ザイラス3-2
「世界連合軍左翼ライオス軍押されています!」
「援軍の用意だけさせろ、それぐらいで揺らいでもらっちゃ困る」
急造とはいえ脆すぎるだろ、他がいいだけに余計に目立つ。魔王軍にライオス軍のところを狙われると厄介だな。
「中央軍、敵軍と当たります」
「ライオス軍、更に押されています!」
ルークとドーンはまあ問題ないな、ライオス軍をすぐ隣に配置しておいて正解か。だがしかし……
「くそっ、ドーン隊とルーク隊を左翼救援に回るよう伝達。合図は魔導部隊の攻撃と同時だ」
まだ魔法は取っておきたいところだが中央が前に出てる以上抜かれるわけには行かない。
「ルーク隊ドーン隊の動きに合わせて救護隊全速で動け、死なせるな」
俺はこんな安全な場所に居て仲間には殺し合いをさせている。傍から見ればそうなんだろう、それでも俺にしかできないことだ。だから絶対にミスはしない。
戦場をよく見ろ、全ての動きに意味を見出せ。何が出来て、何が出来ない? 見逃すな、微かな気配も感じ取れ。
「魔導部隊に攻撃の合図、魔王軍中央部隊右翼側からだ」
ライオス軍はルークとドンに任せておけば大丈夫だろう、問題はこの中央か。全く、俺は生粋の後衛だぞ。
魔導部隊の攻撃が魔王軍中央部隊の右翼側に炸裂する。そのまま中央へと攻撃が流れるのを見てルーク隊、ドーン隊がライオス軍のいる世界連合軍左翼へと移動を始める。
「ザイラス隊出るぞ、魔導部隊の撃ち漏れの掃討だ。本番はその後の中央本隊だ、気を抜くなよ!」
魔導部隊の攻撃を掻い潜った魔王軍が迫りくる。
「ザイラス隊構えろ]
魔導部隊の攻撃で分断された魔王軍が散発的に迫りくる。問題はこの後にやって来る本体の方だ、そう考えながらザイラス隊に進軍の号令をかける。
「突撃ー!」
多くは無い魔王軍の撃ち漏らし達を相手にしていると、魔王軍本体と俺達ザイラス隊の間に横一列に陣取る部隊が見えた。
「ルーク!」
遠目でもそれとわかる剣士が部隊の中央で剣を振り、白い剣戟が魔王軍を斬り裂く。
あのバカなんで引き返してきやがった。いや、さっきの魔導部隊の攻撃で殲滅できなかったのを見たからか。
それはこっちも覚悟の上だ、わざわざ戻って来るなんて。俺の予想を超えて来るなよ、ウェインの言った通りになってるじゃないか。
「おい、俺のメイス持ってこい」
部下にそう伝え、ザイラス隊に指示を出す。
「ザイラス隊、全速前進。ルーク親衛隊まで進軍だ、誰も死なせるな!」
受け取ったメイスを前方に大きく突き出し叫ぶ。
柄にもなく自軍の前線にまで出てひたすらに目の前の魔王軍をメイスで殴りつけ続ける。
それにつられるようにザイラス隊の兵士たちも鬼気迫る勢いで魔王軍を打ち倒していく。
そして魔導部隊の攻撃を抜けて来た魔王軍を蹴散らしながらルーク達のいるところまでたどり着いた。
「こんなにメイス振り回すの何てルーク達と会ったばかりの頃以来だな」
ルークの横に並び大声で怒鳴る。
「たまにはこういうのも悪くないだろ、ザイラス」
全く悪びれることもなく笑顔で返すルーク、こういう所は本当にウェインと似てやがる。
「まったく何考えてんだルーク、死んだらどうする」
「怒るなよザイラス、まだ生きてる。俺が体を張ってなければザイラスがそうしてただろ? 体を張るのは前衛の仕事だ」
こちらに向けた顔を正面に据え直し、真っすぐに剣を構えルークが答える。
「まあいい、ここからが本番だぞルーク」
「ああ、まだやれるよ」
ちらりとライオス軍の方を見る。向こうはドーンが何とかしてくれてるようだな、こっちに集中するか。
「ザイラス隊、陣形を整えろ。魔王軍中央本隊が来るぞ!」
程なくしてザイラス隊と魔王軍中央本隊がぶつかり合う。
激しい怒号と金属のぶつかり合う鈍い音が辺りで鳴り響く。
くそっ、楽には行けそうにもないな、周りを気にしてる余裕もない。
ひたすらにメイスを振り続けるすぐ横でルークも剣を振り続ける。
立ち上る土煙に包まれ、誰のものともわからない血飛沫も混じる中ただただ目の前の魔王軍を相手にメイスを打ち付け続ける。
状況はあまりよくない、直感的にそう感じていた。ルークはまだ隣にいる、それだけが救いだった。
どうする? そう考える暇も魔王軍は与えてくれない。だが諦めるという選択肢は端からない、どう勝つかだけだ。
数に押されザイラス隊に疲れの見え始めたころ魔王軍中央本隊の左右から土埃を立てながら迫りくる部隊が見えた。
くそったれ、ここで増援かよ。いよいよやばいな、覚悟を決めるか。
迫りくる魔王軍増援部隊が中央本隊と合流する。
次の瞬間、魔王軍中央本隊が大きく揺らいだ。
「リブセレ軍を護れー!」「魔王軍を叩き潰せー!」「ザイラス生きてるかー!」
それは世界連合軍の援軍だった。各国から少数ながら精鋭部隊が一丸となって魔王軍中央本隊の側面を突いていた。
「くそったれ、助かったぜ」
思わず言葉が漏れていた。
「ザイラス隊、押し返せー!」
気力を振り絞り声を上げた時、頭上を何かが通り過ぎ魔王軍中央本隊に炸裂する。
戦慄! フェイスか!?
後ろを振り返ると数名の護衛を従えたフェイスが腰に手を当て右手の親指を高らかに突き上げていた。
フェイスのすぐ横には馬がいるところを見ると単身飛び出したフェイスに部下が付いてきたって感じだな。
助かった、しかしフェイスのやつ普通に戦慄が打てるようになってるのか? いや、違うな後ろで副隊長がこっちから見えないように体を支えてやがる。
どいつもこいつも無茶しやがって。いやそれは俺も同じか、人のことは言えないな。
世界連合軍の援軍とフェイスの戦慄で魔王軍は部隊を退却させた。ライオス軍もドーン隊が加わったことでどうにか持ちこたえることができた。
こうしてラクト砦への二回目の遠征での初戦は幕を下ろした。
だが、俺には砦へと戻って各国軍からの援軍への謝礼に酒を奢らされる事になり、その相手をするという仕事が待っているのだった。




