序章 ある日の一層
ダンジョンは、絶望を飲み込む。
昔からそういわれているが、多くの人がダンジョンに挑む。なぜなら、誰しもが高みに上るチャンスを秘めているからだ。しかし、富・地位・名声・力など様々なものを手に入れることができる一方で、探索者は死と隣り合わせだ。そんなダンジョンに俺が挑む理由は、、、
「フィア、あとどれくらい奇跡を使えるか...?」
「ヒールか障壁か身体強化の奇跡をどれか一つ!」
ゴブリンの拠点を攻めるのは早計だった。通常ゴブリンの拠点は初心者のパーティーが挑むものではない。ましてやパーティーは、剣士の俺と神官であるフィアの初心者2人だけだ。しかし、たかが数日だったが、順調に魔物を倒していた俺が調子に乗るのには十分な理由だった。
「こんなに多いなんて聞いてないぞ!」
ハタは周囲を警戒しつつ、言葉を吐き捨てるように言う。
「ハタ君!ここは撤退しよう!!!」
フィアの提案を受け入れるほかなかった。今は自分の力を過信し、判断を誤った自分を攻めている時間がなければ、強がっている時間もない。
「...わかった!合図をしたらフィアの前方に障壁を出してほしい!」
「了解っ!」
息を整え、フィアに合図を送る。
「障壁!!!」
フィアの前方に光の壁が形成された。それを確認した俺はゴブリンの包囲抜け、光の壁を飛び越えてフィアの元へ急いだ。
「町まで走れそうか?」
「うん、大丈夫。急ごう!」
フィアの返事を聞き、2人で町まで走った。その間、俺は悔しさと無力感でいっぱいだった。
「こんなんじゃ見つけ出せない。イオリを...兄さんを。」