他人と共感
とある病院でMRI検査をする事になった。
3人がけのソファが縦列に2つ
俺と50歳過ぎのその男は
共にそれぞれのソファの左隅に座った
「あっ...つぅ..いった..」
少し大きめに聞こえてくる
痛みを堪える声
この時は、この男が気にならなかった。
しばらくすると
「これは..どういうことだぁ❓」
左の肘掛けに体を預けながら、スマホを難しい顔で右手の人差し指を、自身の側頭部を差しながら発する言葉は、さっきよりも大きい。
「なるほどなぁ」
「いやこりゃまずいよ」
「これだから世間っていうのは」
もはや呟きどころか独り言にしても大きすぎる。
俺は周囲を確認したぐらいだ。
看護師も他の患者も誰もいない
しかし俺に言ってる訳でもない
かなりの時間、俺はその男を見続けてもこっちを見ないからだ...
なにか難しいものでも見ているのか?
少しだけその男の事が気になり始めた。
その瞬間に、その男のスマホから
「ぽこぽっこぉーーーー‼️‼️‼️」
とスマホゲームの音が待合室に大音量で響いた。
笑いを堪えるのも久しぶりだ。
堪えるのに必死だったが
数秒後レントゲン技師がその男を呼んだ。
ーーー技師に救われた。
1人になってから遠慮なくニヤけた。
気持ちが良かった
俺の前を通り過ぎていったとき
明らかに左膝が痛むであろう歩き方だ、
「しーーっいっ...つっしーーーーー」
そのまま技師に連れて行かれた。
左膝男はMRI検査を受けるための質問を繰り返されていた。
「金属類は外して下さい」
「ステントや金属が入った手術経験はありますか❓」
「刺青、カラーコンタクトはしていませんか❓」
1日に何度もやっているであろう慣れた質問をするが、左膝男は手だけで反応していた。
検査技師の一通りの説明が終わると...
左膝男は待っていましたと言わんばかりに被せ気味に質問をした。
「あーーーあのさ!人体にチップ..ねっ!そのマイクロチップとか..あれはどーなんですか?」
技師のリアクションは勿論「えっ?入ってるですか?」
驚きと、どこか少しだけ興味と期待をしている感情が俺には伝わって来た。
俺も同じ気持ちだった。
左膝男は今までで1番大きな声で答える。
「世界的に言ったらね!入ってる人って!いるじゃんね」
【お前は入ってねーのかー‼️‼️】
俺も技師も心の中で叫んだはず...
そうに違いない...そうあって欲しい...
というお話...