第13話 グレンフィルトで、秋に麦をまきはじめる! ついでに商人の税!
『ヴァルゼン公家暦10年 10月上旬 グレンフィルト郊外の村々 晴れ』
【雑兵上がり男爵グレン視点】
疫病の爪痕がようやく癒え始めたグレンフィルト郊外の村々に、ようやく活気が戻ってきた。
黄金色の収穫ではない。来年の夏に向けた、秋蒔きの麦だ。俺は、恒久的な財源を確保するため、領内の村々を巡回していた。
「男爵様! どうかこれを!」
「おお、悪いな」
俺は差し出された水を受け取り、額の汗を拭う。領主自らが土に触れる姿が珍しいのか、村人たちも以前よりずっと協力的になってくれていた。
(とほほ、来年の夏の収穫までは、民の食べ物は俺持ちか……。だが、これが未来の財源になるんだ。ガマン、ガマン)
とはいえ、目下の食料は待ってくれない。俺は結局、金勘定係の商人レオ――つまり、ダリオ商会の事務所の扉を叩くことになった。またしても、借金の申し込みだ。
だが、レオの返事は、意外にもあっさりしたものだった。
「食料の買い付け費用、ですか。承知いたしました。すぐに手配しましょう」
「いいのか? いつもすまないな」
「いえ、借金するも何も、グレン様はいつまで商会や商人から税を徴収されないおつもりで?」
「え?」
「このグレンフィルトが今、これほど発展しているのは、事実上の『無税、つまりタックスフリー』状態だからですよ。正直、いつまでこの大盤振る舞いを続けられるのかと、こちらが心配しておりました」
税。
言われてみれば、俺は領主でありながら、商人たちから一銭も金を取っていなかった。
「うーん、そうか……。よし、そろそろ少し貰うかな……」
俺は早速、街で商売を営む主だった商人たちを、急ごしらえの広間に集めた。
俺が新たな税について切り出すと、商人たちの間に、緊張が走る。誰もが固唾を呑んで、俺の次の言葉を待っていた。
「皆の協力のおかげで、街はここまで発展した。だが、さらなる発展と、街の守りを固めるためにも、今日から税を徴収させてもらうことにした。税は……売り上げの一割、だ!」
その瞬間、商人たちは顔を見合わせ、やがてあちこちから安堵のため息が漏れ始めた。
「一割……? たったの一割で、よろしいのですか?」
「これなら余裕だ。まだまだグレンフィルトで商売を続けられるぞ!」
「グレン男爵万歳!」
予想外の反応に、今度は俺が驚く番だった。
「へっ? あれ、もしかして安すぎたか? 税ってもっと重いものなの?」
俺が小声で尋ねると、隣に控えていたレオが呆れたようにため息をついた。
「……男爵様。世間では『四公六民』という言葉もありましてね。収穫の四割、売り上げの四割を領主が持っていくなど、普通のことですよ」
「よ、四割!?」
商人たちの歓声を受けながら、俺は冷や汗混じりに乾いた笑いを浮かべた。
「ま、まあ、これは最初だからな! 少しずつ上げるってことで、みんな、これからもよろしく頼むぞーっ!」
こうして、俺の領地経営は、また一つ新しい段階に進んだ。
秋晴れの空の下、まだまだグレンフィルトの発展は止まりそうになかった。
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




