でも、もうどうでもいいやぁ……。

「分かりました……」

「きゃー!! エナちゃんありがとう!」

 抱きつかれて、ぎゅうってされて。

 本当なら嬉しい行為なのに、ジワッと涙が滲んだ。

 好きだって気付いて、すぐ失恋。

 私の初恋の相手は、ゲイでした……。

 うう、最低。

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