0山目
「………」
時は8月上旬。都市部での気温は35℃を超える猛暑日。周囲には2000〜3000mクラスの山に囲まれ人工物はほとんど皆無。そんな中、猛烈に汗をかきながら山中を歩く2人の少(?)女がいた。
「………私、なんでこんなことしてるのかな…」
事の発端は数ヶ月前に遡る。
春休み。…ってか高校を卒業した後だから春休みとは言えないかもしれない。ただ春休みであると思った方がしっくりくるから春休みとしよう。
私の名前は木舞夢衣。女子ではあるが身長170cmオーバー。顔つきは整っており(自分で言うな)、髪は黒く腰の辺りまで真っ直ぐ伸ばした所謂黒髪ロング。喋る時はよく喋るが、話題がない時は無口になる。これで大きかったら男ウケも良かったのだろうが、残念ながらまな板。ちなみにモテたことは無い。
大学受験に無事に合格し、関西圏の大学に通えることになった私はベッドの上で悩み事をしていた。
恐らくこれを読んでる方はほとんどが高校時代なにか部活かその他活動…「趣味」とも言えることをしていたはずだ。だが夢衣の場合、話がまるで違ってくる。彼女、高校生の間なにもしてなかったのだ。家に帰って宿題を済ませ、一目散にふかふかベッドにin。そしてだらしない顔で翌日までおやすみなさい。これを3年間毎日規則正しく(?)行っていたため、やりたい事が思いつかないのだ。ちょこちょこ興味を持ったものがありはしたが、忘れてしまっていた。
「はぁ…大学側から部活やサークルのお知らせパンフは届いたけど…ビビっ!!と来るのはないなぁ…」
いきなりやりたい事を探しても見つけるのが難しい。…と、いうことで。
「はい?やりたい事?」
電話の相手、稲田知美は素っ頓狂な声で聞き返してきた。私の中学校からの友人である。茶髪のショートヘアで身長160cmほど。私と違って出るところが出てる。ただ童顔なのがコンプレックスらしい。可愛いと思うけど…。
「そうそう。ほら私ってさ、高校の時なにもしてなかったじゃない?だから知美が何するか参考にしようと思って」
「アンタ自分でそれ言うか…」
呆れられた。
「話を戻して、私は登山を本格的にやろうかなと。でもサークルとかに入る気は無いね」
「あぁいいわねそれ。………はぇ?なんで?入るもんじゃないの?」
「単純な話よ。そんなんで行こうとしたら書類出すやら許可とるやら必要で自由に行けないもの。私は個人で好きに行きたいのよね」
「なるほど………」
「なんなら夢衣も一緒にやる?楽しいよ」
「うーーーーん…考えてみる…」
それから1週間後。
私は兵庫県の六甲山まで来ていた。来てしまっていた。
この小説を読んでくださりありがとうございます。
拙い文章ではありますが、今後も読んでいただけると幸いです。