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勇者ウェイン物語  作者: クモ子
小国の王
8/19

フェイス 1

 ルークに国からの使いが来た。いつかは訪れるだろうとは思っていた光景だったけれども、思ったより早かったわねと言うのが正直なところ。

「待たせたな、実は……」

「俺達は付いて行く、以上だ」ザイラスはルークの言葉を遮り、私達の意見を言い終えた。

「まだ何も言ってないぞ……いや、ありがとう、素直に嬉しいよ」


 この件についてはルークから事情を聞いて直ぐに三人で話し合った。

「ルークはルークだ、皇子だからってルークじゃなくなるわけじゃない」胸の前で腕を組み、そっぽを向いたまま拗ねた様子のザイラス。

「それはそうなんだけど呼び戻されたら帰らなきゃいけないって言ってたでしょ」子供のお守りをしている場合ではないとは思ったけれども話を進めなくてはいけない。

「国に戻れば身分の差って言うのが出てしまうよな」戦闘の時もドーンがいてくれて助かるけれど、今のはこれまでの中で一番助かったと思った。

「ルークは身分だとか立場だとかそう言うのが嫌で冒険者になったんだろうが。なら今まで通り仲間として一緒に行動するだけだ」

 ただの子供だと思っていたけれど拗ねるだけのしっかりとした理由はあったようだった。

 まだパーティーを組んで日は浅いけど少なからず信頼は置けているようね。

 ザイラスの言葉は私とドーンも同じ思いだった。いつの事かは分からないけれどもその日が来た時にはもっと信頼は大きくなっているのだろうなと思った。


「俺は飽き性だから同じところにずっとと言うのは無理だ。すまないが別れて一人旅に戻る」

 その時は私達三人以外の仲間も一緒に居た、ウェインもね。

 ウェインは元々一人で旅をしていた。ちょっとした縁があって私達と二年程一緒に旅をした仲だ。

 私達の事は気に入ってくれているようだったけど、ウェインは強さを求めて旅をしているような感じだったからそれは仕方ないと思った。

「まあ、どこにいても仲間は仲間だろ。何かあれば頼ってくれ」

 ウェインに頼めば大抵のことは解決できるんじゃないかと思えるほど何でもできた、魔法以外はね。

 何度も魔法の使い方を教えてあげようとしたのにその度に「剣があればいい」と断られたわ。

 そういう剣士って言う括りでいうならルークには寂しかったのかもしれない。

 それでも仲間だと言われたことには嬉しそうだったけれど。男って言うのは単純なものね。

 そして私達は元の四人に戻りウェインと別れリブセレへと向かった。


「ルークには仲間として付いて来た、皇子としては接しない」

 リブセレについて王様との謁見の場でザイラスが開口一番そう言った。

 第三皇子とはいえ王族を冒険者として認めていた王だけはあってザイラスの不敬とも言えるその言葉を笑って受け入れこう言った。

「仲間としてルークを護ってやってくれ、これは父としての頼みだ」

 さすがにザイラスもそれ以上は何も言えずただ「わかりました」としか答えられなかった。小国と言えどさすがは王様って感じの貫禄だったわね。

 ドーンは少し緊張していたようだけど、ルークは嬉しそうだった。本当に良いパーティーだわ。

 リブセレに着いてからは色々と忙しかった。

 ルークは第二皇子の出向いていた戦場へと赴くことが決まっていてその準備に追われた。

 私達はパーティーの四人だけで向かうつもりだったのだけれど、王族が四人だけで向かうのは体裁上よくないと言う事である程度の軍を率いての移動となったからだ。

 そのおかげで私達にはいきなり部隊があてがわれ隊長になってしまった。

 「なんでか弱い私がこんなむさ苦しいおじさんたちの隊長なのよ」

 私の猛抗議の末、ルーク隊、ドーン隊、ザイラス隊と分けられ私は魔法長となり率いる部隊は魔導部隊と呼ぶことにした。

 即席でそれぞれの得意分野を生かすために配置分けし一応訓練らしき事も行ってからの出発となった。

 そして、旅と言うか行軍と言うかそんな感じで目的地のドレイトを目指した。

 行軍中に魔物と出くわすこともあったけど私達四人が対処したりしたせいもあって私達は割とすんなりと力を認められ、隊長と魔法長して納まった。こんな時代だから力あるものを皆素直に認める。あまりいい事ではないとは思うのだけれど今はそれに甘んじておこうと思った。

 

「いいかお前ら、フェイスには絶対に逆らうな、俺でもあいつに敵う作戦は思い付かない。気を付けろよ」

「隊長でもですか?」

 少し離れた所からこちらの様子を伺うようにザイラスが部下たちに何か言っているのが見えた。

「そうだ、俺でもフェイスには勝てない」

「何を悪巧みしているの?」

 ザイラスの後ろに仁王立ちで話しかける。

「「姐さん」」

「誰が姐さんよあんた達! ザイラス、一体何を吹き込んでるの?」

 驚いたように、怯えたように、蜘蛛の子を散らすように、ザイラスとその手下たちは逃げていく。

 今までの旅がそうだった様に、所帯は大きくなったけれど本当にばかばかしくて、くだらなくて、そして楽しい日常だった。

 そうしてドレイトに着く頃にはそれなりに纏まりの取れた軍になっていた。

 ドレイトに着いてからは新しい指揮官の着任式が行われた。

「新しくここの指揮官に就いたルークだ、よろしく頼む。そしてここの軍の指揮権をここに居るザイラスに任せることにする。みんな、ザイラスを信じろ、ザイラスに任せれば必ず勝てる」

 着くなり前に立ちたがらないザイラスを前面に押し出すルーク。

「待てルーク、いきなり何だ?」

 慌てるルークを構いもせずルークは挨拶を続ける。

「明日、ルークの作戦の元打って出る、最前線にはこのルークが立つ。皆俺に付いて来い!」

「おー!」「おー!」

 新参の若い指揮官の檄に軍全体が一斉に声を挙げる。

 その新参の指揮官の横で仕方なくという風に覚悟を決めるザイラス。そしてその光景を温かく見守るドーン、お父さんのようだ。

 次の日、作戦が決定したのは日付が変わってからだったから実質は今日、ルークの第二皇子としての初戦が始まった。

 

「続け―、道は俺が切り開く!」

 正に最前線、軍の一番先頭にルークが居る。敵を斬りつけ打ち倒し、道を造り出す。

「第二陣ドーン隊進め、ルーク隊を援護しながら戦線を一か所に纏めろ」

 ザイラスの指示が飛ぶ、もうすぐ私の番だ。魔導部隊全軍に準備を促す。少し緊張しながら自分も魔力を練る。ザイラスならここは特大を言ってくるはず、いつも通りよ。

「フェイス、特大だ」

 その言葉を聞き終える前に特大の魔法を放つ。

 ルーク隊の突撃で敵の戦力がそこへ集中している。更にドーン隊が陣形を広げ囲い込むように纏める。その敵の中心に目掛けて私の最大攻撃、それに続くように魔導部隊の魔法も放たれる。

 新参の、即席の、やって来たばかりの、その部隊は開戦して直ぐに、先にドレイトに居た軍をも一つに纏めた。ルークを、ザイラスを、認めさせた。

 私達の強みは信頼。それぞれの役目を全幅を持って信頼する事、それができるから強い。ウェインに言われた言葉だけれど。

 ルークはその信頼を示す方法をやってのけた。自ら最前線に立ち、皆に信じろと言ったザイラスの作戦を実行した、誰よりも命を危険に晒して。

 

「何も心配ない、いつも通りだ」

 そう言ってルークは笑う。

 リブセレへと向かう途中でルークに言われた事がある。

「まあザイラスは良いとして、フェイスとドーンにも伝えておきたいんだ」

「何で俺は外されてるんだよ」

 ザイラスの言葉を軽く受け流しルークが続ける。

「俺はこれからも今まで通りやって行くつもりだから二人にもいつも通りにしてもらえたら嬉しい」

 少し照れたように俯きながら頭の後ろに手を回し髪を掻くルーク。

「何回目よそれ? 毎回照れながら言うような事?」

「まあそう言ってやるな、フェイス。王族ともなれば俺達とは生き方も違う、両方を知ってるルークだから心配になるんだ」

 ドーンがルークの胸の内を代弁する。たしかこの頃ぐらいからドーンのお父さん化が顕著になってきたように思う。

「ルークはルークなんでしょ? 心配しすぎよ。王族だか何だか知らないけど私達はルークを仲間だと認めたんだからその仲間を信じなさいよ」

「ああ。そうだな」

 誰が見てもそうとわかる、安心した表情のルーク。

 手の掛かる子供がうちのパーティーには二人もいる、そう思いため息をつく。

 そんなやり取りを思い出し気を取り直す、そう、いつも通りだ。

 私達はいつも通りやるだけだ、だってそれしか知らないんだもの。仲間への信頼は私達が一番だ。

 

 そのまま二か月ほど街に駐屯しドレイトの魔物を掃討した。

 そして街の復興と警備も兼ね軍の一部を残し王城へと帰還することになった。

 元第二皇子に随行していた軍がその使えるべき主を失い意気消沈していたところに見事、元第二皇子の敵を討ち取った現第二皇子。新たな仕えるべき主を得て追悼の意の中にも新たな炎を抱いていたようだけれど、これ以上手の掛かる子供はいらないわと言うのがほんとのところ。

 それでもルークの立場もあるし、仕方なく、渋々、嫌々受け入れる。

 

 そもそも国軍と言う物はもっと規律正しくお堅いものだと思っていた。いや、きっと他の国ではそうなんだと思う。

 でもリブセレと言う国の軍隊はそうではないようだ。いや、ルークとの接し方と言った方が正しわね。

「坊ちゃんお帰りなさい。帰ってきていきなり無茶してくれますね」

「もう坊ちゃんと呼ばれるような年じゃないじゃないぞ」

「じゃあルーク殿下にしますか?」

「いや、それは何か嫌だ」

「ルークはルークだ。いつも通りルークと呼べばいいだろ」酒を持った片手を高々と掲げるザイラス。

 それからは軍の中でもルークはルークのままだった。手の掛かる子供達は増えたけれど。

 昔からルークは稽古と称して軍の訓練に交じっていたそうだ。

 本人はコッソリのつもりだったようだけれど皆には第三皇子だとバレていた。

 諦めの悪い子でなかなか降参しないせいもあって稽古相手は皆手を焼いていたみたい。

 それでも皆に愛されていた。

 決して諦めない強い心に惹かれて。私達と同じように、ルークの諦めの悪い不格好で泥臭い姿に惹かれて。この世界の縮図の様にもがきながらも決して生きる事を諦めない希望として。

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