ルーク 4
二回目のラクト砦遠征を終え一年がたった時、もう一人の兄も魔物討伐で命を落とした。
そして、その報を受けた父であるリブセレ王が病に伏せる事になる。その結果として俺は冒険者となるころには予定していなかった王位を継ぐことになった。
「俺が王になるなんて全くの予想外だよ」
ザイラスと顔を合わせた時にはそんな愚痴もこぼしてしまう。
「多少なりとも我儘を聞き入れてもらって冒険者として外の世界も見れたんだ、受け入れろ」
そうザイラスは冷たく突き放すが変わらず仲間として接してくれていた。
そして俺が王位を継いで一年がたった頃、ウェインの魔王討伐宣言が世界に響き渡る。
ウェインの魔王討伐宣言の後、世界各国の王や指導者に召集が欠けられた。
世界各国に出されえた書状の内容は今こそ借りを返せという内容だった。俺のところにだけは仲間として頼みたいという内容ではあったが。
世界の存続にかかわる内容であると同時に人類に残された最後の希望であった為、緊急の招集ではあったが世界中のトップを務める者達が一堂に会する類を見ない会合が開かれる事となった。
後に世界会合と呼ばれるその場にはウェインパーティーの五人と全世界の王や指導者が集まった。俺もリブセレの王としてその場に参加していた。
「早速始めようか」
物怖じする様子もなくいつも通りのウェインのその言葉で会合は幕を開ける。
「まず初めに、俺達パーティーは魔王討伐に発つ。ただし条件がある」
ウェインはそう言うと集まった全員を見回す。
「なに、大した条件じゃないそう身構えるな」
傲岸不遜な態度のウェインに若干ざわつくがウェインの発言を遮る声は上がらない。
「もし俺達が魔王を討伐した暁には俺は勇者を名乗る。勇者とは世界各国全ての王、指導者よりもさらに上の地位とする、要は俺に跪けという事だ」
このウェインの言葉で一気に会場全体に不穏な空気が漂う。
「一介の冒険者が王よりも高い地位に就くだと、冗談だとしても聞き流せることではないぞウェインよ」
当然のように会場からウェインを非難する声が上がる。
「まあ最後まで話を聞け。地位が上だと言っても別に領土を持とうだとか国を興そうって言う話じゃない、権威としてその地位を認めろという事だ。もちろん各国の政治に対して口出しをする気もない」
そう言ってざわつく会場が静まるのを待ってウェインがさらに続ける。
「まず、今の現状の話からだ、今この世界は魔王の脅威に曝されている。要は人類の存亡の危機というやつだな。このままいけばいずれ世界は魔王軍に侵攻され滅ぶだろう、それはここにいる全員が危惧していることだ。そこで俺達が魔王を倒し世界を救おうっていうわけだ、ここまでは問題ないな?」
改めて全体を見回し反対意見が出ないのを確認するウェイン。
「そこで俺達が問題にするのは魔王を討伐した後の事だ。世界を存亡の危機に陥れた魔王を討伐できる力がその後も残っていたらお前達はどうする? 当然のように自らからの国に取り込もうとするか、その力を脅威と感じで排除しようとするんじゃないのか?」
現状の打破で必死だった各国の王達は揃って口を紡ぐ。
「せっかく世界に平和が訪れたとしても今度は俺達の平和が脅かされることになるのは御免だ。そこでさっきも言った勇者という称号だ。俺達はどこの国にも属さず更には誰からも口出しされない権威を持つことで魔王討伐後の安寧を得る、そういう事だ」
暫くの沈黙の後一人の王から発言があった。
「もし、その要求を断ったらどうするのだ?」
「魔王討伐をやめる、それだけだ」
ウェインが即答する。
再び会場がざわつき出したところで意を決して声を上げる。
「リブセレはその要求を全面的に受け入れる」
会場中の視線が俺に集まるのを感じた。
「今この世界において俺達王の最も望むべきは民の安寧だ、己の地位や権力じゃない。既にウェインの魔王討伐の報は世界に広がり民の希望となっている。今その希望の光を消すようなことは出来ない。そもそもウェインはあの性格だ、地位がどうだとか関係なく傲岸不遜であることには変わりない。いちいち咎める必要がなくなるだけ手間が省けるというものだ」
言葉にならず唸る者、だがしかしと考え込む者。それぞれが国を背負うという事を改めて考え込む。
「もし魔王討伐後にウェイン達を排除しようとする者が現れたらどうするつもりじゃ?」
「全力で潰す、恩を仇で返す様な国には滅んでもらう」
とある国からの質問に、話し合いの出来ない魔王か話し合いの余地のあるウェインを選ぶかの二択という選択をウェインが突き付ける。
「いいだろう、わが国もその要求を受け入れる」
まだざわつきが残るなかライオス王が発言した。
そしてその発言を呼び水にぽつりぽつりと他の国々もウェインの要求を受け入れる旨の発言していく。
「反対する国はあるか?」
すべての発言を聞き終える前にウェインが言葉を発するが反対を表明する国はなかった。
「よし、なら決まりだな。それから補足としていくつかつけ足しておく」
ウェインが補足として付け足した内容とはこうだ。勇者という称号はウェイン一代の物でその称号を誰かが継承することはないという事。そしてウェインは冒険者ギルドの所属とし、もしも今後国家レベルでの対応が必要な事案があった場合は冒険者ギルドに勇者案件と言う形で依頼を出せるという事。そして勇者の名を騙る偽者は死罪とする事をつけ足した。
「勇者を騙るという事はこの世界において最高の権力者を騙るという事だ、それはここにいる全員が受け入れられない事だろう。更に俺の事が気に入らなくなった国は俺の事を偽者としてしまえば俺を排除する口実にもなるだろう。まあそうなればその国には地図から消えてもらう事になるんだがな」
そして、最後に今決まったばかりの事案を反故にできる可能性と国の滅亡という脅しを残し世界会合は幕を閉じた。




