月の行方
月の行方
「月が綺麗ですね」
その一言から始まったのはいつのことだっただろうか?
その一言に浮かれ、その一言に盲目し、その一言のみに自惚れ、溺れて、軽視したのはいつのことだっただろうか?
月は光り輝けない。
月は太陽により光り輝く。
綺麗と言われたのはきっと
太陽が照らしていたから。
綺麗と言われ自分で輝いてる気になり
綺麗と言われ自分を盲信し
綺麗と言われ太陽を軽視し
綺麗と言われ言葉に溺れた。
月には裏側がある。
誰も見れない裏側。
世界に取り繕うとも
太陽は気づく。
太陽はきっと全てを知ろうとし
全てを知った太陽は
月を綺麗と言うのをやめた。
さらけ出せない月
そんな月も太陽に近づこうとする
けど、
世界から離れられない
世界を捨て去れない
ああ、月は太陽を見つめるしかなくなったのだ
たとえ太陽をどう思っていようと
たとえ太陽とどう言う関係になろうとも
互いの距離は遠くで近づき離れるしかないのだ。
セピアカラーの昨日、
パステルカラーの明日、
そして今日
世界はモノトーンになった。
明日も明後日も
ずっと、ずっと、ずっとモノトーンの
世界になることが決まった。
一歩踏み出せばパステルカラーの世界に
入れるかもしれない。
けど、
一歩踏み出すことも
一歩近づくこともできない
たとえどんなに後悔しようと
たとえどんなに絶望しようと
ただの月にはその一歩が
つらい 怖い
悲しみに繋がる
愛せず哀する一歩
太陽の光に歓喜したひは終わった。
太陽の光を遠くから見つめるひが始まった。
太陽に光を与えられ喜び
太陽の光に反射した光が太陽を刺していないかと
不安になるひびが始まる。
太陽に光を与えられるのを見つめ
太陽の光を与えられた世界に嫉妬する
嫌になるひびが始まる。
思考が沈んでいく
歩みが沈んでいく
気分が沈んでいく
自分が沈んでいく
世界がぐるぐるする
頭がぐるぐるする
気分がぐるぐるする
自分がぐるぐるする
それでも月は沈まない
ただひたすら太陽と共にいる
たとえ綺麗と言われなくとも
たとえあいされなくても
太陽がそこにと望む限り
太陽の支えになる限り
月はそう決めた。
その道がどうなろうとも。
自分は結局月であると。