ルーク 3-2
魔導部隊の放った魔法で巻き上げられた砂塵が吹き付け、暑さで汗のにじむ額に砂埃が張り付く。
先に水浴びをしたい気分だったがそうもいかないようだ、敵が来る!
「親衛隊、横一列に展開!」
号令をかけると、陣を横一杯に広げる。
「ここより後ろには一兵たりとも通すな、魔王軍を殲滅せよ!」
親衛隊に渇を入れもう一言付け加える。
「そして誰一人死ぬな、ザイラスに怒られる」
皆がそれぞれに顔を見合わせ笑みをこぼす。
俺と、俺に従事するルーク親衛隊十名。このたった十一名で俺は魔王軍中央部隊と対峙していた。
ラクト砦に戻ってきてからの初戦だった、時を同じくしてラクト砦にやってきたライオス軍がいきなりの窮地に陥っていた。
いつも通りにドーン隊に後に続き前線で剣を振る、各隊訓練の成果をいかんなく発揮し問題なく魔王軍と渡り合っていた。
そんな中ザイラスから聞いていたライオス軍にも注意を向けていた。ぞしてザイラスが危惧していた通りにライオス軍の動きは良くないように見えた。
それほど強く前に出てきているようには見えなかったがそれでも魔王軍は強い、急増のライオス軍では荷が重そうに見える。
「ドーン!」
俺の呼びかけに同じようにライオス軍に注意を向けていたドーンが頷く。
そしてそれに合わせるようにザイラスからの伝令が届く。
「伝令! 魔導部隊の一斉攻撃の後ルーク隊、ドーン隊はライオス軍の救援に向かうようにと!」
伝令を聞き終えると俺とドーンは頷き合う。
「予想はしてたが思ったより脆いな」
「急造の軍なんだろう、致し方ない」
ドーンと短い会話を交わし魔導部隊の攻撃に合わせるために各隊に指示を出す。
程なくして魔導部隊の攻撃が魔王軍右翼側に炸裂する。そして魔王軍を追い込むように攻撃は徐々に中央に向かっていく。
「ドーン行こう!」
ドーンに声をかけ一斉にライオス軍のいる世界連合軍左翼方向に隊を動かす。
魔導部隊の攻撃は魔王軍中央部隊右翼側の戦力を削りながら左翼側へと移っていく。俺達ルーク隊とドーン隊は右翼側の残党を討ちながらライオス軍方向へと隊を進める。
隊を進めながら魔王軍の動きを注視すると中央本隊が前に出てくるのが見えた。
「まずいな」
思わず言葉が漏れる。魔王軍はがら空きの中央を抜いてくる気だ。
ウェインとの再会は俺にとっては大きな出来事になった。
一度目のラクト砦への遠征でウェインと再会した、また会えた事の喜びとその横に並んで立てなかった事への寂しさを持って。
ウェインと別れてからは国に戻り軍を率いて戦って来た。その事に後悔はないし、仲間が増えたことに喜びを感じている。
しかし、一人旅をつづけたウェインはあの頃とは比べられないぐらいの差をつけられ強くなっていた。誇らしくもあり悔しくもあった、そう悔しかったんだ。
だがそれは負の感情ではない、自らを成長させるための糧だった。
久しぶりにウェインの剣技を見たその日から日々の鍛錬への熱は上がる一方だった。
だからひたすらに剣を振り続けた。また隣に並んで立ちたかった、ずっとそう思っていた。
ウェインとは別の道を歩むことになったけど、ザイラス、フェイス、ドーンは同じ道を歩んでくれた。
嬉しかった、付いて来てくれて。嬉しかった、ウェインとまた会えて。
俺がやる。俺の大切な仲間達、護るべき仲間達。
俺にしかできない事をするんだ、俺が護るんだ。
「ルーク隊、ドーン隊に合流せよ。親衛隊は俺に続け、俺達の総大将を護る!」
そう叫ぶと俺は踵を返し中央へと向かっていた。
世界連合軍左翼が押されているところに援軍でドーン隊とルーク隊を向かわせた。しかしリブセレ軍中央はがら空き、ザイラス本隊が丸裸だ。
前方に魔導部隊の攻撃で時間は稼いだがそれだけだ、ザイラス本隊が応戦するしかない。魔導部隊本体もまだ後方から動けていない、もし破られれば世界連合軍の中央が抜かれることになる。
ザイラス隊も訓練は積んではいるがそれでもパーティーで言えば後衛だ、あの数の魔王軍本隊では分が悪い。
魔王軍中央本隊と正対し、横一列に並ぶルーク親衛隊に視線を向ける。
「あの時のウェインに少しは近づけただろうか」
自分自身に問いかける様に言葉を吐くと剣の束を握り、左足をゆっくりと後方に半歩引く。
戦場の喧騒は消え、漂う砂塵もゆっくり流れていく。
あの時と同じだな、昔に見た光景と重ね合わせ自身の一閃でその時間の流れを斬り裂く。
細く長く息を吐く。
一瞬の静寂の後、横薙ぎに振り払う剣から白く輝く斬撃が迸る。
その斬撃を目にした魔王軍が悉く血を流し倒れる。
続けざまに世界連合軍左翼から大地を揺るがす咆哮が聞こえてくる。
ドーンも初めから飛ばしてるな、笑みの浮かぶ顔を魔王軍へと向け剣を構え直す。




