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劣勢の戦場で敵将を討ち取った俺、気づけば公の右腕にされた件  作者: 塩野さち


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第77話 ダリウスの国境にて【ダリウス王国戦役】

【コルネリア王国元騎士団長ソフィア視点】


『アヴァロン帝国暦2年 3月中旬 ダリウス小王国国境付近 晴れ』


 馬の蹄が、乾いた大地を一定のリズムで叩いている。

 かつてコルネリア王国で騎士団長を務めていた私、ソフィアは、今は一介の将としてグレン公の指揮下に入っていた。


 国を失い、行く当てもなかった私を拾ってくれた恩は、戦場での働きで返すしかない。

 ありがたいことに、グレン公は私に部下を付けてくれた。

 たった二人ではあるが、私にとっては守るべき、そして信頼すべき新たな仲間だ。


「ソフィア様、そろそろ休憩にしませんか? お腹が空いて、馬から落ちそうです」


 背後から、少し幼さの残る声が響いた。

 声をかけてきたのは、少年兵のレオナ。

 もう一人の部下である女兵士のマリエルが、呆れたようにレオナの頭を軽く叩いた。


「レオナ、あんたは食べることばっかりね。ソフィア様の足並みを乱すんじゃないわよ」


「だって、マリエルだってさっきお腹鳴ってたじゃないか」


「私は……あれは、その、気合の音よ!」


 微笑ましいやり取りに、私はわずかに口元を緩めた。

 聞けば、二人は幼馴染で、飢えを凌ぐために兵になったのだという。

 グレン公のところへ来れば腹いっぱい食える。そんな切実な理由で槍を握った彼らの境遇を思うと、胸が締め付けられる思いだった。


(私も似たようなものかもしれないな……)


 守るべき主君を失い、ただ生きる場所を求めて流れ着いた。

 だが、この場所には確かな活気がある。

 雑兵から成り上がったグレン公の瞳には、かつての貴族たちが持っていなかった、泥臭くも力強い意志が宿っていた。


◆◇◆


 目的地は、東方に位置するダリウス小王国。

 小王国とは名ばかりで、その実力は侮れない。

 伝え聞くところによれば、総兵数は数万に及ぶという。


 さらに不気味なのは、この大陸を蝕んだ『黒死の病』の影響が少ないという噂だ。

 病による混乱がないということは、軍の統制が完全に保たれていることを意味する。


(下手をすれば、アヴァロン帝国と互角の戦力……)


 そんな強国に対し、我らがヴァルゼン公軍――今はカール皇帝と称されているが――は、常に寡兵で挑み続けてきた。

 数倍の敵を打ち破ってきたという、あの不敵な主君たちだ。

 戦力が互角であるならば、彼らにとっては「絶好の好条件」とすら考えているのかもしれない。


「ソフィア様、あそこ……。ダリウスの見張り台が見えてきました」


 マリエルが鋭い視線を前方に向けた。

 地平線の向こう、簡素な木製の見張り台が陽光を浴びてそびえ立っている。

 あれが、戦いの火蓋が切られる場所となるのだろう。


「気を引き締めなさい。ここから先は、敵の目がどこにあるか分からないわ」


「「はっ!」」


 二人の返事が、春の風に乗って力強く響いた。

 かつての誇りを胸に、私は再び戦乱の渦中へと足を踏み入れる。

 グレン公の「右腕」の一端を担う者として、その名に恥じぬ働きをしてみせよう。


 私たちは、一気に馬を駆けさせた。

 ダリウスの国境、そこには何が待ち受けているのだろうか?


 おそらく、敵だろう。


 私は不安を、干し肉と共にかみちぎり、革袋の水で、のどへ流し込んだ。


 空は、薄暗く曇ってきたが、雨はが降る気配はなかった。

 ただ、風が冷たいのが不気味であった。


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